企業アクセルスペースホールディングス東証グロース:402A】「輸送用機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは「Space within Your Reach~宇宙を普通の場所に~」というビジョンのもと、小型衛星技術のパイオニアとして、宇宙ビジネスの先頭に立ち続けることで、従来の宇宙利用の常識を打ち破り、地球上のあらゆる人々が当たり前のように宇宙を使う社会を目指しております。

(2)経営戦略等

1.事業セグメントのシナジー

 当社グループでは、顧客のミッション機器(ペイロード)を搭載する小型衛星の開発・製造・打上げ・運用をサービスとして提供するアップストリーム(注1)側のAxelLiner事業、及び自社で開発した衛星を保有し、それらの衛星から得られる地球観測データに必要に応じて解析等による付加価値を加え、ソリューションとしてエンドユーザーに提供するダウンストリーム(注2)側のAxelGlobe事業を推進しております。アップストリーム側の事業とダウンストリーム側の事業の両者を推進している企業は世界的にも非常に珍しく、小型衛星においてはほとんど例のないものとなります。当社グループは、上記の経営方針に基づき、これらのAxelLiner事業とAxelGlobe事業を両輪として事業を拡大してまいります。

 両事業を展開することで、AxelGlobe事業のコンステレーション構築に、AxelLiner事業における量産効果を得られることに加え、同事業で獲得した開発ノウハウや開発キャパシティを活用することができるようになり、また、「GRUS-1」を活用したAxelGlobe事業からのフィードバックで得たエンドユーザーのニーズを衛星ハードウエアだけでなく、衛星コンステレーションのアーキテクチャレベルまで落とし、AxelLiner事業の研究開発に活用することができるようになります。その結果、両事業の競争優位性が高まるものと考えております。

 これらの事業基盤を支える小型衛星の開発・製造・運用技術に関しては、今後も継続的に研究開発を進めてまいります。AxelLiner事業においては、これまでも政府系の開発案件を複数受注しており、これらのプロジェクトを通じて、政府の宇宙開発の目標達成に貢献しながら小型衛星開発の知見を培っております。AxelGlobe事業に供する人工衛星の開発に関しては、ミッション機器についてはAxelGlobe事業本部にて開発し、AxelLiner事業本部がこれまでの衛星開発の中で培った技術を生かした小型衛星バスシステムと組み合わせることを前提としており、両事業が協力して次世代機の開発を行います。

 (注)1.アップストリーム:宇宙空間へ宇宙機(人工衛星やロケットなど)を送るまでの地上での経済活動と宇宙空間における地上用途でない経済活動のこと。主たる事業内容としては、宇宙機の製造・打上げ、宇宙港や地上局を含む地上インフラ運営などが含まれる。

    2.ダウンストリーム:アップストリームで打上げられた衛星を地上用途で活用したサービスに関連する経済活動のこと。衛星運用、衛星通信・放送、衛星データ販売、衛星データを活用したソリューション販売などが含まれる。

 また、製造に関しては、当社グループでは、2023年7月に株式会社ミスミ、由紀ホールディングス株式会社、及びキャリムエンジニアリング株式会社と宇宙機製造アライアンス業務提携契約書を締結し、人工衛星製造の効率化、製造機調整も可能な並行製造の実現を目指し、従来の人工衛星製造の製造概念を変革することを目標に進めております。なお、当該契約を締結している3社に限らず、その他関連する企業とも連携を深め、プロジェクト開始から軌道上のデータ提供・運用開始までの時間短縮化・効率化を目指しております。

2. AxelLiner事業

 AxelLiner事業では本格的な収益化に向けて、多様なミッションに対応可能な汎用バスシステムの確立並びにユーザーエクスペリエンス(UX)革新と衛星開発プロジェクトの短縮化・省力化の鍵となるソフトウエアの完成等の研究開発活動を推進し、世界的に官民双方で急速に高まる小型衛星利用ニーズに応えてまいります。

[1]多様なミッションに対応可能な汎用バスシステムの確立

AxelLiner事業においては、宇宙関連企業や政府系機関等の顧客が調達又は開発するミッション機器を搭載する専用人工衛星の開発・製造・運用が中心となります。従来であれば設計開始から打上げまで最低2~3年は必要となっていた新規衛星開発案件について、これまでの専用衛星開発の過程で培ってきた技術をベースに、バス部分には独自の汎用バスシステムの使用を目指し、最短1年での打上げの実現を目指しております。汎用バスシステムは、2024年3月に打上げた「PYXIS」で初めて搭載しました。なお、「PYXIS」は打上げ後、軌道投入に成功しましたが、電源供給系統の故障が発生し、通信が断絶したことから宇宙空間での実証実験は完了しておりません。太陽電池出力から充電制御回路にいたる電源供給系統の故障を引き起こしうる故障モードを分析し、その故障モードが発生しないように改修方針を策定し、外部有識者のレビューを経て、信頼性向上に向けた改修設計と評価試験を進めました。これらの改修を、2025年6月に打上げた「GRUS-3α」に適用し、現在軌道上で検証を行っているほか、今後当社が開発する人工衛星に反映してまいります。

[2]UX革新の鍵となるソフトウエアの完成

 AxelLiner事業では顧客価値実現のために、事業設計から仕様決定、製造状況把握、軌道上運用に至るまでのプロジェクトのすべてのフェーズにおいて、顧客との窓口となるソフトウエアである「AxelLiner Terminal」を提供し、UXに革新をもたらすことを目指しております。

AxelLiner事業が変革するユーザーエクスペリエンスのイメージ

*LSP:打上げ事業者(Launch Service Provider)

 従来、特に事業設計から仕様決定のフェーズにおいては検討のために大量の人的・時間的リソースを投入する必要がありました。

 宇宙事業、特にコンステレーションを用いた事業展開を考える際に、顧客が自身のミッションを通じて提供したいサービス(品質、展開地域、コスト等)を成立させる構成(衛星性能、機数、投入軌道等)を検討することは一般に容易ではありませんが、この「AxelLiner Terminal」は顧客のミッション(地球観測や通信など宇宙で行いたいこと)を明確化する作業をデジタル化・省力化することを可能にします。

 当社は、当該システムを通じて、顧客がシンプルな項目を入力するだけで独自ミッションを実現する人工衛星の構成、およそのコストやスケジュール等を把握できる環境を提供することを目指します。

 これらの研究開発によって獲得した技術を活用し、宇宙空間でのコンポーネント実証ニーズを有する顧客に向けた「AxelLiner Laboratory」 (以下「AL Lab」という。)、実施したいミッションを有する顧客に対し、複数機のコンステレーションも含むそのニーズ実現を目的とした衛星及びその運用までを提供する「AxelLiner Professional」(以下「AL Pro」という。)という2種類のサービスを準備しています。

AL Lab

 宇宙で使用するコンポーネントを軌道上で実証したいと考える顧客に向けたサービスです。

 宇宙用コンポーネント開発事業者が顧客(衛星メーカー等)に製品を販売するには軌道上での動作実績を求められることが多く、これが当該事業者にとって大きなハードルとなっています。このため、経済産業省による宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業やJAXAによる革新的衛星技術実証プログラム等が企画され、宇宙用コンポーネントの軌道上実証機会が提供されてきましたが、実証頻度が2~3年に一度と低いため、製品の性能を素早く検証し、タイムリーに市場に出すことが難しいという課題がありました。当社グループでは宇宙産業向けのコンポーネントを開発したい企業、宇宙空間の特性を活用した実験をしたい企業などを対象にサービスを提供します。当社グループが開発中の汎用バスシステムをベースに、ミッション機器が搭載可能なスペースを分割して提供し、相乗りで打上げることで、1スペースあたりの提供価格の低減を実現します。また、大型のミッション機器の実証を目指す顧客に対しては、衛星自体を提供することも可能です。これらの実証機会を提供する衛星を定期的に打上げることから柔軟な実証時期の選択・変更を可能にするほか、衛星オペレータとして実証対象コンポーネントに対し、中立的な立場での軌道上評価ができる第三者的な認証を提供するなど、独自性の高い軌道上実証サービスの構築を目指します。

AL Pro

 実現したいミッションを有する顧客に対し、当該顧客が開発又は調達するミッション機器を搭載した専用の小型衛星を開発し、打上げ、その後の運用までを当社グループがトータルに提供するサービスです。当社グループが開発中の汎用バスシステムを使用することによりカスタム要素を最小化することで、コストや開発期間を従来より大幅に抑えることができると考えています。

 加えて当社グループでは過去の豊富な打上げロケットや地上局、保険の手配経験や周波数獲得、政府の許認可取得経験を生かし、顧客にサービスを提供することにより、顧客は煩雑な各種手配を自身で行う必要がありません。顧客は宇宙で稼働させるミッション機器の選定・手配又は開発を行い、当社グループは顧客から受領したミッション機器を衛星として組み込み、打上げや運用の実施を行い、得られたデータを顧客に送付することでサービスが完結します。

 将来的には、上記のAL Lab、AL Proのプロジェクトの遂行において前述の「AxelLiner Terminal」を活用することで、プロジェクト期間短縮と省力化を図ってまいります。以上のように、AxelLiner事業においては、進展スピードの速い人工衛星関連技術の研究開発を汎用バスシステムの確立後も継続的に行っていくことが、当社グループの技術力の維持発展及び安定的な事業運営を達成する上での重要な鍵になると考えており、今後も継続的な研究開発投資を行ってまいります。

3. AxelGlobe事業

 AxelGlobe事業においては、衛星機数増加による撮影能力の増強、高分解能衛星の投入、データ利用を加速させるための特定産業向けのソリューションの強化の3つの軸で成長を目指してまいります。

[1]中分解能衛星「GRUS」の撮影能力の増強

 AxelGlobe事業のサービス強化については、2027年5月期には中分解能衛星「GRUS-3」を最大7機追加し、同一地点をほぼ同一時刻に毎日撮影可能なコンステレーションの構築・運用を行うことを計画しております。「GRUS-3」は地上分解能2.2mの画像の撮影が可能で、1機あたりの観測幅は28.3km、最長観測距離は1,356km、7機合わせて1日に最大230万km²を撮影する能力を有します。また、人の目が捉えることができる色彩のほか、植物の生育状況や沿岸域の藻場や地形などを観測できるセンサーを搭載しています。この撮影能力の増強により、特定のエリアを指定して撮影する当社のタスキング技術と組み合わせ、現在の5機体制では撮影し切れないような広い面積を短期間で観測したいといったニーズに応えるサービスの提供を可能にします。

 なお、「GRUS-3」に使用する汎用バスシステムや望遠鏡の性能の検証のため、2025年6月24日(日本時間)に小型衛星「GRUS-3α」を打上げました。打上げ同日にファーストボイスを受信後、軌道上での健全性を確認するためのクリティカル運用も終了し、現在は初期運用を行っております。

2025年6月24日(日本時間)に打上げた「GRUS-3α」フライトモデルとミッションパッチ

(フライトモデルは当社グループのクリーンルームで撮影)

2025年6月24日(日本時間)に打上げられたFalcon 9 (左)と搭載されたGRUS-3αを含むペイロード ©SpaceX

2027年5月期に打上げ予定の「GRUS-3」の提供価値とミッションパッチ

[2]高分解能衛星の投入

 2028年5月期以降、高分解能衛星3機による画像サービスをAxelGlobe事業のサービスラインナップに加えることを計画しております。この高分解能画像は、将来的には地上分解能50cm以下の実現を目指しており、現在商用で手に入る衛星画像の中でも大型衛星に比肩する高い分解能を持つことになります。高分解能画像サービスは官公庁を中心に様々な用途での利用が見込まれます。加えて、これら中分解能衛星と高分解能衛星を組み合わせて運用し、広域・高頻度の観測データから関心地点を特定・抽出し、高分解能の観測データからその地点の詳細な観測を行う協調運用(Tips&Cue)の実現を目指します。

 現在このような協調運用を同一のプラットフォームで展開している事業者は存在しておらず、異なる種類のデータを組み合わせたシナジーを効かせたサービスを提供することで、地球観測プラットフォームとして高い競争優位性を持つと考えております。

[3]データ利用を加速させるための特定産業向けのソリューションの強化

 衛星データを提供する事業者の数は増えており、衛星データ販売事業への参入障壁は下がってきておりますが、衛星データは地理空間情報データ(GISデータ)の一部であり、GISデータの取扱い経験が求められます。また近年ではコンピュータビジョンといった画像情報のソフトウエア等の取扱い経験も求められます。このため衛星データを届けるのではなく、解析等を実施し、その結果をサービスとして提供する、又は衛星データを含む複数のデータソースを組み合わせて解析した結果をサービスとして提供するような事業者が出てきています。現時点ではこのようなデータ解析の企業については、個々の案件に応じたコンサルティング性が高いものと考えております。

 また、衛星は軌道上で物理法則に従った運動をしており、いつどこに存在していたかを一意に特定することができるため、ドローン等と異なり特定の場所を特定のタイミングで撮影したという事実を証明可能です。この特性と改ざん防止技術等とを組み合わせることにより、撮影した画像について、証拠能力を持たせることが可能となる特徴もあります。これらの特徴を活かしてより多くの産業での衛星データの利用促進を図るため、ソフト面での取組みも加速してまいります。具体的には、報道、金融、環境といった産業を中心に、ニーズに合わせ画像分析・情報抽出機能を組み合わせたり、撮影権をサービスに組み込むことにより、付加価値の高いソリューションとして顧客にサービス提供できるよう、研究開発及び事業パートナーとの協業を積極的に進めてまいります。

4.パイプライン

 現在、AxelLiner事業は政府系機関案件を中心とした複数の一定期間にわたるパイプラインを有しております。また、AxelGlobe事業においては、政府系機関や地方自治体、国内外の民間企業の個別撮影オーダーをはじめ、複数の一定期間にわたるパイプラインを有しております。今後当社が受注を想定する主なプロジェクトは以下のとおりであります。

事業

顧客

プロジェクト*1*2*3

プロジェクト

想定期間*1*2*3

AxelLiner事業

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

地球規模の宇宙通信インフラ構築の衛星光通信ネットワーク技術の開発・実証

~2032年5月期

AxelLiner事業

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

超小型衛星コンステレーション技術開発実証事業*4

~2027年5月期

AxelGlobe事業

経済産業省

多種衛星のオンデマンドタスキング及びデータ生産・配信技術の研究開発

~2027年5月期

AxelGlobe事業

防衛省

画像データの取得 (その11-2)*5

~2026年5月期

AxelGlobe事業

民間企業 *6

宇宙状況把握(SSA; Space Situational Awareness)

-

*1:プロジェクトについては、契約締結済み又は一部契約締結済みのものが含まれております。

*2:ステージゲート審査(中間評価)、その他の事情により案件が頓挫した場合、その時点以降の未契約分の売上が計上されない可能性があります。

*3:契約締結済みのプロジェクトについては、ステージゲート審査(中間評価)、プロジェクトの失敗や中止等の事情により想定した金額及び時期で売上が計上されない可能性があります。また、単年ごとに契約を更新するプロジェクトについては、プログラム自体が取りやめられる場合には契約が更新されない可能性があります。

*4:本プロジェクトは、NEDOが実施する「超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援」です。2021年度~2022年度は経済産業省が実施し、2023年度~2026年度はNEDOに引き継がれております。毎年度補助金の上限が通知される方式で、2026年度まで交付が決定しています。本プロジェクトによる収入は、営業外収益(補助金による収入)として計上されるものであります。金額は、本プロジェクトの補助対象経費の額に対して補助率が3分の2とされております。

*5:本プロジェクトは、防衛省情報本部「令和6年度契約分入札情報 第256号 画像データの取得(その11-2)」です。

*6:契約先の収益に係る情報のため個社名は非開示となります。本プロジェクトは、プロジェクト期間が決まっておりませんが、今後も継続的な役務提供が見込まれています。

 また、本図表には将来情報が含まれています。

 また、今後獲得を目指す主なプロジェクトとして、宇宙戦略基金(第一期、第二期)を活用した軌道上実証支援プロジェクト、安全保障領域のプロジェクト、JAXA「革新的衛星技術実証プログラム」、民間企業とのスラスター実証プロジェクトなどがあります。軌道上実証プロジェクトは、宇宙戦略基金(第一期)における「衛星サプライチェーン構築のための部品・コンポーネント開発・実証」というテーマが本プロジェクトに関連しており、本テーマは、当社自身が採択されるものではなく、採択された企業の実証ニーズがAL Labの顧客ターゲットになり得るという観点で、当社が獲得を目指すプロジェクトとして認識しております。現時点では口頭での協議を行っている初期段階で契約未締結の段階であり、実際に受注できることを保証するものではありませんが、既に複数の顧客ターゲットと軌道上実証支援に係る協議を開始しております。

 JAXA「革新的衛星技術実証プログラム」は、具体的にプロジェクトは開始していないものの、政府系機関より公表済のプログラムであり、小型衛星開発において国内で実績のある当社が十分狙い得るプロジェクトとして想定しております。現時点で5号機までの実証テーマの公募が予定されております。

 また、民間企業とのスラスター実証プロジェクトについては、実際に受注できることを保証するものではありませんが、現時点では契約等の条件について交渉を行っております。

(3) 経営環境

 当社グループが属する経営環境には、以下のような特徴があります。

 当社グループが属する民間宇宙利用の分野では、「最後のフロンティア」として次なる成長産業としての期待が強く、欧米を含めた世界各国での宇宙スタートアップの設立、政府主導のプログラムの組成及びユーザーとしての宇宙利用の拡大など、民間企業や民間投資を巻き込んだ宇宙開発・利用活動が活発化しています。日本においても民間事業者による宇宙開発・利用を推進していくため、2016年11月には「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(通称:宇宙活動法)」や「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(通称:衛星リモートセンシング法)」が成立し、民間事業者による更なる宇宙ビジネスの拡大を推進すると同時に、安倍内閣総理大臣(当時)を本部長とする宇宙開発戦略本部による、宇宙ベンチャー成長のための1千億円の資金枠が設定されました。また直近では、2023年4月に自由民主党から日本政府に対し、宇宙関係予算の規模について年間1兆円を目指すべきであるという提言「宇宙の安全保障構想と新たな宇宙基本計画にむけて~国家宇宙戦略の策定とSXの実現~(令和5年3月28日)」がなされたほか、2023年12月には国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法の一部が改正され、10年で総額1兆円規模の支援を行うことを目指す宇宙戦略基金が組成。第一期、第二期それぞれで3,000億円が予算に組み入れられました。また、防衛省により令和7年度予算にて公表された衛星コンステレーションの構築(2,832億円)で光学衛星・SAR衛星の活用が明記され、安全保障分野も含めて宇宙産業の急速な拡大が予測されております。このような環境の中、当社グループの手がけるAxelLiner事業及びAxelGlobe事業においても、持続的な成長を見込んでおります。

 当社グループのAxelLiner事業は、多様なミッションに対応可能な小型衛星を開発・製造・運用するサービスを提供することにより社会に存在する様々な宇宙利用ニーズに応える、いわゆる宇宙産業における製造分野の一つとされています。この人工衛星の分野については宇宙利用の拡大に伴い全世界で市場規模が拡大しており、2014年から2023年の10年間で340億米ドル規模だった小型衛星市場は、2024年から2033年の10年間で1,133億米ドルに成長すると見込まれております(Novaspace社 Prospects for the Small Satellite Market, 10th edition, 2024)。この内、AxelLiner事業が含まれる小型衛星製造の市場も2014年から2023年の10年間で238億米ドル規模から、2024年から2033年の10年間で797億米ドルと3倍以上に成長することが見込まれております。

 サイズ別の小型衛星製造市場規模

*1:出所:Novaspace「Prospects for the Small Satellite Market, 10th edition, 2024」BY MASS CATEGORY, manufacturing value。ただし、記載内容は当該市場予想が合理的な根拠に基づくものと当社内で適切な検討を経たものでありますが、その予測統計モデルは、複数の予測手法と重要性による加重を組み合わせて設計されており、その達成を保証するものではありません。

*2:Total Addressable Market

*3:2024-2033年平均TAMは、当該期間の合計額より年数を除して算出(4,579=(34,249+11,545)/10)

 我が国においても2023年に改訂された宇宙基本計画において、人工衛星製造を含む宇宙産業を日本経済における成長産業とするため、2020年に4兆円となっている市場規模を2030年代の早期に2倍の8兆円に倍増させることを目標とすると謳われており、政府が率先して研究開発補助や宇宙データ利用促進施策を推進するなど、特にスタートアップ企業向けに強力な支援が行われております。

 また、当社グループが展開するAxelGlobe事業は、人工衛星のデータを利用・解析することにより、様々な業界で用いられる「地球観測衛星データサービス市場」の一つとされています。この「地球観測衛星データサービス市場」は全世界で市場規模が拡大しており、2023年には5,023百万米ドルだった市場が2033年には7,929百万米ドルまで拡大することが見込まれています。地球観測衛星データサービス市場の中でも光学衛星は最大規模を誇ります。当社の事業領域である中分解能及び今後当社が打上げを予定する高分解能衛星の市場規模と合わせると、2024年から2029年までの累計で約3.5兆円の市場規模に拡大すると見込まれております(Novaspace社 Earth Observation Data & Services Market 17th Edition, 2024)。

 地球観測衛星データサービス市場規模の推移

*1:出所:Novaspace社「Earth Observation Data & Services Market 17th Edition, 2024」。市場規模には光学衛星、SAR衛星の市場規模を含みます。ただし、記載内容は当該市場予想が合理的な根拠に基づくものと当社内で適切な検討を経たものでありますが、各国の宇宙予算を算出・推計するために、政府公式発表に加え専門誌やマスメディアの情報、推計も含まれており、その達成を保証するものではありません。

*2:「Value Add Service(VAS)」は、アドバンスド・キャリブレーション(より高度な画像校正)や画像修正、付加的な分析サービス市場のこと。

*3:「Data」は、衛星画像市場及び衛星画像データの基礎加工プロセス市場のこと。

*4:2023-2033年平均成長率は当該期間の年数を除して算出(4.7%=(7,929/5,023)^(1/10)-1)

 衛星タイプ別のデータ・分解能別の市場規模

*1:出所:Novaspace社「Earth Observation Data & Services Market 17th Edition, 2024」。出所に記載がある市場規模元データを1ドル150円で換算。ただし、記載内容は当該市場予想が合理的な根拠に基づくものと当社内で適切な検討を経たものでありますが、その達成を保証するものではありません。

*2:Commercial Data & VAS (Value Add Service) revenues

*3:1mから10m程度の地上分解能を中分解能 、1mから50㎝程度の地上分解能を高分解能、50㎝未満を超高分解能と定義。

 我が国においても宇宙基本計画の中で「衛星利用による宇宙ソリューションビジネスの海外展開強化や、衛星データの利用拡大、担い手の拡充等を図っていく。」(宇宙基本計画、令和5年6月13日、p.25)、「官民によるリモートセンシングデータの利用を加速していくため、政府によるリモートセンシングデータのサービス調達を、民間に率先して一層推進する。」(宇宙基本計画、令和5年6月13日、p.28)と述べられており、データ利用省庁等によって構成される「衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォース」の活動など、日本政府の支援の下、更なる発展が見込まれております。これは世界的な動きだけでなく、激甚化する災害への対応や少子高齢化・デジタル化に伴う業務効率化の要請に後押しされているものと考えております。

 衛星データの利用に関しては、「衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォース」に出席する省庁が宇宙を所管する内閣府だけでなく、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省など幅広い省庁からの出席者があることからもわかるように、業界横断的な幅広いユーザーニーズが存在します。これらのニーズのうち、当社グループがサービスを提供する中分解能衛星画像及びその解析データについては、その撮影面積の広さから、幅広い国土の管理及び農林水産業について特に強みを有しており、担い手の減少・集約管理のニーズに応える形で利用シーンが拡大する余地があると考えております。加えて今後参入を行う予定としている高分解能衛星画像においても近年の国際情勢の変化に伴い国内外の政府系機関を中心にニーズが高まっており、サービスイン以降、AxelGlobe事業の売上拡大に寄与するものと考えております。

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループでは、2027年5月期に打上げ予定の「GRUS-3」等の開発・製造・運用技術、AxelLiner・AxelGlobe両事業における研究開発の先行投資により、継続的に営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローを計上している状況にあり、当連結会計年度末において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。当該事象又は状況を解消し、かつ今後、当社グループが事業拡大を遂げていくために事業上及び財務上対処すべき課題並びに対処方針は以下のとおりであります。

①収益基盤の強化

 当社グループの売上高の柱である、AxelLiner事業並びにAxelGlobe事業において、更なる収益基盤の強化は重要な経営課題と認識しております。そのためAxelLiner事業に関しては、多様なニーズに応えるべく、継続的な研究開発の実施により性能向上を図りながら、複数のプロジェクトを並行して推進できるよう、UX革新、及び衛星開発プロジェクトの短縮化と省力化の鍵となるソフトウエア「AxelLiner Terminal」の開発の加速及び衛星量産体制の着実な整備を進めてまいります。併せて営業体制を強化し、本格的に営業活動を推進してまいります。

 AxelGlobe事業では、国内外において衛星画像販売代理店・衛星画像解析事業者とのパートナー契約を増やし、販路拡大を推進してまいります。加えて、これまで衛星データ活用が進んでいない業界向けの新プロダクト開発を当該業界の事業パートナーと共に積極的に推進し、ソリューションとしての利用普及を図ってまいります。

②人材の確保及び育成

 当社グループのビジョン・ミッションに共感し高い意欲を持った優秀な人材の採用、及び人材育成は重要な事業上のテーマであると認識しています。そのため多様な働き方の整備、会社負担による婦人科健診の推奨・有給休暇付与の拡大・継続勤続年数に応じたボーナス休暇の付与などの福利厚生の充実、社内教育制度の充実、透明性のある評価制度の構築等、従業員が高いモチベーションをもって働くことのできる環境の整備を継続して推進してまいります。

③ガバナンス及び内部管理体制の強化

 当社グループは、持続的成長を遂げるための業務執行とガバナンスのバランス、及び経営上のリスクを適切にコントロールするための内部管理体制の強化が重要であると認識しております。そのため、社外取締役等への報告体制の強化、内部監査担当、監査役及び会計監査人による実効性のある三様監査を実施するとともに、役職員向けのコンプライアンス研修の実施等を通じた個々人の知識・能力の向上や、定期的な内部監査を継続して実施してまいります。

④財務上の課題について

 将来的に安定した事業収益化を目指す過程で、顧客基盤の拡充・人工衛星技術開発への継続的な先行投資が必要であり、そのための必要資金を機動的かつ確実に確保することが重要です。当社グループでは、現状、先行投資フェーズであり、継続的な投資を行っていることから、過去継続して営業赤字かつ営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスを計上しております。

 当社グループではこれまで、第三者割当増資、金融機関からの借入、政府補助金等で資金調達を実施してきましたが、今後も機動的な資金調達の可能性を適宜検討してまいります。

 当社グループでは手元流動性確保のため、総額62.4億円の第三者割当増資による調達を2023年12月に実施しております。また、以下のとおり第三者割当増資、金融機関からの借入等で資金調達を実施してきており、また今後も機動的な資金調達の可能性を適宜検討してまいります。

 2023年6月:株式会社三井住友銀行と極度借入2,000,000千円の借入契約を締結

 2023年12月:総額6,240,597千円の第三者割当増資による調達

 2024年9月:株式会社みずほ銀行と借入枠2,000,000千円の借入契約を締結

 2025年3月:株式会社三井住友銀行と4,000,000千円の借入契約を締結

 2025年8月:東京証券取引所グロース市場に株式を上場。公募による新株式の発行により、7,128,010千円の資金調達を実施

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、以下を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として定めています。

・売上高

 当社グループ全体では、企業価値の継続的向上に向けて、利益の確保が重要であるため、経営指標として売上高を重視しております。

・総収入

 中期的には当社グループ全体の収入において、補助金収入が一定の比率を占めることから、売上高と補助金収入を合算した総収入を当面は重要な指標として管理することとしています。

・衛星打上げ機数(AxelLiner事業)

 AxelLiner事業においては、実証衛星としての打上げ機数を重視しており、2025年5月期から2028年5月期までの間に累積6機の人工衛星の打上げを目指しております。実証衛星の打上げ機数が増加することで、衛星開発の製造過程における知見・量産化技術を蓄積し、当社グループの人工衛星製造の開発効率・製造コストの低減に繋がります。

 なお、AxelLiner事業において目指す多様なミッションに対応可能な汎用バスシステムの確立並びにUX革新及び衛星開発プロジェクトの短縮化と省力化の鍵となるソフトウエアが完成し、定期的に衛星打上げが実施可能になった後は、KPIとしてはプロジェクト件数を使用することを予定しております。

・衛星運用機数(AxelGlobe事業)

 AxelGlobe事業では、衛星コンステレーションの運用機数を重視しており、2028年5月期末までに14機を運用することを目指しております。運用機数が増加することで、撮影頻度・撮影範囲の増加が可能となり、当社グループの収益への貢献度が比例的に増加いたします。

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