岩崎通信機 【東証スタンダード:6704】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ基本方針
私たちは、企業理念のもと、人やモノを繋ぐコミュニケーション技術の提供により
企業や企業で働く人々の成長・発展を支援し、
持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します
(2) マテリアリティの特定
気候変動の激化、少子高齢化、デジタルトランスフォーメーションの進展など、外部環境は複雑化し、また社会課題は顕在化・深刻化しています。
このような社会状況を受け、岩通グループはESG経営を加速させるべく、事業及びバリューチェーン上の将来課題の抽出を行い、「ステークホルダー」と「自社事業」の2つの観点で重要度について評価し、「IWATSUの強み」を踏まえたマテリアリティを特定しました。
今後は、これらの取組を通じて社会課題解決に向けた活動をさらに加速させ、長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
(環境)
① 持続可能性を考慮した調達活動の推進
私たちは、気候変動に伴う災害に強く、紛争や人権に配慮したサプライチェーンを構築し、運用することを継続的に取り組み、脱炭素の推進とサプライチェーンに関わる全ての人々の豊かさの維持・拡大に貢献します。
② 環境配慮型製品・サービスの提供
私たちは、計測技術により世界の省エネルギー機器開発を支えることを通じて、地球環境の保全に貢献します。また、それらの技術・製品を生態系への負荷の少ない環境配慮型とすることに継続的に取り組むことでお客様への環境貢献を果たしていきます。
③ 事業所活動における環境負荷の低減
私たちは、従来から取り組んでいる環境汚染物質の低減に加え、再生可能エネルギーの積極的利用や資源循環の仕組み構築を図ることにより、事業活動における環境負荷の低減を進め、地球環境の保全に貢献します。
(社会)
④ 「つながる」「はかる」「つたえる」を軸とした製品とサービスによる社会の進歩発展
「つながる」「はかる」「つたえる」を軸とした人やモノを繋ぐコミュニケーション技術について継続的に技術革新を行い、よりよい機能と品質をお客様に広く届けることで、お客様・社会の問題解決に貢献します。
⑤ ダイバーシティの尊重と従業員の働きがいの向上
私たちは、従業員の人権・多様性を尊重するとともに、健康管理や人財育成の機会を提供することを通じて、社員一人ひとりが資質を最大限発揮し、生き生きと働くことができる環境の整備に努めます。
⑥ 地域社会とのコミュニケーションと共生の推進
私たちは、地域行政との連携、チャリティーイベントへの積極参画などにより、企業を支えてくださる地域社会との共生を継続的に推進します。
(ガバナンス)
⑦ 企業価値向上に向けた透明性・信頼性の高いバナンス体制の構築
私たちは、コーポレート・ガバナンスを強化し、社会やステークホルダーに信頼される公正で透明性の高い経営を実現します。
(3) サステナビリティ
① ガバナンス
岩通グループは、気候変動に始まる自然環境問題やビジネスに関する人権リスクや多様性といった人的資本に関する問題をサステナビリティ経営推進のための重要課題と捉えており、これらの課題に関するリスク及び機会を特定し、その対策や取組を社長を委員長としたESG委員会で議論を踏まえて決定しています。また、同委員会の内容は取締役会に報告され、経営に関するリスク及び機会として、その対応について意思決定をしています。
② 戦略
(リスク・機会の特定プロセス)
岩通グループの事業は、「情報通信事業」「電子計測事業」「印刷システム事業」の大きく3つから構成されており、それぞれの事業及びサプライチェーンにおいて想定されるリスク・機会が異なることから、事業別にリスク・機会の抽出及び特定を実施しています。
岩通グループにおける気候変動に関するリスク及び機会の抽出、2030年時点での財務影響評価については、事業別・ステークホルダー別に次の観点を設定し、検討しました。
移行リスク(1.5℃シナリオ)
・政策規制:GHG排出に関する規制強化
・市場:エネルギー需給の変化/低炭素製品の需要変化
・技術:次世代技術の進展・普及
・評判:ステークホルダーの評判変化
物理リスク(4.0℃シナリオ)
・慢性:地球温暖化による環境変化
・急性:自然災害の激甚化
(特定した事業への気候変動リスク・機会)
岩通グループは、気候変動について1.5℃、4.0℃の2つのシナリオ分析を実施し、事業別のリスク・機会の抽出を行っています。抽出結果に基づいて特定した当社への気候変動によるリスク・機会は表1のとおりです。
移行リスクとして、主要事業において、サプライヤでの部品・材料の製造等からユーザーの製品使用まで、多くの電力を使用することから、「GHG排出に関する規制強化」や「エネルギー需給の変化」、「低炭素製品の需要変化」に基づくリスクと機会が主と想定しています。また、物理リスクとしては、気候変動関連災害による工場・事業所への影響を主なリスク・機会として捉えました。
表1 特定した事業へのリスク・機会及び対応策
気候変動リスク 機会の分類 | シナ リオ | 気候変動により 想定される影響 | 対応策 | ||
移行リスク | 政策規制 | ・GHG排出に関する規制強化 | 1.5℃ | ・顧客のCO2排出量削減要求やカーボンプライシング導入に伴う開発コストの増加 ・顧客のCO2排出量削減要求等に適切に対応できない場合の取引停止、事業機会の損出 ・炭素税導入に伴うエネルギー使用コストの増加 | ・製品の省エネルギー化推進とその実現による事業機会の獲得 ・老朽設備の更新及び最新機器の導入によるエネルギー使用量の削減 |
技術 | ・エネルギー需給の変化 | ・燃料の高騰及び再生可能エネルギー比率増加による燃料費/電気代の増加 | ・省エネルギー化推進及び再生可能エネルギー発電設備の導入 | ||
市場 | ・次世代技術の進展 普及 | ・部品/材料の低炭素化対応に伴う調達価格の上昇 | ・調達方法及び設計の見直しによる長期的なコストダウン施策の実施 | ||
物理的リスク | 慢性 | ・地球温暖化による環境変化 | 4.0℃ | ・熱中症、気候変動起因疾病及び体調不良者の増加 | ・空調の見直しを主とした労働環境の再整備 |
急性 | ・自然災害の激甚化 | ・自然災害による工場 事業所の操業停止又は稼働率低減による売上高の減少 | ・災害発生シミュレーションの実施及び災害対応マニュアルの整備 | ||
機会 | 政策規制 | ・GHG排出に関する規制強化 | 1.5℃ | ・顧客のサプライチェーンガイドライン及びカーボンプライシングへの早期対応による競争力の強化 | ・サステナビリティ調達ガイドラインの制定及び製品アセスメントの強化による環境配慮型製品の開発推進 |
市場 | ・低炭素製品の需要変化 | ・電気自動車(EV)等パワー半導体使用機器の普及に伴うパワーエレクトロニクス計測器の需要増加 ・パワーエレクトロニクス計測器の市場拡大に伴う多様なニーズの発生 | ・当社パワーエレクトロニクス計測器の性能向上及びラインナップの拡充 | ||
・新世代技術の進展 普及 | ・先進的な省エネルギー技術の確立及び普及 ・顧客要求が高いSBT認定取得による当社の評価向上 | ・新たな省エネルギー技術を当社製品に取り入れることによる商品力の向上 ・SBT認定取得及びCO2削減目標達成施策の実施 |
(気候変動のリスク・機会により想定される財務インパクト)
岩通グループは、気候変動に関する1.5℃、4.0℃シナリオで想定した気候変動リスク・機会が表出した際に想定される財務的インパクトを次のように想定しました。
4.0℃シナリオでは、物理的リスクのうち特に「急性リスク:自然災害の激甚化」を、1.5℃シナリオでは、移行リスクのうち特に「政策規制:GHG排出に関する規制強化」による製品のCO2排出量削減のための開発費の増加、炭素税による課税及び「技術:エネルギー需給の変化」に伴うエネルギー価格の高騰による収益性の変化を想定しました。
③ リスク管理
(気候変動リスク・機会の評価)
岩通グループは、気候変動に関するシナリオ分析により特定した「政策規制」、「技術」、「市場」、「ステークホルダーの評価」に関する移行リスクと「慢性」、「急性」の物理リスクについて、表2に示す「影響度」と「可能性」の2つの視点で評価しています。
表2 影響度、可能性の評価
岩通グループは、評価した気候変動リスク・機会から重要なものを選択し、それらに対する対応策を、「実現可能性」と「効果度合」の観点から評価し、現実的かつ効果的な取組を優先して、その内容を決定しています(表1参照)。
(気候変動リスク・機会の管理)
岩通グループは、環境マネジメントシステムを通じた気候変動に関する最新情報のモニタリングを行い、ESG委員会において事業活動の変化を考慮し、リスク・機会、影響度などの見直しを適宜実施します。
(気候変動リスク・機会の全社的リスク管理への統合)
岩通グループは、気候変動の全社的なリスク・機会をESG委員会にて分析・評価し、取締役会に報告します。決定された気候変動リスク・機会は、人権などの他のサステナビリティに関わるリスクとともに経営層の指揮のもと、全社的なリスク管理プロセスへと統合し、リスクの低減及び機会の獲得に向けた対応策を実行しています。
④ 指標及び目標
目標:カーボンニュートラルへの取組を推進
岩通グループは、SBTの1.5℃水準(Scope3排出量についてはWB2.0℃)を遵守し、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を下記のとおりとします。
・Scope1、2排出量については2020年度比42%低減(年率4.2%低減)
・Scope3排出量については2020年度比25%低減(年率2.5%低減)
Scope1及び2削減目標
Scope3削減目標
Scope1及び2排出量実績
Scope3排出量実績
(4) 人的資本
① 戦略
当社グループでは、「人」とは財産であり、人財の多様性の確保とそれら人財の育成が中長期的な企業価値向上につながるという認識のもと、女性や様々な経験を持つキャリア採用者など、多様な人財の確保に努めるとともに、それぞれが持てる能力を最大限発揮できるよう社内環境の整備や人財育成を推進しています。
② 指標及び目標
人財の多様性の確保を含む人財育成や社内環境整備等については、グループ各社それぞれの業種・業態に適した取組を推進しており、当社の指標及び目標等については以下のとおりとなります。
a.人財の多様性の確保等に関して
人財基盤の強化や異なる価値観を取り入れることによる組織の活性化等を目的に、経験者採用や女性社員の採用及び活躍推進に取り組んでいます。
(a) 経験者の採用について
当社では、総採用数の30%~50%の割合を確保できるよう、人員構成なども考慮した上、今後、より積極的な経験者採用活動を行ってまいります。
| 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
経験者採用比率 | 50.0% | 18.2% | 33.3% |
(b) 女性社員の採用及び活躍推進について
当社では、総採用数の30%の割合を確保できるよう女性の積極的な採用を実施していくとともに、2030年までに女性管理職比率10%の達成を目指します。
また、女性の活躍をさらに推進するためには、ライフイベントとビジネスキャリアを両立できる環境が必要であると考え、テレワーク、時差出勤制度、時短勤務制度といった柔軟な働き方を実現する各種制度の整備等に取り組んでいます。
| 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
総採用数における女性社員採用比率 | 27.3% | 27.3% | 33.3% |
管理職社員全体における女性管理職比率 | 2.5% | 2.7% | 3.4% |
b.人財育成に関して
当社では、階層別教育や各種自己啓発の支援等の全社的な教育プログラムに加え、各部署における業務に関連した専門的な教育、マネジメントシステムやサステナビリティに関する教育等を実施しており、事業目標の達成に寄与する人財の開発や育成を推進しています。
今後、若年層社員の業務スキル向上や知識習得を強化するなど、1人当たりの教育時間が前年度以上になるよう人財育成に取り組んでまいります。
| 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
1人当たりの教育時間 | 13.3h | 9.7h | 7.2h |
(注)1人当たりの教育時間は、当社における、階層別教育、各種自己啓発、各部署における業務に関連した専門的な教育、マネジメントシステム、サステナビリティに関する教育時間を当該年度で集計し、当該年度の総労働者数で除して算出したものです。
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