伯東 【東証プライム:7433】「卸売業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針・経営戦略等
当社グループは、2021年4月に4ヶ年の中期経営計画「Change & Co-Create 2024」を公表し、エレクトロニクス商社とケミカルメーカーの複合企業として、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、収益力の向上や新規事業の展開などの経営課題に取り組んでまいりました。
新型コロナウイルス感染症対策の緩和・撤廃と社会・経済活動が正常化に進む一方、ウクライナ情勢やインフレリスクによる金融引き締め策による不透明な状況が続いている中、当社グループは本計画にて掲げた事業構造改革による効果に加え、主力事業を展開しているエレクトロニクス業界において、自動車向け半導体並びに産業機器向け半導体及び半導体製造装置の堅調な推移により、2021年度、2022年度共に当初計画の定量目標である連結営業利益50億円以上を達成いたしました。本計画の折り返し地点に際し、成長を維持するため、以下の通り定量目標の見直しを行い、本計画にて掲げた全社戦略並びに事業戦略の遂行・浸透により、更なる企業価値の向上に努めてまいります。
(定量目標)
本計画の最終年度となる2024年度(2025年3月期)における見直し後の定量目標は以下の通りです。
経営指標 | 当初計画 | 見直し後 |
連結営業利益 | 50億円以上 | 90億円以上 |
連結営業利益率 | 3.0%以上 | 4.5%以上 |
ROE | 6.0%以上 | 9.0%以上 |
その他の項目は当初に公表した全社戦略、事業戦略を踏襲しており、2022年度の本計画に基づく取り組み状況は以下の通りです。
全社戦略 | ・新規事業開拓のためのプロジェクトチーム立上げ ・事業間連携を通じた情報共有の強化 ・収益性の高い事業への人員シフト ・DX推進強化 ・新人事制度移行 | |
セ グ メ ン ト 別 戦 略 | 半導体デバイス事業 | DX推進による収益性の改善 |
電子コンポーネント事業 | 他事業顧客へのクロスセルによる販路拡大 | |
電子・電気機器事業 | 自社ブランド品強化による収益性改善 | |
工業薬品事業 | 環境ビジネスの案件絞り込みによる引合い活発化 | |
海外事業 | 環境、ヘルスケア、ロボット等の新規事業立ち上げ | |
定量目標 | 連結営業利益127億円、連結営業利益率5.4%、ROE14.2% | |
株主還元 | 配当金総額53億円、自己株式の取得33億円、総還元性向96.2% |
計画策定時及び前期からの外部環境の変化は、新型コロナウイルス感染症対策が「ウィズ・コロナ」へとシフトする動きが見られ、海外からの入国制限の緩和や全国旅行支援の再開など、各種経済活動の活発化が期待されておりますが、一方ではロシアによるウクライナ侵攻の長期化、それに伴う食料・エネルギー価格高騰や、インフレリスクに対応する各国の金融引き締め策による不透明な状況が続いております。
エレクロトロニクス分野では、半導体の需給逼迫によるサプライチェーンの混乱や景気後退リスクによる顧客の在庫調整等がありましたが、車載関連、産業機器関連を中心とする高い需要に支えられ、仕入先からの供給も前期に比べ改善したことにより、販売が大きく伸長しました。また、円安の影響による外貨建て取引の収益改善効果もあり、定量目標を大幅に上回る結果となりました。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、各事業における存在意義や付加価値の低下、あるいは成長性の鈍化を優先的に対処すべき事業上の課題と認識しております。2022年度は旺盛な半導体需要と円安の影響など外部環境によるプラス効果も加わり、前期に引き続き収益性が改善いたしましたが、中期計画における目標は、いかなる環境下においても持続的な成長力と安定した収益力を確保できる企業体質への転換であると考えております。折り返しを迎えた中期経営計画3年目となる2023年度は、見直した定量目標を確実に達成するべく、以下の課題に取り組んでまいります。
①成長を加速させる事業の創出
成長性の確保が課題となっている電子・電気機器事業においては医療・レーザー関連の新規事業の立ち上げ、工業薬品事業においてはエレクトロニクス産業向けの製品開発に注力するとともに、ローカルビジネスの拡大が課題となっている海外事業においては、環境やロボット分野の事業化を進めてまいります。また、ノンオーガニックな成長を実現するために事業企画室を新設し、全社横断的に成長を加速させる事業の創出に取り組んでまいります。
②資本コストを意識した経営の実践
収益性の向上が課題となっている電子部品事業においては、資本効率の観点より取扱商品や人員配置の見直しを進め、収益力の確保と投下資本の削減を図ります。また、バックエンドのDXにより物流及び事務部門の業務プロセスの効率化を推進するとともに、顧客起点の価値創出の実現に向けたフロントエンドのDXにも取り組んでまいります。
③サステナビリティ経営の推進
気候変動や人権問題などのESG経営の重要課題については、当社グループ全体で横断的に対処する体制を整備するとともに、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に沿った情報開示の充実にも努めて対応まいります。また、2022年4月に施行を開始した新人事制度の浸透や海外子会社の人事制度の改定により、変革を担う人材の定着及び採用を促進し、サステナビリティ経営に資する人的資本経営の実践及び高度化に取り組んでまいります。
各事業セグメントにおける優先的に対処すべき事業上の課題、並びに財務上の課題は以下のとおりであります。
(電子部品事業)
電子部品事業は、当社グループにおいて最大の売上規模があり、また、過去5期においても順調に売上高を伸ばしております。また、セグメント利益も前期に引き続き外貨建て輸出取引の為替影響等の外的要因により伸ばしております。同事業の売上高の8割超を占める半導体デバイス部門は近年車載分野や5G通信分野などにおいて積極的に商権を拡大してきたものの、一方では仕入先・得意先の再編による大規模化により、その間に挟まれる商社の交渉力や役割が低下しているという外的要因に加えて、得意先のニーズを踏まえた提案営業やそれに対応できる組織化及び技術で対価を得る仕組み化の途上であり、また、低採算商権の移管受入などもあり、低収益の要因になっていたものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、従来の単品販売ビジネスから「情報力×技術力×提案力」で対価を得るソリューションビジネスへの進化を志向することにより、存在価値を高めて収益性の向上を目指すこと、また、組織については、半導体ビジネス部門と電子コンポーネント部門間の情報共有化をさらに進め、従来の仕入先別縦割り組織から特定顧客向けのクロスセルの販売体制を整備して効率的な営業体制へ再編するとともに、労働生産性改善のためにDX・デジタル化による業務効率化とコスト削減を更に推進し、収益改善を図ることと考えております。
(電子・電気機器事業)
電子・電気機器事業は、当社グループにおいては電子部品事業に次ぐセグメント利益を生み出している比較的高収益な事業と位置付けておりますが、過去5期の売上高はほぼ横ばいで推移しております。これは、同事業が取り扱う商品群が最先端のエレクトロニクス技術に基づくため、技術革新による商品の競争力の低下や陳腐化の影響を受けやすいという外的要因に加えて、既存仕入先の販売伸長を支える体制拡充が追い付いていないこと、自前主義での成長を探索する中での自社製品の商品力の強化や海外代理店の開拓の遅れなども成長性鈍化の要因になっていたものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、短期的には新規開拓の仕組みを組織化することにより、既存の事業領域以外の育成を図り、長期的には共同開発やM&Aを通じて、自社ブランド商品の販売を国内・海外で強化するとともに、商品ラインの拡大を図ることで、他社と差別化されたバリューチェーンの確立及びポートフォリオの拡大に取り組むことと考えております。
(工業薬品事業)
工業薬品事業は、当社グループにおいては高収益で特色あるメーカー部門と位置付けておりますが、他のセグメントと比較すると成長性、規模ともに劣後しております。これは、同事業の既存マーケットが主に国内の石油・石油化学産業、紙・パルプ産業であるという外的要因に加えて、メーカーの屋台骨である技術強化投資の不足、新事業展開や海外展開の遅延、注力市場を明確化するためのマーケティング機能や顧客の潜在ニーズ発掘の仕組み不足なども要因になっていたものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、自社技術を活かした新製品の開発に加え、外部機関との共同研究による技術強化や製品開発力の向上により事業領域を拡大し、協業を通じた海外の販路・製造・サービス機能の強化により海外事業展開を進めるとともに、新規事業の創出に取り組むことと考えております。
特に環境ビジネスと化粧品原料ビジネスへの取り組みを強化する方針です。
〔参考〕:過去5期のセグメントごとの売上高、及びセグメント利益(金額単位:百万円)
決算期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
電子部品事業 | 売上高 セグメント利益 | 107,668 1,331 | 123,708 576 | 134,949 919 | 157,119 3,682 | 197,818 10,462 |
電子・電気 機器事業 | 売上高 セグメント利益 | 21,544 1,418 | 18,286 900 | 19,029 1,770 | 21,609 2,104 | 22,717 1,665 |
工業薬品事業 | 売上高 セグメント利益 | 10,886 932 | 11,160 838 | 10,962 890 | 12,300 1,337 | 12,615 849 |
注:2022年3月期より報告セグメントの区分を変更しており、2021年3月期、2022年3月期、2023年3月期については変更後のセグメント区分に組み替えた数字となっております。
また、海外事業においては中華圏・ASEANのエリア統括機能を発揮し、新規事業開拓へリソースを重点配置し、事業の拡大と業務の効率化に取り組んでまいります。
(財務上の課題)
当社グループでは、収益性の向上に加えて、ROE(自己資本利益率)の低位固定化及び運転資本の増大に伴うバランスシートの肥大化への対応なども優先的に対処すべき財務上の課題と認識しております。
そのため、2021年度から2024年度を計画期間とする中期経営計画「Change & Co-Create 2024」では、計画期間中は配当と自己株式の取得による「総還元性向100%」を目標とした株主還元を実施することにより、資本効率や資本コストを意識した経営を実践することを基本方針としております。また、事業面においては、事業セグメントごとに連結ベースのバランスシートを展開して運転資本とROIC(投下資本利益率)を算出し、各セグメントの特性に応じたベンチマークを設定することにより、売上高利益率や資産回転率などの財務指標の改善とフリーキャッシュ・フローの創出を図ることを対処の方向性としております。
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