企業兼大株主リコー東証プライム:7752】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、世の中の役に立つ新しい価値を生み出し、提供し続けることで、人々の生活の質の向上と持続可能な社会づくりに積極的に貢献することを基本理念としております。

 新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延が継続しておりますが、ワクチンの普及等により徐々に経済活動が再開されつつあります。一方で、部材不足の継続やロシア/ウクライナ情勢の長期化等によるインフレの加速等、当社を取り巻く環境は不透明さを増しております。

 その状況の中でも研究開発分野においては、アフターコロナを見据えた変革加速として、「OAメーカーからの脱皮」及び「デジタルサービスの会社への変革」に力をいれてまいりました。

 当社グループの2036年ビジョン「“はたらく”に歓びを」の実現に向け、デジタルサービスの会社として、ワークプレイスを変化させていく商品やサービスを提供してまいります。

 体制面では、CTO(Chief Technology Officer) 及び CDIO(Chief Digital Innovation Officer) の下、社内外でのデジタルとデータを活用した基盤及び価値創出の機能を強化しております。お客様のカスタマーサクセスを当社グループの提供価値と定め、既存ビジネスの深化と新たな顧客価値の進化、及びこれらを持続的に可能にする社内外でのデータ活用基盤、機能を強化しております。グローバルに広がる約140万社の顧客基盤を生かし、デジタルサービスの会社としてさらなる拡大を目指しております。

2021年度より導入された社内カンパニー制下においては、事業ドメインごとのビジネスユニットそれぞれが受け持つお客様・商品ごとに向けたリソースを集約運用するという考え方から、研究開発についても将来に備えた中長期的な研究から直近の製品開発・設計・生産までを一貫として事業分野ごとに集約した体制へと変更しております。

 上記の体制変更に伴い、本社研究開発の役割・内容も変更しております。

 本社での研究領域として、当社の現事業ドメイン以外での中長期的な成長を支える技術戦略として「ワークプレイスではたらく人の働き方を進化させるデジタルツイン」と「マスカスタマイゼーション時代のデジタルプリンティング」の2つの領域を定めました。これらの実現に向けた研究開発及び当社グループの共通基盤技術開発は「先端技術研究所」にて進めております。

 また「RICOH Smart Integration(RSI)」 を支えるデジタル基盤技術の研究開発は「デジタル戦略部」にて進めております。AI/ICT技術の開発や”はたらく”をデジタル化する技術の開発、それらに携わるデジタル人材の育成・強化を担い、デジタルサービスの会社としての拡大を支えております。

 更にこれらの本社研究所の技術開発からの事業インキュベーションはリコーフューチャーズビジネスユニットが担い、早期の事業化に向けて開発体制の強化を行っております。

 研究開発の進め方としては、グローバルに拠点間の連携を深めながらそれぞれの地域特性を活かした市場ニーズの調査・探索、研究・技術開発を行っております。また、世界各地にテクノロジーセンターやカスタマーエクスペリエンスセンターを開設し、お客様のサポートを通じて直接把握したニーズを製品開発へフィードバックする仕組みにより、お客様と一体となった価値共創活動を展開しております。

 オープンイノベーションにおいては、大学・研究機関、企業の力を積極的に活用し、最先端技術の開発を効率的に進めており、当連結会計年度では新たに東京大学や慶応義塾大学等と共同研究を開始しました。

 また、スタートアップ企業や社内外の起業家の成長を支援して事業共創を目指すアクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」を2019年度より実施しております。4年目を迎えた当連結会計年度においては142件の応募の中からコンテストを開催し、そこを通過したテーマには当社グループ内に登録されている約250名のサポーターをはじめとした様々なリソースを活用可能とし、チャレンジする人の支援・育成、新規事業の創出を促進する文化のさらなる醸成を目指しております。

IFRSの適用に伴い、当社グループでは開発投資の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発投資は 107,749百万円です。

(1) デジタルサービス

 当社グループでは、お客様への提供価値を「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」と定め、働く現場のデジタルトランスフォーメーションを支援することで、お客様の業務効率化や生産性向上に貢献しております。

 近年、時間や場所にとらわれない多様な働き方が求められており、当社グループでは、オフィス業務のペーパーレス化だけでなく、企業間取引業務を支援するトレードエコシステム、遠隔機器による現場作業支援、人手不足が課題となっている社会インフラ点検業務の効率化等、様々なワークフローにおいて、デジタルトランスフォーメーションによりお客様の課題解決に貢献できるサービス開発に取り組んでおります。

 当社グループでは、クラウドサービス等と親和性の高いMFPをはじめとした各機器がつながり、お客様がいつでも最新のサービスを利用可能な「RICOH Smart Integration(RSI)」を提供しております。このプラットフォームを活用し、あらゆるワークプレイスではたらく人の創造力を支えるデジタルサービスを提供することで、お客様の成功に貢献し続けます。

 当連結会計年度は、サイボウズ株式会社とOEM業務提携による「RICOH kintone plus」の開発・発売、資本提携等の戦略的協業を進めました。両社のコラボレーションにより、デジタルの力で様々な業務に関わる情報共有や業務プロセスの効率化を支援し、お客様の将来の成長や競争力強化を支え、企業や組織の未来における“はたらく”のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献してまいります。

 また、コミュニケーションサービス、ビデオ会議システムの設計・導入を行い、統合AV(Audio Visual)ソリューションを提供するCenero,LLCの全株式を取得し、コミュニケーション・コラボレーションサービスによる「EMPOWRING DIGITAL WORKPLACES」の提供価値拡大を図っております。

 さらに、日本ガイシ株式会社との電力事業に関する合弁会社「NR-Power Lab株式会社」の事業を開始し、日本ガイシ株式会社が保有するNAS®電池及び蓄電池制御技術と、当社が開発するブロックチェーン技術を活用した再生可能エネルギー流通記録プラットフォームを組み合わせることで、カーボンニュートラル達成に不可欠な再エネの普及拡大のための電力デジタルサービスを提供し、持続可能な社会の実現に貢献しております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

業務改善プラットフォーム「RICOH kintone plus」を日本市場及び米国市場向けに提供開始

~現場のデジタル活用を伴走型でサポートし、中堅中小企業のDX化を加速~

・当社の「RICOH Smart Integration(RSI)」と連携

・当社が中小企業向けのスクラムパッケージや中堅企業向けのスクラムアセットの提供を通じて培ってきた業務改善ノウハウや、これまで「kintone®」を提供するなかでお客様からいただいたご要望をもとに、オリジナルプラグインアプリ、当社製複合機連携機能を追加

オールインワンの印刷インフラソリューション「RICOH Print Management Cloud」の各極での展開を開始

~クラウド化により印刷関連のサーバーレス化を実現~

・プリントサーバーへの依存をなくすことで、集中管理が可能

・ユーザー保護、データ保護、プロセスコンプライアンス、データセンターのセキュリティまで、グローバルなセキュリティコンプライアンスに対応した設計(GDPR、ISO27001、NCSC、OWASP、SOC2)

オフィス、現場、ホームをつなぐクラウドストレージサービス「RICOH Drive」を提供開始

~エッジデバイス・アプリケーションと連携、セキュアなデータ共有で企業のデジタル化を支援~

・ファイル暗号化や通信経路暗号化はもちろん、ユーザーごとのアクセス制限やログ管理等のセキュリティ機能により、社内・社外に関わらず安心してデータを共有可能

・「RICOH Drive」のIDを持たない外部ユーザーとのファイル送受信では、メールアドレス認証とワンタイムパスワードの発行により誤送信を防止

・「RICOH Smart Integration(RSI)」を介して、複合機をはじめとする様々なエッジデバイスやアプリケーションと連携し、お客様の業種や業務ごとのワークフローに合わせた使い方が可能

企業間の商取引の業務を効率化するクラウドサービス群を統合、「トレード帳票DXシリーズ」として提供を開始

~「RICOH Cloud OCR シリーズ」をはじめとする6サービスを統合~

・シリーズ商品同士や他社サービスとも連携し、商取引にまつわる業務フロー全体のデジタル化を提供

・クラウドサービスによる最新法令への常時アップデート

・サービスの運用開始準備から運用の定着まで、お客様に寄り添いながら伴奏型サポート体制を提供

「DocuWareバージョン 7.6/7.7」を提供開始

~強化されたコンテンツ管理・ワークフロー機能、及びAPIを利用した様々な外部システムとの連携機能を通じ、企業の業務プロセス効率化を支援~

・サードパーティ製ソフトウエアの要件に合わせた転送データのカスタマイズ機能、アーカイブ済み文書の Microsoft Teams へのリンク共有機能を提供(バージョン7.6)

・One Click Indexingによる請求書項目の自動入力機能強化、iPaaS Connectorによる他のビジネスアプリケーションとの連携機能を提供(バージョン7.7)

「Axon Ivy バージョン 10」を提供開始

~スケーラビリティと使いやすさを極限まで追求~

・クラウド環境に完全対応。新たなプロセスエディター、サードパーティのITシステムとの連携を可能にするシステムインターフェースの「マーケットプレイス」、カスタマイズ可能なダッシュボード、Microsoft Teamsとの統合機能を提供

映像と音声のリアルタイムな双方向配信サービス「RICOH Remote Field」を提供開始

~高品質/低遅延/4K360度の映像で現場とオフィスをつなぎDXに貢献~

・当社の「RICOH Smart Integration(RSI)」を活用したサービスとして、安定した接続品質を実現した映像・音声のリアルタイムかつ双方向な配信を実現

・当社がこれまでテレビ会議・Web会議システム等で培ってきた動画や音声等のメディア帯域制御の技術により、映像の高品質と低遅延を両立し、4G等のモバイルネットワーク環境においても安定した接続が可能

・映像と音声の双方向配信によって様々な空間と空間をリアルタイムにつなぐことで、遠隔地同士のコミュニケーションを支援

製造業実践ソリューション「RICOH フレキシブルイメージチェッカー」を新発売

~手持ちカメラによる多彩なアングルで、目視でのチェック作業の効率化を実現~

・カメラで検査対象物を撮影すると、検査アプリが部品の欠品や完成品との相違をパターンマッチングで解析し、自動で合否判定を実施

・手持ちでのカメラ撮影により、様々なアングルから対象物の確認が可能であり、同時に手持ち部カバーを装着することで、傾きやブレを抑制可能

・国内外の当社生産現場での使用実績から、撮影した画像に傾きやブレが生じた場合も、自動補正してパターンマッチングをかける技術を実装

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 13,544百万円です。

(2) デジタルプロダクツ

 新型コロナウイルス感染症の影響が一段落してオフィスに戻る方々が増加する一方、在宅あるいはワーケーションとの組み合わせ等、多様なはたらき方の形態が定着してきました。コロナ禍前のように一カ所に集まって仕事をする形が大多数を占める状況には戻らないと考えております。デジタルプロダクツビジネスユニットでは、この多様なはたらき方を支援するデジタルエッジデバイスの技術開発に引き続き力を注いでおります。

 当連結会計年度においては、お客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)とサステナビリティの両面で価値を提供することが可能な主力のA3カラー複合機を刷新しました。アナログとデジタルをシームレスにつなぐため、当社の「RICOH Smart Integration(RSI)」を介し、「RICOH kintone plus」等様々なアプリケーションとの連携が可能となっております。また、省資源及び省エネルギー化を進めることで、製品ライフサイクル全体での環境負荷(カーボンフットプリント)を前身機より27%削減しているほか、本体樹脂総重量の50%に再生プラスチックを使用、さらに製品の梱包材においても紙材料の活用で包装プラスチックを54%削減しました。このような環境貢献技術を今後も進化させてまいります。

 当連結会計年度、当社は株式会社PFUの株式を80%獲得し、連結子会社化しました。株式会社PFUは世界No.1のスキャナシェアとそれを支える優れた紙搬送技術を持ち、今後、当社の複合機やプリンターとの技術シナジーも期待されます。

 プリンティング/スキャニング以外のエッジデバイスでは、インタラクティブホワイトボード(電子黒板)及びプロジェクターに加え、新たに360°会議システム及びポータブルモニターをリリースしました。オフィスというはたらく場におけるこれまでの知見と経験を踏まえ、はたらき方全般においてお客様への価値提供をさらに広げてまいります。

 コロナ禍による長期工場停止や原材料価格の高騰継続等、生産面における困難は当連結会計年度も継続しました。2021年度から取り組んでいる代替部品への迅速な切り替えや多拠点での並行生産等、外部環境変化に左右されないものづくり体制の構築を引き続き進めております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

業種業務ごとの課題解決に貢献し、DXを支援するフルカラー複合機
「RICOH IM C6010/C5510/C4510/C3510/C3010/C2510/C2010」を発売
~ソリューション連携と業界最高の環境性能でお客様へ価値を提供~

・エッジデバイスとしての機能強化を図り、名刺や領収書等の小サイズ原稿を含めた多様な紙文書の電子化が可能

・「RICOH Smart Integration(RSI)」を介し、「RICOH kintone plus」等のアプリケーションと連携

・紙折りや針なし綴じオプション機能の強化

・環境負荷削減で循環型社会及び脱炭素社会の実現に貢献

臨場感あふれるリモート会議を実現
360°カメラ搭載マイクスピーカー「RICOH Meeting 360 V1」を発売
~会議室の雰囲気をまるごとキャプチャーするWEB会議デバイス~

・360°カメラで会議室全体・参加者全員の様子を映し出すことが可能

・発言者を自動認識し瞬時にクローズアップ

・約6mの距離まで集音可能な全方位マイクと高品質なスピーカーユニットを搭載

有機EL採用、タッチ機能搭載の軽量ハンドアウト型ディスプレイ「RICOH Portable Monitor 150BW/150」を新発売
~コミュニケーションの共創を促し、ハイブリッドワークを支援~

・持ち運びしやすいうえにタッチ操作も可能な15.6インチのポータブルディスプレイ

・対面の場を活かした少人数でのコラボレーションを促進するコミュニケーションデバイス

レーザー光源を採用したデスクトップ型の短焦点プロジェクター「RICOH PJ WXL4960/WXL4960NI」を新発売
~教室の大型提示装置として投写位置を制約しない教卓設置タイプ~

・教室の大型提示装置としてふさわしいスペックと機能を搭載

・当社独自の前面入力端子やオートエコモードを踏襲し教育現場に配慮

・レーザー光源の採用によって明るく鮮明な画質、長寿命、利便性の向上を実現

A3カラープリンター「RICOH IP C6020」「RICOH IP C6020M」を新発売
~7インチフルカラータッチパネルを搭載、ソリューション連携機能強化で業務を効率化~

・「MultiLink-Panel」を搭載し、タブレット端末やスマートフォンのような直感的な操作が可能

・「リコー 個人認証システム AE2」と連携し、よりセキュアな印刷環境の構築が可能

・大量給紙も実現しながら消費電力を削減する、充実の機能に加え優れた省エネ性能を実現

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 33,051百万円です。

(3) グラフィックコミュニケーションズ  

 当社グループは、現場で働くお客様の課題をDX(デジタルトランスフォーメーション)により解決し、お客様のビジネス拡大や働き方改革に貢献することを目指しており、性能面・価格面に強みをもつ商品とワークフローソフトウエアを組み合わせた革新的ソリューションを提供していきます。

 商用印刷事業分野においては、印刷業のお客様に向けて、生産性向上に寄与する印刷機やゴールド、シルバー等高付加価値を可能にする特色トナー、上流から下流まで工程を統合的に管理するワークフローソリューションを組み合わせた提案を行っており、Offset to Digitalを加速して、お客様の現場プロセスのデジタル化を牽引していきます。

 そのため、電子写真技術、サプライ技術、光学設計技術、画像処理技術、インクジェット技術、次世代作像エンジン要素技術、最先端ソフトウエア技術の開発を継続して行っております。

 また印刷DXを推進するハイデルベルグ社(ドイツ)との長年のパートナーシップや、多様な印刷物を支える加工機ベンダー等とのアライアンス、お客様と連携してソリューション開発する取り組みを通じて、印刷のトータルソリューションを提供していきます。

 アップグレードした「RICOH Pro VC70000e」では、より多くのメディアの利用が可能となり、お客様の仕事の幅が広がるとともに、新規ソフトウエアの搭載によって一段と業務の自動化/効率化が進められるようになりました。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

RICOH Pro VC70000eでオフセット及びデジタル印刷事業のビジネスチャンスを拡大

 すでに導入済みの前身機RICOH Pro VC70000からアップグレードが可能であり、下記が特徴

・独自の先塗り技術により幅広いメディア・アプリケーションが使用可能になり、全体的に印刷品質が向上

・新しいプリントヘッドの開発によりテキスト、細線もよりシャープに

・ソフトウエアの進歩として、「RICOH Pro Scanner Option」や「RICOH Supervisor」により、マシンとジョブのステータスに関するフィードバックが常に提供され、AIによって正確で効率的なプロセスを生成

カラーマネジメントソリューション「RICOH Auto Color Adjuster」を新発売
~当社独自の高速分光測色技術と色調整処理で、印刷現場の業務を効率化~

・紙面全体を高速に測色し、専用チャートや見本画像から色調整用のICCプロファイルを作成し、これを出力したいカラープロダクションプリンターで使用することで、正しい色の再現が可能。また、専用チャートに基づきプリンターの色の状態を数値化することで、客観的な色の品質管理ができる

・色見本に合わせた印刷において、簡単にカラーマッチングが行える

 産業印刷事業分野においては、産業用インクジェットヘッド技術の開発、製品化に注力し、製品ラインナップの拡充に取り組んでまいります。高耐久性と幅広いインク対応力でお客様よりご好評をいただいているMHシリーズヘッドでは、耐久性やシステム適合性を強化した新たなモデルを発売しました。また、MEMS (Micro Electro Mechanical System)技術を活用した小型・高精細印刷に対応するTHシリーズヘッドも新規で採用いただけるお客様が増えております。

 また、衣料印刷市場向けには、すでに発売済みの「RICOH Ri 1000/2000」をご利用のお客様が、Direct-to-Filmとして、新たなアプリケーションが利用できるソリューションの提供を開始しました。エントリークラスの「RICOH Ri 100」と合わせ、お客様の用途に応じた製品提供を行っております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

産業用インクジェットヘッド「RICOH MH5422」、「RICOH MH5442」、「RICOH MH5422 Type A」を新発売

~高画質と高生産性を両立し、用途に応じて3モデルから選択可能~

・1,280ノズル、150npix4列のノズルは位置と標準液滴量7plに加えて、着弾精度・吐出的速度の均一性が向上し、高画質印刷を実現。また、高周波駆動時の安定性が高まり、最大50kHzの駆動周波数で使用可能。

・UV、水性、溶剤のすべてのインクに対応。特に水性インクは前身機RICOH MH5421/5441の2倍以上の長寿命化を実現

・高撥水処理技術により、従来ヘッドに比べて撥水膜の強度が向上し、長時間の仕様でも安定した画像品質を提供

・ピンアライメント対応モデルに加え、高精度を追求した面アライメント対応モデルをラインナップ。ヘッド搭載時・交換時の取り付け精度と並べやすさが向上し、位置調整が容易になった

ガーメントプリンターで使用できるDirect-to-Filmソリューションを提供

・RICOH Ri 1000/2000を使用してPETフィルムにプリントを行い、衣服に転写するDirect-to-Filmのソリューションが利用でき、皮革、ナイロン等の素材にもプリントすることが可能

・最初にCMYKを印刷し、その上にホワイトを印刷

・OEKO-TEX基準に対応

・当社グループであるColorGATE社の「Productionserver」によってサポート

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 28,002百万円です。

(4)インダストリアルソリューションズ 

 サーマル事業分野においては、世界で圧倒的なシェアを占める高付加価値サーマルペーパー(感熱紙)をはじめ、高い品質の製品・サービスを提供し、さらなるお客様の信頼獲得を目指しております。

 高付加価値サーマルペーパーは、近年の環境意識の高まりから、社会課題解決型商品(発色材料の安全性を高めたフェノールフリーラベル*)を欧州市場、日本市場で展開しておりましたが、当連結会計年度は、さらに北米市場で販売を開始しました。順次、グローバル及びラインナップ展開を進めてまいります。

 * フェノール含有量0.02%未満の感熱紙を使用(当社基準)

 また、長年にわたり培ってきた光学系の独自技術を組み合わせた、半導体レーザー光を用いた「リライタブルレーザーシステム」と「高速印刷ソリューション(FC-LDA Printer)」の事業展開。さらには、包装材に感熱機能を設ける「ラベルレスサーマル」技術の展開により、環境負荷低減と人手不足が深刻な物流現場における省人化や製造業における自動化の進展に貢献しております。

 サーマル印字技術「ラベルレスサーマル」が、2022年5月、国内コンビニエンスストア大手に採用されました。発売以降コンビニエンスストアのお客様において「原材料、アレルゲン等の情報視認性が向上」、食品の製造工程においても「環境負荷低減」、「自動化省力化実現」、「包装材在庫のスリム化」が評価され、他のコンビニエンスストアにも導入が拡大しております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

当社のラベルレスサーマルがセブン-イレブンの商品パッケージに採用

~原材料表示等を包装材へ直接印字し、環境負荷低減、作業効率化、生産性向上に貢献~

・透明性が高く高品質なサーマルメディア層

 分散技術、高耐性発色技術、層構成技術を活かしてサーマル機能層をインク化、これをコーティングすることで包装デザインと一体化し、可変情報の直接印字と食品包装に求められる耐久性、安全性を実現

・印刷加工適正の高い感熱インク

 独自のサーマル素材・処方技術を活かして、包装材のデザイン印刷と同時に加工できるインクを開発し、包装材の生産性を維持

 産業プロダクト事業分野においては、生産技術とIoT、AI、画像認識等の最先端技術を融合し、データ認識処理による情報変換を通じた情報の見える化により、様々な産業設備のインテグレーション、車体・外装部品等の塗装外観を中心とした検査ラインソリューションを提供しております。例えば成長著しい車載リチウムイオンバッテリー外観検査や車両塗装外観検査における安全・信頼性を高める検査ラインの生産・販売を行って現場における少人化、自動化に貢献しております。今後、これら検査設備等から得られるデータの活用により、お客様への新たな価値提案へと繋げていく予定です。

 また、これまで当社で培ってきた光学技術、画像認識、AI等の最先端技術を融合し、自動車、物流・建機車両の自動制御や安全補助をするステレオカメラの開発を様々なパートナーと進めております。当連結会計年度は、クレーンを使用する建設、土木等の現場において、吊り荷と作業員を自動検出し、立体的にとらえることで、吊り荷と作業者の衝突危険性を検知、クレーン操縦者に知らせることで衝突事故を防ぐシステムを東洋建設株式会社との共同実証実験を通して開発を進め、販売に至りました。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

クレーン作業安全支援システムを開発、東洋建設株式会社と共同実証実験を実施

~クレーン作業における吊り荷と作業者の衝突事故の発生を抑制し、現場の安全性向上に貢献~

・吊り荷と吊り下ろし場所の作業員の位置を、ステレオカメラから取得した映像を用いてAIで自動検出・追尾し、吊り荷と作業員が接近すると警報を発することで、作業員全員の安全作業をサポート

・クラウドと連携することで、遠隔地の管理者への通知や、作業状況の記録・管理も可能

・クラウドを通して現場のデータを蓄積し学習、様々な現場においても高精度に作業員の位置を検出可能

・ブラウザ上で使用できるアプリケーション活用で、各現場の危険シーンの録画を用いて、現場での危機管理の学習に活用可能

・クレーンを使用する現場における安全性向上への有効性が認められ、新技術情報提供システム(NETIS*)に2022年10月に登録

 * NETIS:国土交通省が新技術活用のため、新技術に関わる情報の共有及び提供を目的に整備したデータベースシステム

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 3,763百万円です。

(5) その他事業

 当社グループの持つ技術力を活かして、産業向けからコンシューマー向けまで幅広い製品・サービスを提供しております。また、現場、ヘルスケア、環境における社会課題解決に貢献する新たな事業創出を目指しております。

■デジタルカメラ事業

 デジタルカメラ事業を担うリコーイメージング株式会社では、PENTAXとGRの2つのブランド価値をより高め、"デジタル"手法を駆使してお客様とダイレクトにつながり、両ブランドの魅力をより一層研ぎ澄ませて深化さております。

 当社グループでは、100年に及ぶカメラ開発の歴史で培われた、光学設計、光学部品加工技術を柱に、最先端のデジタル画像処理技術を搭載した画像処理エンジンPRIME VやGR ENGINE 6と、高度なノイズ処理を実現するアクセラレーターユニットI,IIのコンビネーションにより、すべての感度域で優れた階調再現や質感描写を実現したデジタルカメラ製品の開発を行っております。また、これらの技術に加え、当社独自のボディ内手振れ補正機構SR(Shake Reduction)を搭載し、優れた手振れ補正性能を有するとともに、この機構を応用したローパスセレクター機能やリアルレゾリューション機能を開発しております。写真に拘りを持つユーザーの皆様へ、これらの技術を搭載したデジタルカメラを以下のシリーズで提供しております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

水深14mでの水中撮影が可能なコンパクトデジタルカメラ「RICOH WG-80」を発売

・小型軽量ボディに高い防水性能と優れた耐落下衝撃性能、さらに多彩な撮影機能を備えた防水コンパクトデジタルカメラ

・小型軽量のボディに14m防水や高さ1.6mからの耐落下衝撃性能、さらにマイナス10℃までの耐寒構造を備えており、一般的なデジタルカメラやスマートフォンの使用が困難な環境下での撮影に耐えうる高い信頼性を実現しております

ハイエンドコンパクトデジタルカメラ「RICOH GR IIIx Urban Edition」「RICOH GR III Diary Edition Special Limited Kit」を発売

・プロフェッショナルユースにも応える高画質とスナップシューティングに最適な小型軽量ボディのRICOH GR IIIxとRICOH GR IIIに、それぞれ「都会」「日常」をイメージしたボディーカラーを施した特別仕様のハイエンドコンパクトデジタルカメラ

防塵・防滴構造を採用したマクロレンズ「HD PENTAX‐D FA MACRO 100mmF2.8ED AW」を発売

・最新の設計技術により光学系を一新し、絞り開放から高い解像力と高いコントラストが得られ、シャープな描写力を実現するとともに、当社マクロレンズで初の防塵・防滴構造を採用したマクロレンズ

天体望遠鏡用アイピース「smc PENTAX XW16.5」「smc PENTAX XW23」を発売

・視野周辺までシャープな星像が得られる5群7枚構成の新光学系を採用しシリーズ最高の見掛け視界85°の広視野角を実現し、星雲や星団の迫力ある観察が可能な天体望遠鏡用の高性能アイピース(接眼レンズ)

防塵防滴、小型設計のデジタル一眼レフカメラ「PENTAX KF」を発売

・アウトドア撮影に適した防塵・防滴の小型ボディに本格的な光学ファインダーをはじめとする、こだわりの基本性能を備えたスタンダードクラスのデジタル一眼レフカメラ

・視野率約100%でガラスペンタプリズムの光学ファインダー、シャッタースピード換算で4.5段分に相当するボディ内手ぶれ補正等、上位機並みの機能・性能を備えたモデルです

■スマートビジョン事業

 ワンショットで360度撮影ができるカメラ「RICOH THETA」を発売以降、360度画像・映像を活用した事業の幅を広げてきました。現在では、クラウドサービスと連携させることでワークフロー全体を効率化するソリューションを提供し、業務効率化と生産性の向上を実現する「RICOH360」プラットフォーム事業を強化し、SaaSビジネスの展開を行っております。

 建設業においては、2024年4月より施行予定の改正働き方改革関連法案の中で、残業時間の上限に罰則規定が設けられる等、労働生産性を上げることが急務となっております。このような背景から、建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)加速と「RICOH360」プラットフォーム事業のさらなる拡大のため、他社との協業を開始しております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

「RICOH360」プラットフォーム事業で建設テック企業と協業を開始

~建設業向けソリューション提供で現場のDXを加速~

・建設テック企業であるスパイダープラス株式会社と、建設業界のDX加速を目的に、「RICOH360」プラットフォーム事業とスパイダープラス株式会社の建設DXサービス「SPIDERPLUS」事業の協業を開始しております。

・当社が保有する360度画像・映像技術情報や機能をスパイダープラス株式会社へ提供し、建設業界において官民が一体となって推進する「BIM(Building Information Modeling)」に向けたサービスの検証を開始しております

・今後も建設業のユーザーニーズを踏まえた短期の課題解決及び市場動向を踏まえた中長期の課題解決に向けた「RICOH360」の機能強化のために、ワークフローに精通した建設テック企業との協業に取り組んで行きます

■ヘルスケア事業

 当社グループでは高齢化社会への対応、医療費削減、ウイルス等の感染拡大防止等が求められるヘルスケア事業を、社会課題の解決に取り組む事業の1つとして位置づけております。

iPS細胞の高速分化誘導技術やmRNAの設計・製造技術をコアとした創薬支援の「バイオメディカル」、脳磁計・脊磁計の活用により脳や中枢・末梢神経の活動を可視化する「メディカルイメージング」を重点領域とし技術開発に取り組んでおります。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

 
mRNAを活用した創薬支援事業を強化

~バイオテクノロジー企業エリクサジェン・サイエンティフィック(eSci社)と株式追加取得で合意~
・eSci社の株式を過半数取得する契約を締結し子会社化することで、高齢化やパンデミック等の社会課題を解決するための創薬基盤の整備・構築を加速し、人々の健康と安心への貢献を目指しております

・eSci社は、iPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)を様々な細胞へ高速分化誘導可能な独自の技術とmRNAの設計や製造に強みを有しており、この技術を当社がこれまで培ってきたデジタル化技術やAI(人工知能)技術で活用領域を拡大し、個別化医療や創薬研究の加速に貢献していきます
 
日本のmRNA医薬品創薬市場の活性化に向けたファンド設立

~mRNAを活用した創薬スタートアップの研究開発支援を強化~

・日本のmRNA医薬品の創薬市場の活性化に向けて、「リコー バイオメディカル スタートアップ ファンド」を2022年9月に設立し、創薬事業を行う日本国内のスタートアップ企業の研究開発を支援しております

・当社及びeSci社/EsJ社*で培った強みに、スタートアップの持つ技術やノウハウを組み合わせ、日本国内におけるmRNAを用いた創薬基盤の整備・構築を進めていきます

 *EsJ社:エリクサジェン・サイエンティフィック・ジャパン

経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に当社及びエリクサジェン・サイエンティフィック・ジャパンの提案が採択

・「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」は、国内における新型コロナウイルスワクチンを始めとしたバイオ医薬品の実生産(大規模生産)体制の早期構築を図るとともに、ワクチンの早期供給を促すために経済産業省が公募したものです

・この度の採択により、医療用mRNAの製造能力のさらなる増強を目指しており、ワクチンをはじめとするmRNA医薬品の研究開発をより幅広く支援していきます

・本事業によりmRNA治験薬の国内製造拠点を整備することに加え、ファンドによるスタートアップ企業への投資を行うことで、mRNA医薬品をより自由に創出できる環境を構築し、人々の健康と安心に貢献していきます

 
■環境事業
 当社グループは事業を通じて注力する重要社会課題の1つとして、脱炭素社会の実現を掲げており、国内企業で初めてRE100に参加する等、徹底した省エネや再生可能エネルギーの積極活用に向けた取り組みを強化しております。

 製品のエネルギー効率向上、リサイクル材や植物由来原料を用いた素材開発等、脱炭素に向けたイノベーションに取り組んでおります。今後は、ビジネスパートナーや顧客にも協力を働きかけることで、バリューチェーン全体での脱炭素社会づくりに貢献していきます。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

オフィスや商業施設等の環境情報をモニタリング可能な「RICOH EH CO2センサーD101」を発売

~環境発電技術搭載により各種環境情報の取得を電池交換レス・配線レスで実現~

・オフィスや商業施設等の環境情報を、電池交換レス・配線レスで取得できる環境センシングデバイスの新製品として、温度・湿度・照度・気圧に加え、CO2濃度も取得可能な「RICOH EH CO2センサーD101」を、2022年6月中旬より発売しました

・当社が開発した固体型色素増感太陽電池モジュール「RICOH EH DSSCシリーズ」を搭載し室内光で連続動作が可能で、無線通信を利用して環境情報を収集するため、複数台配置することで広いフロアもリアルタイムに一元管理が可能です

・本製品により、感染症対策の一環である人の密集状態・換気状態の確認だけでなく、働く場所の環境管理のDXに貢献し、お客様に安全・安心に働ける環境を提供することを目指していきます

「RICOH EH 環境センサーD202」が、三菱地所株式会社の「警備ロボットを活用したIoT設備点検」に採用

~設備技術員の人手に頼らない点検作業のDX実現に貢献~

・当社が提供する「RICOH EH 環境センサーD202」が、三菱地所株式会社が推進する「警備ロボットを活用したIoT設備点検」に採用されました

・巡回・立哨警備を行う自律移動型ロボットが設備機器に設置したIoTセンサーやカメラからデータを自動収集して設備点検を行うシステムで、「RICOH EH 環境センサーD202」は空調機内部の環境情報を検出するIoTセンサーとなります

・現行の設備機器は設備技術員が目視や定期巡回等で点検しておりますが、空調機器内のフィルター状態を遠隔で確認することで、設備技術員の人手に頼らない点検を実現し、働き方改革に貢献していきます

■事業共創事業

 スタートアップ企業や社内外の起業家の成長を支援して事業共創を目指すアクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」を2019年度より実施しております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

国土交通省による下水道応用研究にて3Dプリンターを活用したマイクロ水力発電の検討を実施

・新規事業創出の取り組み「TRIBUS(トライバス)」に採択された社内スタートアップである「WEeeT-CAM(ウィットカム)」は、シーベル株式会社、金沢工業大学との連携により、バイオマス*1由来の材料を使用した3Dプリンター製の羽根を組み込んだマイクロ水力発電機を開発し水処理場での活用を検討しております

・数kWの発電に成功し、従来の金属製マイクロ水力発電装置と比較して重量は水車部分25%、装置部分15%の軽量化を実現、水車の作成期間は約1か月から3日と大幅な短縮に成功しました

・水車部分は樹脂製で水中での耐久性も向上。一般に使用されている3Dプリンター材料で作成した場合と比較し、水車羽根の強度は金属製に匹敵する2倍以上*2を実現。水中に長期間つけても強度が維持され従来のマイクロ水力発電にも使用できることが判明しております

 *1 バイオマス:化石資源を除く再生可能な生物由来の有機性資源

 *2 最大曲げ破壊力が従来材料の樹脂特性が60N/nm²に対して当社が開発した「RD3 New method」で133N/nm²

手持ちで使える小型ハンディプロジェクター「RICOH Image Pointer GP01」を発売

・新規事業創出の取り組み「TRIBUS(トライバス)」に採択された社内スタートアップである「Image Pointer」は小型ハンディプロジェクターを発売しました

・手になじむコンパクトボディ、軽さ220gでポケットに入る大きさを実現しました

・小さくても台形補正や色味変更が可能でスピーカーも搭載。投影サイズは25~80型まで。近づいたり、離れたり、投影場所や人数次第で自由に投影ができます

・Wi-Fi™ですぐに接続、アプリも不要、HDMI®接続も可能。コードレスで机や壁等に投影し、お気に入りの写真や動画を大きな画面でみんなでシェアが可能になりました

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 14,033百万円です。

(6) 基礎研究分野 

 当社グループではこれまで、商品の差別化につながる基礎研究分野として、フォトニクス技術、MEMS、画像認識・画像処理技術を融合した高度なセンシング技術・エッジデバイス技術、分析・シミュレーション等の基盤技術や検証、シミュレーション等の技術機能性材料、プリンティング技術の応用研究開発や、お客様の業務の効率化や時間、場所に捉われない新しい働き方に貢献するためのデータ収集・解析技術、人工知能を応用したシステムソリューション開発を進めてきました。

 先端技術研究所では、将来に向けてはこれらの技術を核として、2つの提供価値領域にフォーカスして開発を行っております。

・HDT(Human Digital Twin at Work):ワークプレイスで働く人のデジタル化技術。行動センシングやバイタルセンシング等の技術と、認識やAI等の技術とを活用し、働く人の創造力発揮を支援する。

・IDPS(Industrial Digital Printing System):インクの代わりに機能材料を吐出する産業用インクジェット技術を発展させ、製造・生産プロセスをデジタル化し、飛躍的な改善や廃棄物削減、省エネにつなげる。

 分析・シミュレーション等の共通基盤技術は、引き続き当社グループの開発生産現場に展開し、さらなる効率化と品質向上を図っていきます。

 協業パートナーとの共創も積極的に推進しており、当連結会計年度では30以上の協業パートナーと価値検証を実施しました。

 また、研究開発のグローバル化を目指して、海外研究機関・企業との連携体制を構築中。Horizon Europe(現代の重要課題に取り組む研究とイノベーションのための国際的な枠組み )のプログラムに参加し、欧州の代表的な研究機関や有力企業各社と共同研究開発を開始しました。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

次世代インクジェットヘッド技術 「GELART JET ヘッド」

~インクジェット技術の活用領域の拡大により持続可能な社会の実現を目指す~

・高圧対応の独自ヘッドにより、高粘度・大滴サイズの塗料吐出による大面積・厚塗り印刷や、塗料の飛翔距離拡大による曲面・凹凸面への印刷、大粒子含有材料の吐出による印刷以外の用途への展開が可能になり、インクジェット技術の活用領域を拡大

・当技術を活用し、壁面や路面、自動車外装等へのデジタル塗装技術を開発中。塗装工程で発生する材料やエネルギーの無駄を最小化し、環境汚染低減、省エネ等の持続可能な社会の実現に貢献

・2022年11月のIGAS2022(国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展)において、当技術を含めたIDPS領域における開発技術を、「機能するJetting」というコンセプトのもと発表

HDT(Human Digital Twin at work)を実現する技術開発
 ~共創活動による開発加速~ 

・東京大学との社会連携講座「“はたらく”に歓びを」を開設し、個人やチームの創造性や働きがいを向上させる未来の働き方の共同研究を開始。当社の技術・ノウハウに裏付けられたオフィス向けソリューションの実績と、東京大学の卓越した学術的知見・技術というお互いの強みを連携することで、技術分野における相互の知的・人的・物的資源の交流や、共同研究開発活動の推進による新しい価値の創造を図る

・VIE STYLE株式会社と共同で、ブレインテックの活用による「仕事への内発的動機づけ」の向上に関する共同研究を開始。VIE STYLE株式会社が持つ次世代型ウェアラブル・イヤホン型脳波計とニューロテクノロジーの知見に、仕事に対するゲーミフィケーションを組み合わせることにより、仕事への内発的動機づけ(働きがい)を向上させ、働く個人のウェルビーイングとパフォーマンスの向上を狙う

 デジタル戦略部では、顧客価値創出のデジタル基盤として「RICOH Smart Integration(RSI)」を整備、強化しております。

 RSIで様々な業務システムやデバイスをつなぐことで業務フローをデジタル化し、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献します。具体的には、自社やパートナーの技術をコンポーネントやマイクロサービス、コンテナとして整備し、エッジデバイスと組み合わせて、ワークフローをLow Code/No Codeで構築することで短期間でのサービス開発・提供を可能にしております。

 また、RSIに蓄積された画像データをはじめとする様々なデータとAIを組み合わせて利活用することで、顧客や社会の課題解決をするための新たな顧客価値創出を進めております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

人が知覚する光沢感や高級感といった感性情報を定量化し、関係性を可視化する技術

~情動・質感同士の関係性理解による、商品開発工程の効率化に貢献~

・商品開発における定性的で属人性のある情動・質感設計プロセスに対して、最適化手法を用いた感性モデルの構築手法を提案

・官能評価実験によって取得した情動や質感に関する評価点を変数として、構造方程式モデリングに適用するグラフ構造を遺伝的アルゴリズムによって最適化。設定した統計値に基づき、属人性のない感性モデル構築を実現

・本研究では視覚における情動や質感を対象としたが、他感覚(触覚、聴覚、味覚、嗅覚)の感性情報にも応用可能

・以上の研究成果は、2022年10月にチェコ共和国で開催されたIEEE SMC 2022で発表

医療分野に適用可能な画像認識AIの新アルゴリズムを開発

~AIをてんかんの脳波判読へ応用、診断の省力化に向けた研究開発を加速~

・大阪大学との共同研究で、深層学習を用いた画像認識AIの新しいアルゴリズムを開発

・脳磁計で計測した脳波の分析に本研究で開発したアルゴリズムを応用することで、てんかんに特徴的な波形(てんかん波形)を見分けることが可能であることが、研究結果から示された

・本技術をてんかんの手術前に行う脳磁図検査に適用することで、診断の大幅な省力化が期待される

 なお、当連結会計年度の当分野に係る研究開発投資は 15,356百万円です。

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