ヤマタネ 【東証プライム:9305】「卸売業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 経営基本方針
当社グループは、『信は万事の本を為す』に則り、社業を通じて豊かな社会の実現に貢献することを企業理念としております。また、経営理念として山種経営三原則「分に応じた経営」「積み上げ主義」「予算経営」を定め、その企業理念、経営理念のもと中長期的に企業価値の向上を図ることを経営の基本方針としております。
当社グループはコーポレートメッセージとして“「続く」を支える。” を掲げており、パートナー企業として信頼の絆を深め、プロフェッショナルとして、常に最適な「解」を提供し、お客様と社会と共にまっすぐ歩み続け、顧客、株主、社員など全てのステークホルダーの「続く」を支えていくことが当社グループのミッションと考えております。
また、当社グループは、企業理念とコーポレートメッセージの考え方を基本とし、持続可能な社会の実現への貢献と持続的な企業価値の向上を目指し、「サステナビリティ方針」を策定し、4つの取り組むべき行動指針を掲げ、その実効性を高めるため当社グループが取り組むべき「環境」「社会」「ガバナンス」に関するマテリアリティ(重要課題)を特定し、2030年目標を策定しております。
<サステナビリティ方針 行動指針>
a.長期ビジョンを掲げ、その達成のために「環境」「社会」「経済」の持続可能性の側面から課題を抽出し、事
業を通じてその解決に取組みます
b.攻めと守りのガバナンス強化と多様な人財の活躍推進のため組織基盤の整備に取組みます
c.適正な情報開示を行い、ステークホルダーの皆様と積極的な対話を行います
d.パートナーシップを強固にし、バリューチェーン全体を通して持続可能な社会の実現に取組みます
<マテリアリティ 取組み重点テーマ及び2030年目標>
≪E:環境≫ 〇環境に配慮した事業活動の推進 ・温室効果ガス排出量削減 ・エネルギー使用量の削減 ・廃棄物及び有害物質の管理
2030年目標
□GHG排出量削減2013年度対比▲50%以上 | ≪S:社会≫ 〇製品・サービスの品質向上 ・安心,安全な商品・サービスの提供・安全衛生の推進 ・個人情報保護及び高度なデータセキュリティ ・リスクマネジメント
2030年目標
□重篤な労働災害事故(※1)0件 □ISO9001認証取得 全拠点(営業倉庫/精米工場) □個人情報漏洩事故0件 |
≪S:社会≫ 〇人財の多様性と活躍の促進 ・生産性向上による働き方改革 ・人財育成及び教育 ・女性活躍を含む多様な人財の活躍推進 ・差別防止及び社会的弱者への配慮
2030年目標
□有給休暇取得率80%以上 □女性管理職比率(※2)20%以上 □キャリア採用者の活躍促進 | ≪S:社会≫ 〇地域コミュニティ及び生産地と農業の発展 ・コミュニティへの参画及び発展への寄与
2030年目標
□地域社会の文化活動への貢献 □大規模災害発生時の官民連携を推進 □産地・行政・取引企業とのコンソーシアム構築 |
≪S:社会≫ 〇持続可能なコメの調達の推進 ・持続可能な材料調達と効率的な使用
2030年目標
□産地のブランド化による持続的営農の実現 | ≪G:ガバナンス≫ 〇コーポレート・ガバナンスの深化 ・経営の健全性の確保、効率化の追求、透明性の向上、 再現性の堅持 ・リスクマネジメント ・適正な情報開示
2030年目標
□取締役会によるリスクと機会の把握と適切な対処 □重大なコンプライアンス違反0件 |
※1 重篤な労働災害事故
①死亡、長期療養を要する(または可能性のある)疾病、障がいの残る(または可能性のある)怪我、特定伝染病
②一時に3人以上の労働者が業務上死傷または罹病した災害(不休含む)
※2 対象範囲:株式会社ヤマタネ
(2) 経営戦略及び業績目標
当社グループでは、2024年に創業100周年を迎えます。新型コロナウイルス流行による経済や社会環境の変化やSDGsに対する意識の高まりなど、変貌する外部環境の中でサステナビリティ経営の高度化を目指し、目指すべき企業像を描いた「ヤマタネ2031ビジョン」を策定しております。
「ヤマタネ2031ビジョン」においては、当社グループの企業理念である「信は万事の本を為す」に則り、当社グループのパーパス(存在意義)を見つめ直し、9年間で目指すべきビジョンを策定しております。そして、当社グループのバリュー(提供する価値)を示すとともに基本戦略を策定しております。基本戦略では既存事業を「コア事業領域」とし、新たに進出する領域は「チャレンジ領域」と位置づけ、将来の収益源育成を図ることとし、また、攻めと守りのガバナンス体制により、社会的価値と経済的価値の両立を図ってまいります。
また、「ヤマタネ2031ビジョン」に基づき、第1フェーズとして2022年4月~2025年3月までの中期経営計画「ヤマタネ2025プラン」を策定しております。新中期経営計画では、スローガンを「創業100周年に向けて、豊かな社会づくりにチャレンジしていく」とし、方針を定め、事業別目標を「チャレンジ領域」と「コア事業領域」に分類し策定しております。当社グループは、新たなビジョン実現に向け、グループ一丸となって取り組んでまいります。
「ヤマタネ2031ビジョン」の概要
a.パーパス(存在意義)
「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」
b.ビジョン(9年間で目指す姿)
「物流と食の流通を通じ、より豊かな社会づくりにチャレンジしていく」
c.バリュー(提供する価値)
企業理念に基づく「信義・信頼・信用」のサイクルを原点に、バリューチェーン上の各ステークホルダーとの適切な連携・協働を通じて、社会に安心と安全、効率性を提供する。
d.基本戦略
<チャレンジ領域>
コア事業領域の中でも新たに取り組むサービスはチャレンジ領域とし、成長が見込まれる分野への参入を目指し、また持続可能な消費と生産に貢献する「食の安定供給ソリューション」と「循環資源ソリューション」の2つのソリューションを社会に提供することによって、今まで以上に社会から必要とされる企業を目指す。
<コア事業領域>
顧客ニーズに合わせた市場開拓を推進することで、既存の4事業(物流・食品・情報・不動産)を維持・強化し、持続可能な社会の実現に貢献する企業を目指す。
「ヤマタネ2025プラン」の概要
a.スローガン
「創業100周年に向けて、豊かな社会づくりにチャレンジしていく」
b.方針
・事業活動を「チャレンジ領域」と「コア事業領域」に分け、経営資源を適切に配分し規模を最適化すること
により効果的な業務推進を実施する。
・環境に配慮した事業活動を推進し、社会に安心と安全、効率性を提供する。
・これまで築いてきた資本(財務、製造、知的、人的、社会関係、自然)を基盤に、長期的な展望に基づいた
事業展開を行う。
c.財務目標
| 実績 2022.3期 | 実績 2023.3期 | 目標(2025.3期) |
売上高 | 467億円 | 510億円 | 565億円 |
営業利益 | 30億円 | 35億円 | 32億円 |
EBITDA | 53億円 | 68億円 | 66億円 |
総資産 | 1,234億円 | 1,261億円 | 1,184億円 |
有利子負債 | 561億円 | 533億円 | 520億円 |
ROE | 4.4% | 4.9% | 5%以上 |
配当性向 | 31.0% | 26.9% | 35%以上 |
d.事業別目標
チャレンジ領域
事業分野 | 目標 |
物流関連事業 | ・新たな事業領域への進出のため、食品量販店センター運営等に取り組む |
食品関連事業 | ・気候変動リスクや消費者ニーズの変化を踏まえ、新たな品種や商品の開発に着手す る |
情報関連事業 | ・棚卸機器レンタルのノウハウが詰まったスマホ用棚卸アプリを提供し、幅広い顧客 の棚卸ニーズに応える |
不動産関連事業 | ・倉庫業併営を活かして物流不動産等の仲介ビジネスを強化する |
管理関連 | ・本社が所在する越中島地区の再開発の方向性をまとめる |
コア事業領域
事業分野 | 目標 |
物流関連事業 | ・荷主やサプライチェーン上の各プレイヤーと連携・協働し、物流の効率化や高度化 を目指す ・収益力向上のため、新倉庫の開設や既存倉庫のリプレイスを行う |
食品関連事業 | ・米流通の各段階において品質と安全性を保ち、安心できる商品を消費者に対して安 定的に供給する ・生産・流通コストの低減を追求し、産地との結びつきを強化する |
情報関連事業 | ・DXに必要な技術を提供するパートナーとして、幅広い高度なITスキルを有する 技術者を育成して顧客に供給する |
不動産関連事業 | ・所有物件の品質(安全性・利便性・快適性・環境性)を高め、不動産価値を向上さ せる ・不動産管理をクラウドデータベースによって効率化し、プロパティマネジメント領 域のビジネスを拡大する |
管理関連 | ・教育・研修などの人的資本への投資を拡充するとともに、専門能力や経験を有する 高齢者雇用や女性管理職の登用を推進し、多様な人財基盤を構築する ・取締役会がリスクと機会の実態を把握・監督できるようにガバナンス体制を強化す る |
(3) 経営環境及び対処すべき課題
今後を展望いたしますと、新型コロナウイルスについては感染法上の位置付けが5類へ移行され、景気の下押し圧力は更に弱まっていくと予想されます。一方で、世界的なエネルギー価格や食糧価格の高騰等による物価上昇等、日本経済への影響は先行き不透明な状況であります。
そのような状況下で、当社グループは、昨年公表した中期経営計画「ヤマタネ2025プラン」の最終年度にあたる2025年3月期に創業100周年を迎えます。当社グループが運営する事業は、社会の流通基盤を支える物流関連事業、社会の食生活の基盤であるコメの流通事業、また首都圏を中心に人々の働く環境を支える不動産関連事業が中心となっており、持続可能な社会の実現に向けて、その基盤を担うものと認識しております。当社グループとしては、事業の特性を踏まえ、中長期的に企業価値の向上を図る基本方針のもと成長基盤を構築することが注力するべき課題と考えており、以下4項目を対処すべき課題と考えております。なお、中期経営計画の2年目にあたる2024年3月期の連結業績予想につきましては、売上高は535億円(前期比4.7%増)を予想し、営業利益は31億40百万円(同12.5%減)、経常利益は31億円(同11.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は22億円(同2.3%増)を予想しております。売上高につきましては、食品関連における販売数量の増加と取引価格の上昇を見込み増収の計画ですが、営業利益及び経常利益は、電力料等の諸経費の増加、人的資本投資の拡充による研修費用等の人件費の増加、DX推進及び情報セキュリティ対応等のIT投資の拡充等、将来に向けた基盤整備のための各種投資があり、減益の計画を予想しております。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、2023年4月28日に公表しましたとおり、さいたま市岩槻区に保有しておりました遊休不動産の譲渡による固定資産売却益の計上により増益を予想しております。
<対処すべき課題>
a.「経営のスピードアップ」
b.「コア事業領域の更なる進化」
c.「情報システム部門の強化と進化」
d.「人的資本の投資の拡充」
中期経営計画の2年目にあたる2024年3月期では、監督機能の強化と経営のスピードアップを図るべく2023年6月21日をもって、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。また、中期経営計画の達成に向けて、「チャレンジ領域」の取組を加速すべく事業戦略部を新設し、新規ビジネスに関連したM&Aや業務提携等の検討を行い着実に推進してまいります。本社が所在する越中島開発計画につきましては、CRE戦略の観点を持って経済的価値と社会的価値を両立する開発計画の検討を推進してまいります。また、グループ全体の情報システムの最適化を図り、グループ業務の効率化(守りのⅮX)と付加価値の向上(攻めのⅮX)を推進すべくデジタル推進本部を新設いたしました。当本部を中心に情報セキュリティリスクの課題へも対応してまいります。また、経営戦略の実行をより確実にするため、人財育成のための充実した研修制度の構築、外部人財の採用、エンゲージメント向上への取組等、人的資本投資を拡充してまいります。
サステナビリティ方針のもと各マテリアリティ(重要課題)の解決に向けて着実に取り組み、物流と食の流通を通じ、より豊かな社会づくりにチャレンジして行くことで、持続可能な社会の実現への貢献とともに当社グループの持続的な企業価値向上を図れると考えております。
セグメント別の経営環境及び対処すべき課題は以下のとおりであります。
(物流関連事業)
物流業界におきましては、新型コロナウイルスの影響は更に弱まっていくと予想されるものの、資源価格の高止まりや物価上昇により消費関連・生産関連貨物輸送量は低調が見込まれ、建設関連貨物輸送量も減少し、総輸送量は前期を下回ると見込まれます。
このような状況下で、物流関連におきましては、顧客の物流パートナーからSCM(サプライチェーンマネジメント)パートナーを担うべく物流の効率化や高度化を図ります。2024年6月竣工予定の本牧埠頭新倉庫へは新たな倉庫基幹システムの導入準備を進めてまいります。新システムの導入効果をより高めるため、並行して業務の標準化を図り、サービスの効率化をめざします。また、食品量販店センター運営や冷凍冷蔵倉庫・配送事業を展開するグループ会社の株式会社シンヨウ・ロジと協働しチルド配送業務等、新たな事業領域への進出も図ってまいります。
(食品関連事業)
コメ流通業界におきましては、新型コロナウイルスの景気下押し圧力が弱まり外食消費が更に回復する中、需給が引き締まるとともに、令和5年産米においては肥料をはじめとした生産資材の価格の高騰が影響し取引価格は更に上昇すると見込まれます。
このような状況下で、食品関連におきましては、販売面では既存顧客のニーズにきめ細かく対応し、適正な利潤の確保とともにシェアの拡大と新規顧客の開拓に最注力してまいります。仕入面では「産地シンコウ(親交/深耕/振興)戦略」を掲げ、産地における人財不足等の課題に対するソリューションを提供することで営農と産地の活性化を実現し、産地との関係強化を進めてまいります。また、新設した事業戦略部と協働し、新たな事業領域への進出も検討してまいります。なお、精米工場である「印西精米センター」では、本年5月より太陽光発電システムによる発電を開始し、印西事業所全体でCO2排出量509トン(年間)の削減を見込んでおります。
(情報関連事業)
情報サービス業界におきましては、大企業を中心に企業競争力を高めるためDX投資が加速する中でAIによるビッグデータ活用や5Gの普及によるIoTの進展等デジタル化への投資は継続して増加すると見込まれますが、一方で、IT人財不足も更に進むと考えられます。
このような状況下で、情報関連におきましては、新技術への対応を強化し技術者の確保を進め、既存顧客の多様なニーズに対応したシステムサービスの向上を図ります。また、棚卸機器レンタル事業においてはスマホアプリサービスへの転換を進める等、更に提供サービスの拡張を図ります。また、グループのシステムにおいては、デジタル推進本部を新設し事業戦略に基づくDXを更に推進してまいります。
(不動産関連事業)
不動産業界におきましては、賃貸オフィスビル市場は、在宅勤務の浸透等の動きが継続していますが、新型コロナウイルスの影響による景気の下押し圧力は弱まっていくと予想され、需要は緩やかに回復すると見込まれます。一方で、今後、国内の主要都市ではオフィスビルの大量供給が見込まれることから、緩やかながら賃料の下落が予想されます。
このような状況下で、不動産関連におきましては、中長期修繕計画に基づき、物件の付加価値や安全性の向上を図るとともに再生可能エネルギーの積極的な活用等、環境に配慮したオフィスビル運営により、既存物件の品質、サービスの高度化を図り、高稼働率の維持を図ってまいります。また、グループでの倉庫事業運営のノウハウを活用し、物流不動産等の仲介ビジネスの強化を図ります。更にグループ全体の企業価値の向上をめざし、資産の入れ替えを含むCRE戦略の検討を進めてまいります。
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