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企業概要
(注) 文中の将来に関する事項は、2023年6月期末現在において当社が判断したものです。
(1)経営方針
当社は「次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する」という経営理念のもと、ITの力を通じた社会への貢献を推進してきました。高速、安全、高品質で利便性の高いIT基盤の提供により、人々の生活を支え、次世代のあたりまえを創ることを目指し、企業価値の最大化に取組んでいます。
当社は、クレジットカード決済や証券取引等のオンライン、リアルタイムのネットワーク接続技術を強みとしてシステム開発を行い、顧客企業に提供しています。こうしたシステムは、社会にとって必要不可欠なIT基盤(インフラストラクチャー)であり、システムの安定性を必須の条件として、高速かつ安全に取引を完遂するために、高い水準の品質が求められています。また、情報セキュリティ対策製品の開発販売とサイバーセキュリティ対策製品の販売を行い、顧客企業の安全な事業運営に貢献しています。
当社は、多くの開発実績と安定的な運用実績を有しており、この実績によって顧客から得られる信頼が、当社の事業を支え、発展させる基盤になるものと考えています。
当社は、今後ともより多くの顧客に信頼されるIT基盤の提供を通じて、当社の事業基盤を拡大、発展させていくことで、当社のステークホルダーの期待に応えることを経営方針にしています。
(2)経営環境
当事業年度の国内経済は、緩やかに回復しています。当社の主要な事業領域であるクレジットカード業界においては、個人消費の持ち直しにより、クレジットカード会社の取扱高も、前年の実績を引き続き上回り推移しています。経済産業省の算出によると2022年のキャッシュレス決済比率は36.0%、キャッシュレス決済金額は111兆円と初めて100兆円を超えました。経済産業省は、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度にするという目標を掲げています。国内のキャッシュレス決済の普及は着実に進行しており、カード決済事業に新規参入する事業者も増加しています。
クレジットカード業界においては、不正検知のニーズが急速に高まっており、システム基盤はモダナイゼーションや費用対効果の向上のためにクラウド導入の動きが加速化、また業界を問わずセキュリティに対するIT 投資意欲も高まり、当社の事業は順調に推移しています。
決済だけでなく、データエコノミーと称される近未来の社会においては、社会全体で生成され、流通するデータ量は、爆発的に増えることが予想されており、こうしたデータの利活用が、企業や社会の競争力の新たな源泉になるものとされています。こうした社会においては、データ流通と利用を支えるIT基盤の重要性が増すことは確実で、異なるネットワーク間の接続、データ交換の需要は増加するものと予想されます。
企業社会においては、単に、ネットワーク間を接続するだけでなく、データの利活用に資する付加価値が求められることが予想されます。当社の製品に例えれば、ネットワーク接続にオーソリゼーション(認証)や、不正検知からデータの監視、セキュリティ対策等の機能がより重要性を増すことを意味するものと考えています。また、金融取引のデータばかりでなく、画像や映像データをリアルタイムに分析して、新たな活用方法を提案し、多様な業種業態の生産性を高めるシステムへの需要が高まることも予想されます。
こうした社会情勢の変化を背景に、当社の事業機会は今後とも拡大するものと予想され、当社は、これを最大限に活かしていく方針です。
(3)経営課題
1 事業規模拡大
2024年6月期は、売上高150億円、営業利益22.5億円(営業利益率15.0%)の達成を計画しています。
当社の主要な収益源であるシステム開発業務は、主に顧客の都合で契約の規模や売上が変動することから、「フ ロー型」の収益形態に分類されます。一方で、クラウドサービスのように、当社が開発したシステムの利用期間に応じて、一定の規模の売上を継続的に計上できる業務は、「ストック型」と分類されます。
当社は、従来の「フロー型」に「ストック型」の事業を加えて、より安定的な収益の確保と、事業規模の拡大を 進めています。2023年6月期に「ストック型」事業の売上比率は49%まで拡大しており、さらに成長させることで、新たな収益源を確保し、事業規模を拡大する方針です。
また、当社は、これまで金融業界の開発業務で培った知識と経験を利用して、金融業界以外の企業向けに新製品 を開発、新市場の開拓にも挑戦しています。
大量データのリアルタイム、高速処理を基盤にする当社の技術で、異業種の業務における潜在的な課題を発見し、解決することで新市場を開拓し、新しい収益の柱として育成します。
2 人財育成
当社の従業員が、プロフェッショナルとしての使命感を常にもち、業務執行において高いレベルを実現すべく、継続的に社内教育のプログラムを整備、充実させていきます。特に、技術分野だけでなく各業務における専門分野の業務遂行能力を高め、人間力を育む施策を重点的に導入します。
3 企業風土改革
当社は、人財の多様性を活用し、組織の能力が最大限発揮できる環境整備を進めることで、企業価値を向上する組織づくりを志向しています。
当社は、従業員が働きやすい、働きがいのある環境を整え、生産性の向上と従業員の成長を促進します。物理的な労務環境の整備、公正な評価制度の導入等を通じて、従業員が事業の推進と当社の成長に参画関与する意識を高めていけるよう努めます。従業員間のコミュニケーションを活性化し、新しい技術や事業に挑戦する企業文化の醸成に努めます。
4 ESG課題への取組み
2021年4月に代表取締役社長を委員長、常勤取締役を主な委員としてサステナビリティ委員会を設置しました。「社会への貢献」「良い企業風土の構築」「多様性の尊重」「地球環境への配慮」その他の実践に係る方針を定め、全社的な活動推進の継続性を確保するための基幹的な組織として活動しています。
重要な社会インフラを担うシステム開発会社である当社にとって、人的資本である従業員等は最も重要な経営資源であり、健康経営宣言のもと健康増進を進め、2022年3月9日、経済産業省指定の「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定されました。また、大規模法人部門のうち、上位500法人を顕彰する「ホワイト500」に初の認定となりました。当事業年度では、サステナビリティに関する4つの重要課題(マテリアリティ)を特定しています。
当社は、ESG経営の考えを社内に浸透させると同時にリスク分析、管理を進め、当社の強みを生かした新たなソリューションの創出につなげ、社会に貢献してまいります。
(4)経営指標
当社は、継続的な収益力の向上の指標として営業利益率を主要な経営指標とし、2024年6月期には15.0%の達成を計画しています。営業利益率の向上は、当社のROE(自己資本利益率)の向上に繋がるものと考えられます。営業利益率の向上を、収益力の向上と事業の効率性の向上を示す指標と位置付け、ROEは当社の資本効率を示す指標とします。
また、当社の資本コストは、7.7%と見積っています。資本コストを上回るROEを追求することで、当社の株主価値の向上を目指します。
| 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 計画 |
営業利益率 | 8.8% | 9.5% | 10.1% | 13.2% | 11.6% | 15.0% |
ROE | 11.3% | 11.4% | 11.6% | 13.5% | 13.8% | ― |
また、事業の効率性を示すもう一つの指標として、従業員一人当たり売上高を指標にしています。
| 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 目標 |
一人当たり 売上高 | 25.3百万円 | 25.1百万円 | 25.4百万円 | 25.5百万円 | 28.0百万円 | 30.0百万円 |
(5)今後の見通し
当社は中期計画の最終年度である2024年6月期に、当初計画どおりの売上高150億円、営業利益22.5億円(営業利益率15.0%)の達成を目指します。2022年8月3日、当社は中期事業計画のローリング方式にて新たな3ヵ年の数値目標を見直し、2025年6月期に売上高165億円、営業利益25億円を開示しましたが、今回ローリング方式による数値目標の見直しは行わず、改めて2025年6月期から3年間の成長戦略を開示することを予定しています。事業構造の変革や事業領域の拡大による事業基盤の強化、拡大を進めるとともに、持続的成長に向けて、人財基盤と共創基盤の確立に取り組み、次の成長戦略に向けての土台を固めます。
a. 事業基盤の強化・拡大
事業構造の変革や事業領域の拡大に取り組むとともに、重要な社会インフラを支える高い品質と性能を維持、向上するために必要な投資を実施し、持続的成長を目指します。
① クラウドサービスを中心としたストックビジネスの拡大
② クラウドサービスのさらなる利用ユーザー増加を見据えたインフラ環境と運用体制の整備
③ 決済・金融事業におけるFEPシステム※のクラウド対応と顧客のIT戦略支援
④ 決済・金融事業で培った技術と経験を活用した新製品開発と事業領域拡大
⑤ セキュリティ事業におけるプロダクト販売からセキュリティサービス提供へのモデル転換
⑥ システム運用体制の整備と運用品質のさらなる向上
※FEPシステム:クレジットカード決済処理に必要なネットワーク接続やカードの使用認証等の機能をもつハードウェア、及びソフトウェア
b. 人財基盤の確立
人的資本経営推進室を新設し、事業戦略に合致した人財戦略を推進します。人的資本投資も計画的に実行し、多様な人財を採用、活用し、人財育成施策を推進することで、高い技術と専門性、及び柔軟な発想を持った人財を育成します。また、働きやすさと働きがいの両立を目指した人事制度の変革により、持続的成長を支える人財基盤の確立を進めます。
c. 共創基盤の確立
共創を軸にビジネスリライアビリティプロジェクトやIWIらしい新しい働き方プロジェクト等を通して組織横断型、社員全員参加型の取り組み、対話を深めてきました。社内においては組織の縦割りを廃し、対話の活性化による有機的な組織連携を推進し、社員間の共創に取り組みます。また、様々な社会問題に対して、ESGへの取り組みを本格化させます。
2024年6月期の業績予想は、売上高150億円(前期比12.2%増)、営業利益22.5億円(前期比44.5%増)、営業利益率15.0%としています。決済事業では不正検知を加速させるほか、事業領域の拡大を図ります。クラウドサービス事業は、2022年6月期以降受注の拡大が続いており、売上を大幅に伸ばす見込みです。利用ユーザー増加を見据えたインフラ環境と運用体制の整備を進めながら、規模拡大を図ります。セキュリティ事業においてもCWATなどの主力製品のクラウド化を加速するほか、アジアでの事業展開を推進、また新規事業ではAIを活用した省人店舗向けソリューション、AIによる日本語校正ツール等が具体化しており、拡大を目指します。2024年6月期も構造改革を推進しますが、品質強化、人的資本、ESG課題等に向けて経営資源を積極的に投入しながら、営業利益最高益を目指します。
(参考)中期事業計画
(単位:百万円)
| 2022年6月期 (実績) | 2023年6月期 (実績) | 2024年6月期 (計画) | 2025年6月期 (計画) |
売上高 | 11,493 | 13,374 | 15,000 | 16,500 |
営業利益(率) | 1,519 (13.2%) | 1,556 (11.6%) | 2,250 (15.0%) | 2,500 (15.2%) |
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