他社比較
伊藤忠テクノソリューションズ 企業概要
(1) 会社の経営の基本方針
今日、ITは企業経営の根幹として重要な一役を担い、その役割は情報処理から経営戦略の構築、更にはビジネスモデルの創出へと一層重要度を増しています。当社グループでは、CTCの由来である「Challenging Tomorrow's Changes」をグループ全体のスローガンとして、日々変化を遂げる顧客の事業環境変化に機敏に対応し、顧客価値を提供する企業たるべく挑戦し続けることにより、事業活動等を通じて夢のある豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えております。
また、中長期的な企業価値向上を目指し、サステナビリティに関する基本的な方針を策定しております。当社グループは、サステナビリティ方針に沿い、マテリアリティ(重要課題)に関わる取り組みを推進することにより、ビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、事業規模の拡大並びに営業利益率の向上を追求した経営により、成長性と安定性を兼ね備えた高収益体質の企業を目指してまいります。また、資本効率を重視し、株主価値の更なる向上に努めてまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループでは、CTCグループ企業理念のMission(使命)「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する。」を目指す姿とした、中期経営計画(2021年4月から2024年3月までの3か年)「Beyond the Horizons ~その先の未来へ~」を策定しております。具体的には以下3つの基本方針を着実に実行することで、2024年3月期の目標達成を目指してまいります。
なお、中長期を見据えたセグメント別の取り組みは次のとおりであります。
① エンタープライズ事業
・DXビジネスへの加速
当事業セグメントは、中期経営計画で掲げる「DXビジネスの加速」実現に向け、推進力を強化しています。データの価値が更に高まる中、データ活用を基軸とした “データファースト”に注力し、DXトラステッドパートナーへと進化します。併せて、お客様・外部パートナーとの共創スキームやグリーントランスフォーメーション(GX)、ライフサイエンス・ヘルスケア分野における新たなビジネスの創出も進めていきます。
・クラウドジャーニーを総合的にサポートする技術・開発体制の強化
強みであるクラウドを活用した開発・インフラ構築の技術力向上とともに、外部パートナーとの連携を進めることで、対応力を更に強化します。また、従来からの強みであるベンダーリレーションの継続強化に加え、新規製品・ソリューションの開発、クラウド環境下でのセキュリティビジネス拡大を積極的に推進していきます。
・持続的な成長に向けた新たな挑戦
DXの次にあるビジネス環境を見据えた技術テーマを検討し、新たな付加価値につなげていきます。
② 流通事業
・小売/流通事業のDXビジネス対応
当事業セグメントは、流通分野におけるDXビジネス活性化を担う横断組織を設置し、社会の価値観やライフスタイルの変化への対応が迫られている顧客ニーズを的確に捉え、お客様のDXビジネス展開を支援する事業セグメントとして活動しております。流通分野における基幹/業務システムの開発及び運用で培ったプロジェクトのマネジメントノウハウに加えて、データマネジメントやAI等の新技術を活用することで新規ソリューションの創出と展開を図りビジネス拡大を目指します。
・基幹系開発/運用ビジネスの深化
基幹/業務システムの開発及び運用についても引き続き注力していきます。新たな技術・開発手法を採り入れて開発/運用のレベルアップを図るとともに、ERPパッケージ導入案件の獲得にも積極的に取り組みます。特に、国内では事例の少ないSAP S/4HANA®マイグレーションを市場に先駆けて実施した経験とノウハウを活かすとともに、DX時代の基幹システムに求められるマルチクラウド基盤を整備し「基幹システムの標準化=Fit to Standard」の実践に取り組むことで、SAPビジネスの拡大を積極的に推進していきます。
・新技術獲得と品質向上
ビジネスのデジタル化が急速に進展する中で、お客様との関係性強化と、新技術に関する知見の蓄積が重要であると認識しています。社内外のリソースを活用した人材の能力向上、品質及び生産性の継続的な向上にも注力し、より高付加価値の製品・サービスを提供できる事業セグメントへと成長していきます。
③ 情報通信事業
・通信キャリアサービスへの貢献
当事業セグメントは、移動通信システムの高度化に伴い、モバイル端末からインターネットへの接続サービスの構築及び高速化や、スマートフォンに代表される大容量データの送受信を支えるバックボーンネットワークの構築等、時代に即した最新技術を通信キャリアへ提供することで、通信サービスの発展に貢献してきました。
5Gにおいては、あらゆるものがネットワークにつながることで、全産業のデジタルビジネスが加速していくことが予想されます。それに伴い、通信キャリア各社は従来の通信事業を中心とした事業戦略だけではなく、5Gインフラの活用によって各企業と協業し、各産業のビジネスモデル変革を実現する方向へとシフトを進めています。
・5Gを“作る”ビジネス、“使う”ビジネスの推進
5Gは2023年度末人口カバー率95%の計画達成に向け整備が進んでおり、携帯電話向け通信インフラストラクチャとして4Gの10倍以上の速度で通信を行うことが可能となりました。当社における5Gを“作る”ビジネスでは、通信キャリア各社が持続して安定したサービスを提供できるよう、継続して効率的なネットワークシステムの提供に努めていきます。
5Gネットワークは新たな役割としてデジタル基盤になることを期待されています。5Gを“使う”ビジネスでは、サービスプラットフォーム、アプリケーションに注力し、5Gネットワークが持つ機能を有機的に活用することで、“Society 5.0(サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合)”社会の実現を目指します。
通信事業者がデジタル基盤の機能を官民学に開放し、協創することで、「社会課題の解決」「経済活性化」「あたらしいモノとコト」を実現していくことを支えます。
また、5Gネットワークのデジタル基盤化に向け、これまで培ってきたネットワーク技術に加えクラウドネイティブ技術を核として、AI、Crypto、Edge Computingなど新たに生まれたデジタル技術にも積極的に取り組んでいきます。
5Gがプラットフォームとなり、企業による循環型経済の実現や自治体による豊かな社会活動を実現するとともに、Beyond 5G時代における「超スマート社会」の実現へとつながっていくと当社では予測しています。
当事業セグメントは、主なお客様である通信キャリア各社が、全産業や社会活動に向けて5Gを駆使したDXのイネーブルメントを推進していく際に、5G/Beyond 5Gを“作る”と“使う”の両面における強力なビジネスパートナーとしての地位を確立していきます。
・事業領域拡大への挑戦
中長期的な事業領域拡大へ向け、国内事業の強み(情報通信技術、製品購買力等)のグローバル展開を目指します。
④ 広域・社会インフラ事業
・地域社会の変革に貢献
当事業セグメントは、日本全国における社会インフラ分野及び中央省庁や地方自治体、文教、地銀、並びに首都圏以外に本社を構える企業全般のお客様を担当しています。お客様が抱える経営課題は、少子高齢化や人口の都市集中、新型コロナウイルスによる働き方改革や非対面業務へのシフトといった社会の変化に大きく影響を受けたものであることが特徴です。中央省庁、地方自治体を中心とした地方創生の支援や再編が進む文教、地銀へ向けた支援に注力し、地域イノベーションの先導役として地域社会の変革に貢献していきます。
・先端技術領域でNo.1のSIパートナー
当事業セグメントは、特に担当産業領域や地域が広く、お客様が解決すべき課題も多岐にわたることから、先端技術にも対応しながら経営効率を確保することが重要です。既存のITインフラ構築の強みに加えAI・IoTを中心とした先端技術を用いた開発SI/DXビジネスに注力することで、先端技術領域でNo.1のSIパートナーになることを目指します。
⑤ 金融事業
・お客様のDXへの対応力向上
当事業セグメントは、銀行・証券・保険・ノンバンクといった金融機関を担当しております。強みとする市場・リスク管理システム及びクレジットカード基幹システムについては、国内外の金融規制の対応や、キャッシュレスの進展と普及などへの対応ニーズが高く、継続的な重点領域としています。一方、新型コロナウイルスの影響の長期化と国内外の政治・経済環境の変化を受け、お客様は抜本的な構造改革による経営基盤回復に向け「DX・経費削減」を骨子とした中期経営計画を掲げ、新しいビジネススタイルやビジネスモデル構築のためのIT投資が増加する見通しです。また、法改正により金融業態間及び他業種の金融業への参入の機会は増しており、金融サービスへのIT投資の裾野は拡大しております。当事業セグメントは、この潮流を牽引すべく、先端技術や新たな金融サービスへの対応力を高め、ビジネス領域の拡大を目指します。
・金融市場の環境変化へグローバルネットワークで支援
金融機関のグローバルビジネスは、成長著しいアジア圏を中心に引き続き積極的な事業展開が見込まれます。東南アジア商圏の更なる拡大や、海外事業会社、パートナーとの連携による北米商圏でのビジネス強化など、当社グループのグローバルネットワークを活用し、お客様のビジネスを支えます。
⑥ ITサービス事業
・OneCUVICの推進
当事業セグメントは、クラウドを軸に全社のリカーリングビジネスを支え、当社グループの持続的成長に貢献していきます。
マネージドサービス及びクラウドインフラストラクチャを含むITサービス市場は今後も堅調な拡大が予想され、当社グループにとって引き続き強化すべき領域と捉えています。本領域ではデジタル化による競争力強化を目的にハイブリッドクラウド環境への移行やアプリケーションのクラウドネイティブ化を進める動きが活発になっております。また、このような中、必要となる機能は多様化しており、これら様々な機能をエンタープライズ品質で組み合わせ、セキュアな運用を含めた高品質なサービスとして提供することが今後更に求められます。
当社グループではこのようなニーズに対し、オープンなハイブリッドクラウド環境を継続的に最適化して提供するサービス群「OneCUVIC」を展開しており、今後も更にこの取り組みを強化していきます。
具体的には、
「AIを活用した高度なマネージドサービスとハイブリッドクラウド一元管理機能によるワンストップ運用サービスの拡大・強化」
「アプリケーションのクラウドネイティブ化への対応力強化」
「IBM社、Megazone社、デジタルエッジ社との協業深化や新たなパートナー開拓による事業領域の拡大・強化」
「複雑化する環境を守るセキュリティサービスの高度化」
これらを通じたUX(User Experience)向上と一層の事業規模拡大を図っていきます。
⑦ その他
・DXを起点に独自の新しい価値を創出
未来技術研究所は、中長期的な視点で地球温暖化、労働力不足、地方活性化などの社会課題とビジネスとの融合を図り、イノベーションプログラム「DEJIMA」/コーポレートベンチャーキャピタル「CTC Innovation Partners」活用によるお客様とパートナーとの連携を強化し、新規事業創出を目指します。
特にグリーントランスフォーメーション(GX)、スマート物流、スマートタウンの3領域を重点テーマとし事業探索を強化していきます。
・全社のDXビジネスを推進
DXビジネス推進事業部は、セグメントとの緊密な連携と協業を実施しながら案件特性に応じた最適なプロジェクトチームを構築し、DXビジネスの上流工程からアプローチを行い、お客様のビジネスのトランスフォーメーションに貢献していきます。
・海外でのCTC品質のデリバリーと目利き力の更なる強化
グローバルビジネスグループは、海外事業会社において、当社グループの国内でのビジネスモデルを展開し、収益拡大を目指します。
海外事業会社においても当社グループの強みであるベンダーリレーションを活かし、CTCの品質でサービスを提供することにより、従来からの現地顧客の深堀と新規顧客の獲得を図るとともに、海外に展開する日本企業の現地支援を行います。また、北米を中心とした先端技術や新規商材の発掘活動により、各事業セグメントによる国内のお客様に対する更なる付加価値の拡大に貢献していきます。
<2024年3月期 定量目標>
中期経営計画「Beyond the Horizons ~その先の未来へ~」にて定めた当初目標について、足元の状況を踏まえ、次のとおり見直しております。
| 2022年3月期 実績 | 2023年3月期 実績 | 2024年3月期 目標 |
| 中期経営計画 2024年3月期 当初目標 |
営業利益率 | 9.7% | 8.1% | 9.3% |
| 10% |
当社株主に帰属する | 354億円 | 342億円 | 400億円 |
| 400億円 |
ROE | 13.2% | 11.8% | 13.0% |
| 13%以上 |
<2024年3月期 連結業績予想>
2024年3月期の連結業績予想は次のとおりであります。
(金額単位は百万円。%表示は、対前期増減率。)
| 売上収益 | 営業利益 | 税引前利益 | 当期純利益 | 当社株主に 帰属する 当期純利益 |
通期 | 625,000 | 58,000 | 58,500 | 40,500 | 40,000 |
9.5% | 24.8% | 24.7% | 19.9% | 16.9% |
(4) 会社の対処すべき課題
当社グループは、創立当初より業界動向や技術動向を常に先取りし、高い技術力を持つ国内外のIT先進企業との強固なパートナーシップを活用しながら、あらゆる業界の顧客のニーズや社会課題の解決に広く貢献してまいりました。
昨今の当社グループを取り巻く環境につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により社会全体のDXが加速する中、顧客のIT投資の目的がコスト削減や業務効率化などから、自社の競争力の向上や新たなビジネスモデルの変革へと変化しております。
また、これらを実現するためのITシステムも、クラウドコンピューティングの普及・拡大に伴い、所有からサービス利用、あるいはそれらの組み合わせと、選択肢が広がっています。
このようにITサービスに対するニーズは高度化、多様化してきており、かつ技術は急速に進歩しております。
当社グループは、今後更なる成長に向け、従来の「強い領域におけるさらなる探求と市場拡大」に加え、「顧客の変革を支える新たな取り組みを加速」することが必要と考えております。具体的には、「“つくる”を土台にした5Gビジネスの拡大」や「高付加価値サービス、先進技術の提供」を通じた顧客業務、顧客事業、そして生活者の日常のDXに取り組んでまいります。
また、当社グループの競争優位性を高めるべく、新技術への対応力についても更なる強化が必要と考えております。従来より注力しているAI・IoTなどに関する先進技術やアジャイルなどの新たなアプリケーション開発技術、次世代ネットワーク技術などの開拓はもとより、DXコンサル・デザインコンサルなどの高付加価値サービスの提供に向け、新たな領域の知見を有する技術者の育成に一層注力してまいります。
これらを実践していく優秀な人材の確保のため、新卒・キャリア採用活動を強化するとともに、社員が自分らしく働きがいをもって効率的・効果的に働けるよう、「働く時間」や「働く場所」を含む働き方の選択肢を広げる環境整備や、年齢、性別、性自認や性的指向、国籍、障がいの有無等を問わず、多彩な個性の自己実現を可能とするダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進にも積極的に取り組んでおります。
なお、物価上昇、金融資本市場の変動などにより先行きの不透明な環境が続くと見込まれますが、内外経済、顧客、取引先、及び当社グループへの影響を注意深く見極めながら、機動的に必要な施策を講じるよう取り組んでまいります。
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