他社比較
電通グループ
企業概要
(1) 新中期経営計画
2025年度以降も予断を許さない事業環境が予想されるなか、業界内外での巨大プレーヤーの台頭やテクノロジー企業、コンサルティング企業等による巨額のAI投資といった要因が競争環境を激化させ、当社グループのポジションも相対的に変化していくことが想定されます。こうした環境認識の下で、過去のM&A偏重の成長戦略を見直し、当社グループが力強いオーガニック成長に回帰するために策定したのが、新たに発表した中期経営計画です。本計画の実行を通じて、事業ポートフォリオの見直しを行い、資本・人財を集中させ、競争優位性を回復することで、最終年度である2027年度にオーガニック成長率4%、オペレーティング・マージン16-17%まで回復することを目標としています。
(2) 不振ビジネスの見直しと経営基盤の再構築
中期経営計画の目標達成に向けて当社グループがまず着手する取り組みが不振ビジネスの見直し・経営基盤の再構築を中心とした収益性の回復です。不振ビジネスの見直しにおいては、投下資本が大きく、複数年連続で最終赤字となったマーケットが当社グループの業績悪化の主要因となっている現状を踏まえ、スピード感を持って対策を進め、2026年度中に赤字マーケットをなくすことを目指します。また、過去の買収案件についても規律を持ってレビューを行っており、業績面で基準に満たない事業は、改善策の早期実行・売却などを迅速に進めることで将来における業績悪化リスクを排除します。
これらを通じ、2026年度には海外事業全体を回復軌道に乗せ、2027年度には全4事業地域(リージョン)がそれぞれ株主価値の向上に貢献する状態を目指します。
併せて、経営基盤の再構築を行い、計画的かつ持続的なコスト改善に取り組みます。具体的には、東京とロンドンに分散・重複していた本部機能の統合、各リージョン本部の役割再定義による業務簡素化、マーケットのコストコントロール等に注力し、AIやアウトソーシングの活用も含めた徹底的な効率化を通じて2027年度に最大で年間500億円規模のコスト削減効果を見込んでいます。
(3) 事業戦略のフォーカス
当社グループがクライアントに提供するサービスは、マーケティング、テクノロジー及びコンサルティングが融合する領域並びにスポーツ&エンターテインメント領域において、保有するユニークで多岐に渡るケイパビリティを統合し、クライアントの持続的な成長を実現する「インテグレーテッド・グロース・ソリューション」です。それを下支えする当社グループの強みは、日本で培ったクライアントビジネスへの深い理解に基づいて構築されたクライアントとの長期的な関係、クライアントの複雑なニーズに応えるマーケット毎の特色ある革新的なソリューションによる連続的なイノベーションの提供、それらを確実に実現し社会に大きなインパクトを生み出す人財、の3つです。新中期経営計画においては、これらの強みをベースに各マーケットにおけるクライアントのグロースパートナーとなることを目指します。そして、この成功を積み上げることでグローバルでの成長を実現していきます。
(4) 株主価値・資本効率を重視した経営及び財務方針
前述の戦略と施策は利益成長を通じて中長期的な株主価値の向上を目指すものですが、その実現を確かなものとするため、ROEを経営指標に追加いたしました。具体的には2027年度にはROE10%台中盤の達成を目標としております。この目標を達成するため、改めて財務方針を設定し、規律を持って管理・運用してまいります。必要となる資金の規模を厳密に見極め、資本と負債とのバランスなどを慎重に管理し、バランスシートの健全性を改善してまいります。その上で、キャピタルアロケーションにおいては、まず2025年度に実施する経営基盤の再構築に係る費用、及び事業成長のための内部投資を優先し、業績の再建を進めます。また、株主視点での経営を継続し、2025年度以降の配当方針としては、基本的1株当たり調整後当期利益に対する配当性向を35%とします。なお、構造改革費用投下が先行する2025年度は、一時的措置として、当期と同額の1株当たり139.5円を予定しております。買収などの投資は、2024年度以降抑制しておりましたが、M&Aプレイブック等の整備により十分な規律が担保できる状態となったことに伴い、従前より厳格な規律の下で、業績回復の進捗や見通しに応じて徐々に再開し、事業戦略に整合した案件を選択的に実施してまいります。なお、財務方針の管理・運用にあたっては、取締役会の諮問機関として2024年度に新設された、社外取締役を中心に構成されるファイナンス委員会と連携し全般的な財務規律を強化します。
(5) ガバナンス及び内部統制の向上
当社グループは、One dentsuオペレーティング・モデルの適切な運用に向けて、グループ横断でのガバナンス体制の構築、責任者の明確化、事業運営の簡素化等を通じたガバナンス及び内部統制の向上に引き続き努めてまいります。当該取り組みの進捗については、取締役会等でも定期的に確認しております。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関する独占禁止法違反被告事件について「テストイベント計画立案等業務」において法令違反の談合行為があったことを厳粛に受け止め、真摯な反省に基づく再発防止の取り組み等を説明・実施してきました。一方で、判決は法令違反の対象が「テストイベント実施等業務」「本大会運営等業務」にも及ぶとしており、その点については当社グループの主張と異なることから控訴しております。2023年度に策定した改革の17施策は2024年度に全て完了しましたが、従業員調査などを通じて確認した課題への対応については、2025年度より新たな体制で意識行動改革を推進いたします。
博報堂DYホールディングス
企業概要
当社グループを取り巻くビジネス環境は大きな変革期を迎えております。生活者があらゆるものの中心となる、「生活者主導社会TM」が本格的に到来したことに加え、生活者や企業の行動においてサステナビリティが重要なファクターとなりつつあります。また、AIなど先端テクノロジーやデジタルインフラの充実により産業構造が変化すると同時に、テクノロジーによる人の能力や可能性の拡張が進行しています。このような中、広告・マーケティングのみならず、ビジネスモデルの変革や顧客接点の質的向上に対する企業のニーズが高まっています。
当社グループは、このような大きな変化の中で、広告会社をオリジンとしつつも、その枠を超えた価値を提供するグループとして事業構造を変革し、ビジネスを拡大することを目指しています。不確実かつ変化の激しい環境下で、グループ全体での変革を進めるためには、その判断軸・動機づけの根幹となる当社グループの存在意義やそこで働く事の意味合いを明確に示すことが重要であると考え、グローバル市場・グローバル社会の視座に立った当社グループ共通の価値観として、グローバルパーパス「生活者、企業、社会。それぞれの内なる想いを解き放ち、時代をひらく力にする Aspirations Unleashed」を策定しました。
このグローバルパーパスを全ての企業活動の起点に据え、当社グループのクリエイティビティをエッジに、生活者・企業・社会をつなぎ、新たな関係価値を生み出すことで、広告会社グループから「クリエイティビティ・プラットフォーム」となることを目指します。
(1) 中期基本戦略
当社グループが新たな関係価値を生み出す事業領域として、「マーケティング」「コンサルティング」「テクノロジー」「コンテンツ」「インキュベーション」「グローバル」の6つの事業領域を設定しました。これら6つの事業領域は、それぞれが異なるビジネスモデルによって収益拡大を図ると同時に、相互に連携し更なる収益拡大と事業の安定性向上を目指します。現中期経営計画期間(2025年3月期~2027年3月期)を収益性の改善と成長オプションを創造する期間と位置づけ、マーケティングビジネスの構造改革と新たな成長機会の開発に注力します。そして、2032年3月期をターゲットに、6つのビジネス領域を確立し相互連携を行うとともに、利益構造を大きく変革することを目指します。
この基本戦略に基づき、以下に掲げる3つの取り組みを進めます。
(2) 収益性の改善と成長オプションの創造
・マーケティングビジネスの構造変革
統合マーケティングに対するニーズが拡大する中、事業会社間の連携強化と収益モデルの多様化を進め、グループとして最適なサービス設計・提供体制を構築します。
当社グループがこれまで培ってきたノウハウ、テクノロジー、集積してきた生活者データを結集することで、自社開発マーケティングシステムである「統合マーケティングプラットフォーム」の開発と実装を推進し、“生活者データ・ドリブン”フルファネルマーケティングの高度化、効率化を実現します。
また、成長を続けるデジタルマーケティング領域、コマースビジネス領域を強化することで、規模の拡大を実現します。特に、デジタルマーケティング領域では、グループのリソースとノウハウを集約した新会社“Hakuhodo DY ONE”を2024年4月に設立し、フロントラインの最適化、QCD(クオリティ・コスト・デリバリー)の改善、プラットフォーマー対応機能強化を通じて、競争力の強化と生産性・収益性の向上を目指します。
・新たな成長オプションの創造
当中期経営計画の3ヵ年の間、「コンサルティング」「テクノロジー」「コンテンツ」「インキュベーション」の各領域に対し積極的な投資を行い、事業基盤を構築することで、グループの収益の柱として育成します。
・グローバルビジネスのリモデル
海外に拠点を置くグループ各社が、それぞれ個別戦略の推進とサービス提供エリアの拡張を遂行すると同時に、グループ内連携を強化します。戦略事業組織kyuの持つ専門性・先進性と、博報堂の生活者発想をかけあわせることで、ユニークな“モダンネットワーク”を形成し、デジタルマーケティング領域を中心に収益力を強化します。加えて、M&Aによる非連続な成長機会の探索を継続します。
(3) グループ経営基盤の強化
前中期経営計画期間に設立した、株式会社博報堂テクノロジーズ、株式会社博報堂DYコーポレートイニシアティブの2社をはじめとしたグループ共通基盤の強化を継続することで、グループとしての競争力を高めます。
(4) サステナビリティ経営の推進
当社グループは、人を中心としたサステナブルな経営により社会への価値創出を目指します。社員、株主、取引先、メディア、コンテンツホルダー、各種団体をはじめとするマルチステークホルダーとの適切な協働に取り組み、生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現を目指しています。
サステナビリティ経営の進捗に関しては、環境及びジェンダー平等に対する目標値を設定し各種取組を進めております。環境課題については、2050年度のカーボンニュートラルを目標としており、中間指標として2030年度のスコープ1+2の排出量を2019年度(2020年3月期)比で50%削減する目標を設定しております。また、ジェンダー平等については、2030年度までに管理職の女性比率30%の達成を目指しています。
今後は、ESG各領域でサステナビリティ経営を推進すると同時に、社会課題に対応する人材の育成を行い、生活者の想いがあふれ、いきいきと活躍できる社会の実現を目指します。
(5) 中期経営計画における目標
当社グループは、2025年3月期から2027年3月期までの3カ年を収益性の改善と成長オプションを創造する期間と位置付けており、「成長性の維持・向上」「収益力の強化」を踏まえた計画値としました。新たな中期経営目標は、以下のとおりです。
<中期経営目標(2027年3月期)> |
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調整後のれん償却前営業利益年平均成長率(注1) | :+10%以上 |
調整後売上総利益年平均成長率(注2) | :+5%以上 |
調整後のれん償却前オペレーティング・マージン(注3) | :+13%以上 |
のれん償却前ROE(注4) | :10%以上 |
(注1) | 調整後のれん償却前営業利益年平均成長率とは、メルカリ株売却益を除いた主力事業における、企業買収によって生じるのれんの償却額等を除外して算出される連結営業利益の、2025年3月期の実績から2027年3月期までの3年間の年平均成長率のこと。 |
(注2) | 調整後売上総利益年平均成長率とは、メルカリ株売却益を除いた主力事業における、2025年3月期の実績から2027年3月期までの3年間の年平均成長率のこと。 |
(注3) | 調整後のれん償却前オペレーティング・マージン=調整後のれん償却前営業利益÷調整後連結売上総利益 |
(注4) | 企業買収によって生じるのれんの償却額等を除外して算出される親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本(期首・期末平均) |
上記に掲げた中期経営目標の達成に向け、掲げた中期基本戦略に則り、グループの変革を着実に進め、中長期での大きな成長と、企業価値の向上を目指してまいります。
なお、連結子会社である株式会社博報堂におきまして、取引先様に対し過大請求が行われていたことが判明しております。同社は2023年10月に外部の弁護士を委員とする調査委員会を設置し、引き続き徹底的な調査を行っております。
また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関して実施された各テストイベント計画立案等業務委託契約等(本業務)に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、連結子会社である株式会社博報堂と本業務に従事していた株式会社博報堂DYメディアパートナーズの社員1名が2023年2月に東京地方検察庁より起訴されました件につきましては、現在裁判中ですが、両社においては特別検証委員会からの提言も踏まえ再発防止策の実施を徹底しております。
加えて、連結子会社である日本トータルテレマーケティング株式会社において、取引先様に対し過大請求が行われていたことが判明しております。同社は2024年3月に外部の弁護士を委員とする調査委員会からの最終報告を受け、経営体制の変更を行い、社内の意識改革及び過去の不正の清算に取り組んでおります。
上記各事案の発生により、株主をはじめとするステークホルダーの皆様に多大なご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。当社といたしましては、取引先様や各ステークホルダーとの信頼関係を揺るがす重大な事案であると考えており、再発防止策の策定と実行を進めております。
当社グループでは、当社代表取締役社長CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を委員長とし、各グループ会社の代表取締役社長CCOを委員とする「グループコンプライアンス委員会」により、グループ全体のコンプライアンス活動を推進する体制としております。加えて、2024年4月に、「グループコンプライアンス室」を新設し、当社と各グループ会社のコンプライアンス関連部門の連携を強化することとしました。また、株式会社博報堂及び株式会社博報堂DYメディアパートナーズにおいて発生した事案の再発防止の徹底を企図し、株式会社博報堂の代表取締役社長を委員長とする「ビジネス意識・行動改革委員会」を設置し、コンプライアンス推進のPDCAサイクル強化を図るとともに、その内容についても、当社「グループコンプライアンス室」がグループ全体に共有し、各社における実践を推進する体制としております。
引き続き、法令遵守の徹底と再発防止及びコンプライアンス意識のさらなる向上により信頼の回復に努めてまいりますので、株主の皆様におかれましては、何卒変わらずご支援を賜りますようお願い申し上げます。
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