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星3つ 企業兼大株主住友化学  企業概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進しております。

 当連結会計年度においては、2022年度から2024年度までの中期経営計画に従い、引き続き、食糧、ICT、ヘルスケア、環境の4分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んでまいりました。

 これに基づき、当連結会計年度に計上された研究開発費は、前連結会計年度に比べ388億円減少し、1,452億円となりました。

 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 アグロ&ライフソリューション分野では、世界の食糧増産、健康・衛生や環境の改善といった課題解決を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するため、環境負荷低減効果を重視した技術による新製品やアプリケーション、競争力のある製造プロセスの開発を加速化し、コア事業のさらなる強化と周辺事業の拡大に取り組んでおります。

 当連結会計年度において、国内農業関連事業については、新規有効成分「ピリダクロメチル」を含有する殺菌剤「フセキフロアブル」を上市いたしました。「ピリダクロメチル」は、当社が独自に発明した、農業用殺菌剤として全く新しい化学グループに分類される化合物です。「フセキフロアブル」は、既存薬剤の耐性菌が問題となっているダイズ紫斑病やテンサイ褐斑病の防除に寄与することが期待されております。また、近年上市しました殺虫剤「アレス」、殺菌剤「カナメ/モンガレス」についても、新製品の開発を進めております。さらに、省力化・環境負荷低減技術の開発やDXの活用を通じて農業生産者への革新的なソリューションの提供を拡大すべく、農薬、肥料、コメ事業の製品ポートフォリオ拡充及び付随するサービスに関する研究開発を進めております。海外農業関連事業においては、新規有効成分「ラピディシル」を含む除草剤「エンペラ」をアルゼンチンで上市いたしました。当製品の上市は、今回が世界で初めてとなります。「ラピディシル」は、当社が独自に開発した除草剤有効成分で、殺菌剤「インディフリン」とともにブロックバスターになる有効成分と位置付けております。速効性があり、幅広い広葉雑草やイネ科雑草に対して高い効果を発揮することから、リジェネラティブ(再生可能)農業の一つとして注目される不耕起栽培に適した性能を有しており、土壌保全と二酸化炭素排出量の削減によるカーボンニュートラルへの貢献が期待できます。「ピリダクロメチル」及び「ラピディシル」の上市により、2020年から2024年までの5年間に上市した当社有効成分は世界の農薬業界で最多の5剤となりました。また、有効成分「インディフリン」含有製品をブラジル・アルゼンチン・オーストラリアで上市し、当社新規殺菌剤「パベクト」は欧州及び南米市場向けに鋭意開発を進めております。コルテバ・アグリサイエンス社との種子処理技術の開発、商業化プロジェクトにも引き続き取り組んでおります。さらに、当社が戦略的分野と位置付けているバイオラショナル事業では、米国のFBサイエンス社の買収を通じ、成長著しいバイオスティミュラント分野への本格参入を果たしました。バイオスティミュラントは天然物由来の農業資材で、非生物的ストレスに対する防御機能を誘導し作物の健全な成長を促すとともに、栄養素の吸収を促進することによって作物の品質改善や増収効果をもたらします。当社は、化学農薬、バイオラショナルの強固な基盤をもとにリジェネラティブ農業への貢献を追求いたします。

 生活環境事業については、重点強化領域の市場セグメントにおける新製品の開発と製品群の拡充を推進しております。引き続き強い市場ニーズのある天然物由来製品を強化すべく、新規ボタニカル有効成分「ベラトリン」の米国での登録を取得いたしました。「ベラトリン」はユリ科の植物サバジラの種子からの抽出物で、幅広い害虫への作用が期待されます。また、ハチ用エアゾールの新製品「オンスロート パワーショット」を米国で上市する等、さらなる新製品の開発に取り組んでおります。熱帯感染症対策資材分野では、抵抗性を持つ蚊へ卓効を示す室内残留散布剤の販売に取り組むと同時に、蚊の発生源対策として幼虫防除用新製品の普及を引き続き進めていくことで、長期残効性蚊帳と併せて熱帯感染症を媒介する蚊に対して総合的な防除を可能とする製品普及に取り組んでおります。また、抗菌・抗ウイルス・アレル物質低減分野において製品の拡充を進め、抗バイオフィルム製品の開発・販売も展開しております。

 アニマルニュートリション事業については、競争力強化のためメチオニンのプロセス改善等の合理化に加え、機能性飼料添加物分野における製品ラインナップ拡充のため、飼料効率の改善と安心・安全な畜産物生産に貢献できる新規製品の開発に取り組んでおります。また、近年問題となっている家畜排泄物由来の温室効果ガス(GHG)の低減を目的として、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構や国内大学等との共同研究プロジェクトに参画し、引き続きメチオニンを含むアミノ酸バランス改善飼料の技術普及を推進しております。

 なお、アグロ&ライフソリューションセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は306億円であります。

 ICT&モビリティソリューション分野では、グローバルな技術・研究開発能力を結集し、AI時代の先端技術進化を支える新製品の開発に積極的に取り組み、高成長・高収益を目指してまいります。

 当連結会計年度において、半導体分野においては、生成AIの普及と進化に伴う技術革新によって生じる新たな市場に対応すべく、研究開発リソースを重点的に投入しております。前工程用材料では、半導体集積度向上という命題に対し、微細加工分野において、当社独自の有機分子レジストにより、最先端技術である次世代超短波長EUV(極端紫外線)光源向けフォトレジストの性能の向上を図るとともに、最新の液浸ArFレジストのラインナップ拡充により、先端レジスト分野でのトップシェアをターゲットとしております。また、洗浄工程で使用される高純度ケミカルでは、pptオーダーの不純物管理を含む高品質化を実現するため、プロセス・分析技術の開発を推進しております。一方、技術転換期にある後工程用材料については、多層配線用厚膜レジストや特殊プロセス向け洗浄剤などの分野で実績を積み重ねると同時に、さらなるラインナップの拡充を目指しております。韓国をはじめとした海外拠点とのグローバルな連携により研究開発体制を一層強化することで、次世代材料の開発・事業化を加速してまいります。

 さらに、化合物半導体製造技術を基盤に、今後大きな成長が期待されている次世代パワー半導体用材料として、大口径のGaN(窒化ガリウム)基板の開発に注力しております。また、世界に先駆けて量産を開始した超微粒αアルミナについて、これら次世代半導体用の研磨材用途としての展開に加え、高強度・耐薬品性・透光性が求められる半導体製造装置用部材への応用開発も進めております。生成AI関連需要を捉えて半導体用電子部品へのスーパーエンジニアリングプラスチックの需要も増大しており、高精細化に対応する液晶ポリマー(LCP)グレード開発にも精力的に取り組んでおります。

 ディスプレイ分野においては、主に中小型モバイル用途のOLEDディスプレイに対し、当社独自のキーコンポーネントである液晶塗布型位相差フィルムや液晶塗布型偏光子を用いた、薄型で耐久性や折り曲げ特性に優れた偏光フィルムを積極的に拡販しております。また、自動車の技術革新に伴って拡大する車載用ディスプレイ市場に向けて、次世代の高耐久・広視野角偏光フィルムの開発も強化しております。加えて、超高精細OLEDディスプレイをはじめとする次世代ディスプレイへの応用が期待される低温硬化カラーレジストの開発にも注力しております。引き続き、多様化が進むディスプレイ市場に対応する新規機能性フィルムや各種高機能材料の開発・事業化を加速してまいります。

 成長著しいモビリティ及び高速通信分野においては、信頼性が要求される電動車向けに液晶ポリマー(LCP)のグレード開発を強化するとともに、リチウムイオン二次電池用各種部材についても、性能向上の要請や需要拡大に応えるべく、開発を推進しております。耐熱セパレータでは、性能向上とコスト削減を両立させる技術開発が進捗し、新規顧客での採用が広がっております。また、京都大学産学共同研究講座「固体型電池システムデザイン」では、圧力を加えなくても電極との界面接合が可能になる柔軟な固体電解質の実用化に向けた材料開発が進捗しております。併せて、高速・大容量通信、省エネ、自動運転等の技術を支える高周波デバイス用各種エピウェハの設計開発にも力を入れるとともに、IoTや大容量・高速通信のニーズの拡大に応える高速通信向けフィルムアンテナの開発と市場開拓も戦略的に進めております。

 これらに加えて、培った材料や技術のライフ&ヘルスケア分野への展開も行っております。機能樹脂材料においては、ポリエーテルスルホン(PES)の、高機能膜向けの材料開発を積極的に進めるとともに、食器などの生活関連資材や医療関連資材に用途開拓に力を入れております。また、世界初の固体ポリマー型温度調節材料を用いた繊維開発に成功し、接触・持続冷感性や持続温感性を活かした、温度調節が求められる衣服への実用化に取り組んでおります。無機材料においては、今後の市場拡大が見込まれる人工関節や歯科材料を対象に、超微粒αアルミナを活用したユーザーとの共創を積極的に進めております。

 さらに、蓄積した事業ノウハウ・ネットワークを活かして、今後の成長が期待されるサーマルマネジメント分野などの新事業領域へ挑戦し、革新的で高機能な製品の開発を推進することで、ポートフォリオの高度化と価値創出の実現に取り組んでおります。

 なお、ICT&モビリティソリューションセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は314億円であります。

 アドバンストメディカルソリューション分野では、「高度な製造・管理・分析技術を駆使したソリューションの提供を通じ“化学とバイオの力”で世界中の人々の健康と未来を支える」ことをビジョンに据えて活動に取り組んでおります。このビジョンのもと、オーガニックな事業成長を推進するとともに先端医薬領域における飛躍的成長戦略を具体化し新たな当社事業の柱の一つとすべく、長期的な育成に取り組んでおります。

 当連結会計年度において、高度化低分子CDMO事業については、当社の有機合成プロセスの技術力を駆使した新薬の受託製造品目の拡充、ジェネリック原薬の製法開発、及び新規製造技術の開発に取り組んでおります。有望な複数の開発品・新製品に対して商業生産へ向けた準備を進めており、引き続き製販研一体で一層の事業拡大を追求いたします。

 医療用オリゴ核酸CDMO事業については、2024年2月に米国FDAが医療用オリゴ核酸(ガイドRNA(gRNA))について80%以上の純度を推奨したこともあり、当社が強みとする長鎖かつ高純度なgRNAのニーズの急拡大が想定されます。引き続き、合成技術及び分析技術の両面で、競争力のある要素技術の獲得、独自技術の拡張を目的とした研究開発を推進すると共に、顧客が集中する米国への対応強化も積極的に進めてまいります。

 再生・細胞医薬CDMO事業については、S-RACMO株式会社が、オリヅルセラピューティクス株式会社と共同で国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の公募課題である2024年度「再生・細胞医療・遺伝子治療産業化促進事業」に採択されるなど、製造受託に留まらず顧客と一体での製造プロセス開発も推し進めております。

 なお、アドバンストメディカルソリューションセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は34億円であります。

 エッセンシャル&グリーンマテリアルズ分野では、炭素循環技術の社会実装、ライセンス技術の競争力強化、新規技術の創出、サステナブルな製品の市場投入を重点課題としています。これらを通じて、早期のエッセンシャル&グリーンマテリアルズコンプレックスの構築と新規事業の創出を目指し、社内外との連携を強化しながら革新的な技術と製品の開発を推進しております。

 炭素循環技術の社会実装においては、総合リサイクル企業リバー株式会社との業務提携契約に基づき、使用済み自動車から得られる廃プラスチックのマテリアルリサイクルに関する共同技術開発を進めております。2023年に完成した精度の高い選別及び異物除去プロセスを活用し、2024年度には実証実験を進行するとともに、サンプル提供を開始いたしました。また、環境負荷低減技術として独自のアクリル樹脂(PMMA)の高効率ケミカルリサイクル技術について、米国のルーマス・テクノロジー社(以下「ルーマス社」という。)との協業契約を締結いたしました。ルーマス社は独占的ライセンスパートナーとして技術の商業化を加速し、世界各地での社会実装を推進してまいります。

 包装用ポリオレフィン材料の開発では、素材メーカーとしての強みを活かし、剛性と耐熱性を単一の樹脂で両立するポリエチレン及びポリプロピレンのモノマテリアル包材の開発を継続して推進しております。

 さらに、事業のグローバル競争力を強化するため、モノマー製品の触媒・プロセス改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化、新規高付加価値製品の開発にも注力しております。当連結会計年度には、環境負荷低減に優れたクメン法プロピレンオキサイド技術について、米国のKELLOGG BROWN & ROOT LLC(以下「KBR社」という。)との独占的ライセンス協業契約を締結いたしました。この革新的なプロセスは省エネや高収率を実現し、KBR社との協業を通じて、住友化学の技術を世界中の顧客に提供いたします。

 なお、エッセンシャル&グリーンマテリアルズセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は99億円であります。

 住友ファーマでは、精神神経領域及びがん領域並びにその他領域において、人々の健康で豊かな生活に貢献するため、自社研究に加え、技術導入、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究等、あらゆる方法で最先端の科学と技術を駆使して研究開発活動に取り組んでおります。

 精神神経領域では、特長ある低分子の初期臨床開発品目群について、2030年代のグループ収益を支える優先品目を選抜し、次のフェーズへの移行に向けた取り組みを推進してまいります。

 当連結会計年度において、がん領域では、①enzomenib(開発コード:DSP-5336)について、日本及び米国において、急性白血病を対象としたフェーズ1/2試験を推進いたしました。②nuvisertib(開発コード:TP-3654)について、日本及び米国において、骨髄線維症を対象としたフェーズ1/2試験を推進いたしました。③SMP-3124について、日本及び米国において、固形がんを対象としたフェーズ1/2試験を開始いたしました。enzomenib及びnuvisertibに資源を集中させるとともに、他社との提携機会を追求することにより、両剤の開発を最優先で推進し早期の承認取得と価値最大化を目指します。なお、2025年度から2027年度までの活動方針として策定した「Reboot 2027-力強い住友ファーマへの再始動-」の期間において、enzomenibは日本及び米国での承認取得・上市を目指し、nuvisertibは両国での承認申請を目指してまいります。

 その他領域では、①「オブジェムサ」(一般名:ビベグロン)について、2024年6月、欧州において、提携先が過活動膀胱を適応症とした承認を取得いたしました。②「ジェムテサ」(一般名:ビベグロン)について、2024年12月、米国において、前立腺肥大症を伴う過活動膀胱に対する適応追加承認を取得いたしました。また、中国において、過活動膀胱を対象としたフェーズ3試験を実施しておりましたが、期待した結果が得られなかったため、住友ファーマ社における開発を中止いたしました。③ユニバーサルインフルエンザワクチン(開発コード: fH1/DSP-0546LP)について、ベルギーにおいて、住友ファーマ社が開発したTLR7アジュバント(免疫強化剤)を添加して作製した新規のユニバーサルインフルエンザワクチンのフェーズ1試験を開始いたしました。ユニバーサルインフルエンザワクチンについて、ベルギーでのフェーズ1試験の中間解析を実施し、KSP-1007については、アジア地域への展開を見据えた日本及び中国でのフェーズ1試験を継続し、開発を着実に推進してまいります。なお、ユニバーサルインフルエンザワクチン及びKSP-1007の研究開発は、日本医療研究開発機構(AMED)からの委託研究開発費を活用しております。

 なお、住友ファーマセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は434億円であります。

 全社共通及びその他の研究分野においては、3つのX(BX・DX・GX)及び6つのコア技術(生体メカニズム解析/精密加工/有機・高分子材料機能設計/無機材料機能設計/デバイス設計/触媒設計)を組み合わせ、「食糧」「ICT」「ヘルスケア」「環境」の4つの重点分野に対し、事業部門とコーポレートの連携加速による「基盤技術の強化」と「次世代事業開発」を進め、社会課題解決の実現に向け推進しております。

 また、2021年12月に公表した住友化学グループのカーボンニュートラル・グランドデザインに基づき、カーボンニュートラル実現へ向けた「貢献」として、GHG削減につながる各種の製品・技術の開発を行い、社会実装及びライセンスを通じたグローバル展開に取り組んでおります。

 当連結会計年度において、食糧分野では、バイオトランスフォーメーション(BX)として合成生物学を活用した次世代事業の創出に取り組んでおります。また、乳酸菌を加熱処理したパラプロバイオティクスによるアニマルニュートリション用途開発を推進しております。加えて、2024年7月、成分分析を介して天然素材の売り手と買い手をつなぐ日本初のデジタル・プラットフォーム「Biondo(ビオンド)」をリリースし、専用webサイトをオープンしました。「Biondo」は、当社が培ってきた高度分析やデータベースを基盤とし、DX(デジタル技術)を駆使することで新たな価値をお客様へ提供するものです。持続可能な未来に向けて、限りある資源を有効活用することで、循環型社会の構築へ貢献いたします。

 ICT分野では、東京科学大学(旧:東京工業大学)、東京大学、理化学研究所と共同で、次世代量子デバイスの重要材料の一つとして有望視される強相関材料の開発を進めております。強相関材料とは強誘電、強磁性等、複数の強物性を同時に有する材料の総称であり、熱電変換、低エネルギー消費メモリー材料等、幅広い分野で期待されております。本取り組みでは、強相関材料のメカニズムを解析するとともにアプリケーションにも力を入れており、今年開催されている大阪万博の住友館において、その成果の一部を展示しております。

 ヘルスケア分野では、先端医療への取り組みとして、バイオテクノロジーによる価値創造の一環として、疾患リスク検査キットを開発中です。高感度で多様な昆虫の嗅覚受容体を組み込んだ独自の細胞を用い、疾患リスクの判定を実現し、2027年を目途に各医療施設や衛生検査所等で臨床ニーズに応じた消費者向け検査ビジネスへの参入を目指しております。

 また、当社グループの新会社である株式会社RACTHERAでは、再生・細胞医薬事業のフロントランナーたる技術・知見を駆使して研究開発に取り組んでおります。他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞は、京都大学医学部附属病院によるパーキンソン病治療に関するフェーズ1/2試験のデータを基に、2025年度中の国内承認申請に向けて準備を進めております。他家iPS細胞由来網膜シート(立体網膜)は、米国のマサチューセッツ眼科耳鼻科病院と連携し、網膜色素変性治療に関するフェーズ1/2試験を開始いたしました。これら先行剤に注力し、早期事業化・育成を進めてまいります。

 環境分野では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるグリーンイノベーション(GI)基金事業として以下の環境負荷低減技術開発に取り組んでおります。まず、ケミカルリサイクルとして、①廃プラの直接分解によるオレフィン製造技術開発では、ベンチ設備での試験において、目標収率60%を達成し、パイロット設備の設計を開始しております。②CO2からの高効率アルコール類製造技術開発では、パイロット設備での試験において、メタノール収率80%を達成し、実証設備の設計に進んでおります。③アルコール類からのオレフィン製造技術開発では、ベンチ設備での試験において目標収率80%を達成し、パイロット設備建設が進行中です。その他、CO2削減のためのCO2分離膜の開発では、複数種のCO2排出源から純度90%以上のCO2を回収することに成功し、パイロット設備での実証実験を目指しております。また、リチウムイオン電池回収後の正極材ダイレクトリサイクル開発では、ベンチ設備でのダイレクトリサイクル処理品にて電池容量回復率98%を達成し、連続化に向けたスケールアップ検討に進んでおります。引き続きGI基金の活用により、環境負荷低減技術開発を推進してまいります。

 千葉地区にて環境負荷低減技術や新素材の開発拠点として2024年6月に新研究棟「Innovation Center MEGURU」が竣工し、稼働を開始いたしました。環境負荷低減テーマの加速と早期実現化を目指し、研究体制の強化を図ってまいります。また、本施設では研究者間の交流を促進する空間設計を導入するとともに、建築物省エネルギー表示制度(BELS)の最高ランクを獲得し、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減に適合した建築である「ZEB Ready」の認証も取得する等、環境に配慮した設計が施されております。

 なお、全社共通及びその他における当連結会計年度の研究開発費は265億円であります。

 このように、新製品・新技術の研究開発及び既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組みつつ、食糧、ICT、ヘルスケア、環境の4つの重点分野の社会課題をイノベーティブな技術で解決する企業(Innovative Solution Provider)を目指してまいります。

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