他社比較
大和ハウス工業
企業概要
当社グループでは、「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、社会に役立つ価値の創造を目指し、官公庁、国内外の大学、異業種企業とも密接に連携を図りながら、基礎・応用研究から新技術・新商品開発、これらの新技術の建築物や街づくりへの活用・検証まで多岐にわたる研究開発活動を行っております。
なお、当連結会計年度の研究開発費は10,816百万円となっております。
当連結会計年度の主な活動は次のとおりです。
(1) 戸建住宅事業、賃貸住宅事業、マンション事業
・2024年7月、富裕層をターゲットとした鉄骨戸建住宅商品「xevoΣ PREMIUM SMILE Edition(ジーヴォシグマプレミアム スマイルエディション)」並びに木造戸建住宅商品「PREMIUM GranWood SMILE Edition(プレミアムグランウッド スマイルエディション)」を創業70周年記念商品として発売いたしました。「全天候型3電池連携システム」とV2H(※1)を組み合わせ、住宅のレジリエンス(強靭性)をさらに強化しております。新たに開発した業界最高水準(※2)の熱交換型第1種換気システム「風なびRXⅢ」を標準採用いたしました。さらにZEH基準を上回る高断熱仕様(断熱等級6(※3))を標準仕様とするなど、最先端の技術をパッケージした当社住宅のフラッグシップ商品となります。今後もこの商品を起点に当社住宅の性能・技術の高さを訴求してまいります。
※1.Vehicle to Homeの略。電気自動車等に蓄えられた電力を住宅内で活用するシステム。
※2. 熱交換効率が最大で86%で業界最高水準。
※3. 省エネ地域区分5~7地域が対象。なお、プランや採用アイテム等の条件により、断熱等級6に適合しない場合があります。
・2025年1月、軽量鉄骨造3階建て戸建住宅商品「xevo M3(ジーヴォ・エムスリー)」を発売いたしました。当商品は、「都市に“ちょうどいい”3階建て」をコンセプトに、当社オリジナルの「内外ダブル断熱」と太陽光発電システムを標準搭載したZEH(※4)標準対応商品です。柱型が室内に出ない軽量鉄骨軸組構法は、都市部に多い重量鉄骨造に比べ、延べ面積126㎡(※5)の3階建ての建物で比較すると、各階約1帖(約2㎡)分(建物全体で約3帖分)のゆとりを生みだします。また、ファサード(※6)には質感を重視したタイル外壁を標準で採用するなど、高い意匠性を実現いたしました。当社重量鉄骨ラーメン構造3階建て商品「skye3(スカイエスリー)」に加え、軽量鉄骨商品「xevo M3」をラインアップしたことで、都市に住むお客様の幅広いニーズに応えることが可能となりました。
※4. 『ZEH』、Nearly ZEH、ZEH Oriented含む。
※5. 各階の床面積が42㎡の3階建ての場合。
※6. 建物を正面から見たときの外観。
・2025年3月、ZEH-M(※7)に対応した重量鉄骨ラーメン構造3・4階建て賃貸住宅商品「THE STATELY(ザ ステイトリー)」を発売いたしました。座屈拘束ブレース(※8)耐力壁を採用することで、最も高い耐震性能である耐震等級3(※9)を当社の賃貸住宅商品において初めて標準仕様といたしました。また、遮音性能の高い界壁や界床を採用することで、ご入居者様に快適な住空間を提供いたします。あわせて、構造躯体・防水の初期保証を30年といたしました。さらに、1階部分は物販店舗や事務所等の用途にも対応できるため、建設地エリアのニーズに合わせた提案が可能です。今後も当社は、オーナー様への幅広い土地活用の提案と、ご入居者様から選ばれる賃貸住宅を提供してまいります。
※7.ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンションの略称。断熱性・省エネ性能を高め、再生可能エネルギーなどにより、エネルギー収支ゼロを目指す集合住宅のこと。
※8.心材となる鋼材(ブレース)を2つの拘束材(鋼管)で挟み込み一体化することで、高い耐震性能を実現した構造部材。
※9.「構造躯体の倒壊等防止」に対応。提案内容や一部エリアにおいては対応できない場合があります。
・大和ライフネクスト株式会社は、株式会社Octa Robotics及び綜合警備保障株式会社と共同で、「ロボットとセキュリティシステムの連携」についての実証実験を2025年1月に実施いたしました。経済産業省による「令和6年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された本実験では、夜間等無人環境下においてもロボットがセキュリティシステムの稼働を維持しながら警備・清掃業務を自律的に遂行できることを確認いたしました。今後は、ロボット運用における各種セキュリティの強化や、複数のロボットの同時稼働を実現するためのシステム開発をパートナー会社とともに進め、管理品質の向上につながる新たな建物管理サービスの開発・販売に向けた取組みを加速させてまいります。
なお、当事業に係る研究開発費は4,653百万円です。
(2) 商業施設事業、事業施設事業、環境エネルギー事業、その他の事業
・当社とキヤノンマーケティングジャパン株式会社は、共同で物流施設におけるトラックドライバーの荷待ち・荷役時間を可視化し、改善を支援するシステムを開発し、2024年11月より当社開発のマルチテナント型物流施設(※10)「DPL平塚」(神奈川県)において、当システムの効果を検証する実証実験を開始いたしました。トラックドライバーの人手不足により懸念される物流の2024年問題に対応するため、当システムでは、AIカメラがトラックの物流施設への入場、入出荷バース(※11)への移動から退場までの動きを把握し、荷待ち・荷役時間を自動計測いたします。これにより事業者のドライバーの負荷軽減と物流効率化を支援いたします。
※10.複数の企業テナントが入居可能な物流施設。
※11.荷積み・荷下ろしを行うためにトラックを停車させる場所。
・当社は、物流施設の床の夏型結露を抑制する「結露予測制御システム」を開発し、2024年6月竣工の当社が開発したマルチテナント型物流施設「DPL小田原」(神奈川県)に搭載いたしました。本システムは、施設に設置した各種センサー(温度・湿度)と気象予報のデータをもとに、翌日に床表面で結露が発生する可能性を予測し、可能性が高い場合はシステム利用者への通知やアラーム表示器の点灯、換気機器の自動停止を行います。これにより、結露の発生頻度を抑えるとともに、施設利用者に事前対処の猶予が生まれ、結露による保管物への悪影響や作業上の支障といったリスクを回避することが可能となります。今後も当社が開発する物流施設に順次導入し、地球温暖化に伴う高湿化への対応を行ってまいります。
・当社は、気象や地震の情報を一元管理できる総合災害モニタリングシステム「DoKo-moni(ドコモニ)」(※12)を開発し、2024年12月からお客様への提案を開始いたしました。本システムは、気象や地震に関する最大6種類のデータ(気温・湿度・風速・雨量・加速度・映像)をリアルタイムで取得し、被害の恐れがある際には、施設管理者に即時アラートが発信されるため、近年頻発する大地震や異常気象等の大規模自然災害に備えたBCP対策に有効です。また、複数の建物のモニタリングデータをクラウド上で一元管理でき、大地震時には発生後1分程度で建物の推定被害状況の把握が可能となるため、建物の点検に活用することでより早い初動対応が可能となり、効率的な補修点検や速やかな事業再開に貢献いたします。
※12.商標登録出願済み。
・当社は、工場等において電気では代替が困難な熱や燃料の早期脱炭素化を目指し、国立大学法人大阪大学先導的学際研究機構との共同研究において、常温・常圧下で、バイオガス(※13)に含まれるメタンガス(※14)からバイオメタノール(※15)を高い変換率で合成する方法を開発いたしました。同大学大久保教授らの研究グループは、2017年に世界で初めて常温・常圧で空気とメタンガスからメタノールを作り出すことに成功しておりましたが、今回の共同研究で、2017年に開発された変換技術によるメタノール変換率(14%)を大きく上回る変換率89%を達成いたしました。今後は更なる効率化を図り、当技術の実用化に向けて、様々なパートナーとの協業も踏まえた可能性を検討し、当社グループをはじめ社会全体の脱炭素化に貢献してまいります。
※13.バイオ燃料の一種で、生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚泥、汚水、ゴミ、エネルギー作物等の発酵、嫌気性消化により発生するガス。メタンガス約60%、二酸化炭素約40%を含みます。
※14.天然ガスの主成分。地球温暖化係数が二酸化炭素の25倍であり国連等で削減目標が決められております(グラスゴー気候合意)。
※15.バイオマス由来のガス(バイオガス)中のメタンガスから合成したメタノール。
・当社は、カーボンニュートラル実現に向けた非住宅の木造・木質化の取組み「Future with Wood」の一環として、木材を鉄骨の被覆材に使用し、事務所等9階建てまでの建築物に採用できる木鋼ハイブリッド耐火柱「Dkitto-Column(ディキットコラム)」を開発し、1.5時間耐火の大臣認定を取得いたしました。「Dkitto-Column」は、木材や網入強化せっこうボードを被覆材として使用することで、1.5時間耐火を実現した耐火柱で、鉄骨柱の耐火被覆材に使用する木材の樹種に制限はありません。また、高強度の鋼材と炭素固定効果がある木材を採用しているため、従来の柱材(※16)と比較(※17)して、1本あたりの部材製造時に生じる二酸化炭素排出量を117kg削減(※18)することが可能であり、CO₂排出量削減に貢献いたします。
※16. 構造躯体「鉄骨造柱」と耐火被覆材「吹付けロックウール」、下地材「軽量鉄骨並びに石膏ボード」、仕上げ材「ビニルクロス」で構成する柱材のこと。
※17. 9階建ての1階に使用する柱に要求される1.5時間耐火性能を満たすための従来の柱材と、「Dkitto-Column」による比較。従来の柱は柱高さ3m、柱外角寸法815mmで、「Dkitto-Column」は柱高さ3m、柱外角寸法710mmのもの。
※18. 設計仕様により削減量は異なります。
・株式会社フジタ(以下「フジタ」)は株式会社トクヤマと共同で、セメントなど材料由来の温室効果ガス排出量を実質ゼロとした環境配慮型の歩道用舗装材「バイオ炭インターロッキングブロック」を開発いたしました。本製品は木質バイオマスガス化発電の副産物であるバイオ炭を有効利用し、歩道用舗装材に必要な曲げ強度は確保しつつ、炭素を貯留することでカーボンニュートラルを実現いたしました。今後も曲げ強度及び保水性等の性能向上と安定供給体制の構築を進めてまいります。
・フジタと、2024年4月に大和ハウスグループ投資事業有限責任組合(※19)による出資を受けた株式会社Synspective(以下「Synspective」)は、国立大学法人広島大学と共同で、Synspectiveが運用する小型SAR衛星StriXの撮像データを用いて、能登地震災害復旧工事における広域地盤変位評価の実証実験に着手いたしました。近年、気候変動に伴う豪雨災害の激甚化等により、防災、国土強靭化においてはハード対策に加えてソフト対策の充実が求められております。実証実験を通じて、リモートセンシング技術を活用した災害復旧現場の安全監視等の建設技術の高度化を目指すとともに、小型SAR衛星活用の可能性探索に取組んでまいります。
※19.大和ハウスベンチャーズ株式会社が運営するコーポレートベンチャーキャピタルファンド。
・当社とフジタは、株式会社芳賀沼製作と共同で、間伐材を利用できる外壁「カンタイパネル」(※20)を開発し、カーテンウォール(※21)形式の木質外壁として、日本で初めて(※22)60分耐火の大臣認定を取得いたしました。今後、高いデザイン性と設計自由度をもつ木質カーテンウォールにより、建物の外壁にも木材を採用したいお客様からの需要に応えつつ、脱炭素化や森林資源の循環利用に貢献し、カーボンニュートラルはもとより、自然環境と調和した社会の実現を目指します。
※20.名前の由来:「間(カン)」伐材を主とした国産木材を用いた「耐(タイ)」火「パネル」であること。
※21.建物の荷重を負担しない非耐力壁のこと。
※22.3社調べ。(2025年3月28日時点)
・大和リース株式会社(以下「大和リース」)は、1階部分に大型車専用駐車スペース、2階以上に普通乗用車専用駐車スペースを設けた「物流課題対応型 自走式立体駐車場」を開発し、2024年11月に販売を開始いたしました。近年、EC(電子商取引)市場の普及に伴い、宅配便の取扱い個数が増加し続けているなか、物流の2024年問題としてトラックドライバーの労働環境改善が求められております。その結果、運転時間制限等により高速道路のサービスエリアでは、大型車の長時間駐車による駐車スペース不足といった新たな問題が発生しております。「物流課題対応型 自走式立体駐車場」は限られた敷地のなかで、駐車スペースの拡充と効率的な利用を実現いたします。
・大和リースは、大阪城公園で廃棄処分していたクスノキの剪定枝から、100%植物由来の生体水(クスノキのアロマ)を開発し、公園事業におけるサーキュラーエコノミーを展開しております。この生体水は、大和リースが管理・運営に参画する大阪城公園の植栽剪定作業によって発生する年間約8tのクスノキ剪定枝を活用し、低温真空抽出法という特別な技術により水や溶剤を使用せずに生成した100%植物由来のアロマです。また、この生体水は、外部機関によって安全性の他に蚊の忌避効果も確認されております。
・株式会社フレームワークスは、物流の2024年問題への対応としてのトラックドライバーの待機時間削減や、人手不足等日々の改善に必要なデータ活用のニーズが高まる中、倉庫管理システム「Logistics Station iWMS G5(ロジスティクスステーション・アイダブリューエムエス・ジーファイブ)」(※23)に新たに2つの機能を追加いたしました。一つは、株式会社Hacobuの「MOVO Berth(ムーボ・バース)」との連携により、トラック到着情報や作業状況をリアルタイムで共有し、効率的な入出荷作業を支援いたします。2つ目は、KPI管理機能で、倉庫内の実績データを活用して業務効率の向上をサポートし、運用の効率化を支援いたします。
※23.物流施設の運営や在庫管理等をサポートするパッケージシステム。
・当社とAutodesk, Inc.は、BIMデータを活用したCO₂排出量算定ツール「Integrated Carbon Tool(インテグレーティド カーボン ツール)」(以下、ICT)を共同開発いたしました。このツールは、建物のBIMデータをもとに、設計初期段階から建物の資材製造段階(資材調達や工場への輸送、製造)に関わるCO₂排出量を可視化するもので、設計初期段階からCO₂の削減を検討することが可能です。ICTは、柱や梁(はり)等の部材、鉄や木材等の材料を選択することで、BIMデータでは再現されない接合部材等も含めたCO₂排出量を自動で算定いたします。これにより、設計者は効率的にCO₂の削減効果を検討することが可能です。両社は今後も2050年カーボンニュートラルの実現やBIMを活用した技術開発、業務効率化等で連携を図り、建設業界のDX化を推進いたします。
・当社は、環境行動計画「エンドレスグリーンプログラム2026」の一環として、「ネイチャー・ポジティブ」(※24)実現に向け、グループ共通の緑化コンセプト「みどりをつなごう!」を合言葉に、在来種を50%以上採用する緑化活動を進めております。生物多様性のビッグデータ分析を行う株式会社シンク・ネイチャーと共同で、都市部で行った緑化活動の生物多様性保全効果を定量的に評価検証(※25)した結果、在来種による緑化をしなかった場合と比較して約3倍の生物多様性保全効果があることを確認いたしました。また、当社、旭化成ホームズ株式会社及び積水ハウス株式会社の3社協働による都市緑化については、植栽樹種データに基づいた分析によると、在来樹種に着目した3社それぞれの特性のある取組みが、個社別での貢献を生態学的に補完し合い、ネイチャー・ポジティブの実効性におけるシナジーが明示されました。
※24.生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せること。
※25.検証期間は2024年5月1日~2024年7月30日。
なお、当事業に係る研究開発費は6,162百万円です。
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