ブックオフグループホールディングス
【東証プライム:9278】「小売業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは創業時より「事業活動を通じての社会への貢献」と「全従業員の物心両面の幸福の追求」の2つを経営理念としております。また、経営理念に基づく当社グループの事業活動を示すミッションとして「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」を掲げております。
このミッションに基づき、拡大するリユース市場の中で私たちの強さを活かし、リユースのリーディングカンパニーとして循環型社会の形成に貢献するとともに、全従業員が自信と情熱を持ち、安心して働き、成長できる会社になることを目指します。
当社グループは2028年5月期を最終年度とする中期経営方針において、グループの強みである人財育成やサステナビリティへの取組などの普遍的な価値を土台とし、「深化領域」と位置付ける国内ブックオフ事業で、認知度の高さを活用して安定した収益を獲得するとともに、「探索領域」と位置付けるプレミアムサービス事業、海外事業や新たな事業に対して投資原資・ノウハウを投入し、経験豊富な人財の輩出によりグループの事業規模拡大と利益成長を進めていくことを定めました。
(2)事業別の基本方針
① 国内ブックオフ事業
当社グループの中核事業であり、売上・利益の占有率が高く安定した収益獲得を続けることによって成長に向けた投資原資を生み出す役割を担います。
<現状>
(a)主な店舗パッケージ
○BOOKOFF SUPER BAZAAR
主に郊外ロードサイドや大型ターミナル駅前繁華街に出店する、当事業収益の中核を担うリユース店舗パッケージであります。1,000坪内外の広大な店内で、お客様に本・ソフトメディアはもちろんのこと、アパレル、トレーディングカード、ホビー商材、スポーツ用品、ベビー用品、ブランド品、楽器、生活雑貨まであらゆる商品を取り揃えてリユースを体験していただく場として、多くのお客様にご利用いただいており、引き続き成長する柱と位置づけております。成長するリユース市場の中で競合他社の出店も進んでおり、店舗の立地や規模に応じた売場づくりと運営改善により売上・利益の成長を持続させることが課題となっております。
○BOOKOFF PLUS、BOOKOFF
主にロードサイドから駅前繁華街まで幅広く出店する、ブックオフチェーン店舗数の8割以上を占めるリユース店舗パッケージであり、顧客接点として重要な役割を担っております。本・ソフトメディアに加え、アパレル、トレーディングカード、ホビー商材等、地域特性に合わせた商材ラインナップで、エンタメ性を強化しております。主力商材である本・ソフトメディアの一次市場流通量減少により今後、仕入・売上の確保が厳しい状況となることも予想されているため、新たな商材の追加やネット販売の活用等、世の中の変化に対応することも求められております。
○あそビバ
大型ショッピングモールに出店するトレーディングカードやゲームソフト等、遊べるアイテムを豊富に取り扱う専門店で、トレーディングカード、ホビー商材、アニメグッズ中心の顧客層に、新品・中古を問わず遊べる場所を提供しております。既存のBOOKOFF商圏にも出店し、共存することが可能となっております。
(b)ネット販売店舗並びにEC物流センター(主なECサイト:BOOKOFF公式オンラインストア)
2007年よりECサービスを展開し国内最大級の中古書籍在庫量を誇る「BOOKOFF公式オンラインストア」を運営しております。「BOOKOFF公式オンラインストア」は本・ソフトメディアを中心に売上を継続的に伸ばしてきましたが、配送単価や人件費単価の上昇の影響により収益性の維持に課題があります。また宅配買取によって集められたEC物流センターの商品在庫を適切な回転率で販売につなげるために、自社サイト「BOOKOFF公式オンラインストア」に加えてヤフオク、楽天等、他のECモールサイトに同時出品をすることによって売上を安定して増加させております。継続的な業務改善、業務システムの刷新による生産性の向上、首都圏を中心とした配送効率改善等により、コスト低減を進めております。
(c)公式スマホアプリ
国内ブックオフ事業の公式スマホアプリ会員は、2025年5月に932万人を突破し、今後もさらなる増加を目指しております。公式スマホアプリを基盤に、ロイヤルティプログラムの強化をはじめとする多様なCRM施策を展開し、顧客との直接的なコミュニケーションを通じて信頼関係を深めています。これにより、安定した収益基盤の構築を実現しております。目指す世界は、公式スマホアプリを中心に、顧客が時間や場所にとらわれることなく、さまざまなサービスを簡便に利用できる環境を提供することです。具体的には、書籍をはじめとして、多くの商材を利用いただけるようにし、店舗とECの両方でシームレスな購買体験を提供してまいります。さらに、購入だけでなく、買取サービスも積極的に利用していただけるような施策を強化し、アプリを軸にした統合的な顧客体験の向上を図ります。
<方針>
・グループの中核事業として、現状の利益水準を確保しつつ資本効率を改善し、成長事業への人財・ノウハウの輩出を継続的に行うことで、お客様へ最高のリユース体験を提供する
・書籍により獲得する粗利額の維持、買取の利便性向上、商品在庫の可視化と検索性の向上等、本を中核商材に位置付けて、地域に合わせた商材拡張を行う
・利便性向上、継続的な出店、リプレイスやリニューアル、新店舗パッケージの開発等の実施によりブックオフを「超便利に・超面白く」を実現する
・方針実現のために次の戦略を実行する
顧客戦略:来店頻度の向上、来店機会の創出
買取戦略:体験価値の向上、お客様コストの削減、改善の継続性
デジタル戦略:ユーザビリティの改善、商材拡張、アプリ機能の拡充
人財戦略:社員積極採用、評価基準・キャリアパスプランの多様化
② プレミアムサービス事業
<現状>
所得水準が高く、従来BOOKOFFに馴染みが薄いアッパーマス層以上のお客様をメインターゲットに、百貨店内買取窓口を展開する「hugall」、世帯年収が比較的高い地域で路面展開する「BOOKOFF総合買取窓口」・「Rehello」、百貨店やショッピングセンター等商業施設内にてジュエリーのリペア・リメイクサービスを提供する「aidect」は、BOOKOFF店舗ではリーチできないお客様層との重要な接点です。
「hugall」は買取から販売における業務効率が改善され百貨店内買取窓口や、様々なジャンルに精通した専門家による訪問買取を中心に良質な商材を用いて収益を生み出す体質となっており、今後の利益成長においては百貨店を中心に拠点の拡大並びに利用客数の継続的な拡大が課題となっております。
「BOOKOFF総合買取窓口」・「Rehello」は、ブランド品のリユースだけでなく書籍・ソフトメディアのリユースを取り扱うことで他社との差別化を図っております。
「aidect」は職人の手仕事によるジュエリーオーダー&リフォーム スペシャリティストアであり、リペア・リメイクを通じた新たなサービスを提案しております。ターゲット顧客層との接点拡大のため、グループ内店舗との連携など、収益化に向けテコ入れを実施しております。
従来、ブックオフがリーチしきれていない顧客層の居住エリアやサービスを求められている場所への出店を加速する一方で、ブランド品や貴金属等の買取市場は競合他社の出店も活発であり、現在も差別化が求められている状況であり、今後その必要性は一層高まる見込みです。
<方針>
・全国主要百貨店や東京都心部などに店舗網を拡大し、所得の高いお客様層へ買取サービスだけでなく、店舗を軸にアライアンス等を強化することで、顧客との接点を増やし、より付加価値の高いサービスの提供機会を増やして収益増加を図る
・将来的に100店舗体制の確立を目指した継続的な出店を進める
・売ることに慣れていない方でも安心して利用できるサービスの提供を目指し、買取を通じた新たな顧客接点の創出及び体験価値の向上を図るため、「BOOKOFF総合買取窓口」から「Rehello」へのリブランディングを実施する
③ 海外事業
<現状>
アメリカ合衆国において、「BOOKOFF」を展開するほか、2016年からは日本国内で販売に至らなかった商品の出口戦略として、マレーシア国及びカザフスタン共和国において「Jalan Jalan Japan」を展開しております。海外事業における各業態は、取扱商材の独自性やインフレ等現地の経済動向により収益性が高いことに加えて店舗拡大により売上規模が増加していることで、グループへの利益貢献度も近年上昇傾向となっております。
アメリカ合衆国で展開する「BOOKOFF」については、本やソフトメディア商材の安定した成長を基盤に、日本のIPコンテンツを活用した「フィギュア」や「アニメグッズ」の取扱い強化により、新たな顧客層の獲得につなげております。さらに、価格戦略やSNSを活用した認知向上施策により、経常利益3億円を超える安定した収益体制を確立しております。2025年5月期においては、新たに3店舗を出店いたしました。
「Jalan Jalan Japan」については、マレーシア国において、日本国内で販売機会に恵まれなかった商材を現地へ出荷して販売することで、独特なエンターテインメント性を生み出す存在となっており、出店拡大とともに事業規模を拡大しております。2025年5月期には、経常利益5億円超を計上いたしました。また中央アジアのカザフスタン共和国においては「Jalan Jalan Japan」5店舗の出店を行い、7店舗体制となりました。
<方針>
・各国において今後出店を継続的に実施するために現地採用社員の増強、育成を進める
・「BOOKOFF」はアメリカ合衆国において、継続的な出店による事業拡大を推進し、2028年5月期までに合計30店舗、2033年5月期までに100店舗体制を目指す
・「Jalan Jalan Japan」は、マレーシア国内において直営店の新規出店を推進する一方、カザフスタン共和国においては加盟店形式での出店を拡大予定。今後は、これらに加えて他国への進出も視野に入れ、多店舗展開を一層加速させることで2028年5月期までに合計70店舗、2033年5月期までに100店舗体制を目指す
(3)経営環境
近年の人口減少の中、リユース市場は拡大を続ける一方で、同業他社も多数の出店を重ねており、参入障壁が低いことから、中小規模の事業者やFC形式での多店舗展開も容易に広がっております。市場の拡大に伴い、貴金属の訪問買取りやフリマアプリ等でリユースに関するトラブルは増加傾向にあり、リユース業界におけるサービス品質の低下も懸念されます。今後、リユースに対する印象の悪化から、利用者拡大の停滞、市場の成長鈍化、参入企業の淘汰等のリスクも想定されます。
当社グループは、着実な事業成長を土台に、他社にない価値(優位性)を提供し、業界内での確固たるポジションを築くことを目指しています。また当社グループの様々な活動を通じて、リユースそのものや、リユース業界全体をポジティブな方向へ導く存在でありたいと考えております。
こうした事業成長とリユースの社会的価値の向上に向けた活動を通じて、事業の持続可能性を高め、企業価値のさらなる向上を実現すること、それが私たちの目指す「リユースのリーディングカンパニー」の姿です。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの対処すべき課題は以下のとおりと考えております。
① 事業ミッション「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」の実現
当社グループは「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」を事業ミッションとして掲げ、リユースのリーディングカンパニーとして顧客層を拡大し、多くの人に最も安心してご利用いただけるリユースチェーンを目指して、大型複合店舗の出店やネットによる販売、各種イベント等を通じた最高のリユース体験と、あらゆる客層に安心してリユースを利用できる場を提供してまいります。
そのために、店舗においてはお客様に楽しんでいただけるような売場作りやサービス水準の確立、各種マニュアルの徹底や実践的な研修を通じたオペレーション水準の向上及び事業ミッションをイメージしたブランディング戦略に基づく活動に取り組んでまいります。
② グループの事業方針に基づく持続可能な事業成長に向けた取組の実現
当社グループは、国内ブックオフ事業を中心にBOOKOFF等店舗と取扱う商品、サービスをより一層深化させるとともに、プレミアムサービス事業と海外事業を中心に新たなお客様層や市場への更なる探索を実行して、事業環境の変化に強いポートフォリオを構築し、持続可能な事業成長を実現してまいります。
③ グループの持続可能な成長の中核となる人財の確保・育成
当社グループが将来にわたり継続して企業価値を拡大していくため、未来の経営を支える人財の確保・育成が急務であります。
わが国の小売業界において人手不足並びに人件費の上昇など厳しい雇用環境が続くなかで、各種業務プロセスの省力化による業務効率化や待遇の改善、多様性に富んだ人財受け入れを可能とする人事制度の構築などにより、積極的な採用を進める動きとともに、長く安心して働き続けられる環境を整備し、「働きがい」と「働きやすさ」の両面で人財確保並びに人財育成に取り組んでまいります。
④ サステナビリティ基本方針に基づく取組の推進
当社グループは、「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」というミッションの下、中核であるリユースビジネスの事業活動の広がりにより、循環型社会の形成が進み、持続可能な社会(サステナビリティ)に貢献できると考えております。同時に、当社グループが事業運営においてもサステナビリティを意識した活動が求められていると考えており、当社の考え方を「サステナビリティ基本方針」として策定し、その方針の下で取組を推進しております。
当社は、「人財(人的資本)」の充実と成長を第一におき、従業員個人の持続的な成長と自己実現を後押しする機会の創出に努めるとともに、多様性を尊重した雇用機会を提供します。その結果として、国内外にリユース・リサイクルの事業を拡大していくことによって、社会全体の持続可能性を高めてまいります。
また、気候変動への対応を重大な経営課題の一つとして認識しており、ガバナンスの強化と気候変動による移行リスク、物理的リスク及び機会について、事業への影響を把握し、戦略の策定に取り組み、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った当社グループホームページ等での開示について、質と量の向上を推進してまいります。
⑤ 企業倫理の徹底・浸透の拡充
当社グループは、コンプライアンスの徹底を企業の社会的責任の根本と位置づけ、各種ステークホルダーとの信頼関係を構築するために当社グループの役員及び従業員が遵守すべき指針として、「コンプライアンス・ガイドライン」を制定しております。当ガイドラインの理念浸透と徹底に向けて、全グループの役員及び従業員に対し、各種研修や会議、社内報やイントラネットの活用等を通じて啓蒙活動を行ってまいります。
また、アカウンタビリティー(説明責任)を確保するために、内部統制の整備と運用による責任分担の透明化を推し進めるとともに、経営の適時適切な情報開示や決算情報の早期開示の実現をはかってまいります。
⑥ 不正事案に対する再発防止策への取組
当社グループは、2024年に当社子会社が運営する複数店舗において発生した不正行為に対する対応として、2024年11月12日に再発防止策を策定いたしました。再発防止策は、「店舗運営における業務ルールの見直しとシステム強化」、「業務統制に関するチェック強化」、「人員配置・評価基準の見直し」、「コンプライアンス・企業倫理向上」から構成されております。
それらの取組を通じて、予防的統制の強化にとどまらず、発見的統制(チェック)の実効性を高め、会社全体で不正を許さない姿勢を徹底することにより、不正行為の抑止力を高める組織風土を構築してまいります。
なお、2025年5月末時点においては、優先順位の高い再発防止策については対応を完了しており、一部システム改修が必要な対策については2025年7月の完了を予定しております。また、「店舗運営人員増強に関連する対策」や「防犯カメラの増設」、「従業員アンケート」等については2026年5月期にかけて対応を継続しております。
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