NSユナイテッド海運
【東証プライム:9110】「海運業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略等
海運業は、さまざまな物資や人の輸送を通じて世界中の国々と地域を結び、人々の暮らしを豊かにするという使命を担っており、経済のグローバル化に伴い、その役割はますます重要なものとなりました。こうした認識のもと、当社グループは、以下のグループ企業理念を掲げ、誠実で良質な海上輸送サービスをお客様に提供できるよう、創意工夫を重ねています。
〔基本理念〕
NSユナイテッド海運グループは、誠実で良質な海上輸送サービスの提供を通じて社会の発展に貢献します。
〔経営理念〕
1(信用・信頼)
信用・信頼される堅実な経営を実践し、グループ全体の企業価値を高めます。
2(安全運航・環境保全)
常に船舶の安全運航に努めるとともに、船舶運航技術の向上に向け日々研鑽を積むことにより、海洋をはじめ
とする地球環境保全の一翼を担います。
3(お客様への即応・自己変革)
お客様の要請に即応しつつ自らも変革に努め、さらなる進歩を目指して挑戦します。
4(人を育て活かす)
人を育て活かし、働く喜びを実感できる活力溢れるグループを築きます。
当社はこの理念の具現化を目指し、鉄鋼原料をはじめとする資源・エネルギー・製品などの海上輸送分野における創立以来の長年の伝統と、2010年の合併後の構造改革や船隊整備による経営基盤の強化により、内外航に亘る専門性と総合力を兼ね備えた海運会社としてさらに大きな安心と信頼を獲得してまいりました。
2024年度よりスタートした中期経営計画『FORWARD 2030 Ⅱ Challenge for innovation and further growth with U』では、2030年に向けたビジョンを「クリーンでサステナブルな海上輸送における必要不可欠な存在を目指し、ステークホルダーと協働して変革を続け、企業価値の更なる向上を図ります」と定義しています。カーボンニュートラルへの取り組みを通じた持続的な成長と企業価値最大化に向けた経営戦略を実行してまいります。
(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題、目標とする経営指標
次期の事業環境は、米国政府による関税などの経済政策やそれに対する各国の対応が、貨物輸送需要やトレードパターンにどのような影響を与えるか現状で見通しにくい中、海上荷動きに関して、主に石炭輸送需要の鈍化が懸念されるものの、鉄鉱石やボーキサイトなどドライバルク貨物全体の輸送需要は堅調な推移が見込まれると想定しています。また、船腹供給については、船主が環境規制や主力となる次世代燃料を慎重に見極めていることもあり、当面の新造船竣工は大型船を中心に歴史的に見ると比較的低水準となる見通しです。当社では今後起こり得る事業上のリスクに対し細心の注意を払い、事業運営を行ってまいります。
また、2024年度~2027年度を対象期間とする中期経営計画『FORWARD 2030 Ⅱ Challenge for innovation and further growth with U』では、事業戦略として「新規成長事業領域の拡大」「既存中核事業領域の深化」を掲げ、これらの事業戦略を支える取り組みとして人的資本戦略やDX戦略などサステナビリティへの取り組みを一層強化してまいります。
《中期経営計画の取組状況》
1) 事業戦略・成長戦略
『FORWARD 2030Ⅱ』では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた環境ロードマップに沿ったGHG削減目標を設定しており、メタノール二元燃料船(メタノールと重油の両方を燃料として使用可能なエンジンを搭載した船舶。重油と比較してGHG排出量の大幅な削減が見込まれる。)やバイオ燃料、アンモニア燃料船の導入などにより、2030年にGHG年間排出量を2019年比25%削減します。
上記2030年GHG削減目標達成に向けて、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「グリーンイノベーション基金事業」に採択されているアンモニア燃料船の共同プロジェクトについては2024年4月に6社によるアンモニア燃料船の共同開発に関する覚書を締結しました。本プロジェクトにおいて当社は、アンモニア燃料船の共同保有・運航を予定しております。また、当社は、2027年度竣工を目指してメタノール二元燃料船の建造契約を締結しました。
既存船についても省エネデバイスの活用によるGHG排出削減に取り組んでいます。当社が運航している40万トン型鉱石船へ風力補助推進装置ローターセイルを搭載することを決定しております。ローターセイルの搭載は2025年9月頃を予定しており、本船はローターセイルを搭載することで約6~12%の燃料消費 および CO2排出の削減が見込まれます。その他、当社既存船の入渠時に高効率プロペラへの換装を行うなど、燃料削減に寄与する設備の導入を進めています。
上記のような取り組みを通じて環境対応で顧客と協働し、顧客の脱炭素化に貢献することで、長期契約による安定収益確保に加え、海外顧客に対しても長期の契約獲得を目指します。
2) 事業戦略を支える取り組み
上記事業戦略を支える基盤となる取り組みとして、人的資本戦略・サステナブルシッピング戦略・ガバナンス強化・DX戦略の4つの戦略を掲げています。
当社事業における最重要課題である安全運航の達成に向けて、船上のインターネット環境拡充やホールド(船倉)クリーニングロボットの配備を開始するなど、乗組員の安全・作業効率・Well-being向上に資する技術や設備の検証・導入を進めています。また、船舶機器の状態・運転監視システム導入や気象や海象などの実海域データの収集など、事故の予防や運航の効率化といった価値を創出するための船舶DXに関わる取り組みも行っています。
3) 財務目標
中期経営計画の財務目標として、以下のとおり設定しております。
| 2027年度 | 2030年度 |
営業利益 | 200億円 | ネットD/Eレシオ1.0倍以下と財務規律を維持しつつ、継続的な利益成長により株主資本コスト7%を十分に上回るROE10%以上を目指します。 |
ROE | 10% | |
ネットD/Eレシオ | 1.0倍以下 |
2024年度の連結営業利益は202億24百万円、ROEは11.9%、Net DERは0.18倍となり、2027年度目標を前倒しで達成することができました。2027年度に向けては引き続き安定した収益基盤を整備しながら、上記目標を達成することを目指しています。
4) 投資計画
安定収益事業に加え、成長戦略から着実に利益を上げて営業キャッシュ・フローを積み上げ、2030年までNet DERを1.0倍以下に抑えつつ、財務レバレッジを効かせて3,000億円に迫る規模の投資を実行し、収益の安定性強化と中長期的な利益の成長を目指します。中期経営計画では既存船のリプレースなど中核事業への投資は2,150億円、メタノール二元燃料化やバイオ燃料の確保といった環境投資に450億円、船員訓練センター設立など人材育成とDX関連に100億円の投資を掲げており、このうち、メタノール二元燃料船など新燃料船への投資は1,650億円を予定しています。
次世代燃料船投資に関しましては、2024年度の実績としてメタノール二元燃料船の建造契約を複数隻締結いたしました。グリーンメタノールを舶用燃料として用いることにより、従来の重油比80%超のGHG排出削減効果が見込まれ、2027年度竣工以降に当社収益に貢献できるものと期待しております。また、顧客の環境対応と脱炭素化プロセスに貢献すべく、アンモニア積載可能なLPG二元燃料VLGC(大型LPG運搬船)の建造契約を締結しました。
今後、顧客のニーズを注視しつつ、上記の新造船における中長期貨物輸送契約や燃料サプライチェーンの確保に注力してまいります。
《株主還元策》
当社は、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置づけ、将来における安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元として、連結業績に対する配当性向は30%を基準とし、更なる株主還元の強化を検討します。新燃料船の建造など将来の成長に必要な内部留保金を確保しつつ、安定配当の継続的な実施により、株主をはじめステークホルダーの皆様にとって魅力的な事業会社になることを目指してまいります。当事業年度(2025年3月期)については「第4提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。
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