マネックスグループ
【東証プライム:8698】「証券業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社はオンライン金融事業を営むマネックス証券株式会社(日本)及びTradeStation Group, Inc.(米国)並びに暗号資産交換業を営むコインチェック株式会社(日本)を始め、その他国内外に金融関連の子会社及び持分法適用会社を有する持株会社です。なお、マネックス証券株式会社は2024年1月より当社の持分法適用会社となりましたが、当社グループと企業理念やブランド等を共有しており、引き続き重要なグループ会社と考えております。当社グループは、次に掲げる企業理念および行動指針を基に、個人投資家の日々の生活及び資産形成に必要な総合金融サービスの提供を目指していきます。
① 企業理念
MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表しています。
常に変化し続ける未来に向けてマネックスグループは、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値観とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインするとともに、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化することを目指します。
② 行動指針
・自主性をもって事業を創造する
一人一人が、未来のあるべき姿と当社事業の成長のために自ら考え進んでいきます。プロフェッショナル意識を持ち、必要な知識や技術を追求し、自らの価値を高めるよう努めます。
・公正であることを尊重する
多様な背景や考え方を尊重します。一人一人の能力が最大限発揮できる透明性のある公正なチームを構築することで、当社の企業価値の向上につなげるとともに、より良い社会の実現を目指します。
・企業理念の実現に貢献する
私たちのステークホルダーの価値創造に貢献します。未来における人の活動において、生涯バランスシートを最良化するため、何が望まれているかを想像して、個人およびチームが短期的かつ長期的な目標に向かって邁進します。
(2) 目標とする経営指標及び現状の経営環境
当社グループは連結における年度の業績予算を策定していますが、当社グループはオンライン証券ビジネスやクリプトアセットビジネスなどをグローバルに展開しており、経済環境や相場環境等の影響を大きく受けるため、業績予想を行うことが困難な状況にあります。当社の業績予想および収益計画は、投資家に対して誤った情報を提供する可能性があることから適切でないと考えているため、開示しておりません。一方、資本効率に関する目標としてROEが妥当と考えており、15%を達成すべき水準と考えております。
2025年3月期の連結決算については、親会社の所有者に帰属する当期利益は△51億円となりました。日米証券事業の安定推移に加え、クリプトアセット事業セグメントが大幅増収となりました。一方で、Coincheck Group N.V.(以下、「Coincheck Group」)のDe-SPAC上場に係る一過性費用として株式報酬費用13,714百万円、専門家報酬4,531百万円を計上しました。ROEについては△4%となり、一過性費用を除く実力値ベースでは、7%となりました。今後、資本効率を意識し、利益につながる成長投資を促進することで、継続的にROE15%を出せるように努めてまいります。
(3) 対処すべき課題
Ⅰ全社戦略
1) 成長戦略の追求と利益成長
当社グループはROEターゲットを15%と設定しています。当該目標を達成するにあたり、グループ各社の成長戦略を促進しつつ、成長領域への投資によりさらなる利益成長を図ることで、より一層の企業価値向上を目指します(主要セグメントの成長戦略については下記Ⅱ参照)。
2) グループ内シナジーの追求
「資本コストおよび株価を意識した経営」の下、事業ポートフォリオの最適化を図ってきました。足元は、アセットマネジメントビジネスやテクノロジー等への利益につながる成長投資を促進していますが、今後は、グループ会社間のシナジーをより一層追求していくことで、新たな価値の提供に努めてまいります。
3) 人的資本経営の高度化
当社グループが常に革新的な、最良の商品・サービスをお客様に提供し、社会から信頼、尊敬される企業であり続けるためには、その推進力である社員一人ひとりの力が何よりも重要です。そのため当社グループでは「人材」を最も重要な経営資源と捉え、全社で掲げる「人材育成方針」のもと、持続的な成長と企業価値の向上にむけて社員がもつポテンシャルを最大限引き出すための人材育成環境づくりに取り組んでいきます。
Ⅱグループ各社の事業戦略※1
1) 証券事業セグメント
米国のTradeStationは、先物やオプションの取引を行うアクティブトレーダーなど収益貢献度の高い大口顧客にフォーカスし、彼らのニーズに合わせた取引体験を提供することに尽力しています。その一環で、高度なオプション取引機能に対する需要に対応するため、ポジション管理ツールの強化と複雑なオプション注文の最適化を盛り込んだ、新しいプラットフォームの開発に取り組んでいます。また、革新的な取引・分析ソリューションを提供するフィンテック企業の顧客の取引も取り込むべく、Trading Viewをはじめとするパートナー企業とのAPI連携も促進しています。さらに、コンシェルジュサービスを実施し、専用サポートや高性能ツール・リサーチの提供により顧客の取引体験を向上させ、アクティブトレーダーのロイヤリティ向上を目指します。加えて、米国や英国の営業組織を強化して機関投資家への個別対応を実施している他、世界中のアクティブトレーダーに選ばれるプラットフォーマーとしての地位を確立すべく、Tradestation Europeのサービスの立ち上げを準備しています。
持分法適用会社であるマネックス証券株式会社は2020年より「アセマネモデル」をビジネスモデルとして掲げ、日本株委託手数料に依存しない強固な収益構造への転換を図るべく、収益基盤強化に努めてまいりました。2024年度は前年度に資本業務提携を開始し、親会社となった株式会社NTTドコモ(以下、「NTTドコモ」)と協力して、dポイントをためて使えるようになる「dアカウント連携」や、NTTドコモが発行するdカードで投信積立ができる「dカードⓇ積立」などの新サービスをリリースしました。これらの「ドコモ経済圏」のサービスを利用している顧客にとって利便性の高いサービスを提供することにより、NTTドコモ経由の新規口座獲得を伸ばすことができました。加えて、株式会社イオン銀行との業務提携効果もあり、今まで以上に投資初心者の口座開設が増え、NISA口座の開設率も向上しています。そういった新しいお客様により便利によりスムーズに利用いただくべく、UI/UXの継続的な改善が課題であると認識しています。また、さらなる口座獲得のため、認知度向上を図る施策も強化してまいります。その他の課題として、米国株取引サービスの新システムへの円滑な移行、情報セキュリティ・サイバーセキュリティの強化、AML/CFT対策※2の強化、及びIFAビジネス※3が拡大する中での対面チャネル特有のコンプライアンス対応・オペレーション対応に対処してまいります。直近ではフィッシング詐欺による不正取引が確認されており、多要素認証を必須化する等の対策に努めて参ります。
2) クリプトアセット事業セグメント
コインチェック株式会社を傘下にもつCoincheck Groupが2024年12月に米国ナスダック市場に上場いたしました。Coincheck Groupは今後、ナスダック上場企業としての知名度や信頼力を強みにM&A等を活用し、グローバル・クリプト・コングロマリット企業を目指します。取り組みの一環として2025年3月にはステーキング※4のサービスプロバイダーである株式会社Next Finance Techを当社グループに迎えました。
Coincheck Groupの主要子会社であるコインチェック株式会社は、日本を拠点としてBTC(ビットコイン)をはじめとする暗号資産を取扱う販売所および取引所の運営を主要事業としております。「コインチェックとつながる人口の拡大」を戦略として、日本国内における競合優位性の堅持を進めるとともに事業ポートフォリオの拡充と収益源の多様化を進めてまいりました。
今後も収益源の多様化を目指し、預かり資産から収益が得られるステーキングサービスやトークンを使った企業の資金調達手法の1つであるIEO※5を推進する他、多様な法人顧客のニーズに合わせたサービス提案ができる体制の強化などの取り組みを行っていきます。また、web3事業領域において、安心して利用いただける暗号資産交換業者として法人にも個人にも最初に選ばれる会社になるため、技術力の向上やセキュリティの強化にも引き続き取り組んでまいります。
3) アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業セグメント
アセットマネジメント事業は、当社グループとして取り込んでいくべき投資領域であり、戦略的な投資による成長加速を目指しています。2024年4月にカナダの暗号資産運用会社である3iQ Digital Holdings Inc. (以下、「3iQ」)を買収し、2025年4月には米国中小型株の運用で優れた実績を誇る運用会社Westfield Capital Management Company L.P.に出資し持分法適用会社化しました。
日本においては、運用会社であるマネックス・アセットマネジメント株式会社が、ロボアドバイザーサービス「ON COMPASSシリーズ」を運用しておりますが、「2022年ファンドラップ費用控除後運用パフォーマンス」※6における過去3、5年のシャープレシオ及びリターンで第1位となり、運用残高が2024年12月末で1,000億円を突破しました。また、機関投資家や事業法人向け運用も拡大しており、同社全体の運用残高が2025年3月時点で6,900億円まで成長しました。さらに、上場企業の資本効率改善と資本市場活性化を追求するファンド「マネックス・アクティビスト・ファンド」の運用パフォーマンスは投資先企業へのエンゲージメント効果もあり好調に推移しています。3iQは、傘下の子会社を通じて、暗号資産に関する各国の規制環境や機関投資家等の運用ニーズの変化を的確に捉え、迅速に商品を組成し、各種アライアンスを含め効率的に販売・提供するチャンネルを構築・拡大していきます。
ウェルスマネジメント事業として、マネックスPB株式会社は、富裕層のお客様向けに対面でのプライベートバンキングサービスを行っており、オンラインだけでは対応できないお客様のニーズに応えるべく、外国籍投資信託や私募投資信託、各種外貨建て債券など多数のPB専用の商品を取り揃え、質の高いサービスを提供してまいります。また資産運用のみならず、資産承継や法人の資本政策なども含めた様々なご相談についても、当社グループ各社と連携しております。
※1 当社グループは、2025年3月31日まで「日本」、「米国」、「クリプトアセット事業」、「投資事業」の4つを報告セグメントとしておりましたが、2025年4月1日より「証券事業」、「クリプトアセット事業」、「アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業」、「投資事業」の4つの報告セグメントに変更しましたので、変更後のセグメントに基づいて記載しています。
※2 Anti-Money Laundering/Countering the Financing of Terrorismの略で、マネーロンダリング対策/テロ資金供与対策のこと
※3 独立系フィナンシャルアドバイザー(Independent Financial Advisor)が、顧客の資産運用をサポートするビジネスのこと
※4 Proof of Stakeを採用しているブロックチェーンにおいて、一定の行為を行い、ブロックチェーンの安定稼働へ貢献する見返りとして報酬を獲得すること
※5 Initial Exchange Offering
※6 金融庁調べ。https://www.fsa.go.jp/common/about/research/20230421.html
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