セーラー万年筆
【東証スタンダード:7992】「その他製品」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
『文化の発展に貢献する万年筆をつくる』 創業者・阪田久五郎の経営理念
ものづくり思想(コーポレート・アイデンティティ)
あまたある筆記具の中から、セーラー万年筆を選んでくださるお客さまがいます。
“お客さまに喜んでいただきたい”という私たちの思いは、ときに型破りな発想や、遊び心を引き出し、さらなる機能の追求へと駆り立ててきました。
“手書き文化を支える先駆者であり続けながら、自らも厳しい目を持つ書き手であれ”
創業以来、私たちの中に息づくこだわりは、精緻をきわめた細部の技術にまで至り、本物の美しさを浮かび上がらせます。セーラーの製品を手にしたお客さまは、機能に裏打ちされた美しさを感じ、表現する喜びにあふれることでしょう。
人びとの感性をゆさぶるブランドになること。私たちのものづくりへの思いと挑戦する魂は続きます。果敢に進む力こそ、未来を切りひらくと信じて。
ブランドロゴ(ビジュアル・アイデンティティ)
信頼と希望の象徴である「錨」は「Anchor」の語源となる古代ギリシャ語で「曲がった腕」を意味し、船を力強く繋ぎ止める錨に、古代の人々は目に見えない神秘的なエネルギーや神の加護を感じてきました。これまでも、これからも、セーラー万年筆の象徴として。希望・信頼の象徴である「錨」のモチーフはそのままに、技術力の高さと繊細で日本的な美意識をロゴマークに込めることで創業初期の精神を伴ったまま現代に昇華させ、そして未来へつなげていきます。
ロゴタイプはセーラー万年筆の創業当時の魂が宿る初期の美しいグラフィックを元に、簡素化することで本物を見出す日本の美意識を込めました。
また、コーポレートカラーとして、「SAILOR BLUE - 黎明」を設定しました。
長く大陸文化を受け入れてきた港町・呉において、創業者・阪田久五郎の見たであろう原風景をイメージしています。「黎明」は夜明けの意味と共に、新しいことが始まる時を指します。夜明け前の瀬戸内の海に見た、創業者の希望を我々も見続けることが大切であると、思いを色に表現しました。原点に思いを馳せながら日本の手仕事による確かな技術と美意識を以ってその海の先に広がる世界へ向けて出航します。
(2) 経営戦略
当社は2018年にプラス株式会社グループに加わって以降、同社をはじめとして、グループ内のぺんてる株式会社、日本ノート株式会社などの文具メーカー各社、ならびに同グループの文具販売会社であるコーラス株式会社との、開発・製造・販売の各分野における協業を加速させ、相乗効果や新たな付加価値の創造を追求してまいりました。2022年には、プラス株式会社を引受先として発行済みの転換社債型新株予約権付社債の株式への転換を実行し、プラス株式会社が当社発行株式の58%を保有する支配株主となり、同時に当社は同社の連結子会社となりました。また、一連の財務政策による追加調達資金をもとに、当社文具事業の中核工場である広島工場に新棟を竣工し、従来の課題であった万年筆の供給面で生産能力増強を実現しております。
しかしながら、国内文具事業では、全体的な物価高の広がりを背景とした市場の動きの鈍化、高価格帯製品の売上低迷、海外文具事業では、北米や中国での中価格帯万年筆の売上低迷、更には国内外とも金地金を中心とした原材料価格の高騰などが継続しております。またロボット機器事業においても、物価上昇や設備投資の手控えなどが長引いていることなどにより、当社グループは、2022年12月期より3期連続で営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。
こうした経営環境下で業績回復を図るべく、以下の施策を推し進めていくことで、文具・ロボット機器両事業の独自競争力に磨きをかけると同時に、プラスグループ各社との連携を強化してまいります。
① 収益に関する方針
(文具事業)
▪ 万年筆のリブランディング
Special Nib(オリジナル特殊ペン先)を含めSAILORにしかない21金の技術を世界に発信します。
併せて、ミドルエンド、エントリークラスの製品群も充実させ、万年筆ユーザーの裾野拡大を図ります。そのひとつとして、2024年4月に新型のステンレスペン先万年筆であるTUZUアジャスト万年筆を投入いたしました。書く人それぞれの「書きやすい」に合わせてペン先とグリップの位置を変えられる「ペン先回転機能」を搭載しており、日本文具大賞2024の機能部門優秀賞を受賞いたしました。TUZUボールペンについては、プラスグループのぺんてる株式会社のエナージェルインキを使用しており、グループでのコラボレーションを実現しております。これらはこれまでより幅広い顧客への訴求を行っている途上であり、2025年以降もプラスグループの販路を最大限活用して市場への浸透を図ってまいります。
▪ 新開発インク
プラスグループの未来創造開発センター合同会社において新しく開発した、描いて剥がせるインクについて様々な筆記具への搭載を挑戦してまいります。2024年秋よりクリエイティブマーカーをテスト販売してまいりましたので、この結果を踏まえて2025年以降順次市場へ新商品を投入します。当社の保有する多色の万年筆インクやカラーマーカー、市販のアートツール等と組み合わせることで「書く」領域から「描く」領域へ拡がる多彩な表現の実現を目指します。
▪ マーケティングを強化しブランドシェア拡大
国内は重点得意先店のフォロー強化、海外は欧州でのブランド発信を強化します。
プラスグループ各社との協業もさらに積極的に進めてまいります。当社が国内営業業務を委託しておりますコーラス株式会社が、プラス株式会社に2025年5月1日を効力発生日として吸収合併されることとなり、営業代行機能はプラス株式会社のステーショナリーカンパニー内に設置されるコーラス営業本部に承継されます。この組織再編により、プラスグループとこれまで以上に連携を強化することで、より効果的かつ効率的な営業活動を推進できる体制が構築されます。
▪ 製造の効率化によるコストダウン
引き続き固定費及び変動費率の削減に取り組みます。組織としてはプラスグループとの連携をより密接に深めていき需給調整機能を強化することで、需要即応して柔軟に生産計画を変更できる生産体制を構築し、在庫削減に繋げます。
(ロボット機器事業)
▪ 海外市場の強化
米国市場はトランプ政権の発足による製造業の米国国内回帰で製造ライン自動化需要の高まりが予測され、設備投資意欲の高まりが期待されることから、現地駐在の営業部員の増員、人材育成を強化し、顧客への提案及びフォロー体制を充実させます。
▪ 設計効率化と製造能力強化
新型取出ロボットの開発及び取出ロボット周辺機器の標準化を図り、順次市場に投入していきます。
併せて、製造、業務フローを改善し、リードタイムの短縮を含む製造能力の強化を図ります。
新型取出ロボットの開発については、IT技術を用いたロボット技術に着目しており、特にIoT技術に力を入れております。IPF2023などの展示会において、取出機の状態モニタリング、成形機IoTシステムやその他センサーとのデータ連携デモを行い、お客様より好評を得ました。これらのIoT技術の製品への搭載の提案を進めていくとともに、収集データの分析によるロボットの性能向上や新たなサービスの開発を行ってまいります。今後、機械学習やAIなどを用いて更に発展させ、生産や実勢の管理、ロボットの予知保全など、お客様の生産性・付加価値の向上に努めてまいります。
② 「働きがい」と社内の意識改革に関する方針
▪ 事業計画を全社員で共有し、一度決めた目標を不屈の精神と創意工夫を持って最後まで粘り強くやり遂げる「執着心」を醸成します。
▪ 社員ひとりひとりが自らに枠を設けず、勇気をもって新たなことに挑戦し続けるチャレンジ精神を大切にします。
▪ プラスグループの一員となり、社内に新しい感覚や風土を取り入れ、セーラー万年筆社員の内なる意識変革を促します。
(3) 経営数値目標
2025年度は売上高5,336百万円、営業利益10百万円、親会社株主に帰属する当期純利益0百万円と予想しています。早急に経営計画を見直し、後日、中期経営計画として発表いたします。
(4) 経営環境及び対処すべき課題等
次期におけるわが国経済は、個人消費の持ち直しや設備投資の増加など、景気は内需を中心に引き続き緩やかな回復が期待される一方で、地域紛争の長期化や米国新政権による経済・外交政策が世界経済に与える影響に加え、国内では今後も原材料価格や電力・エネルギー価格の上昇、物価上昇の継続に対する懸念など、先行き警戒感が拭えない状態で推移するものと思われます。このような景気変動の可能性を認識しつつ、当社では社会状況の変化に適応し、抜本的な経営改革を実行することで、業績の回復に取り組んでまいります。
(文具事業)
文具事業の中核を担う万年筆のリブランディングによるブランド強化とマーケティングの強化によるブランドシェア拡大を図ってまいります。国内においては、SAILOR独自の21金万年筆を中心とした主力ブランドの強化に加え、SNSを活用した積極的な市場調査を行い、顧客ニーズに合った製品開発に努めてまいります。また、グループ連携を生かした幅広い販路を活用し、プラス株式会社のグループ会社(以下「プラスグループ」)である未来創造開発センター合同会社で開発した、描いて剥がせるインクを搭載した筆記具シリーズを展開してまいります。国内販売体制については、プラスグループの文具販売に係る組織再編による販売力強化により、また主要専門店と連携し魅力溢れる製品展開と万年筆ユーザー拡大に繋がる施策を実施し、売上拡大に努めます。海外においては、中国はこれまで以上に厳しい状況になる見込みですが、欧州については引き続き好調を維持する見通しで、強い需要のある伝統工芸品のハイエンド商材の拡販に注力します。さらに、これまで十分な販売活動ができていなかったステンレスペン先万年筆等の低価格帯の商材について、グループ会社の販路を活用して拡販を図り、新規顧客の開拓に努め業績の回復を目指します。
万年筆の製造面では、需要に応じて柔軟に生産計画を変更できる生産体制を構築し、在庫削減に繋げます。また、金地金の急激な値上がりへの対策として、一部部品の仕様変更によるコストダウンを進め利益率向上を図るとともに、現有社内設備を有効活用し、製品ラインアップを拡充することで市場拡大を図ります。
(ロボット機器事業)
引き続き、動作精度や耐久性で高い評価を得てきた取出ロボットの製品競争力強化に努めるとともに、既存取引先へのアプローチ強化、コーポレートサイトの内容拡充や顧客フォロー体制の強化などの顧客サービスの充実に取り組んでまいります。ロボットにIoTセンサーを搭載したスマートファクトリー化の提案等、顧客企業における関連工程の機器ソリューションに包括的に対応する体制の構築や営業ツールの活用により特注自動化装置の販売拡大に注力します。海外販売については、米国における現地駐在の営業部員を増やし、取出ロボットの受注拡大、顧客フォロー体制強化を図ります。製造面においては、製品設計の効率化と業務フローの改善により製造能力の向上に努め、国内外ともに、製品と販売体制の両面で顧客の生産性と品質の安定性向上に尽力してまいります。
また、中長期的には、主力の取出ロボットに関して、より利便性の高い新製品開発を行うとともに、射出成形付帯装置の標準化、独自技術を活かした新分野への製品開発、他社との協業によるOEM製品の開発などに取り組み、売上の拡大と収益性の向上を目指します。
株主の皆様には大変ご心配をおかけしておりますが、当社グループは、更なる業績向上及び企業価値の増大を達成し、早期の復配を目指してまいりますので、引き続きご支援を賜りますようお願い申しあげます。
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