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【東証プライム:7240】「輸送用機器」
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企業概要
当社グループは、当社及び連結子会社の各技術部門を中心に、相互連携を図りながら、担当分野に係る新技術・新製品等の開発活動を進めております。当連結会計年度の研究開発費の総額は、10,036百万円となっており、セグメント別の研究開発活動の状況は次のとおりであります。
(1)シール事業
「環境」、「安全」及び「自動運転」対応を重点として、継続的に技術・製品開発を進めております。
環境関連では、低摩擦損失による省エネルギー効果に寄与する製品、電気自動車(BEV)・ハイブリッド(HEV)・燃料電池自動車(FCV)向けにクリーンな社会に貢献する製品の開発を進めております。
安全や自動運転対応では、自動車制動関連の製品や電子部品との複合等による高付加価値製品の開発に取り組んでおります。
オイルシール製品では、カーボンニュートラル社会の実現と、サステナブルな未来に向け、水素関連シールの開発や、オイルシールの低フリクション技術応用により、e-Mobility、ロボット用減速機をはじめ、建機・農機用シールの長寿命化など、環境負荷低減に向けた取り組みを進めております。
ラバーオンリー製品においては、CV/BEV/HEV/FCVの各種ニーズにお応えし、低燃費、寿命向上、難燃性など、お客様の機能向上に寄与する製品開発を進めております。自動車以外の分野では、各社のCCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)への取り組みが活発化しており、製造設備用のラバーオンリー製品を通じてカーボンニュートラルへの貢献を目指しております。さらに、環境にやさしいエアコン用自然冷媒に対応したOリング材料をラインナップし、環境に配慮した製品開発を推進しております。
樹脂加工品では、自動車用自動変速機の回転軸用シールリングで、更なる省燃費・省電費に貢献するため低トルクと低リークを両立する仕様開発を進めております。また、電動ユニット向けに放熱をサポートする絶縁・高熱伝導樹脂部品に加えて、断熱性に優れるウレタン緩衝材の製品開発を進めております。
材料では、環境にやさしいバイオマス材の製品適用を進めており、一般道や高速道路などで使用されるNOKのラバーポール「ポストコーン」にバイオマスタイプを開発し販売を開始しました。バイオマス材については、他の製品用途向けでも開発を進めております。
新商品関連では、BEV/HEV/FCVに代表されるエコカーのニーズに対し、従来のシール製品群に加え、電子機器や電動ユニット向けバルブ製品をはじめとするゴム部品、および放熱をサポートする熱伝導性部品の販売拡大を推進中です。また、水素社会への取り組みとして、水電解装置の電解槽用のガスケット開発も進めております。
今後自動運転への発展が期待されている先進運転支援システム(ADAS)に必要とされるドライバーモニタリング技術への適用や、医師不足の解消を担う遠隔医療機器向け等、我々の開発した肌との親和性が高いゴム電極は、心電、筋電位、脳波等の取得を簡便化し、身体の状態を長時間・リアルタイムで把握するデバイスへの適用が期待されています。
自動車以外の分野では、「高齢化」「環境・エネルギー」「情報通信」「ライフサイエンス」に関わる社会課題に注目しており、高齢者のQOLを向上するソリューションや、医療・バイオ分野に向けた解析評価用のデバイスなど、より付加価値の高い製品開発を進めております。また、従来の技術を応用したヘアゴム製品を新たにBtoC 市場向け商品として販売しています。
化学合成品関係では、環境負荷の低減に対応した素材の開発や、機能性化学製品の開発とそれらの新規製造法を検討するとともに、生産プロセス面からも省資源・省エネルギーや環境に配慮した商品開発を推進しております。
なお、当事業に係る研究開発費は8,037百万円であります。
(2)電子部品事業
成長電子市場である、自動車・小型携帯電子機器・GX・ビューティー&ウェルネスの各分野に向けたフレキシブル配線板(以下FPC)の新商品開発を推進しております。
自動車分野向けには、電動車両の拡大に合わせた商品開発を積極的に推進しています。特に、BEV、PHEV、
HEV向けの駆動用バッテリーに焦点を当て、電圧監視FPCおよびそのモジュール製品の開発を行っています。
これらの製品は、従来、ワイヤーハーネスが採用されてまいりましたが、近年FPC化が進み、欧州やアジアに続き
国内でも本格的な生産が始まっております。また、FPCのみならずFPC周辺部品と統合されたモジュール化の要
求も高まってきており、モジュール化の技術向上を図るとともに、バッテリーの大型化、需要増に対応するための製
品開発と生産設備の改良に取り組んでいます。
新しい取り組みとしましては、曲面追従のヒーターFPCがあります。ヒーターFPCはかねてからありました
が、FPCはフィルム状であり、曲面に追従させるとなるとシワが入ってしまいます。そのためスリットを入れて曲
面に沿わせるような工夫が必要でしたが、貼り合わせたい曲面と添わせる形で形状を維持できる加工を施すことで、
曲面に合わせてシワの発生なく組み込みができるようになります。様々な形状に追従できるようになりますと、EV
車での熱源、暖房装置として幅広く採用が見込まれるとともに、意匠としての自由度も増していくと思われます。
これらを受けまして、弊社では、電動車両向けの材料ラインナップ強化を行っております。グローバルの材料についてベンチマークを行い、性能の過不足、コストバランスを見直し、更に競争力のあるFPC材料を開発していく計画です。特に上述の電圧監視FPCでは、バッテリーの効率向上のため電動車両の高電圧化の流れから、耐トラッキング性の要求が始まっております。弊社としましては、現在の要求水準よりも1ランク上の耐トラッキング性のある材料開発に先行して取り組み、技術優位性を確保することを狙っています。
小型携帯電子機器分野については、5Gにより高速・大容量通信が開始されたことから高周波FPCを商品化しています。高周波対応のポイントは材料であり、要望に応じFPC材料としてMPI(モディファイドポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)をラインナップ化し、5Gのボリュームゾーンである「SUB-6」から「ミリ波帯」の製品を提供しております。さらに50GHz以上の「超高周波帯」においては、上記材料では達成できない低損失や小型電子機器の省エネルギー化要求に対して、フッ素系材料を適用したFPCの提案や、PFASなどの新たな環境規制にも対応できる新規高周波材料の調査・開発を継続的に進めております。また、これら設計が難しい超高周波帯のFPCに対しては、当社で蓄積したノウハウを活用した材料技術・電磁界解析技術により、効率的で競争力ある設計提案も行っており、本年度の取り組みとして、これら要素技術をブラックボックス化しながら、グローバルのどの拠点でも対応できるよう、社内展開を図って参ります。
中国市場で増加している折り畳みスマートフォン(以下フォルダブルフォン)は、大画面のディスプレイを折り畳むことでコンパクトになるため、持ち運びや収納に便利なデバイスです。当社は、このフォルダブルフォンの折り畳み後の薄さを実現するために、他に先駆けてFPCの高屈曲性と薄型化を実現しました。さらに、高周波特性を向上させた材料も開発しており、今後のフォルダブルフォンの高機能化に貢献できると期待しております。今後、更なる薄型化と高周波特性の向上の要求があると考えており、これに向けた開発や顧客との定期的な交流を行って参ります。その為に、顧客と同等の評価が行えるよう、評価設備もさらに充実させていく計画としています。
GX分野においては、工場配管などの廃熱を熱源とした熱電発電向けに、配管に沿って曲がりかつ耐熱性と熱伝導
性を兼ね備えたFPCをかねてからご採用頂いております。特徴は、熱伝導性であり、元々FPCは薄い材料から構
成されておりますので、熱をよく伝えるのですが、当社のFPCは、独自材料により熱源の熱を熱電変換素子により
効率よく伝えられる高熱伝導素材を使用しております。更に、高温熱源に対応すべく、FPCの耐熱性を上げる取り
組みも併せて進めており、完成時には発電効率向上に貢献できるものと考えております。
ビューティー&ウェルネス分野においては、当社が世界に先駆けて量産実現した伸縮FPCによる脳波取得用セン
サシートの高付加価値化として、人体への装着性を大幅に改善できる導電性粘着剤を開発し、その量産準備を進めて
おります。また同時期に、伸縮FPCの更なる新商品として、美容機器メーカーとともにハイドロゲルを一体化した
EMS(電気筋肉刺激)用電極シートも開発、23年7月より量産を開始、25年度も引き続き生産することとなってい
ます。これら伸縮FPCについては、美容、医療、ヘルスケアなどの分野に向けて積極的な拡販を行っていくととも
に、ウェアラブル市場の活性化に貢献してまいります。
伸縮FPC以外としては、脳動脈瘤治療機器用対電極に当社の生体適合導電性粘着剤が25年度末に採用される見込
みです。ユーザーの特殊な滅菌処理に耐え、毒性残留が無いこと等、生体への適合性と密着力が得られることが採用
理由となっています。
なお、当事業に係る研究開発費は、1,305百万円であります。
(3)その他事業
事務機業界は、リモートワークの普及、デジタル化の進展に伴い、印刷需要が緩やかに落ち込む見通しであり、今後の販売も徐々に減少する予測です。
事務機の開発トレンドは、これまで同様に高速化・高画質化・高耐久化・省エネ化を目的とした機構変更・原価低減の他、PFAS規制強化に備えた製品開発が継続の見通しです。
また、顧客同士の合弁会社・共同出資会社設立に伴い、新規製品開発の減少が懸念されます。
そのため、弊社は顧客ニーズに基づいた協業開発に加え、環境負荷低減を意識した品質向上、原価低減、生産設備の省エネ化等を中心に開発・生産体制の構築に努めてまいります。
潤滑剤関係では、環境対応型特殊潤滑剤や、過酷な条件や高信頼性が求められる用途で使える特殊潤滑剤の製品化と、モビリティ・軸受・半導体・次世代エネルギー分野向けを含めた次世代に貢献するための新製品や新技術の研究開発に取り組んでいます。
なお、当事業に係る研究開発費は693百万円であります。
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