住信SBIネット銀行
【東証スタンダード:7163】「銀行業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
① 経営理念
当社は、以下の経営理念を原点に事業活動を推進してまいります。
・全役職員が正しい倫理的価値観を持ち、信任と誠実を旨に行動することにより、日々徳性を磨き、広く社会から信頼される企業を目指す。
・金融業における近未来領域の開拓と、革新的な事業モデルの追求に日々努め、お客さま、株主、職員、社会の発展に貢献する新しい価値を創造する。
・最先端のIT(情報技術)を駆使した金融取引システムを安定的に提供することにより、お客さまとの強固な信頼関係を築き、揺るぎない事業基盤を確立する。
② 事業運営方針
・法令等遵守・顧客保護・リスク管理・内部監査の態勢構築及び高度化と、各分野に精通する人材の確保及び育成
・利便性・先進性・収益性の高い商品・サービスの企画及び開発と、効果的なマーケティング活動の実践
・信頼性・安定性の高い事務・システムの構築と、それらを継続的に提供する運営体制の確立
③ コーポレートスローガン
テクノロジーと公正の精神で、豊かさが循環する社会を創っていく。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、中期的な経営戦略による計数目標として、2025年3月期を到達目標年とする「中期事業目標」を公表しました(2022年11月11日公表、2023年1月27日及び2023年2月28日一部見直し)。中期事業目標では、事業の成長を評価する利益指標、効率性を評価する財務指標、主要事業のKPIを目標として設定しておりました。各指標/項目の実績値は表記載の通りです。
<中期事業目標>
指標/項目 | 2025年3月期目標 | 2025年3月期実績 | |
利 益 指 標 | 業務粗利益 | 790億円以上 | 793億円 |
| うち、デジタルバンク事業 | 670億円前後 | 706億円 |
| うち、BaaS事業 | 120億円前後 | 127億円 |
経常利益 | 400億円以上 | 381億円 | |
| うち、デジタルバンク事業 | 350億円前後 | 337億円 |
| うち、BaaS事業 | 50億円前後 | 47億円 |
財 務 指 標 | ROE | 17%以上 | 17.5% |
OHR | 50%以下 | 51.2% | |
K P I | 住宅ローン実行額 | 20,000億円以上 | 19,361億円 |
口座数 | 900万口座以上 | 825万口座 | |
NEOBANK提携パートナー数 | 15~20社 | 22社 |
(3) 経営環境
日本では、2023年のインターネット利用率(個人)が86.2%、スマートフォンによるインターネット利用率が72.9%となり(総務省:令和6年版情報通信白書)、インターネットの利用拡大や通信機器の普及・発展等を通じたデジタル化が大きく進展してきています。インターネット専業銀行である当社を中心とする当社グループを取り巻く事業環境は、スマートフォンをはじめとする身近なデジタルデバイスの普及、人口減少、社会課題の解決に向けた意識の高まり、新型コロナウイルス感染症の流行を契機にした生活様式の変化の影響を受け、これまで以上のスピードで変化しています。
また、金融資本市場においては、2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策の解除とイールドカーブコントロールの撤廃を決定、その後7月には政策金利を0.25%とする利上げ、2025年1月には0.50%とする利上げを決定する等大きな変化の局面を迎えています。段階的な利上げ実施を受け、無担保コールレート(翌日物)は0.47%台、長期金利は1.5%台までそれぞれ上昇しました。ドル円相場は、米国での早期利下げ観測の後退を背景に、7月上旬にかけ160円台を上回る水準まで円安ドル高が進みました。その後は、日銀による利上げ継続が意識され、期末にかけ140円台まで円が上昇しました。日経平均株価は、円安の進行や米国株の上昇を受け、7月に一時4万2千円台まで上昇し、史上最高値を更新しました。その後は、円高や米国トランプ政権の通商政策への警戒感から、3月には一時3万5千円台まで下落しました。
上記金融経済環境の変化に加え、当社の開業以降、インターネットを活用した金融取引は、スマートフォンやタブレット等の身近なデジタルデバイスの普及等に伴い拡大が進んできましたが、近年では国内IT企業や地方銀行によるインターネット専業銀行への参入、大手銀行やインターネット専業銀行によるBaaS事業への参入など、当社を取り巻く事業環境や競争環境は大きく変化しております。
当社は、上記環境変化を踏まえたうえで、「テクノロジーと公正の精神で、豊かさが循環する社会を創っていく」というコーポレートスローガンのもと、「お客さま中心主義」を事業活動の基本に置き、今後も、ステークホルダーの皆さまに選ばれる銀行であり続けるため、更なる利便性の向上・魅力的な商品の提供、安定した経営管理・組織運営を実現してまいります。
当社は、デジタルバンク事業、BaaS事業、THEMIX事業の三つの事業を営んでいますが、デジタル化によるキャッシュレス化の進行等は、デジタルバンク事業のみならず、当社事業全般にとって追い風と認識しております。
また、当社の運用資産は、変動金利の住宅ローンアセットが中心のため、政策金利の上昇は、当社の資金利益の拡大につながる追い風と捉えています。
(4) 中長期的な経営戦略
当社は、グループの経営理念を事業活動の基本に置き、これまでの成長を支えてきたテクノロジーの強化やアライアンスの拡大によって革新的なビジネスモデルの創造や商品開発を行い、更なる顧客利便性の向上や高い顧客満足度を実現することにより、更なる成長の実現を図ってまいります。さらには、銀行を超えた存在へ進化すべく、生成AIをはじめとする最先端のテクノロジーとデータを駆使し、新規事業領域に進出します。また、今後の更なる成長や拡大を支える基盤となる、安定した経営管理・組織運営の実現を目指してまいります。
<デジタルバンク事業>
主力商品である住宅ローンについて、B to B to Cプラットフォームである「かんたん住宅ローン」をリリースするなど申込・業務プロセス改革を更に進めることで顧客利便性を高め、リスクに応じた戦略的な金利設定を行い、銀行代理店チャネルを中心に店舗網の拡大によって収益の拡大を進めるとともに、保証付き投資用マンションローンの提供を開始するなど多様化する顧客ニーズにマッチした新商品開発も強化してまいります。
また、デジタル化やキャッシュレス化の進展や金利のある世界への移行を背景として、デジタルバンク事業の競争が激化しておりますが、個々のお客様の状況に合わせたマーケティング施策を強化のうえ資産形成層の安定的な預かり資産の拡大を図り、お客様のライフステージ変化に合わせた外貨預金やロボアドバイザーサービス等の提供による非金利収益の拡大を目指します。
法人取引では、取扱商品・サービスの拡充、手続きの簡素化や手数料体系の見直し等を図り、法人口座開設を促進するとともに、法人預金の獲得や決済を始めとする各種サービスでの手数料収益の拡大、預金の獲得および収益の増加を図ってまいります。
<BaaS事業>
BaaS事業では、将来性への期待から、金融機関のみならず異業種の参入も増加していますが、BaaSビジネスの先駆者としての強みを生かした提携先の開拓や共同施策の展開等により提携先との連携を強化し、口座あたりの収益を意識した稼働口座の獲得を促進、各提携先の専用支店口座の増加により、アカウント(口座)手数料を増加させる方針です。また、金利環境の変化を踏まえ口座あたりの預金量拡大も意識したうえで、経営資源を集中し、提携先の拡大と従来以上に迅速な事業の拡大を図ってまいります。
また、BaaS事業の取組みがもたらす、提携先の顧客、提携先、当社それぞれがWin・Win・Winとなる仕組み及び決済や提携先等のデータを活かし、従来の銀行とは異なるビジネスモデルを確立していきたいと考えています。
<THEMIX事業>
THEMIX事業では、2022年8月に、広告事業等を行う子会社として株式会社テミクス・データを設立しました。同社では、事前にお客さまからデータ利用の同意をいただいたうえで、アライアンス企業と連携して、金融データプラットフォームビジネスを展開しています。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
① 新時代における革新的なビジネスモデルの創造
長らく続いたマイナス金利政策が終焉を迎え「金利がある世界」へと金融環境が大きく変貌する一方、近時は大手銀行のデジタルシフトの加速や、インターネット専業銀行間の競争激化等、従来の預金貸出金を中心とした利鞘確保による収益モデルでは、今後の利益成長を継続することが難しいと課題認識しております。そうした中、当社グループは、預金貸出金利運営の見直しに加え、BaaS事業やTHEMIX事業に限らず、革新的なビジネスモデルを構築していくことで、更なる利益成長を継続してまいります。
また、当社グループは、APIやクラウド等の先進的なIT技術の活用とお客さま中心主義を組み合わせることで、付加価値の高い商品提供を推進しております。当社グループは、新たな価値を創造することを目指し、テクノロジー活用のもと、効率性の追求を通じた経費率の改善を図り、収益力の高い事業ポートフォリオの構築を目指してまいります。当社グループは、高品質なユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンス(UI/UX)、AWS(Amazon Web Services)のクラウド、APIや自社型AI及び生成AI等の先進的・効率的な技術を一早く取り入れ、スピーディに新たな価値を創造することに、引き続き取組んでまいります。
② 安定した収益基盤・顧客基盤の確立
当社グループは、お客さまのライフステージに沿った商品提供やお客さまの利便性を追求した新サービスの投入により、収益基盤・顧客基盤の構築を進め、より安定した経営基盤の確立を目指してまいります。
主力商品である住宅ローンでは、商品性の見直しや顧客サポート態勢の充実、販売チャネルの拡大、さらにはBaaS事業における住宅関連事業を展開する提携先との協業推進により、一層の残高積上げと収益力の向上に取組んでいるほか、優良な顧客基盤とAI審査モデル等の自社テクノロジーにより、当社の住宅ローンの2025年3月末の期待損失率(注)は0.014%に留まっております。また、コンシューマーローンでは、不動産投資による資産形成を目的とするローン等の新たな商品提供、マーケティング施策の展開などによる顧客獲得、商品力の訴求等による残高積上げにより、収益力の強化を図ってまいります。その他、デビットカード等の決済ビジネスの拡充、FinTech領域における積極的な取組み等により、お客さまの利便性向上を図りつつ、安定した預金及び手数料収益の積上げに努めてまいります。
BaaS事業においては、開業以来の取組みで培ったノウハウを活用し、より多くの提携先やその顧客に金融サービスにおける新しい価値を創造すべく、「NEOBANK®」サービスの提供に取組んでまいります。「NEOBANK®」における企業との提携は、2020年4月にスタートした日本航空株式会社に始まり、2025年3月末現在で提携先数は22社となっております。
(注) 期待損失率は、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行が保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成18年3月27日金融庁告示第19号)に基づき算出された居住用不動産向けエクスポージャーのPD(Probability of Default)×LGD(Loss Given Default)により算出しております。
③ 経営管理態勢の強化
顧客基盤及び総資産の拡大、業務多様化、金利環境の変化やボラタイルな市場環境により、当社グループが抱える経営管理上のリスクも変化しております。今後の事業展開と合わせ、自律的に管理態勢高度化への対応を実施してまいります。
システム面では、お客さまのお役に立つ利便性の高いサービス提供を第一に、将来のビジネスモデル実現に相応しいシステムの構築を継続的に検討するとともに、開発リスクの極小化、障害の未然防止策・発生時の拡大防止策の高度化を進めてまいります。
リスク管理面では、当社グループの保有資産に即した金利リスク管理・流動性リスク管理態勢の強化、信用リスク管理の高度化を進め、バーゼルⅢ等各種規制対応と合わせ、リスク管理強化を図ってまいります。また、口座不正利用や不正アクセスに対する対策にも継続的に取組んでまいります。
また、銀行代理業者の拡充に適したリスク管理態勢の構築と、金融機関に対する社会的な役割期待の高まりや近年のインターネット上の金融犯罪・サイバー攻撃等が増加傾向にあることを踏まえたセキュリティ対策の強化、顧客保護対策をより一層進めてまいります。
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