三菱重工業
【東証プライム:7011】「機械」
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企業概要
以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1)経営方針・経営戦略等
①当連結会計年度の経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は、世界経済は地域により差はあるものの、全体としては底堅い成長を続け、日本経済も、個人消費と設備投資を中心に緩やかに持ち直した。一方、地政学的なリスク、中国経済の低迷に加え、保護主義的な動きの高まりなどで、先行きには不透明感が残る状況となった。
かかる経営環境下においても、当社グループは長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、サステナブルで安全・安心・快適な社会と人々の豊かな暮らしの実現に貢献していく。
②中期経営計画「2024事業計画」
2024年4月から開始した中期経営計画「2024事業計画」は、事業成長と収益力の更なる強化の両立に向け、「伸長事業」と「成長領域」を重点領域とし、「ポートフォリオ経営の強化」、「技術・人的基盤の強化」及び「MISSION NET ZEROの推進」に取り組み、その結果、2026年度における「売上収益5.7兆円以上」、「事業利益4,500億円以上(事業利益率8%以上)」、「ROE12%以上」等の目標達成と、安定配当と利益成長に応じた増配による株主還元を進めていく。
初年度に当たる当事業年度では、受注、売上、事業利益ともに過去最高となった。特に、「2024事業計画」の目標達成に向けては、伸長事業を中心に旺盛な受注を確保することができた。
③「MISSION NET ZERO」に向けた取組み
サステナブルで安全・安心な社会の実現に向け、MISSION NET ZEROに取り組んでおり、Scope1、2※1のCO2排出量を2030年に2014年比で50%削減するという目標に対して、2024年で47%削減を見込んでいる。これに加え、三原製作所では工場のカーボンニュートラル化を進めており、太陽光発電設備等の既存技術の導入にとどまらず、工場脱炭素化に向けた新たな技術の実証と導入を進めている。また、Scope3※1については当社のバリューチェーン全体からのCO2排出量削減(2019年比で、2030年に50%)が目標であり、この達成に向けて高砂水素パークや長崎カーボンニュートラルパークなどで様々なソリューションの開発・実証を進めている。
※1 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、
Scope2以外の当社バリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)
排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、当社を取り巻く環境の不確実性に備えつつ、様々な変化に柔軟に対応し、新たな事業機会を着実に捉えていく必要がある。このため、従来の取組みの継続に加え、新たな価値を創造することで社会の進歩に貢献していくことを経営目標に掲げ、これを実現するために、「Innovative Total Optimization」(ITO)という新たな考え方を実践する。具体的には、基盤技術の組合せによって社会や顧客のバリューチェーンを革新する製品・サービスを創出することで事業領域を拡大する。また、縦のバリューチェーンと横の事業部間の連携を強化してシナジー効果を追求することで、全体最適による生産性の向上・収益力強化を実現する。
こうした取組みを通じて、「2024事業計画」で掲げた事業成長と収益力の更なる強化の両立に向けた各種施策をより力強く推進していく。
①伸長事業の着実な遂行
エネルギー、原子力、防衛の分野は、旺盛な需要を受け、多くの受注を確保している。計画したQCD(品質・コスト・納期)で顧客に届けるため、人的リソースを拡充し、生産能力強化・生産性向上を図るとともに、サプライチェーンを強化する。また、将来を見据えた研究開発・設備投資も積極的に実施して、大きな成長実現の布石とする。エネルギー分野のガスタービンでは、海外拠点も含めた生産能力増強やサプライチェーンの強靭化、工場の自動化・IT化を推進する。また、発電効率向上のための技術開発に取り組むとともに、水素・アンモニア焚きガスタービンに関しては経済性や燃料供給インフラの状況を考慮し実証を進める。原子力分野では、プラントの新設を見据えた生産設備の更新や高機能化と、革新軽水炉開発等を更に推進する。防衛分野では、組織横断タスクフォースにより生産効率向上、サプライヤー支援及び物流改善等の増産準備を進めるとともに、将来事業の創出に向けた技術開発を加速する。
②成長領域の事業化推進
需要が拡大しているデータセンターでは、当社が強みを持つ電源・冷却・制御に関する幅広い製品とエンジニアリングを統合して最適なソリューションを提供する。これにより、ユーティリティの安定稼働等に貢献していく。
また、水素・アンモニア・CCUS※2の分野では、各国の市場・政策動向を踏まえたエナジートランジションへの備えとして、世界最高クラスの経済性を持つ製品を提供するために、案件組成・研究開発を推進していく。CCUSの関係では、関西電力姫路第二発電所内に新設したCO2回収パイロットプラントでの実証を進める。また、現地工事の効率化・省力化や工期短縮を可能とする小型CO2回収装置の市場投入を進める。さらには、ExxonMobil社との次世代CO2回収技術に関する研究開発を加速する。水素・アンモニアの関係では、SAF※3や合成燃料製造にも繋がる高効率な水素製造装置であるSOEC※4の開発を促進する。
※2 Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素回収・利用・貯留)
※3 Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)
※4 Solid Oxide Electrolysis Cell(高温水蒸気電解)
③DXの活用等
当社グループでは、デジタル・プラットフォーム「ΣSynX」(シグマシンクス)を活用して事業分野を跨ぐ製品群を「かしこく・つなぐ」ことで、事業競争力強化に取り組んでいる。新しい事業機会開拓のため、更にデジタル技術を活用し、サービスの高度化を図っていく。例えば、画像監視プラットフォーム「ΣSynX Supervision」によるO&M※5の高度化や、発電プラントの配管画像のデータ処理により、プラントの安定運用に貢献する。
一方で、デジタルイノベーションを加速するための教育プログラムの充実等による人材育成を進める。また、デジタル技術で可視化した熟練技能を技能伝承に活用するなど、技術・人的基盤の強化も図っていく。
※5 Operation & Maintenance(運転・保守)
当社グループは、以上の諸施策を通じ、社会課題の解決によってサステナブルな社会の実現に貢献していく。このように事業を発展し成長させていく上では、従来同様コンプライアンスが大前提であるとの認識の下で各種施策を進めていく。

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