アドバンテスト
【東証プライム:6857】「電気機器」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針:「The Advantest Way」
当社グループは、経営理念として「先端技術を先端で支える」を掲げています。すなわち、「世界中の顧客にご満足いただける製品・サービスを提供するためにたえず自己研鑽に励み、最先端の技術開発を通して社会の発展に貢献する」ことが当社グループの使命であり、またこれを追求し続けることで当社グループの社会的な存在意義は拡大するものと認識しています。
また過去からの事業拡大に向けた取り組みの結果、当社グループは多様な文化、言語、慣習、価値観を内包する組織となっていることから、経営理念に即した事業活動を行う前提として、共通価値観の醸成や共通の行動原則が重要となっています。
これらを総合し、当社グループは2019年に、過去から有していた企業理念体系「The Advantest Way」を発展させ、当社グループが今後進むべき方向性と大切にすべき価値観を包含するものへ改定しました。現在の当社グループの中長期的な経営戦略や事業活動は、すべてこの改定版「The Advantest Way」に沿って展開されています。当社グループは、「The Advantest Way」に沿った活動を実践し続けることで顧客や社会への提供価値を最大化し、各ステークホルダーからより厚い信頼を得られるよう努めます。
「The Advantest Way」は、以下の6要素から構成されます。
1. 経営理念(パーパス&ミッション):「先端技術を先端で支える」
2. ビジョン・ステートメント:「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)」
3. コア・バリュー:「INTEGRITY」
4. 「サステナビリティ基本方針」
5. 「行動指針」:「本質を究める」
6.「行動基準」
1~3は、社会発展への貢献と中長期的な企業価値向上に向けて当社グループがどうありたいか、なにをなすべきかを規定しています。4~6は、望まれるステークホルダーとの関係性や、業務遂行にあたり役員や従業員に求める価値観やふるまいなどを定めています。
(2)中長期経営方針「グランドデザイン」
当社グループは、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、長期的にどうありたいか、そしてそのために何をなすべきかなどの当社グループの進むべき方向性を、2018年より中長期経営方針「グランドデザイン」として定めています。
2018年版の「グランドデザイン」のもとでは、第1期と第2期の二つの中期経営計画を推進し、当初の構想を超えた規模とスピードで当社グループの市場シェア向上、業容拡大、収益性改善を実現しました。
そして2024年、当社グループをさらに発展させるため、また当社グループが顧客や社会にとって価値ある存在であり続けるため、「グランドデザイン」をそれまでの経営・事業体制の変化や当時最新の長期事業環境見通しを踏まえた内容へ改定しました。
当社グループは今後、この改定版「グランドデザイン」に則り、ステークホルダーへの提供価値の拡大と経営基盤の強化に努めてまいります。
<ビジョン・ステートメント>
「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ」
(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)
当社グループは、提供価値の拡大を通じ、すべてのステークホルダーから半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーとなることを目指します。
<長期事業環境認識と対処すべき課題>
マクロ的な事業環境における将来の不確実性は、今後も高い状態が継続すると予想されます。気候変動、地政学的リスク、人口動態の変化など、世界を取り巻く問題はより深刻化しており、社会課題の複雑化が飛躍的に進んでいます。
一方で、AIに代表される、これら社会課題を解決するためのイノベーションが多様な産業でダイナミックに進行しています。社会的イノベーション基盤となる半導体に対しては、さらなる性能改善と経済合理性確保に向けた企業間・地域間連携の拡大や、域内供給体制の強化などが今後見込まれます。これらに沿い、半導体バリューチェーンは、その複雑さをさらに増しつつ、中長期的な発展を遂げていくと想定しています。
さらに半導体テストの技術的な潮流について展望すると、さらなる微細化、新アーキテクチャーの採用、先端パッケージの採用など、半導体の高性能化とエネルギー効率向上を実現するための技術進化が、半導体テストの複雑性を今後も持続的に引き上げていく見通しです。とりわけ、今後の半導体市場の最大の成長牽引役と予想されるAIやHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)関連の半導体において、テストの複雑性は一層顕著となると見込まれます。
このように複雑性の進行が業界のキートレンドとなる中、半導体テスト関連市場は、顧客のテスト能力増強投資を通じ、中長期的な市場成長を遂げると予想しています。また今後のテスト・ソリューションにおいては、半導体の品質保証プロセスにおける効率性向上をもたらす、より高度な自動化が望まれる方向と分析しています。こうした潮流下、当社グループは、より性能に優れる製品の開発・販売に加え、それら製品群を発展・統合した新たなソリューションやサービスの提供がさらなる成長機会となると見込んでおり、その機会の具体化を今後の中長期成長施策の基軸とする方針です。また業界全体が複雑化する中にあっては当社グループ自身においても効率が重要であり、経営および事業全般にわたってさまざまな効率性の向上に取り組みます。
<経営における長期的目標>
半導体は、サステナブルな社会の実現や多様な産業の発展に向けて今後も不可欠な存在とされています。そして現在の当社グループにおけるほぼすべての事業は、より性能に優れた半導体の実現と普及に深く結びつくものとなっています。このことから当社グループが経営理念に基づき、先端の技術開発を通じてより良い半導体の開発と普及に寄与していくことは、自社の持続的な成長のみならず、さらなる「安全・安心・心地よい」社会実現に向けても直接的に貢献する行為であり続けると考えます。
今後当社グループは、先述のテストの複雑化への対応などを含めた顧客課題の解決を軸としながらサステナブルな社会実現につながる取り組みを推進し、それを通じて各ステークホルダーに対して提供する経済的・社会的価値を多面的かつバランスよく拡大することを、経営における長期的な目標とします。
(3)第3期中期経営計画(MTP3、2024~2026年度)の概要
半導体テスト関連市場は、短期的なダウンサイクルを織り込みつつも、中長期的に成長を続けると見込んでいます。また半導体市場の拡大に加え、半導体の複雑性への対応が業界における構造課題となる中で、当社グループの事業機会は中長期的に拡大するものと考えています。
そうした環境下、当社グループは、改定した「グランドデザイン」に則り策定した第3期中期経営計画を推進することで、中長期的なステークホルダーへの提供価値拡大に取り組みます。
<戦略>
1. Outpace the growth in our core market (コア市場の成長率を上回る成長実現)
当社グループの今後のコア市場においては、半導体の生産量増加、半導体の高性能化、そして半導体の複雑性進行への対応が重要な成長機会となると想定しています。これに対しては、個々のテスト・ソリューションの性能向上に加え、顧客に“Automation of Test”、すなわち半導体テストの効率性向上をもたらす新たな価値を、当社グループが擁する多様な製品・ソリューション群の有機的な結合や社外パートナーとの連携などを通じて創造します。これらにより、市場成長率を上回る事業成長を引き続き実現することを目指します。
当戦略領域における2024年度の主な進捗は以下となります。
・テスト需要の変化を先読みした顧客訴求力ある製品の拡販や重点顧客・地域戦略を通じ、引き続き半導体テスタ(ATE)市場において過半のシェアを維持
・AI/HPCデバイス用新電源モジュールや次世代メモリ向けテスト・システムなど、新たなキー・テスト・ソリューションを複数発表
・今後の半導体の技術展望に基づき、成長領域に向けた研究開発投資やマーケティング施策を積極的に実施
2. Expand adjacently / new businesses (近縁市場・新規事業領域への展開)
半導体の高性能化や複雑性が進行する中では、より広く、統合されたテスト・ソリューションが望まれます。当社グループはこれまでもシステムレベルテストやテスト周辺機器への事業展開を進めてきましたが、今後もこのアプローチを継続することで顧客への提供価値をさらに拡大します。具体的には、当社製品のインストールベースを活用したフィールド・サービスやAdvantest Cloud SolutionsTMの販促に取り組むほか、Applied Research & Venture Teamによる事業機会創生にも挑戦します。
当戦略領域における2024年度の主な進捗は以下となります。
・シリコン検証を自動化する画期的なソリューション「SiConicTM」の提供開始により、半導体の設計検証工程とシリコン検証工程における当社グループの事業機会を拡大
・顧客の将来のニーズに応える高性能なトータル・テスト・ソリューション実現に向け、プローブカード・メーカーであるTechnoprobe S.p.A.(イタリア)、FormFactor, Inc.(米国)、株式会社日本マイクロニクス(日本)と戦略パートナーシップ契約を締結
・テストエンジニアリングサービス強化に向けた戦略投資として、Salland Engineering International B.V.社(オランダ)を買収
3. Drive operational excellence (オペレーショナル・エクセレンスへの取り組みを推進)
当社グループは、技術、ノウハウ、リソースの活用を部門横断的に進めることで、半導体業界におけるテスト課題を解決していきます。また、当社グループのステークホルダーすべてにとって価値がある企業となるためには、製品や技術面の優秀さだけではなく、あらゆるオペレーションの効率性と効果性を高めていく必要があると認識しています。それに向け、DXを通じた社内オペレーションの迅速化と省人化、強靭なサプライチェーンの構築、有能人財の登用や社員教育の拡充などによる人的資本強化、AIやデータ・アナリティクスを活用した社内生産性向上などに取り組みます。
当戦略領域における2024年度の主な進捗は以下となります。
・サプライチェーン管理の高度化により、テスト需要の旺盛な伸びに対する追従力を強化
・社内オペレーションの迅速化と業務効率向上に向け、積極的なIT投資を実施
・価値創造の源泉である人的資本の強化に向け、従業員エンゲージメント向上施策を展開
4. Enhance sustainability (サステナビリティの取り組み強化)
気候変動や人権問題をはじめとするサステナビリティ課題に対する能動的かつ積極的なアクション、法令遵守や企業倫理の徹底を含めた責任ある事業活動の遂行、リスクマネジメントの強化やコーポレート・ガバナンスの高度化などを通じて企業価値向上基盤をさらに強化するとともに、各ステークホルダーからより厚い信頼を得られるよう努めます。またサステナビリティに関する取り組みの推進にあたっては、その根源となるものは企業内の共通カルチャーや価値観であることから、これらの醸成と浸透にも努めます。
当戦略領域における2024年度の主な進捗は以下となります。
・ステークホルダーに対する提供価値の拡大に向け、サステナビリティに関する基本方針や行動計画を刷新するとともに新たな中期KPIを設定
<経営指標>
MTP3では、上記の4つの戦略を通じて収益拡大、収益性改善、資本効率向上を図ることで、企業価値の向上に取り組みます。これに沿い、MTP3において重視する経営指標を売上高、営業利益率、当期利益、投下資本利益率(ROIC)、基本的1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの向上に努めます。なお各指標の進捗を中長期視点で評価するため、経営指標には市場変動の影響を平準化できる3か年平均の値を用います。MTP3の初年度にあたる2024年度は、すべての経営指標において目標値を超過しました。
| MTP3(2024~2026年度) 平均目標*1 | 2024年度実績*2 |
売上高 | 5,600~7,000億円 | 7,797億円 |
営業利益率 | 22~28% | 29.3% |
当期利益 | 930~1,470億円 | 1,612億円 |
投下資本利益率*3(ROIC) | 18~28% | 31.5% |
基本的1株当たり当期利益(EPS) | 127~202円 | 218.67円 |
*1 MTP3財務目標値の前提とした為替レートは1米ドル=140円、1ユーロ=155円
*2 2024年度の為替レート実績は1米ドル=153円、1ユーロ=164円
*3 投下資本利益率:NOPAT÷投下資本(期首・期末平均)。NOPAT:営業利益×(1-税負担率25%)。
投下資本:借入金+社債+資本合計(リース負債含まず)
<コスト・利益構造>
優れたテスト・ソリューションの販売促進、サプライチェーンマネジメントや製造オペレーションの最適化などを通じ、売上総利益率の改善に取り組みます。また研究開発投資や人的資本強化投資など、持続的な価値創造の源泉となる費用については積極的に投下する一方、DX化などの経営効率や業務生産性を高める施策を展開することで収益構造の継続的な改善に努めます。他方で、世界経済や当社の市場環境における将来の不確実性は高い状態にあります。環境変化に即した機動的な財務マネジメントを遂行していくことで、上記経営目標の達成に努めます。
<資本政策、株主還元>
資本政策として、研究開発、設備増強、M&A等の成長に向けた事業投資を優先します。半導体市場の長期的拡大と半導体のさらなる高性能化に即して当社グループの将来キャッシュ創出力が拡大するよう、MTP3期間中に予想される累計6,000億円以上の営業キャッシュ・フロー(研究開発費控除前)を、中核事業におけるオーガニック成長投資ないしノン・オーガニック成長投資、および近縁市場への事業展開の加速に振り向けます。また、資本効率と資本コストに配慮したバランスシート管理の見地から負債(デット)も柔軟に活用してまいります。さらに経営基盤の強化および持続的企業価値創造のために財務健全性を維持した上で適正な資本構成を図る方針であります。
2024年4月から開始したMTP3の3年間における株主還元方針は、安定した事業環境を前提として、配当については1株当たり通期30円を最低限とする方針のもと、安定的・継続的な配当実施に努めてまいります。総還元性向※に関しては、MTP3期間の3年間合計で50%以上を目途といたします。
また手元現金水準については、平時における目安を1,000~1,200億円と見積もっています。成長投資や運転資本への資金需要を超えて余裕資金が生じる場合は、配当や自己株式取得を通じて株主に還元します。
(※) 総還元性向:(配当額+自己株式取得額)÷連結当期利益
<成長投資と株主還元実績>
| MTP3(2024~2026年度) 3か年累計想定 | 2024年度実績 |
研究開発費 | 約2,100億円 | 714億円 |
設備投資 | 約600億円 | 210億円 |
M&A等の戦略投資 | 約1,000億円 | 223億円 |
株主還元額 (配当額+自己株式取得額) | 1,400億円以上 | 787億円 |
総還元性向 | 50%以上 | 49% |
(4)2025年度の経営環境および取り組み
今後の当社グループを取り巻く事業環境を展望しますと、暦年2025年の半導体市場は、前年に引き続きAI関連
向け半導体需要が牽引するものと見ています。半導体試験装置市場においても、自動車や産業機器向けなどのAI
関連用途以外の需要回復にはなお時間を要するものの、半導体の複雑化および生産拡大を背景に、AI関連向け試
験装置需要は引き続き高水準に推移するものと見込んでいます。AIに関連した半導体に参入する企業の増加も、
この需要に寄与するものと考えます。
一方で世界経済を俯瞰しますと、継続する地政学リスク、急激な為替変動リスクなど、当社グループを取り巻
く事業環境は先行きの不透明感が強まっています。
当社グループは、外部環境の変化にたえず注意を払い、機敏かつ柔軟に対応するとともに、引き続き第3期中
期経営計画で掲げた施策を推し進めることで中長期的なステークホルダーへの提供価値拡大に取り組んでまいり
ます。
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