ルネサスエレクトロニクス
【東証プライム:6723】「電気機器」
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企業概要
(1) 研究開発活動の体制および方針
当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発において、自動車向け製品、産業・インフラ・IoT向け製品を、それぞれを担当する事業本部(注)が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としてまいりました。
加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。
家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやSoCといったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニング・コンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現していきます。
(注)当社グループは、2024年1月1日付で組織体制の変更を発表し、技術分野に基づく4プロダクトグループを発足しております。
(2) 主な研究開発の成果
① 最先端の3nmプロセス技術を採用した車載用マルチドメインSoC 「R-Car X5H」を発表
当社グループは、第5世代R-Carシリーズの第一弾製品として、ADAS、IVI、ゲートウェイなど多用途に対応する車載用SoC「R-Car X5H」を発表しました。
本製品は、最先端の3nmプロセス技術を採用し、業界最高レベルの高性能と低消費電力化を実現しています。ユーザは、セントラルコンピューティングECU(電子制御ユニット)に本製品を使用することで、将来を見据えた効率的なシステム開発が可能です。
また、本製品は、最大400 TOPS(注1)のAIアクセラレータと最大4TFLOPS(注2)のGPU(画像処理用半導体)を搭載し、従来製品と比べて、性能が大幅に向上しています。さらに、半導体の相互接続に関する標準規格UCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)とAPI(注3)を提供することで、チップレット(注4)のチップ間の接続や他社製半導体との相互運用性を確保しています。これにより、ユーザはシステムを柔軟に設計・カスタマイズし、製品開発のプラットフォーム全体の性能向上や将来的なアップグレードに対応できます。
本製品は、2025年上期を目処に一部の自動車顧客向けにサンプル出荷を開始し、2027年下期頃に量産を開始する予定です。
当社グループは、次世代の自動車技術の進展を見据えて、最先端かつ多様な性能・機能を有する製品・ソリューションを提供することにより、安心・安全なクルマ社会と自動車の早期開発に繋がる「シフトレフト」の実現に向けて、業界をリードしていきます。
(注)1.TOPS:コンピュータの処理速度を表す単位の一つで、1秒間に実行できる演算回数を1兆回単位で表したものです。
2.TFLOPS:コンピュータの処理速度を表す単位の一つで、1秒間に実行できる浮動小数点演算の回数を1兆回単位で表したものです。
3.API:Application Programming Interfaceの略称で、ソフトウェア、プログラム等を繋ぐインタフェースです。
4.チップレット:複数の小さな半導体チップを組み合わせて単一のパッケージに組み込む技術で、規模回路と同等の機能を実現することができます。
② データセンタ向けに業界初の第2世代DDR5 MRDIMM用メモリインタフェースチップセットを発表
近年、AIやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)をはじめとするデータセンタの用途において、膨大なデータを高速かつ効率的に処理することが求められており、その中でも特に、コンピュータに使用されるメモリの最新規格「DDR5」は、より高速なデータ転送速度と低消費電力を実現する規格の一つとして、国内外で普及しています。そして、第2世代DDR5 MRDIMM(マルチプレックスランクDIMM)の転送速度は最大毎秒12.8ギガバイトで、そのメモリ帯域幅は第1世代の1.35倍に拡大しています。
このようなニーズに対応するため、当社グループは、データセンタ向けに最適化された次世代のメモリモジュールとして、業界で初めて、第2世代DDR5サーバ用MRDIMM向けにトータルメモリインタフェースチップセットを発表しました。
本製品は、MRCD(マルチプレックス・レジスタード・クロックドライバ)、MDB(マルチプレックス・データバッファ)およびPMIC(パワーマネジメントIC)から構成され、第1世代より約45%もの消費電力を削減でき、優れた電力効率も実現しています。これらにより、本製品を使用するデータセンタの効率性と処理能力を大幅に向上することができます。
当社グループでは、DDR5用温度センサなども既に提供しており、ユーザは本製品と組み合わせて使用することで、高性能なデータセンタを効率的に構築・開発できます。
当社グループは、これからもCPUやメモリのプロバイダをはじめとする業界のリーディング企業と連携し、ハイパフォーマンスシステムのトレンドの最先端で次世代の技術・仕様を開発していきます。
③ 独自開発の32ビットRISC-V CPUコアを搭載した第一弾マイコンを発売
当社グループは、独自開発の32ビットRISC-V CPUコアを搭載した汎用マイコン「R9A02G021」を発表し、量産を開始しました。
RISC-Vはオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)を採用しており、近年、多くのマイコンメーカーがRISC-V製品の開発を推進しています。当社グループでは、この分野でいち早く同技術を実現する独自のRISC-V CPUコアを開発し、テストを重ね、マイコン製品として市場に投入しました。また、必要な開発環境や量産体制も整備し、今回の市場投入に至りました。
これにより、ユーザは、IoT機器や産業機器などの幅広い用途において、消費電力とコストを重視して製品開発する際に、RISC-Vを有力な選択肢の一つとして活用でき、当社グループとそのパートナー企業が提供する開発環境とあわせて本製品を利用すれば、開発工数やコストの削減が可能となります。
本製品は、最大48MHzの動作周波数という高い性能を持ちながら、スタンバイ時の消費電力が0.3µAという非常に低い電力設計を実現しています。また、128キロバイトの高速フラッシュメモリや16キロバイトのSRAM、4キロバイトのデータ保存用フラッシュメモリを搭載しており、マイナス40℃から125℃までの広範な温度環境でも安定して動作することができます。さらに、A/DコンバータとD/Aコンバータを内蔵し、標準的なシリアル通信インタフェースを備えているため、センサやディスプレイなどの外部モジュールと、迅速かつ確実に接続することが可能です。
当社グループのRISC-Vマイコンは、省電力でコストパフォーマンスに優れた幅広い製品に対応する革新的な選択肢をユーザに提供するものであり、当社グループは、本製品に続き、RISC-V CPUコアを搭載したマイコンを増やしていく予定です。
(3) 研究開発費
当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は2,498億円となり、前連結会計年度の2,335億円と比べ164億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。
なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
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