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【東証グロース:6081】「サービス業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「世界中の人と企業の創造がめぐる社会へ」というミッションのもと、自社開発のマーケティングSaaSツールの提供やSNS活用を中心としたソリューション提供等により、顧客企業のマーケティングを支援する事業を国内・海外で展開し、企業価値・株主価値の向上を目指しております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループの中長期戦略としましては、マーケティングDX支援事業のオーガニック成長に加え、M&A及び新領域の開拓による業容拡大を模索し、非連続成長を実現することを掲げております。
オーガニック成長としては、プロダクトの進化、施策実行力の増強、提案メニューの拡充、カスタマーサクセス強化といったことを着実に実行してまいります。また、AI(人工知能)による業務効率化を当連結会計年度において推進してまいりましたが、今後も着実に実施してまいります。
M&Aにつきましては、①既存事業とシナジーの高い企業の獲得、②新領域の事業性質を持つ企業の獲得を検討してまいります。
(3)経営環境
現在、日本企業を取り巻く環境は、人口の減少及び市場の超成熟化、政府が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)による本格的なデジタル・ソーシャル時代の到来、インバウンド市場の拡大などを背景に、集客をグローバルに行う時代へと大きく変化しています。かかる変化に対応するため、当社グループが事業を行う企業のマーケティング領域においては、国内市場ではファンとの関係性を強化していくこと、デジタル・ソーシャルを積極的に活用していくこと、加えて国内市場のみならず越境・インバウンドも含めたグローバル市場からも新規顧客を獲得していくことが必要となっており、そのマーケティング手法やサービス形態が日々進化している段階であります。
当社グループは、デジタル・ソーシャル等を活用したマーケティング支援を行っており、当社の売上の多くは顧客企業における広告費予算のうち、インターネット広告費に区分されております。2024年の日本の広告費全体が7兆6,730億円で前期比4.9%のところ、インターネット広告費は、3兆6,517億円と前期比9.6%増となっており、マスコミ四媒体広告費2兆3,363億円(前期比100.9%)を大きく上回る結果となりました。さらに、インターネット広告費のうち、ソーシャル広告は前期比13.1%増の1兆1,008億円となり、インターネット広告媒体費全体の37.2%を占めるまでに一段と成長しております。また、当社のSaaS事業における売上の一部は、物販系ECプラットフォーム広告費としても分類されますが、2024年の同広告費は前期比103.4%となる2,172億円となりました。新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした生活者の行動様式の変化に伴い物販系ECプラットフォームを持つ企業が増加し、ECでの購買活動が浸透しつつあることに連動して、ECでの商品購入を促す目的の広告も増加しております。(※1)
当社グループは、このような環境を踏まえ、マーケットのニーズに合わせて各種事業の展開を図る方針であります。具体的には、ソフトウェアの機能追加・改良、自社サービスの認知度向上等に加え、プロフェッショナル人材の獲得に積極的な投資を行い、サービス拡大に努めてまいります。また、基幹事業で得たマーケティングに関連したデータを適切に蓄積し、効果的に活用するサービスを展開し、事業領域の拡大及び事業進化を目指してまいります。更に、国内で蓄積したノウハウや開発技術力を生かし、グローバルへの展開も進めてまいります。
(※1)「2024年日本の広告費」(株式会社電通)、「2024年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(株式会社サイバー・コミュニケーションズ、株式会社D2C、株式会社電通、株式会社電通デジタル)
(4)目標とする経営指標
当社グループは継続的な事業の発展と企業価値向上のため、売上高、及び営業利益とそれぞれの成長率を重要な指標としております。
| 2024年12月期(実績) (百万円) | 2025年12月期(予想) (百万円) | 前期比 |
売上高 | 3,463 | 2,500 | △27.8% |
営業利益又は営業損失(△) | △459 | 50 | - |
経常利益又は経常損失(△) | △386 | 50 | - |
親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△) | △516 | - | - |
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①収益基盤の強化
当社グループは2024年12月期において「国内3事業の加速と海外事業の再構築」をグループ方針として事業展開を進めてまいりましたが、構造改革の過程で明らかになった課題への対処と、持続的な成長基盤の確立が急務となっております。各事業における対処すべき課題は次のとおりと認識しております。
<国内事業>
2024年12月期において、7月よりプロダクト事業(旧国内SaaS事業)とソリューション事業の統合を開始し、第4四半期連結会計期間には統合の成果が表れ始め、売上高・営業利益ともに回復基調となりました。また、来期は事業部を新設し、クロスバウンド事業のうち需要が旺盛なインバウンド領域での支援を事業統合することで、全社売上高における主力事業として位置づけます。
しかしながら、マーケティング業界では生成AIをはじめとする先進技術の急速な普及により、競争環境が一層激化しており、他社との差別化と競合優位性の確立が重要な課題となっております。特に、AIを活用したマーケティングソリューションの開発、SaaSツールの機能強化、そして統合効果を最大化するための組織運営体制の確立が急務であります。
そのため、当社グループでは、事業統合で得られたシナジーを基盤として、最新技術の積極的な取り入れと、戦略立案・提案力や実行力を備えたマーケティング人材の確保・育成を継続してまいります。また、ワンストップでのマーケティングDX支援という統合の価値を顧客に確実に届けるため、営業・カスタマーサクセス体制の最適化も重要な課題として取り組んでまいります。
<海外事業>
シンガポールの連結子会社であるSuperFaction Pte. Ltd.(旧Creadits Pte. Ltd.)については、メインターゲットであるゲーム業界において、巣ごもり需要の減少やプライバシー強化に伴うターゲティング精度の低下などの構造的な変化が継続し、2024年12月期においても厳しい事業環境が続きました。経営体制の刷新、人員整理、コスト削減、新規顧客層開拓など様々な施策を講じましたが、早期の収益性改善は極めて困難であると判断し、同社の解散と清算手続の申立てを決議いたしました。
この決定により、当社グループは海外事業から一度撤退することとなりますが、今後は国内事業への経営資源の集中により、より効率的な事業運営と収益性の向上を図ってまいります。海外展開については、国内事業での収益基盤確立後の中長期的な検討課題として位置づけております。
②ガバナンス体制の強化
2024年12月24日付「調査委員会設置に関するお知らせ」でお伝えしたクロスバウンド事業における不適切会計については、ステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。当社グループでは、この事態を極めて重く受け止め、今後の持続的な成長と企業価値の向上を実現するため、コーポレート・ガバナンス体制の抜本的な見直しと強化を最優先課題として取り組んでおります。
経営の健全化、公正性の観点から、内部統制システムの強化、リスク管理体制の見直し、コンプライアンス教育の徹底、監査・監督機能の実効性向上など、多面的なアプローチによりガバナンス体制の強化を図ってまいります。また、独立社外取締役の活用や取締役会の多様性確保など、取締役会機能の一層の強化を通じて、信頼性の向上と自浄能力の増強に努めてまいります。さらに、改訂コーポレートガバナンス・コードへの的確な対応も継続して進めてまいります。
③財務基盤の安定化
当社グループの財務の方針は、健全な財務基盤を維持しつつ、マーケティングDX支援事業の中長期的な成長のための投資を行うことを基本方針としております。2024年12月末時点において、現預金1,940,205千円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)は610,617千円であり、自己資本比率は58.4%と、引き続き健全な財務体質を維持しております。
構造改革に伴う一時費用の発生により、2024年12月期は営業損失を計上いたしましたが、これらは主にクロスバウンド事業の解散・調査費用、海外子会社の清算関連費用などの一過性の費用であり、2025年12月期以降は固定費削減効果と収益性改善につながるものと見込んでおります。国内事業への経営資源集中により事業構造を簡素化し、より効率的な事業運営と安定した収益基盤の確立を図ってまいります。
投資については、営業キャッシュ・フローの範囲内で行うことを目標としておりますが、企業価値を大きく向上させる投資機会に備え、金融機関との良好な関係を維持し、資金調達環境を整えてまいります。
また、投資有価証券の売却等、資産の効率的な運用に向けた対応を進めるとともに、負債を適正な水準に留め、資本コストを意識した経営を推進してまいります。透明性の高い財務運営により、ステークホルダーの皆様からの信頼回復と企業価値の持続的向上を目指してまいります。
④不適切な会計処理に関する特別調査委員会による調査結果を踏まえた今後の課題
当社は、当社のクロスバウンド事業(クロスボーダーカンパニー)にて従事する従業員により、売上計上の適否等に関する疑義、案件間の費用の付け替えや期間帰属の操作が行われていた疑義が判明したことを受け、2024年12月24日に調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。当社は、2025年2月28日に調査委員会から調査報告書を受領し、その結果、当該従業員が予算未達となるクロスボーダーカンパニーの業績につき予算達成を仮装することを企図して、売上の前倒計上や架空計上等の不適切な会計処理を行ったこと(以下「本件事案」といいます。)が判明いたしました。
これに伴い当社は、本件事案に関する売上高等を過年度に遡って訂正する必要があると判断し、2020年12月期から2023年12月期の有価証券報告書、2022年12月期第2四半期から2024年12月期第1四半期までの四半期報告書及び2024年12月期半期報告書について、訂正報告書を提出いたしました。
当社は、本件事案に関し調査報告書で判明した事実と原因分析に関する報告等を踏まえ、改めて財務報告に係る内部統制の再評価を行った結果、全社的な内部統制及び業務プロセスに、以下の不備があったことを識別いたしました。
全社的な内部統制(統制活動)の不備
本件事案における売上の前倒計上や架空計上等の不適切な会計処理は、社内予算達成への心理的重圧等を動機として、クロスボーダーカンパニーのカンパニー長自身が担当する取引について、自ら申請のうえ承認を行うという自己承認取引等により実施されておりました。クロスボーダーカンパニーは他のカンパニー等と異なり外部環境の変化に大きな影響を受けている事業である一方で、同カンパニー長は業務管理を規律する体制を見直しておらず、結果として、本件事案を行う機会が生じていたことから、職務分掌に関連した全社的な内部統制(統制活動)に不備があったと認識しております。
業務プロセスに係る内部統制の不備
当社の販売業務プロセス及び購買業務プロセスで使用されている販売管理システムにおいて、あるべき職務分掌を実装するための承認フローの変更(承認権者の設定含む)が適切にできていない状況にあり、結果として、販売管理システム上で自己承認の実行が可能となっておりました。また、当社の販売業務プロセスで使用されている自動送信システムにおいては、本件事案のように本来の顧客側担当者とは別のダミーアドレスが追加登録され、自ら検収確認を実施することにより、顧客側の検収確認の偽装が行われており、電子メールの送信先の登録・変更について同システム上の制限が設けられておりませんでした。さらに、クロスボーダーカンパニー以外の事業部においては、各案件の営業担当者以外の第三者が、受注内容に合致した成果物の進捗状況を確認し、納品又はサービスの提供が完了していることを案件管理シートの中で確認しておりましたが、クロスボーダーカンパニーにおいては業務管理を規律する体制が十分に機能しておらず、カンパニー内での相互牽制が機能しておりませんでした。
これらの全社的な内部統制及び業務プロセスにおける不備は財務報告に重要な影響を及ぼしており、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、これらの開示すべき重要な不備を是正するために、調査委員会からの指摘・提言も踏まえ、以下の改善策を講じることにより、適正な内部統制の整備及び運用を図ってまいります。
(1) 経営体制の改善
重要ポジションの適格性のレビュー
重要ポジションについては、任命基準やプロセスを改めて明確化の上、重要ポジションへの任命者については、その適格性について取締役会でレビューを実施します。不足するスキル等がある場合、教育的施策の実施等を行い、将来的なキャリアとスキルマップを対象者と協議のうえ、中長期的な視点で人材のモニタリングを進めてまいります。
予算の適切な設定・管理
取締役会とは別に、各事業の責任者が月次で集まる会議体として経営会議を新たに設置し、各事業部の事業特性や市場環境を踏まえ、積み上げ数値をもとに合議的に予算設定を行うものとします。また実績数値や着地見込み数値のモニタリングについては、取締役社長と各事業部の統括部長とで週次で実施しますが、予算を下振れする場合にも、アクションプランやリカバリープランを合理的に設定し、経営会議において全社的な課題として取り上げ、各事業部の予算額の調整も含め、建設的な対応を行う体制を構築いたします。
リスク評価体制の構築と職務権限規程の見直し
リスクマネジメント委員会(当面は再発防止委員会での対応)を設置し、特に財務報告観点からのリスクの洗い出しや、それらリスクへのマネジメント方針の設定を進めます(当面は社外役員や外部の専門家による知見も活用して進める予定です)。また、特に当社全体における職務分掌の設計については、同委員会において改めて各管理職位の職務権限を整理し、必要に応じて組織構成も見直しを行った上で、職務権限規程の改定を進めます。
(2) コンプライアンス及び財務会計に対する教育
役職員を対象とした継続的なコンプライアンス研修
当社全役職員を対象に、継続的なコンプライアンス研修を実施します。特に当面は財務報告の重要性や、本件事案を踏まえた研修内容を加えるとともに、入社時及び管理職位への昇進時には改めてコンプライアンス研修を実施するとともに、コンプライアンスに係る宣誓書の提出を求め、コンプライアンス意識の継続的な醸成を図ります。
また今後定期的にコンプライアンスウイークを設け、当該期間中にコンプライアンス研修を実施するとともに、当社経営陣よりコンプライアンスに関するメッセージを発信することで、コンプライアンスの重要性について継続的な喚起を行います。
(3) 事業部門(1線)におけるリスク管理体制の強化
自律的な牽制機能を持った組織設計
今後、当社の組織設計において組織長・中間管理職位者・業務従事者、という最低3層の組織設計を基本といたします。また、当社の連結子会社においても一定の内部牽制機能が期待できる組織体制になっているか、特に必要な管理者が設置できているかについて確認の上、社内の人員数等から十分な管理体制の構築が困難な事業については、他事業への統合や事業撤退も含めて検討を行います。
なお、当該クロスボーダーカンパニーについては2025年4月1日付けで廃止し、管理体制の整った大きな組織である国内事業に吸収の上、事業の継続を行っております。また、クロスバウンド事業の子会社である株式会社オセロについても解散し、同様に当社国内事業で同社の事業を引き継いでいきます。
自己承認取引の廃止と取引承認権限の再整理(販売取引・購買取引)
本件事案の販売取引及び購買取引が、当社の販売管理システム上、自己承認を介して実行されていた点に対し、当社は早急にこのような販売管理システム上の承認権限設定を改善すべきであると認識しております。しかしながら、当社の販売管理システムが標準仕様から各種カスタマイズの結果、承認レイヤーの仕様が非常に複雑化し、承認フローの変更(承認権者の設定含む)が容易にできない状況にあることから、今後速やかに、販売管理システム上の取引承認権限を改めて整理の上、販売管理システム上で自己承認の実行ができないようにシステム対応を行います。
また、その際には自己承認取引の廃止を各種規程に明記するとともに、改めて社内通知を行うとともに、販売管理システムにおけるシステム対応が整うまでの間、取引申請者と承認者が同一となる自己承認取引については、すべての取引について、内部監査によるモニタリングを実施いたします。
顧客による検収確認プロセスの改善
販売システム上の検収確認メールの送信先メールアドレスは、顧客の法人ドメインとすることを改めて明確にし、送信先メールアドレスの登録時や変更の際、販売システム内のワークフローにて上長の承認を受けるものといたします。また、送信先メールアドレスの追加は同一ドメインに限定するようシステム対応をいたします。
また、販売管理システム上に実際に顧客側で検収確認を行った際には、検収者のIDやメールアドレス、検収日時等が記録として残るようにシステム改修を行い、顧客側での検収状況について、内部監査等による事後的な検証が容易に実施できるような体制を整えます。
販売取引及び購買取引の実在性を担保するための統制手続の追加
当社の販売取引及び購買取引につき、取引類型(商材や取引形態毎)に応じた成果物を再整理・再定義の上、納品物が存在する取引については収益認識時、または費用計上時(棚卸資産計上時)にこれらの成果物の実在性を裏付ける証憑を指定の場所に必ず保管するというルールを改めて明確化いたします。そのうえでこれら証憑の保管状況については、管理部門内の担当者(いわゆる第1.5線)が確認を行うようにいたします。
(4) 管理部門(2線)の強化
管理部門(第2線)の強化
財務経理部の体制を強化し、第2線としての牽制機能を高めるため、財務経理の専門的スキルを有した中途採用や、外部専門家のリソースの活用、及び、各四半期に各事業部の責任者との情報連絡会を行い、債権回収の状況や取引における懸念事象等の情報収集を進めます。
また、いわゆる第1.5線として、管理部門内に営業事務に関する管理担当者を設置し、納品物確認や請求書発行業務を営業部門とは異なる第三者的立場から実施します。
(5) 内部監査(3線)の体制強化
内部監査(第3線)の体制強化
内部監査室の人員を増強(兼務者の専任化も含む)の上、特に各事業の特徴や商材の特性を踏まえ、会計不正や誤謬の発生リスクを改めて整理の上、実効性ある内部監査の実施を進めます。当面は内部監査計画の策定から具体的な監査手続きの設計も含め、外部の専門家の指導を受ける予定ですが、内部監査における各種ノウハウの吸収を進めることで、自走できる内部監査体制を早期に目指します。
また内部監査の監査結果について監査等委員会に報告を行う際には、監査等委員会に内部監査自体の評価も求め、継続的な内部監査品質の向上を図ります。
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