UACJ
【東証プライム:5741】「非鉄金属」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) グループ理念
当社グループは、2020年に企業活動の根本的な考え方となる企業理念や目指す姿、大切にしたい価値観を見つめ直し、社員が物事を判断する際の拠りどころとなるグループ理念体系を再定義いたしました。
「企業理念」 素材の力を引き出す技術で、持続可能 で豊かな社会の実現に貢献する。
「目指す姿」 アルミニウムを究めて環境負荷を減ら し、軽やかな世界へ。
「価値観」 相互の理解と尊重 誠実さと未来志向 好奇心と挑戦心 |
グループ理念体系の社内浸透を図るため、経営幹部と従業員との理念対話会を継続して実施しております。理念対話会は、単にグループ理念を従業員に伝えるだけではなく、従業員の声を経営に活かし、また従業員のエンゲージメントの向上にも資することから、今後も積極的に実施してまいります。
このグループ理念を世界中の従業員と共有することで、国境や世代を超えて永続的に社会・生活を支える企業グループになることを目指してまいります。
(2) 経営戦略等
当社グループは、グループ理念における目指す姿の実現に向け、2030年における当社グループのありたい姿を描いた「UACJ VISION 2030」(以下、VISION 2030)を策定しています。
VISION 2030を実現するための中期経営計画として、第3次中期経営計画(2021年度~2023年度)から具体的な
取組みを開始しており、これに続く第4次中期経営計画(2024年度~2027年度)(以下、第4次中計)を策定し、2024年5月に公表しております。
<長期経営ビジョン UACJ VISION 2030>
中長期では、世界的な人口増加や経済成長、さらには気候変動への対策の必要性の高まりから、地球環境に優しい循環型素材であるアルミニウムの需要は伸長する見込みです。このようなマクロ環境認識の下、企業理念に掲げた「持続可能で豊かな社会の実現」に向けて、2030年に当社グループが目指していく4つの貢献を定めた VISION 2030を策定いたしました。
UACJ VISION 2030
1.成長分野や成長市場での需要捕捉により、より広く社会の発展に貢献する 2.素材+αでバリューチェーン及びサプライチェーンを通じた社会的・経済的な価値の向上に貢献する 3.新規領域への展開により、社会課題の解決に貢献する 4.製品のライフサイクル全体を通じて、環境負荷の軽減に貢献する |
成長市場や成長分野においては、積極的に新たな需要を捕捉し、これまで培ってきた経営資源や強みを活かした製品の提供を通して、より広く社会の発展に貢献してまいります。また、素材製品の提供のみでなく、加工やリサイクルで新たな価値を付与するなど、バリューチェーン及びサプライチェーンを通した「素材+αの価値創出」に取り組んでまいります。さらに、2030年に向けて拡げていく新規領域としては、2030年の社会においてアルミニウムが活躍する領域として、「モビリティ」「ライフスタイル・ヘルスケア」「環境・エネルギー」の3つを選定し、これら領域における社会課題の解決を図ってまいります。また、既存領域及び新規領域のいずれにおいても、アルミニウムの特性を活かした製品とサービスの提供及びリサイクルの推進を通じて、社会全体での環境負荷の軽減に貢献します。
これら4つの貢献を通じて、「持続可能で豊かな社会の実現」を目指してまいります。
<中期経営計画>
当社グループは、2024年度から2027年度までを、VISION 2030へ繋がる成長・価値創出拡大と体質強化を実現する期間と位置づけ、素材提供企業から「素材+α」の付加価値提供企業への変革をコンセプトとした第4次中計を策定し、取組みを進めています。事業環境の先行きは不透明な状況が継続すると考えられますが、第4次中計で定めた次の3つの重点方針に基づき、変革に向けた挑戦を続けてまいります。
第4次中期経営計画(2024年度~2027年度)~稼ぐ、繋ぐ、軽やかに~
重点方針 1.価値創出拡大による収益の最大化と収益率の向上 2.筋肉質でしなやかな体質の強化 3.価値創出と安定した事業運営を支える基盤の強化 |
① 価値創出拡大による収益の最大化と収益率の向上
当社グループでは、第4次中計における「素材+α」の戦略として「リサイクル推進」「素材+加工ビジネスの拡大」「先端分野のサプライチェーン安定化への貢献」「新領域の拡大」の4つを定めました。多彩な事業を保有するグループの強みを活かし、社会やお客様へより広く、より高い価値を提供することで、収益の最大化と収益率の向上を目指してまいります。
「リサイクル推進」については、アルミニウムの循環型社会の構築を牽引し、川上への事業領域拡大によって、ビジネスモデルの変革を図るとともに、環境価値素材としてのアルミニウムの活躍領域拡大を目指しています。2024年度においては、日本では使用済み飲料缶の溶解リサイクルシステムの構築を目的とした設備投資、米国では缶材増産とスクラップ使用量拡大のための設備投資を進めており、タイではスクラップ処理能力増強のための設備が稼働開始いたしました。さらに、リサイクル性に優れた次世代アルミ飲料缶蓋「EcoEnd™」を他社に先駆けてお客様と共同開発し、その量産に向けて生産体制を構築いたしました。今後も、リサイクル推進による付加価値創出に向けた取組みを進めてまいります。
「素材+加工ビジネス」の拡大については、自動車等の軽量化や熱マネジメントによるGHG排出量削減等の環境価値付与をターゲットに、ビジネスの拡大を目指しています。2024年度においては、グループ間シナジー発揮による付加価値の創出を促進すべく、押出製品の素材から加工までの事業領域を一体運営することで、各領域の技術・ノウハウを掛け合わせた最適な提案をお客様へ行い、製品・サービスを通じてより高い価値提供を行うべく取り組んでいます。
「先端分野のサプライチェーン安定化への貢献」については、地政学的リスクを踏まえた経済安全保障強化の機運の高まりに対して、航空宇宙・防衛、電池、半導体製造装置の領域にて、外部と連携した高付加価値製品の安定供給、サービスの提供により、サプライチェーンの安定化への貢献を図ります。2024年度においては、この目標を実現するために鋳鍛事業本部を航空宇宙・防衛材事業本部へ改組し、同分野の需要を顧客・マーケット軸で捕捉するための体制を構築いたしました。また自動車電動化による電池領域の需要拡大を捕捉するため電池箔増産に向けた設備投資を進めており、高品質なアルミニウムを安定供給することで、サプライチェーン安定化に貢献することを目指します。
「新領域の拡大」については、アルミニウムが持つ特徴と当社の強みを活かし、新領域ビジネスの創出・拡大を進めています。2024年度においては、「origami™」「水の架け橋」「水用心™」に続く社内ベンチャー制度発の「ワークショップの素™」(アルミホイルを用いてコミュニケーション活性化を図るワークショップ・ツール)をデザイン・コンサルティング会社と共同で開発し、上市いたしました。
② 筋肉質でしなやかな体質の強化
当社グループでは、資本効率向上を目指すとともに、短期及び長期的な環境変化に対応できる筋肉質な体質の強化を目指し、「環境変化への対応力強化」「資産効率化」「自動化・無人化(安全性・生産性向上)」に取り組んでまいります。
2024年度においては、需要変動等の外部環境の変化に柔軟に対応する仕組み及び生産体制構築、棚卸資産削減を中心としたCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮及び設備能力の最適化等による資産効率の向上と資金の捻出、設備やシステムの刷新によって製造現場の自動化や無人化に取り組み、より安全な職場環境の確保や生産性向上を進めてまいりました。
③ 価値創出と安定した事業運営を支える基盤の強化
当社グループでは、人材・技術・ブランド等の獲得・強化と社内外連携の強化によって「素材+α」を創出し、安定した事業運営の基盤の強化を図るべく、「多様な人材の獲得・育成とエンゲージメント向上」「技術・ブランド等の無形資産の獲得・強化・活用」、「デジタルを活用した競争力・組織力の強化」、「事業間連携やサプライチェーン・バリューチェーンとの連携・協業の更なる推進による提案力の強化」に取り組んでまいります。
「多様な人材の獲得・育成とエンゲージメント向上」については、成長を牽引する人材ポートフォリオの構築を推進し、一人ひとりの成長と多様な人材の掛け合わせによる戦略実行力を高めるとともに、個人及び組織の成長を後押しする人材マネジメントシステムの構築もあわせて進めてまいります。2024年度においては「健康経営優良法人(ホワイト500)」に2年連続で選定され、さらに「健康経営銘柄2024」では非鉄金属セクターで唯一選出されるなど、取組みが外部からも評価されました。
「技術、ブランド等の無形資産の獲得・強化・活用」については、グループの強みとなる技術力を獲得・強化するとともに、アルミニウムの特性や当社が引き出す価値を訴求したブランディングによる無形資産の強化・活用で、アルミニウムの活躍領域の拡大と付加価値創出力を強化してまいります。2024年度においては、グループの各製品ブランドをファミリー・ブランドとして「ALmitas+(アルミタス)」に統合し、様々なお客様に採用いただきました。ブランド活用を通じ社会課題の解決に貢献する素材であるアルミニウムの可能性と魅力を伝え、新たな用途への採用を通じて当社グループのビジネスを拡大させるべく取り組んでまいります。
また、当社が参画している国家プロジェクトであるアルミニウム素材高度資源循環システム構築事業ではアップグレードリサイクルの技術開発に取り組んでおり、事業の中核となる実証実験設備(縦型高速双ロール鋳造実験機)をR&Dセンター内に設置いたしました。今後も社会課題の解決に繋がる技術の開発に取り組んでまいります。
「デジタルを活用した競争力・組織力の強化」については、あらゆる領域にデジタルを活用し、業務プロセスの効率化、高度化、最適化、見える化を図るとともに、長期的な視点での製造現場の自動化を推進し、生産性向上のみならず安心安全な職場環境づくりの実現に向けて取り組んでいます。2024年度においては、営業業務の効率化・高度化をかなえるシステムの統合、刷新や経営データの見える化への取組みを進めました。
「事業間・部門間連携やサプライチェーン・バリューチェーンとの連携・協業の更なる推進による提案力の強化」については、リサイクル推進、付加価値ビジネスの拡大及び新領域の拡大に向けて、グループが保有するあらゆる資本を有機的かつ最大限に活用するため、事業間・部門間連携の更なる推進によるグループ総合力の強化を図るとともに、サプライチェーン・バリューチェーンにおける最適パートナーとの更なる連携・協業を推進しており、グループの持続的な成長及び価値創出を目指してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、株式価値向上の観点からROEを重視しております。株主資本コストを上回るROEを達成することにより、エクイティスプレッドを創出・拡大し株式価値の向上を目指してまいります。また、持続的な事業の成長と収益性を測るため、連結での売上高、売上高事業利益率、ROIC(投下資本利益率)も指標としています。目標値については下表のとおりです。
<第4次中計及びVISION 2030の目標値(連結)>
| 2024年度実績 | 第4次中計 2027年度目標 | VISION 2030 2030年度目標 |
売上高 | 9,988億円 | 10,500億円 | 11,000億円以上 |
事業利益 | 459億円 | 600億円 | - |
売上高事業利益率 | 4.6% | - | 6%以上 |
ROIC (税引前事業利益を基に算出) | 7.6% | 9%以上 | 10%以上 |
ROE | 9.9% | 9%以上 | 10%以上 |
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
各国のインフレーションや米国の関税政策の影響等、事業環境の不確実性が高まっています。環境変化を迅速に捉え、柔軟に対応すべく取り組んでまいります。
また、アルミ地金価格の高騰により運転資金が増加しているため、財務体質の維持・強化と成長資金の確保の両立を目指す観点から、棚卸資産の削減や設備能力の適正化を進めます。
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