コスモエネルギーホールディングス
【東証プライム:5021】「石油・石炭製品」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針及び経営戦略
(Vision 2030)
エネルギー変革期において期待されるのは中長期のビジョンであることから、Vision 2030として「未来を変えるエネルギー、社会を支えるエネルギー、新たな価値を創造する。」というスローガンを掲げ、以下の3つの施策に取り組み、ありたい姿の実現を目指してまいります。
<Vision 2030及びありたい姿>
(第7次連結中期経営計画の基本方針)
当社グループは、第6次連結中期経営計画において収益改善施策の着実な実行により稼ぐ力を向上させ、財務体質を大幅に改善させました。
第7次連結中期経営計画は、第6次連結中期経営計画のコンセプトをしっかりと引き継ぎながら、新たなステージへ変革し、企業価値向上をテーマとしてまいります。そのような位置づけを明確にすべく、スローガンを『Oil & New ~Next Stage~』として、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」の4点を基本方針に、持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。企業価値向上に向けて、非財務資本の活用による事業戦略の実現と、これによる収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大を図り、企業価値の最大化につなげてまいります。
<基本方針>
(第7次連結中期経営計画 収益計画(2025年度))
Oil事業における構造改善に加え、New事業の収益拡大により1,400億円(2022年度業績予想値、第7次連結中期経営計画公表時点)から250億円の増益を見込んでおり、在庫影響を除く経常利益は2025年度において1,650億円を目指しています。
<収益計画>
(第7次連結中期経営計画 資本政策)
株主還元、財務健全性、資本効率を三位一体で実行していくことで、企業価値の最大化を目指してまいります。また、株主の皆様への利益還元につきましては、資本政策を三位一体で実現していくなかで、最大限拡大していきます。
<資本政策>
(第7次連結中期経営計画 収益改善の取組)
石油事業においては製油所稼働の更なる改善、石油開発事業においてはヘイル油田の増産等を進めてまいります。加えて、New領域では国内初の大規模生産となるSAF生産開始等、連結中期経営計画における施策を着実に実行しております。
<施策の進捗>
(第7次連結中期経営計画 経営基盤の変革)
HRX(Human Resources Transformation)、DX(Digital Transformation)、GX(Green Transformation)を中心とした経営基盤の変革に取り組んでまいります。KPIとしてエンゲージメント指数の改善、人材育成投資の強化、データ活用コア人材の育成、GHG排出量削減を掲げています。
<経営基盤の変革>
(第7次連結中期経営計画 経営目標(2025年度))
第7次連結中期経営計画は企業価値向上を目指す新たなステージと位置づけています。収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大をしっかり実現し、ステークホルダーの皆様にご評価いただけますよう、努めてまいります。
<経営目標(2025年度)>
《当事業年度における各事業セグメントの重点施策》
(石油事業)
石油事業においては、2013年度の坂出製油所閉鎖に加え、2019年度より開始したキグナス石油㈱への燃料油供給により、当社グループは生産数量が販売数量を下回るショートポジションを確立し、製油所の高稼働を維持しております。
更なる稼働率向上のため、APM(注1)導入範囲の拡大やデジタルツイン(注2)構築に向けたVRデータ整備等DX強化を推進しました。
(注1)Asset Performance Managementの略。グローバルスタンダードの保全・設備信頼性業務プロセスをシステムに記憶させ、保全のビッグデータを効率的かつ効果的に管理し、網羅性・予見性・管理性を高めることができる。
(注2)現実の製油所がデジタルの仮想空間で再現され、必要とする製油所設備の情報(運転データ、補修履歴、機器スペック等)をすぐに参照できる状態を作り出すこと。
カーライフ事業につきましては、デジタル化への対応として、2019年に開発したカーライフスクエアアプリが、2025年4月時点で累計900万ダウンロードを突破し、アプリを利用した給油回数は累計2億9千万回を超える等、多くのお客様にご利用いただいております。お客様とのつながり強化を目的として、アプリ上で見積りから決済まで完了できるコミット車検のほか、燃料油・カーケア商品のお得なクーポンの提供やお勧めの給油タイミングのお知らせ等、様々なサービスを提供しております。カーライフスクエアは2025年4月21日にコスモの公式アプリとして全面リニューアルしました。各種サービスをホーム画面に集約し、より直感的で使いやすいデザインに刷新したことに加え、コミっと車検の決済手段としてPayPay、d払い、楽天ペイが新たに追加される等、機能面も大幅に進化しました。アプリやコスモ・ザ・カード会員のデータを用いて、お客様の属性に合わせた情報配信を自動で行う等、新規顧客の獲得及び既存顧客の定着の施策を実施しており、引き続き異業種パートナーの持つデータも組み合わせ、販売促進に取り組んでまいります。
(石油化学事業)
石油化学事業は、丸善石油化学㈱において基礎化学品分野では高稼働・高効率操業の実現、環境に左右されにくい機能化学品分野では半導体レジスト用樹脂等の生産拡大を目指しております。
韓国のHD Hyundai Oilbank Co., Ltd.とコスモ石油㈱との合弁会社であるHD Hyundai Cosmo Petrochemical Co., Ltd.につきましては、2009年に設立され、パラキシレンを中心に一定の収益を上げてきましたが、近年は中国を中心とした設備増強や需要減速の影響により、パラキシレン市況の悪化が続き、事業環境が大幅に悪化しておりました。今後もパラキシレン市況の低迷が継続する見通しであることから、HD Hyundai Cosmo Petrochemical Co., Ltd.の全株式をHD Hyundai Oilbank Co., Ltd.に譲渡し、パラキシレン製造事業から撤退いたしました。
また、エチレン生産体制に関しましては中国での大型装置の新設・増強による世界的な供給過剰及び国内におけるエチレン需要の減少から厳しいマーケット環境が続いていること等から、丸善石油化学㈱は2026年度を目途に自社エチレン製造装置を停止し、丸善石油化学㈱と住友化学㈱の合弁会社である京葉エチレン㈱に生産を集約することを住友化学㈱と合意しました。千葉地区での生産体制最適化を図ることで装置稼働率と競争力を更に高め、加えてカーボンネットゼロ実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)への対応も図ってまいります。
(石油開発事業)
石油開発事業では、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、2019年度以降、想定よりも油層の圧力低下が見られたため、生産を一部抑制しておりました。その後、水攻法により油層圧力の回復傾向が認められ、2024年12月末より生産抑制実施以前の水準での生産を再開いたしました。2025年4月現在も順調に生産を継続しております。今後、油層圧回復の施策を実行し、生産量の回復・最大化を目指してまいります。このほかの既存油田(ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田)につきましても、安定した生産を継続しました。
また、2021年度に取得した海上探鉱鉱区(Offshore Block 4)においては探鉱作業を行い、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査しております。脱化石燃料の流れの中でも、必要とされるエネルギーを継続して供給することは当社グループの責任であると考えており、今後石油需要の減退が進行していく過程でも、その責任を果たすべく本鉱区を取得しております。本鉱区は、豊富な石油・天然ガスの資源量が賦存するだけでなく、単位数量あたり操業費がその他の地域と比べて低いとされるアラビア湾の浅海に位置し、かつ商業生産に至った場合には隣接するアブダビ石油㈱が保有する油田施設を共同で活用できるため、開発・操業コストの大幅な低減が期待されます。今後も、引き続き本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査すべく、探鉱作業を実施してまいります。
(再生可能エネルギー事業)
再生可能エネルギー事業では風力発電事業を中心にグリーン電力サプライチェーンの構築に取り組んでおります。コスモエコパワー㈱は、風力発電業界におけるパイオニア的企業であり、国内業界シェアは約5%(2024年12月末時点)となります。
陸上風力に関しては、順調な稼働を継続しており、またノンファーム型接続の開始等により新規サイトの開発も着実に進めています。2025年3月には新岩屋ウィンドパーク(青森県)の運転を開始しました。陸上風力では運転中の風力サイトに建設中、開発中のサイトを合わせると874MWとなりました。2030年度には約900MWの規模を目指しております。
洋上風力に関しては、世界的な脱炭素の流れを受けて大規模なグリーン電源に対する期待は高まっており、当社としては、しっかりと収益性を確保した上で、プロジェクトを進めてまいります。2030年には陸上、洋上を合わせて1,500MW超の設備容量を目指します。
(2)経営環境
当連結会計年度における日本経済は、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあって、景気は緩やかに回復しております。一方で物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響や、米国の政策動向による影響等が、日本の景気を下押しするリスクとなっております。設備投資、個人消費は持ち直しの動きがみられ、消費者物価は上昇しております。こうしたなかで、石油製品の国内需要は、緩やかに需要減退の傾向がみられます。
原油価格(ドバイ原油)は、期初1バレル87ドル台から、中東の地政学リスクに対する懸念やOPECプラスの減産緩和延期等の価格上昇要因がありましたが、地政学リスクへの懸念の後退や米中の景気減速懸念等により年末にかけて下落基調で推移しました。その後、中国の景気刺激策への期待や米国のロシアに対する制裁措置等から一時上昇する場面も見られましたが、中東における停戦合意やOPECプラスによる段階的な減産緩和の実施決定、米国関税政策への懸念を背景に再び下落し、当連結会計年度末は75ドル台となりました。
為替相場は、期初1ドル151円台から、日米金利差を背景に7月にかけて161円台まで円安が進みましたが、日銀の追加利上げや米国の利下げ観測等を受け円高に転じ、9月には一時140円台となりました。その後、米国大統領選挙の結果を受け、新政権移行後のインフレ懸念等から米長期金利が上昇し、年末にかけて158円台まで円安に進行しました。年明け以降、米国新政権が関税引き上げを示したことによる景気後退懸念や日銀の利上げ観測を背景に再び円高に推移し、当連結会計年度末は149円台となりました。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
国際社会では、ウクライナや中東情勢等の地政学的リスクが継続し、世界経済は不確実性が高い状態が続いています。米国の政治的変動も世界経済に影響を与えており、今後の政策を注視する必要があります。
これらの外部環境変化を受けて、エネルギーセキュリティの強化が求められており、石油は引き続き重要なエネルギー資源であり、当面は石油製品がエネルギー需要の大きな比率を占めると想定されます。一方で、長期的には再生可能エネルギーをはじめとする脱炭素社会への取組が進むと予想されます。このようななか、石油事業を中心に収益力を強化しつつ、長期的な方向性を見据え、次の成長に向けて事業ポートフォリオを拡充してまいります。第7次連結中期経営計画においては、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」を基本方針とし、企業価値の向上に取り組んでまいります。
第7次連結中期経営計画を実行する上で、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりとなります。
《各事業セグメントにおける課題》
(石油事業(石油精製事業))
石油精製事業においては、製油所デジタルプラント化に向けた取り組み、運転・保全力の向上による更なる稼働率改善等を図ってまいります。また、定期整備の短縮に加えて、トラブルによる計画外停止を削減するためのソフトウェアであるAPMを導入し、予見性、網羅性、管理性を向上させることで、製油所高稼働の維持を推進してまいります。
(石油事業(石油販売・カーライフ事業))
石油販売・カーライフ事業においては、当社グループの持つ豊富な顧客データと、異業種パートナーとのデータ連携を組み合わせることで、マーケティングサイエンスによる燃料油販売の高度化を進めてまいります。
(石油化学事業)
石油化学事業においては、高稼働・高効率操業の実現、外部環境に左右されにくい化成品及び機能化学品の生産拡大を目指してまいります。
また、機能化学品については、メチルエチルケトン(MEK)等の化成品、需要が増加している半導体レジスト用樹脂の生産拡大を進めてまいります。
(石油開発事業)
石油開発事業においては、ヘイル油田や既存油田の生産量最大化、操業コストの最適化により収益構造を強靭化してまいります。また、2021年度に取得した海上探鉱鉱区(Offshore Block 4)においては探鉱作業を行い、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査しております。
(再生可能エネルギー事業)
世界的な脱炭素化の潮流のなか、今後大きな成長が期待される風力発電事業を中心に、引き続き積極的に規模拡大を進めてまいります。陸上風力においては、2025年3月には新岩屋ウィンドパーク(青森県)の運転を開始しております。その他にも、新むつ小川原(青森県)、遠州(静岡県)、あぶくま南(福島県)等の開発を着実に推進することで、2030年において陸上風力の設備容量約900MWの達成を目指しております。
さらに、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、事業環境整備・投資機会拡大が見込まれる洋上風力においては、日本における同分野のリーディングカンパニーを目指しております。2022年12月に秋田港能代港プロジェクトの商業運転を開始しており、その他にも複数地域において洋上風力プロジェクトの開発を進めております。洋上風力においては競合他社の増加やコストの上昇等、事業環境の厳しさが増していますが、当社グループでは建設、O&M、売電先を含めた全てのサプライチェーンを精査し、徹底的なコスト競争力の強化を図ります。
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