富士興産
【東証スタンダード:5009】「卸売業」
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企業概要
(経営環境)
今後の我が国経済の見通しについては、世界的なインフレ圧力の高まりや、それに伴う物価上昇、人件費の増加が企業経営に直接的な影響を及ぼし、依然として不透明感が強まっています。加えて、中央銀行による金融政策の転換により、金利が上昇傾向にあることから、資金調達コストの増加や設備投資の抑制も懸念され、企業を取り巻く経営環境は一層厳しさを増しております。
一方で、地球温暖化対策に関しては、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが国際的にも加速しており、特に、温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの導入、省エネルギー技術の活用など、環境負荷の低減に向けた取り組みは、企業の社会的責任(CSR)やESG経営の観点からも注目されています。
さらに、資源の有限性や廃棄物問題への対応として、資源を効率的かつ循環的に活用する「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」への移行について、社会的要請が一段と高まっております。これらに対応したビジネスモデルの構築が企業に強く求められております。
このように、環境と経済の両立を図る持続可能な経営が、今後ますます重要性を増していくと考えられております。
各事業セグメントにおける環境認識、事業機会、当社グループの強みは、以下のとおりです。
(1)石油事業
環境認識 | ・気候変動への対応要請と環境負荷低減への取り組みに伴い、エネルギー供給における石油由来エネルギーの比率は、漸減傾向が続く見通し ・石油元売においては、業界再編により統合が進んだ一方、販売事業者では商社や大手卸売業者など競合が依然として多数存在し、競争環境が継続 |
事業機会 | ・脱炭素社会の実現に向けた取り組みの中で、再生可能エネルギーのひとつであるバイオ燃料の需要は今後さらに拡大 ・再生可能エネルギーやEVシフトのインフラ整備の遅れと技術や経済性に課題がある |
当社グループの強み | ・バイオ燃料の製造体制を拡大中で、既に全国規模で販売を展開している ・環境対応型燃料のラインナップが豊富(バイオ燃料・再生重油・カーボンクレジット燃料等) ・石油燃料においては石油元売りであるENEOS株式会社の全国にある油槽所や配送網を利用した安定した供給体制を有する ・石油事業で長年培った製品製造販売の高度な経験と知見を保有 |
(2)リサイクル事業
環境認識 | ・廃棄物の回収・処理・再資源化を担う静脈産業であるリサイクル業界は、地域に根差した小規模な事業者が数多く存在 ・再資源化事業等高度化法の施行により、動脈産業や異業種の参入ハードルが緩和される見込み |
事業機会 | ・サーキュラーエコノミーの推進に貢献する事業として、社会的意義が高まっている ・全国規模で、リサイクル事業の活性化が見込まれる |
当社グループの強み | ・多品目の廃棄物を少量から回収可能 ・自社による回収からリサイクルまでワンストップ対応 ・行政より優良事業者に認定され、官公庁から民間企業まで、幅広いお客様から高い信頼を獲得 ・再生重油の製造や土壌汚染対策工事等、環境負荷の低減に配慮した事業を展開 ・北海道というリサイクル先進エリアにおいて、産業廃棄物処理の豊富な実績と蓄積された技術力・知見を保有 |
(3)ホームエネルギー事業
環境認識 | ・北海道道央地域では、オール電化の普及や省エネ機器が進化する一方、家庭用LPGの需要は堅調に推移 ・液石法の施行により、料金の透明化と消費者保護の強化が求められている ・配送や点検等、専門性の高い業務における人材不足 |
事業機会 | ・LPGは、石油や石炭と比較して燃焼時のCO2排出量が少ないクリーンな燃料であり、低炭素社会の実現に貢献できるエネルギー源 ・LPGを活用したスマートホーム技術やIoTとの連携により、利便性の高いエネルギー管理システムの開発が可能 |
当社グループの強み | ・地域密着型の効率的な配送体制、保安点検体制を確立 ・「安全・安心・安定」の供給体制 |
(4)レンタル事業
環境認識 | ・北海道道央地域では、半導体工場建設や新幹線の延伸工事により、工事需要が旺盛 ・建機レンタル業界は、大手企業と地場企業の二極化が進行 |
事業機会 | ・官民連携(PPP)による道路、橋梁、再生可能エネルギー施設(風力・太陽光)などの建設プロジェクトが増加 ・地場における中小企業事業者のレンタルニーズの高まり |
当社グループの強み | ・建設機械から小さな備品まで、幅広い機材のラインナップ ・顧客ニーズに柔軟に対応したレンタル貸出・返却方法 ・地域密着型の営業活動により、地元企業との継続的かつ信頼性の高いパートナーシップを保有 |
(経営戦略)
当社グループは、大きく変化する経営環境をむしろ機会と捉え、環境対応型事業のリーディングカンパニーを目指し、持続可能な成長の実現に向けた次の3つの施策を実施してまいります。
また、ホームエネルギー事業やレンタル事業といった地場密着型事業につきましては、グループ事業の基盤として、維持・強化を図ってまいります。
(1)リサイクル事業でトップを走る環境開発工業の技術と知見を全国に展開
リサイクル業界は、資源を効率的・循環的に有効活用するサーキュラーエコノミーへの移行において重要な役割を担う事業として注目されており、リサイクル事業への社会的要請と期待が高まっております。一方、リサイクル事業者は、特定のリサイクル素材のみを取り扱う小規模な事業者が多いのが現状であります。
このような中、当社グループは、これまで多品目のリサイクル素材をワンストップで対応・処理する体制を整備してまいりました。今後は、当社グループが有する幅広いリサイクル技術と知見をM&Aを通じて全国に展開することで、リサイクル事業のさらなる拡大を図り、新たな収益の柱として一層強化してまいります。
(2)環境対応型エネルギーの全国製造及び販売のトップランナーを目指す
エネルギー業界におきましては、世界的に脱炭素社会への転換が求められており、地球温暖化対策への取り組みが一層加速され、再生可能エネルギーの推進や環境負荷低減に資する省エネルギー商品の重要性が増す一方で、カーボンニュートラル社会の進展に向けて、産業競争力を損なうことがない、より現実的な施策が期待されております。
このような中、当社グループは、
①バイオ燃料・再生重油・カーボンクレジット燃料等、環境対応型エネルギーのラインナップが豊富
②バイオ燃料は、内燃機関でそのまま利用でき産業競争力を維持できる商品
③石油事業で長年培った製品製造販売の高度な経験と知見を保有
④大手石油元売りに先駆けた、バイオ燃料や再生重油の自社製造販売体制を構築
以上を強みに、環境対応型エネルギーの製造販売のトップランナーを目指してまいります。
(3)持株会社体制への移行による効率的なグループ経営の実現
当社は、単独株式移転により、2025年10月1日付で、持株会社「富士ユナイトホールディングス株式会社」を設立し、持株会社体制に移行する予定であります。
新たに設立される持株会社は、グループ全体の経営戦略に加え、リサイクル事業を中心としたM&Aや新規事業の創出に注力してまいります。一方、事業会社は、それぞれの事業運営に専念し、急速に変化する環境に柔軟かつ迅速に対応してまいります。
この体制移行により、環境対応型エネルギーのコアビジネス化を「加速」させるとともに、積極的な投資を通じてリサイクル事業の「拡大」を着実に推進・実現していくことにグループを挙げて、取り組んでまいります。
成長イメージ図
また、持株会社体制への移行に伴い、これまで主に石油事業が負担していた持株会社業務にかかるコストが、今後は各事業セグメントに適正に配分されることとなります。これにより、各事業セグメントの営業利益やROIC(投下資本利益率)などの業績指標が、より正確かつ公正に評価される体制が整うとともに、グループ全体の事業ポートフォリオの最適化にもつながるものと考えております。
なお、富士ユナイトホールディングス株式会社のグループの旗印となるグループマークと当社グループが、株主の皆様を始めとしたステークホルダーに提供する価値を、分かりやすくお伝えするタグラインは次の通りです。
(目標とする経営指標と進捗)
当社グループは、2024年度を初年度とした3ケ年の「中期経営計画(以下「中計」という。)」を策定しており、目標とする経営指標を次の通り定めております。
①積極的な投資を実施することで、事業拡大を図ることにより利益を拡大し、本中計最終年度にはROE8.0%以上を達成することを目指します。
②利益目標といたしましては、主にBDFを含む石油事業の新規ビジネスとリサイクル事業の強化による利益の最大化を図り、中計最終年度には経常利益で14.5億円を計上することを目指します。
本中計における進捗は下表の通りであります。
| 2023年度 (前年度) | 2024年度 (中計初年度) | 2025年度 (次期予想) |
ROE | 6.5% | 7.5% | 5.2% |
経常利益 | 946百万円 | 822百万円 | 800百万円 |
(株主還元方針)
当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の重要課題であるとの認識のもと、中長期的な視野に立った投資により企業価値を増大させ、積極的な利益還元を行うことを基本方針としています。
本中計期間(2024年度~2026年度)におきましては、成長投資による収益力強化を図りつつ、引き続き、高水準の総還元性向を維持していくことを方針とし、総還元性向は3年平均で80%以上、ならびにDOE5.0%以上を目指してまいります。
なお、現在、バイオ燃料事業についての社会的関心が急速に高まっており、当社グループはこの機会を逃すことなく、将来の需要を大きく取り込むため、バイオ燃料事業への投資並びに人的資源を集中して投入することが必要との判断に至りました。加えて、リサイクル事業を中心とした事業領域拡大のための投資等につきましても積極的に行う予定であります。
本中計期間におけるキャッシュ・アロケーションにつきましては、3年間で約120億円のキャッシュ・インフローを見込んでおり、M&Aを含めた成長投資を行いつつ、株主還元に努めてまいります。
また、自己株式取得につきましても、株価の水準、フリー・キャッシュフローの状況を勘案し適宜実施を検討してまいります。
| 株主還元方針 | 2023年度 (前年度) | 2024年度 (中計初年度) | 2025年度 (予定) |
1株当たり配当金額 | - | 93円 | 88円 | 62円 |
総還元性向 | 3年平均で 80%以上 | 100.8% | 80.8% | 81.7% |
DOE | 3年平均で 5.0%以上 | 6.5% | 6.1% | - |
以上のような事業別施策を持株会社体制により、グループ全体で効率的かつ積極的に取り組むことで、グループ価値の向上を図り、株主の皆様の期待に応えてまいります。
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