SBIグローバルアセットマネジメント
【東証プライム:4765】「サービス業」
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企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、「投資家主権の確立」を根本的な使命とし、「投資家の皆様の資産形成に役立つ」ことを事業目的としております。投資家の皆様の資産形成に役立つために、投資家にとって望ましい投資信託を提供することを目的とするアセットマネジメント事業の拡大と、中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つことを目指すファイナンシャル・サービス事業の展開により、投資家の皆様の資産形成に真に役立つ、金融を中心とした情報社会に不可欠な企業グループとして成長していきたいと考えております。
(2)経営環境
① 基本的経営環境
我が国においては、近年、当社グループの事業に大きく関係する政策が政府主導で策定され実行に移されつつあるものと認識しております。具体的には、2022年11月に政府の新しい資本主義実現会議が決定した「資産所得倍増プラン」における、我が国の家計金融資産の過半を占める現預金を投資に繋げることで持続的な企業価値向上を図り、その恩恵が資産所得の拡大という形で家計にも好影響を及ぼす「成長と資産所得の好循環」を実現させるとの目標や、これに連動して政府が進める「資産運用立国実現プラン」において資産運用業・アセットオーナーシップの改革を進めることにより家計の安定的な資産形成を実現させ、我が国の経済の成長と国民の資産所得の増加に繋げるとの方針等がこれに該当いたします。中でも、この「資産運用立国実現プラン」では、家計に向けた具体的な取組みとして、NISAの抜本的拡充・強化(2024年1月スタートの新NISA)の他、一般投資家の立場に立ったアドバイザー機能の拡充の検討や金融経済教育の充実等が挙げられており、これらを実現するために、その実務を担う資産運用業・アセットオーナーシップの改革を進めることが重要であることも指摘されております。
このような環境は、前述のとおり「投資家の皆様の資産形成に役立つために、投資家にとって望ましい投資信託を提供する」アセットマネジメント事業と、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報および投資教育を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つ」ファイナンシャル・サービス事業を擁する当社グループといたしましては、事業を推進する上で良好なものであると考えております。加えて、この我が国政府による政策・方針にも沿った事業展開を積極的に推進することが、正しく当社が属するSBIグループが共通して掲げる「公益は私益にも繋がる」との理念にも合致するものであり、その観点からも現在の経営環境は当社グループにとって好ましい状況にあるものと考えております。
なお、当社子会社のSBIアセットマネジメント株式会社が主として担当するアセットマネジメント事業における基本的な経営環境についての認識は以下の通りです。
個人投資家向けの分野に関しては、上述のとおり、従来からの「貯蓄から投資」への潮流の中、資産形成のための運用ニーズはますます高まるものと考えられ、特徴ある多数の商品ラインナップを有するSBIアセットマネジメントが公募投資信託の分野で貢献できる余地も大きくなるものと考えております。
機関投資家向けの分野につきましては、SBIアセットマネジメントが多くのお取引を頂いている地方銀行を中心とする金融機関では、有価証券運用ポートフォリオの多様化や、その管理・モニタリングの厳格化がより一層求められる状況にあるとの認識であり、この面でも私募投資信託に強みを持つSBIアセットマネジメントが寄与することが可能であると考えております。
また、当社子会社のウエルスアドバイザー株式会社が担うファイナンシャル・サービス事業を取り巻く基本的な経営環境につきましても、当社グループが従来から積み重ねてきた、投資家目線での有益な金融関連情報の提供機能が、資産運用立国を目指す上で不可欠な重要な要素であることを勘案いたしますと、その需要は大きく、経営環境としては引き続き良好な状況であると認識しております。特に、当社グループの祖業でもある投資信託の評価・分析をはじめとする金融情報全般については、一般投資家の皆様向けのウェブサイト等の他、投資信託を販売する金融機関等において販売スタッフ等が使用する情報端末に組み込まれた「Wealth Advisor」が圧倒的なシェアを有する等、既に強固な基盤を築くに至っており、ファイナンシャル・サービス事業を推進して行く上での大きなアドバンテージを既に確保しているものと考えております。
その他、当社グループは、親会社であるSBIホールディングス株式会社とその傘下にある、株式会社SBI証券や株式会社SBI新生銀行をはじめとする金融関連のグループ企業各社とも緊密な関係を保つことで、相互のシナジー効果によって競争力の強化や、効率的な経営と事業展開を追求していくことが可能な環境下にあることも強みであると考えております。
② 最近の経営環境
当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)における世界経済は、多くの主要国・地域において特徴的な金融政策の転換が行われた中、米国においては市場でのソフトランディングを実現し株式市場を中心に比較的堅調な推移を示した一方、欧州における構造的、地政学的な課題、中国での主として不動産セクターの調整等、多くの問題点が存在するなど、不安定な要素を内包しつつも比較的穏やかな推移を示しておりましたが、2025年1月の米国での新政権発足以降は、トランプ新大統領が矢継ぎ早に打ち出す各種政策、特に関税関連の政策が年度末にかけて各国の市場を揺るがすなど、大きな混乱の中にありました。このような情勢の中、我が国においては、石破首相の就任と直後の総選挙などのイベントがあり、市場においては日本銀行の金融政策によるマイナス金利からの完全な脱却、物価上昇の継続等の動きが見られました。その後、2025年の年明け以降は米国のトランプ政権の繰り出す各種政策の影響もあり、株式市場は世界各国同様、下落局面の波乱の中で年度末を迎えることとなりました。
このような経済環境の下、当社グループの事業に関連性の高い我が国における投資信託市場においては、2024年1月から開始された「新NISA」制度が一般にも浸透し、資金流入が続く追い風もある一方、運用会社間の競争は激化し、平均信託報酬率は低下傾向にあるなど、構造変化が見られた1年となりました。近年、資産運用を巡る環境は大きく変化しており、「貯蓄から投資」への流れが一層加速しているものと当社では考えております。
この認識の下、アセットマネジメント事業においては、多様な資産クラスに対応する公募投信の設定を通じて、中長期の複利効果を活かす「成長投資型」に加え、定期的な分配を行う「成長&分配型」ファンドを提供し、投資家の皆様の幅広いニーズにお応えできるよう努めるなど、現在議論が始まっているNISA制度の改革等も視野に入れた対策を既に講じております。
また、フィナンシャル・サービス事業では、このような「貯蓄から投資へ」の流れを全国に浸透させ、金融リテラシーの向上を目的とする「資産運用フェア」を全国各地で精力的に開催することで、引き続き我が国における重要課題である「地方創生」への貢献も果たしております。
以上のとおり、当社グループでは、近時の社会、経済情勢を含めた当社グループを取り巻く経営環境に適切に対応することで、当社の理念及び事業目的の実現を図るべく事業の推進を行っております。
(3)経営戦略
当社は持株会社として、事業子会社とともに、当社グループの理念や事業目的に適った適切な経営戦略を立案し、その推進を図っております。具体的には、アセットマネジメント事業とファイナンシャル・サービス事業のそれぞれについて、以下のとおり今後の事業を進めてまいりたいと考えております。
アセットマネジメント事業においては、混乱する市場環境を見据えつつ、適切なタイミングでのファンドの積極的な新規投入を継続いたします。具体的には、投資家の皆様が自らにあった運用ポートフォリオを構築するための材料となるインデックスファンドの更なる拡充の他、引き続き根強いニーズのある「成長」と「分配」を両立するタイプの他、オルタナティブアセット(株式や債券等の伝統的な運用資産以外の代替資産)を組み込んだ商品の開発に当社グループとして積極的に取り組んでまいります。中でも、暗号資産を対象とするファンドについては、我が国における法規制等に関する議論の帰趨を見極めつつその開発につき検討してまいります。また、プロダクトガバナンスに基づく商品の適切なコントロールにより、「顧客中心主義」の徹底についても引き続き推進してまいります。当社は、投資信託の信託報酬をはじめとする各種コストの抑制について業界において先駆的 な取り組みを行ってきたと自負しておりますが、今後ともこの方針は堅持し、投資家の皆様に貢献し、その支持をいただくことで、当社の運用資産残高の伸長、ひいては当社の業績の成長に繋げてゆきたいと考えております。また、効率的な各種システムの導入やAI(人工知能)の業務への活用等の方策を通じた経営の合理化もあわせて徹底する所存です。
ファイナンシャル・サービス事業については、「WealthAdvisor」ブランドを活用した国内の金融機関とのリレーションを活用した事業展開に注力してまいります。政府が推進する「資産運用立国」構想の下、国内の金融機関はフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を継続してゆくものと考えられますが、当社ではこれら国内金融機関と連携し各種のサービス開発し、提供していきたいと考えております。また、新NISAの浸透とともにますます加速すると思われる「貯蓄から投資へ」の流れにあわせて、重要性を増す投資教育の面においては、国内金融機関と共同で資産運用フェアや各種のセミナー等を活発に開催することで、投資家の皆様のニーズに応えてゆくとともに、当社の我が国の個人投資の環境におけるプレゼンスを高めてまいります。
当社グループは、アセットマネジメント事業とファイナンシャル・サービス事業の2つの事業を「車の両輪」として、収益基盤を拡大し、「投資家主権の確立」という理念と、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つこと」という事業目的の達成のために、金融を中心とした情報社会に不可欠な企業グループとしての成長を目指して中長期の事業運営を行っていく所存です。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(中長期の施策について)
当社グループは、創業来の理念である「投資家主権の確立」を目指し、中立・客観的立場からの豊富で偏りのない金融情報の提供と、良質かつ低コストの投資信託商品の提供を通じて、投資家の皆様の資産形成に貢献する企業グループとして成長していきたいと考えております。
そのために、当社グループでは、業務運営能力の強化を図り、投資家・消費者の皆様のために有用な商品や情報を提供する体制の更なる整備を進め、中長期的に当社のかかげる「顧客中心主義」を推進できるよう、各事業分野で以下のとおり事業運営を行なってまいります。
当社ではグループの有する二つの事業である、アセットマネジメント事業とファイナンシャル・サービス事業のそれぞれについて、以下のとおり事業運営を行ない、課題に対処しております
・アセットマネジメント事業
当社グループは、アセットマネジメント事業の強化を図っております。現在、グループの売上高および利益に占める割合のうち、投資信託の組成、運用を中心とするアセットマネジメント事業が既に8割を超えておりますが、今後ともこの事業を強化、注力していく分野と認識しております。
アセットマネジメント事業におきましては、子会社であるSBIアセットマネジメント株式会社が、主に個人投資家の皆様向けの商品である公募投資信託と、主として地方金融機関等の 機関投資家を対象とする私募投資信託の運営全般を担い、2019年2月に子会社とした米国の資産運用会社Carret Asset Management LLCは海外債券型ファンド等の事業を展開しております。
その中でSBIアセットマネジメントにつきましては、当連結決算期中に公募投資信託を9本(当社で初めてのETF1本を含む)設定する等、個人投資家の投資意欲にお応えする有効かつ有益な選択肢の提供に重点的に取り進めました。この投資信託のラインナップの積極的な拡充は、当社では、投資を行う個人の皆様にとって、最適なポートフォリオはお一人お一人で当然異なることから、これからの個人投資家の皆様にとっては、ご自分にあった資産配分が自由に、低コストで気軽に行える環境を整えることが重要との考えに基づくものです。当社グループでは、そのための材料となる良質で低コストの投資信託のラインナップの更なる充実を図ることが必要と考えております。また、それにより、投資家の皆様の資産形成への貢献、ひいては我が国の投資環境の更なる発展の一翼を担ってゆくことも大切な事業目標であると考えております。
また、当社グループの運用資産残高は、2019年3月末に12,846 億円だったものが、2024年3月末には59,224億円となり、更に当連結会計年度末(2025年3月末)には67,008億円となるなど、飛躍的な拡大を続けております。この拡大基調を維持し、加速させるためには、当社グループの事業推進体制の更なる整備と強化が必要と考えており、合理的な業務システム環境の構築や、内部統制・コンプライアンス等の内部管理に関して、更なる強化が必要であると考え、既に実行に移しております。
・ファイナンシャル・サービス事業
当社グループのファイナンシャル・サービス事業はウエルスアドバイザー株式会社を中心に、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つ」ことを目的に事業を推進しております。
この目的の達成のためには、より多くの一般投資家・消費者の皆様に当社グループが提供する資産形成のための考え方や、各種金融商品に関する比較・分析等の当社グループの提供する情報に触れていただく機会を 増加させる必要があると認識しております。
当社グループにおいては、2023年3月にそれまで設立以来25年間使用していた「モーニングスター」ブランドを売却しましたが、投信評価情報を含むファイナンシャル・サービス事業については、新たに「Wealth Advisor」「ウエルスアドバイザー」のブランドで、引き続き従来同様の商品およびサービスの提供を行っております。近時は、新たに「Wealth Advisor」「ウエルスアドバイザー」のブランドの社会的認知度の向上にも注力して、今後とも「Wealth Advisor」「ウエルスアドバイザー」のブランドの更なる確立に向けて、ウェブサイトほかの広告価値や提供データの利用価値を高め、業績の向上を図る必要があるものと考えております。
なお、投資信託の販売金融機関が活用する「Wealth Advisor」の提供先は圧倒的なシェアを占めるに至っております。今後この分野においては、「ライフプランシミュレーション」、「ロボ・アドバイザー」、「相続シミュレーション」等の販売金融機関のフィデューシャリー・デューティーに資する様々なツールを提供することが重要な課題であり、引き続き販売金融機関と緊密に連携して各種商品、サービスを開発し、その提供に注力する必要があると考えております。
「貯蓄から投資へ」の流れの中、当社グループでは、大手金融機関や、地域金融機関との連携による資産運用フェア等のイベントについては、対面型、オンライン型の双方ともニーズが大きいと考えており、これらの効率的なオペレーションにより積極的に開催することを目指してまいります。
以上のとおり、当社グループでは「アセットマネジメント事業」と「ファイナンシャル・サービス事業」を「車の両輪」として双方の事業内容を活かすことにより、本格的に動き始めた我が国における「貯蓄から資産形成」の流れの中で、社会、経済情勢を含めた当社グループを取り巻く経営環境に適切に対応することで、当社の理念及び事業目的の実現を図るべく事業の推進を行ってまいります。
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