クレハ
【東証プライム:4023】「化学」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「中長期的な企業価値の向上」と「持続可能な社会への貢献」を両立し、サステナビリティ経営を推進して当社グループを一層発展させるべく、『クレハグループ企業理念』、『クレハビジョン』、2030年度に向けた『経営方針』および「クレハグループ中長期経営計画『未来創造への挑戦』」を策定し、当該経営計画の達成に向け活動しています。
<クレハグループ企業理念およびクレハビジョンについて>
<経営方針について>
クレハビジョンの実現のため、2030年度に向けた『経営方針』として3つの目標と3つの最重要施策を定めています。
[目標]
継続的な経済価値の向上
・「環境・エネルギー」、「ライフ」、「情報通信」の3分野を重点事業分野とし、クレハグループの経営資源を集中して経済価値の向上を目指す。
・マーケットインの視点で既存商品の性能向上とバリューチェーンの拡大を図り、コスト競争力をもって顧客への提案力を強化し、収益を拡大する。
社会課題解決への貢献
・これまでも、3つの重点事業分野で社会貢献してきたクレハグループの商品を、自社による技術開発と外部技術の融合によりさらに進化させ、社会に提供する商品、技術、サービスを拡充する。
環境負荷低減への貢献
・2050年度にカーボンニュートラルを目指す。
・循環型生産にかなう生産技術の高度化を推進し、廃棄物削減やリサイクルの推進により環境負荷を低減する。
[最重要施策]
技術立社の再興(研究・技術開発力の強化)
・新商品の研究開発と環境負荷低減に集中的に資源を投下し、差別化された商品の開発を加速する。
・他社との協創・協業、M&A等を通じ自社保有技術と外部技術の融合を図り、新規事業を創出し拡大する。
・成長事業の生産体制の構築を迅速に進めるとともに、環境負荷低減に向けた生産技術力、エンジニアリング力を強化する。
経営基盤の強化
・サステナビリティ経営を推進する組織の強化と、執行体制の効率化、リスク・マネジメントの強化等を継続的に実施する。
・クレハグループの経営資源を有効活用し、強固な連結事業基盤を構築する。
・顧客・社会の潜在ニーズと研究開発、製造、営業をつなぐバリューチェーンの連携により、経営の高度化を実現するデジタル化戦略を推進する。
会社と社員の共生
・社員の『働きがい』と『ミッション』を調和、融合し、社員と会社がともに成長を目指す。
・会社と社員のコミュニケーションを充実するとともに、挑戦する社員を登用する。
・社員の多様な価値観や立場を尊重し、働きやすい職場環境を整備するとともに、障がい者の就労機会を積極的に提供し自立を支援する。
(2)『クレハグループ中長期経営計画ローリングプラン2025』の進捗
当社グループは経営方針の中で掲げた目標の実現に向けて、2023年4月より中長期経営計画をスタートさせましたが、成長ドライバーと位置づけたリチウムイオン二次電池用バインダー向けのフッ化ビニリデン樹脂事業が、電気自動車市場の一時的な成長率の鈍化により停滞を余儀なくされました。このような状況を踏まえ、当社グループは、『クレハグループ中長期経営計画ローリングプラン2025』(以下ローリングプラン)を2024年4月に策定し、これまでの業績重視に加えて資本収益性も重視するバランス経営を実行していくこととしました。本ローリングプランでは、既存事業における成長施策および全社でのコスト削減策に基づいて2025年度の業績目標を修正し、併せて重要業績評価指標および資本政策における新たな目標設定を行いました。
[業績目標および重要業績評価指標(KPI)]
(注)「2025年度計画」のROEには、2025年6月4日に実施した自己株式立会外買付取引による影響は織り込んでいません。
事業の進捗
しかしながら、2024年度は欧州での景気後退により、欧州電気自動車市場の回復が想定より遅れ、フッ化ビニリデン樹脂事業が大幅計画未達となりました。2025年度も電気自動車向け需要の急回復は見込まれないものの、ESS(Energy Storage System、定置用蓄電池)市場はAI関連のデータセンター増加、再生エネルギー利用の拡大から、当面は15~30%の割合で北米の市場が伸長すると見込まれ、当社フッ化ビニリデン樹脂も既に同用途への出荷が始まっています。また堅調な成長が続く中国の電気自動車向けについては、当社の日本および中国のR&D拠点を活用し、リチウムイオン二次電池メーカーとの共同開発、サンプル評価が進んでいます。工業用途についても更なる拡販を目指し、石油掘削時に用いられるパイプ、半導体製造装置などに使われる接手やパイプ、水処理膜用途向けにマーケティングを継続しており、特定の分野に偏らない拡販を目指しています。
シェールオイル・ガス掘削向けのPGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品は、中高温鉱区で一定のシェアを確保しているものの、産出されるガスの価格が低迷し、2024年度の計画を下回りました。2025年度後半には、大型の液化施設が立ち上がり、需要の回復が見込まれます。市場の7割弱を占める低温鉱区向けに上市したプラグの本格販売を進めるとともに、トランプ政権下における貿易やエネルギー政策の変化をタイムリーかつ的確に捉え、事業採算の改善を図ります。
化学製品事業では、農業・園芸用殺菌剤は顧客の在庫調整により、2024年度計画が未達となりました。2025年度以降は、顧客での在庫調整が完了し、メトコナゾールの欧州再登録の効果もあり、販売が回復する見込みです。また新規農業用殺菌剤については順調に開発が進んでおり、2030年ごろの上市を目指しています。
樹脂製品事業では、ラップ市場は堅調に推移しており、今後も時短や効率を重視した調理スタイルの高まりにより微増を見込み、底堅い市場であると認識しています。クレラップは1960年に日本で初めて販売を開始した家庭用ラップとして評価されている強みを生かし事業拡大に向け、販売、商品、販促、広告宣伝、データ分析等あらゆるマーケティング施策の見直し、強化を進めています。
2025年度の定量計画は、以下のとおりです。2025年度はフッ化ビニリデン樹脂の市場回復の遅れ、PGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品の拡販遅れにより、ローリングプランで掲げた目標に対して、大幅な未達計画となっています。前期比では営業利益が46億円増加し、2024年度を底に今後は業績が回復していくものとみています。
(注)「2025年度計画」の親会社の所有者に帰属する当期利益およびROEには、2025年6月4日に実施した自己株式立会外買付取引による影響は織り込んでいません。
資本政策
ローリングプランで掲げた資本政策、目指す自己資本比率については変更ありません。自己株式の購入については、当初計画(2025年度150億円)に基づき2025年6月3日までに1,535,700株(取得価額の総額49億円)取得しておりましたが、ローリングプランで定めた自己資本比率目標に向けて、一層の株主還元の充実、更なる資本効率の向上および経営環境に応じた機動的な資本政策の遂行として、新たに自己株式の取得枠を設定し、2025年6月4日に自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)により自己株式1千万株を341億円で取得しました。利益の配分については、将来の事業展開に向けた積極投資に資する内部留保を充実させつつ安定的な配当を行うことを基本方針とし、2025年度から配当基準として、DOE(連結株主資本配当率)を導入し、2025年度、2026年度の2年間DOE5%を目安とした配当を行います。遊休資産について、2024年度は、英国拠点の土地建屋を売却しました。2025年度も国内および海外の拠点の売却を予定しています。政策保有株式についても、2024年度に売却を進め、186億円まで圧縮しました。引き続き政策保有株式の売却を進め、政策保有株式の保有割合について、2030年度までに連結純資産比5%程度を目指します。
環境負荷低減
ローリングプランで掲げた2030年度目標(CO2排出量を2013年度比で30%以上削減、2025年度廃棄物ゼロエミ率 1.5%)は変更ありません。
なお、2030年度の業績目標および重要業績評価指標は、2026年度から始まる次期中期経営計画発表時にあらためて開示します。
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