王子ホールディングス
【東証プライム:3861】「パルプ・紙」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。
(1)経営理念
当社グループは、1873年に抄紙会社として創立以降、「森林」を核とした事業を展開し、発展させ、グローバル企業へと成長しました。次の経営理念の下、変わり続ける時代のニーズを充足し、新しい未来を支えるモノづくりを、そして持続可能な社会の発展を目指して、王子グループは進み続けます。
「革新的価値の創造」
当社グループが今後大きく飛躍していくためには、イノベーションが不可欠です。画期的な新製品の開発と、それを導く研究・技術開発、また、組織の仕組みや従業員一人ひとりの行動に変革が求められています。斬新な発想で「チャレンジングなモノづくり」を行い、社会の潜在ニーズを充足していきます。
「未来と世界への貢献」
当社グループは多種多様な事業を抱え、アジア、北米、南米、欧州、オセアニアに事業拠点をもつグローバル企業へと成長しました。今後もグローバル展開を通じ、あらゆる国、地域、社会に「革新的価値」を提供し、新しい未来を創造する企業であり続けます。
「環境・社会との共生」
森林資源を核とする資源循環は、当社グループの基盤です。国内外に保有する広大な社有林の多方面での活用、各製造現場における環境負荷低減策の追求などを通じ、当社グループの事業そのものが持続可能な社会に貢献できるよう、取り組みを発展させていきます。
(2)パーパス(存在意義)
「森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」
健全に育て管理された森林は、二酸化炭素を吸収、固定するだけではなく、洪水緩和、水質浄化等の水源涵養、防災という機能の他に、生物多様性や人間の癒し、健康増進等にも貢献する効果があります。
そして、森林資源を活かした木質由来の製品は、その原料が再生可能であり、化石資源由来のプラスチックフィルムや燃料等を置換えていくことができます。
1933年から1938年の間、当社社長を務めた藤原銀次郎は「木を使うものは、木を植える義務がある」と説き、現在では「持続可能な森林経営」や「再生可能な資源の循環的利用」は当社グループの「強み」となっています。森林を健全に育て管理し、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、地球の温暖化や環境問題に取り組み、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていきます。
(3)長期ビジョン・中期経営計画
当社グループは、2030年までの長期ビジョンとして「成長から進化へ」をグループ基本方針とし、「環境問題への取り組み -Sustainability-」、「収益向上への取り組み -Profitability-」、「製品開発への取り組み -Green Innovation-」の3つの柱を掲げ、企業価値の向上に取り組むことにより、2030年までに連結売上高2.5兆円以上を目指し、また、2030年度に2018年度対比で温室効果ガス排出量70%以上の削減などを目標とする「環境行動目標2030」を達成し、企業価値の向上と社会への貢献をしていくことを目指してまいりました。
この長期ビジョンのマイルストーンとして策定した2022年度から2024年度を対象とする中期経営計画(2024年度目標 連結営業利益1,500億円以上、連結純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)1,000億円以上<安定的に1,000億円以上を継続> 等)につきましては、原燃料価格や人件費、物流費等の高騰など厳しい事業環境の中、価格改定や事業構造の見直しを進めてまいりましたが、その取り組みが不十分であったことに加え、ニュージーランドのPan Pac社のサイクロン被災の影響もあって、2024年度連結営業利益677億円、親会社株主に帰属する当期純利益462億円と、計画を大きく下回りました。
厳しい事業環境、不透明な国際情勢においても、企業の社会的・経済的価値を持続的に増大させることができる企業グループに進化していくため、目指す姿への道筋を見直し、新たに「長期ビジョン2035」、「中期経営計画2027」 を策定しました。資本効率を意識したBS経営へ転換すること、また成長性のある新たな事業領域に進出していくことを基本方針とし、資本効率向上やポートフォリオ転換といった取り組みを進めてまいります。
①長期ビジョン2035
新たな長期ビジョンでは「サステナビリティへの貢献」を掲げ、「資本効率向上」、「ポートフォリオ転換」、「サステナビリティ促進」を基本方針とし、企業価値の最大化と社会課題の解決に向けた取り組みを通じて、サステナビリティに貢献する企業グループとなることを目指します。
・資本効率向上
投資基準を厳格に定め、非コア資産の売却など資産のスリム化を進め、コア事業に経営資源を集中することで、資本効率・収益性の高い資産構成に進化させていきます。2024年11月に公表した保有株式の縮減計画(政策保有株式に加え、当社グループ会社の退職給付債務に対し積立超過となっている退職給付信託拠出株式を見直すこととし、2024年度から2027年度までに総額700億円を縮減)については、より踏み込んだ検討を進め、2024年度から2030年度までに総額1,200億円(政策保有株式 850億円、退職給付信託株式 350億円)縮減することを計画します。さらに、自己資本と有利子負債のバランスを見直し(ネットD/Eレシオ1.0倍以内)、成長投資と株主還元の充実を図ります。配当性向は2025年度から50%とします。また、2024年度から2026年度末までに1,000億円の自己株式を取得することを、2024年12月に公表しましたが、さらに500億円追加し、2024年度から2027年度までに1,500億円取得します。
・ポートフォリオ転換
印刷用紙などの需要の減退が進む中、成長性のある事業やエリアへの進出を加速します。サステナブルな木質由来でリサイクル性も高い紙の強みを活かし、プラスチック包装から代替可能な紙包装などの新製品を拡充し、環境に配慮したいお客様の需要に応えてまいります。また、木質から付加価値の高い新たな素材を生み出す木質バイオマスビジネスを推進し、将来的には多くの製品を事業化し、当社グループの新たな柱に育てていきます。高い経済成長が見込まれるインドや東南アジアでの事業拡大を継続します。一方で、不採算事業の撤退基準を厳格化し、健全で強靭な事業ポートフォリオへの転換を実現します。
(木質バイオマスビジネス・サステナブル素材開発の取り組み)
創業当時から紙づくりや森づくりで培ってきた多様なコア技術と、国内外に保有する豊富な森林資源を活用することにより、当社グループならではの新たな価値を創造し、社会的課題を解決するためにイノベーションを推進しています。
木質由来の新素材として、セルロースナノファイバー(CNF)は、現在技術面で様々な試みを進めており、化粧品や塗料用途、卓球ラケットなどで実用化されたほか、フィルター事業製品の全熱交換エレメントへの採用、天然ゴムやポリカーボネートとの複合材の開発や燃料電池部材の開発など、新しい用途の探索や実用化を進めており、さらにCNFの新たな機能開発に取り組んでいます。また、セルロース素材を効果的に活用するため、大型の自動車用内装材などに使われるセルロース樹脂ペレットの商品化を進めています。さらに脱炭素化を目的として、木質由来の「糖液」や「エタノール」の製造に取り組んでいます。木質由来の糖液は、バイオマスプラスチックや合成繊維等の様々なバイオものづくりの基幹原料としてニーズの拡大が見込まれ、木質由来のエタノールは、持続可能な航空燃料(SAF)や基礎化学品製造の原料として期待されています。王子製紙㈱米子工場内に製紙工場のインフラを活用した国内最大級の木質由来糖液のパイロット製造設備を導入し、将来の事業化に向け実証試験を開始しました。2025年3月には木質由来エタノールのパイロット製造設備を立ち上げています。今後は量産化設備の設置に向けて操業条件や製造コストの最適化を行い、既存の製紙工場をバイオものづくり工場へ転換するとともに、バイオものづくり製品の社会実装に注力してまいります。さらに今般、原料に木質バイオマスを採用し、PFAS不使用(有機フッ素化合物を含まない)で、さらなる微細化を実現する次世代半導体向けEUV(極端紫外線)用バイオマスレジストの製品開発も進めています。
医薬・ヘルスケア分野については、木材の主要成分を利用することで、動物由来に依存する課題を回避できる医薬品の開発に取り組んでいます。2024年7月には、王子ファーマ㈱が「第一種医薬品製造販売業許可」と「第二種医薬品製造販売業許可」を取得しました。2025年2月には、医薬品事業の幅を広げるため、希少疾患であるホモシスチン尿症治療薬の国内における後発医療用医薬品の製造販売承認申請を行いました。また、創薬における動物実験の回避や再生医療の促進を目指し、細胞培養基材の開発にも注力しています。さらに、医薬品や化粧品、食品向けに幅広く使用されている薬用植物「甘草(カンゾウ)」についても大規模栽培技術を確立し、輸入品に依存せずに国産化することで、高いトレーサビリティと安全・安心を確保した持続可能なビジネスを進めていきます。
さらなるサステナブル素材として、ポリ乳酸のラミネート紙やポリ乳酸フィルムなどの商品化を進めています。2024年5月にポリ乳酸合成のベンチプラントが運転を開始し、今般、世界に先駆けて木質(非可食原料)由来のポリ乳酸の製造技術を確立しています。また、現行の紙リサイクルシステムでも再生が容易な紙コップ原紙を開発しています。なお、当社グループでは、主に焼却処分(サーマルリサイクル)されていた、プラスチックラミネート加工が施された使用済の紙コップやアルミ付きの紙容器を回収し、効率的に繊維(パルプ)分を回収するシステムを開発しました。紙コップ・紙容器の製造者や消費者と連携し、段ボールやペーパータオル等へのマテリアルリサイクルに取り組み、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に貢献していきます。
・サステナビリティ促進
当社は、石炭使用量ゼロに向けた燃料転換、再生可能エネルギーの利用拡大による温室効果ガス排出量削減や、植林地を取得・拡大し、有効活用することにより森林による二酸化炭素純吸収量の拡大を進めてまいりました。2025年5月に、新たに2040年をターゲットにした「環境行動目標2040」を公表しました。2040年度までに温室効果ガス排出量を2018年度対比で50%削減、50%相当分を当社が保有する森林により吸収固定することで、2040年度にスコープ1、2の正味ゼロ・カーボン化を目指します。
また、当社グループの事業の核は、大切な財産である「森林」です。森林を適切に育て、管理することは、二酸化炭素の吸収固定や生物多様性保全、水源涵養、土壌保全等、森林が持つ様々な公益的機能を高めることにつながり、森林資源を活用した製品群は、化石資源由来の素材・製品を置き換えていくことが可能です。当社は国内社有林の経済価値評価を実施し、2024年9月に価値総額が年間約5,500億円に達するという結果を公表しました。自然資本会計の時代へ向け、これからもネイチャーポジティブ経営を進化させてまいります。
環境行動目標2040
1.気候変動問題への対応 非化石エネルギー利用量の拡大による温室効果ガスの削減を行い、自社林の森林保全・植林を通じた森林の温室効果ガス吸収効果と合わせ、2040年度のスコープ1、2のネット・ゼロ・カーボン化を達成する。※ ※ 森林吸収による排出量相殺に上限は考慮しない
(1) スコープ1、2 GHG排出量削減 2040年度に2018年度対比で排出量50%削減 2040年度に2018年度排出量の50%相当分を森林により吸収固定 ①エネルギー消費量削減 ・エネルギー消費原単位1%/年以上削減 ②購入電力非化石比率100% ・2040年度 購入電力非化石比率100%※ ※ 証書利用を含む ③石炭使用量ゼロ ・2040年度 石炭使用量ゼロ ④低炭素水素等の導入開始 ・水素、アンモニア、e-methane(合成メタン)等 |
(2)スコープ3 GHG排出量削減 ・カテゴリー4 チップ船からの排出量 2018年度対比40%削減
2.ネイチャーポジティブの推進 持続可能な森林経営を推進して森林の多面的機能を高めるとともに、生態系を保全・回復する取り組みを継続・拡大し、世界のネイチャーポジティブの達成に貢献する。
(1) 豊かな森づくり ①持続可能な森林経営 ・森林破壊ゼロの継続 ・サプライヤーデューデリジェンス 1回/年以上 ・自社森林認証取得率100%と森林認証製品の拡充
(2) 生物多様性保全 ・バリューチェーンを含めた事業活動において自然への重要な依存と影響を特定し、生態系に配慮した 事業活動を通して生物多様性の損失を回避する。 - 天然林再生面積 (2018-2040) 5,000ha以上 - 郷土樹種植栽本数(2018-2040) 900千本以上 - 緑の回廊設置面積(2018-2040) 6,000ha以上 ・先住民族を含む地域社会や環境NPOと協力して、稀少動植物の保護・育成や生態系の保全・回復に取 り組む。 ・プラスチック汚染の防止に向け、環境配慮型紙パッケージ製品や生分解性・バイオマス素材の研究開 発を推進する。
3.サーキュラーエコノミーの推進と汚染物質削減 資源の循環的利用を推進して社会のサーキュラーエコノミー移行へ貢献するとともに、環境負荷低減に継続して取り組む。
(1) サーキュラーエコノミーの推進 ①廃棄物の有効利用率維持、向上 ・国内:99%以上、海外:95%以上 ②古紙利用の推進 ・国内:段原紙古紙利用率90%以上 ③取水総量の削減 ・2018年度対比10%以上の削減 ④高水リスク地域におけるステークホルダーエンゲージメント実施 ・年1回以上実施 ⑤再生可能な森林資源を用いた、木質由来糖液をはじめとする化石資源代替素材の製造技術の確立と商用化 |
(2) 汚染物質削減 ①排水汚濁負荷の削減(測定対象会社当たり) ・BOD,COD,SS総量 2018年度対比20%削減 ②大気汚染負荷の削減(測定対象会社当たり) ・SOx総量 2018年度対比 50%削減 ・NOx総量 2018年度対比 10%削減 ・VOC排出原単位 2018年水準の維持
4.ステークホルダーエンゲージメント 環境や社会に配慮した調達の拡充に取り組み、脱炭素社会に貢献する製品を製造するとともに、環境法規制を遵守した事業活動を推進する。
(1) サプライヤーマネジメントの推進 ・第三者機関監査も含めたサプライヤーマネジメント体制を強化し、人権や環境に配慮した調達を行 う。 - サプライヤー人権・環境デューディリジェンス 1回/年 実施
(2) 環境事故ゼロ、製造物責任事故ゼロ ・環境法令違反、製造物責任事故をゼロとする。 |
②中期経営計画2027
2025年度から2027年度を対象とする「中期経営計画2027」は、「長期ビジョン2035」 実現に向けた基盤を固める準備期と位置づけ、資本効率の改善に重点を置いた取り組みを進めます。
・財務戦略
長期ビジョンの資本効率向上の取り組みは、中期経営計画期間中に集中的に実施します。非コア資産の売却や資本コストを意識したハードルレートを適用した投資の厳選により、資産管理を厳格化します。配当性向引き上げ、自己株式取得実施により自己資本をコントロールし、借入も活用することで資本構成の見直しを進めます。これらの取り組みを通じて、成長投資や研究開発のための継続的な資金確保と株主還元強化を両立し、強固な財務基盤を構築します。
・事業戦略
外部環境の変化によるコスト高の着実な価格転嫁、製造拠点の安定操業及び競争力強化、グループ営業体制の強化、高付加価値品へのシフトなどを通じて、既存事業の収益力を強化し、2024年度に落ち込んだ利益率の立て直しを図ります。また、低収益事業については撤退を含めた構造改革を断行し、サステナブルパッケージなどの戦略事業や、高い経済成長が見込まれるインド・東南アジアなどの戦略エリアに成長投資を集中させることで、事業ポートフォリオの転換を推進します。将来の進化に向けた研究開発投資も継続して実行していきます。
これらの取り組みを通じて資本効率向上を実現し、2027年度にROE8%、連結営業利益1,200億円、親会社株主に帰属する当期純利益800億円を達成します。将来的には、木質バイオマスビジネスなど新事業の拡大により、さらなる利益の拡大及びROE10%を目指します。
中期経営計画 数値目標
(事業別の取り組み)
報告セグメントの業績をより適切に評価するため、2025年度第1四半期から、従来「その他」に区分していたサステナブルパッケージング事業及び液体紙容器事業につきましては「生活産業資材」に区分を変更し、また、従来各報告セグメントに配賦していた当社におけるグループ本社費用は、各セグメントには配賦せず「その他」に含めて表示する方法に変更します。このため、事業別の取り組みについては、区分変更後の報告セグメント別に記載しています。
(a) 生活産業資材
・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業、サステナブルパッケージング事業、液体紙容器事業)
国内市場では、当社グループが持つ多様なパッケージング製品の品揃えを活かし、グループ連携を強化してお客様の期待に応えることで、販売拡大に努めます。生産体制の効率化や原紙加工一貫生産化を進めるとともに、M&Aや生産拠点再編により、需要に見合った最適生産体制の構築を進めます。
海外市場のうち東南アジアでは、当社の多様な生産拠点が連携し、お客様に最適化したソリューションを提供することでさらなる販売拡大を目指します。段ボール需要の伸びが期待されるインドでは、さらなる事業拡大を目指すとともに、他の包装資材の拡大も進めてまいります。一方で、ニュージーランドでは、事業環境の変化を受け、2024年12月に段ボール原紙製造設備を1台停止し、2025年6月にさらに1台停止予定です。ヨーロッパでは、脱プラスチック包装の分野で最先端の原料加工技術を保有するフィンランドのWalki社、液体紙包装紙や充填機を製造販売するイタリアのIPI社を中心に、サステナブルパッケージをグローバルに拡大してまいります。
・生活消費財(家庭紙事業、紙おむつ事業)
王子ネピア㈱では、マーケティング戦略を通じて「nepia」ブランドのより一層の醸成を図るとともに、「人と地球に、ここちいい。」、人々のくらしと環境に寄り添う製品づくりを行っています。
家庭紙事業では、2024年7月に敏感肌に優しい“デリケートケアトイレットロール”という新しいコンセプトの「からだ想いのトイレットロール」、10月にコンパクト設計でフタつきのウェットティシュ「ネピア wetomo」を発売、2025年3月からはティシュの枚数や厚みをそのままにボックスティシュの箱サイズコンパクト化を進めています。今後も、お客様に寄り添う製品づくりを通じて、事業拡大を目指してまいります。
紙おむつ事業では、2024年度に国内の子供用おむつの生産販売を終了しました。国内では、今後も需要の拡大が予想される大人用おむつに注力していきます。介護・看護の現場に寄り添い、介護・看護をする人・受ける人双方から信頼される製品を供給してまいります。
2025年3月に、王子グループ初のスキンケア製品である洗顔ソープ「ネピア 鼻セレブSKINLISMモイストクリアバー・モイストクレンジングバー」を発売しました。今後も様々なスキンケア製品の発売を計画しており、スキンケアを事業の新たな柱に育ててまいります。
(b) 機能材(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)
サステナブル素材及び製品の開発を進めるとともに、市場ニーズを先取りし、お客様の期待に応える製品やサービスを迅速に提供します。また、今後も市場拡大が期待されるような新たな事業領域で高付加価値製品を展開することにも積極的に取り組んでいます。
国内では、高機能なサステナブル製品の積極的な開発に継続的に取り組んでいます。2023年に王子エフテックス㈱から販売開始した、非フッ素タイプの耐油紙「O-hajiki(オハジキ)」や、農業用紙製マルチシート「OJIサステナマルチ」は、高い評価をいただいており、今後も販売拡大に努めてまいります。また、王子エフテックス㈱滋賀工場で、電動車のモーター駆動制御装置のコンデンサに用いられるポリプロピレンフィルムの生産設備増設を進め、2025年1月に4台目の製造設備が稼働しました。今後も需要の動向を見極め、生産体制の増強や高品質化への取り組みを進めてまいります。
海外では、感熱製品の世界市場での拡販と印刷・加工を含めた競争力強化を進めています。より高品質で付加価値の高い感熱紙やラベル製品を開発し、製品の差別化を通じて、既存市場での競争力強化、成長市場での販売拡大を目指してまいります。
(c) 資源環境ビジネス(パルプ事業、植林・木材加工事業、エネルギー事業)
「総合パルプメーカー」として世界的なパルプ事業の拡大・強化に加え、植林・木材加工事業、再生可能エネルギー事業等の拡大に注力しています。また、持続可能な森林の育成・拡大を推進し、その豊富な森林資源を活用して、様々な新しい価値を生み出してまいります。
パルプ事業では、事業基盤強化のため、海外主要拠点での戦略的収益対策を継続して実施しています。また、国内では、成長性のある溶解パルプ事業で増産・拡販を進めるとともに、高付加価値品の生産拡大による収益力向上を図っています。
植林事業では、国内外に保有する社有林において、森林を適切に管理し持続可能な資源活用を図るとともに、森林の成長性向上にも取り組んでいます。2024年7月にはウルグアイにおいて3.5万haの植林地を取得しました。また、2025年3月には森林アセットマネジメント会社New Forests社との提携により、森林投資ファンド「Future Forest Innovation ファンド」を設立しました。本ファンドを通じて、約7万haの植林地の取得を目指しています。「海外植林地面積を40万haへ拡大」という目標に向けて、持続可能な森林資源の取得を推進します。
エネルギー事業では、既存のバイオマス発電事業に加えた新たな再生可能エネルギー事業として、社有林地を活用した風力発電事業の検討を進めています。また、国内外の拠点を活かし、エネルギー事業の拡大に合わせたバイオマス燃料の調達・販売強化を進めてまいります。
(d) 印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)
需要動向を見極め、引き続きコストダウンを徹底すると同時に、保有するパルプ生産設備・バイオマス発電設備等の資産を最大限有効活用し、当社グループ全体としての最適生産体制再構築等を通じて、収益力・競争力の強化に取り組んでいます。構造的な環境変化から、2024年2月には新聞・印刷用紙生産設備1台、2025年3月には塗工紙・微塗工紙生産設備1台を停止しました。また、王子製紙米子工場では、既存のパルプ生産設備に連続工業プロセスを導入し、高品質な溶解パルプの生産を行っています。今後も、需要に見合った生産体制の最適化を進め、キャッシュフロー経営を徹底していくとともに、森林資源と既存事業のリソースを有効活用したポートフォリオ転換により、カーボンニュートラルな社会の実現へ貢献してまいります。
(e) その他(商事、物流、エンジニアリング、不動産事業、他)
当社グループは持続可能な社会の構築に貢献すべく、サステナブルな素材である木質資源の有効活用や新規事業の開発を推進し、新しいビジネスモデルの創出に取り組んでいます。
2025年3月に、製薬業界向け微結晶セルロースの製造、販売をグローバルに事業展開する、インドのChemfield社を買収しました。パルプ事業の下流工程にあたる同社を王子グループに加えることで、パルプ加工品の製造販売一貫体制を確立し、高付加価値事業にビジネスを拡大してまいります。
また、資産スリム化の取り組みとして、賃貸不動産の売却検討を進めてまいります。
③王子グループマーク・タグライン
長期ビジョンに示される変革への決意を発信し、グループ全体の一体感を醸成、変革を遂行するため、グループマーク・タグラインを一新しました。国内会社は2025年10月から、海外会社は2026年1月から順次運用開始予定です。
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