企業兼大株主東レ東証プライム:3402】「繊維製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

当社グループは「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」という企業理念の下、技術センターにすべての研究・技術開発機能を集約し、当社グループの総合力を結集してイノベーション創出に取り組んでおります。

 将来にわたる持続的成長のために、研究・技術開発への継続的投資を行っており、コア技術である有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーをベースに、重合、製糸、製膜など要素技術の深化と融合を進め、各事業セグメントで先端材料の創出、事業化を実現しております。近年では、素材に関するナノテクノロジーの極限を追求した「スーパーナノテクノロジー」ともいうべき独自技術の各種事業への実用化を加速させてきました。繊維分野での革新複合紡糸技術「NANODESIGN®」、樹脂分野での革新的微細構造制御技術「NANOALLOY®」、フィルム分野での革新的積層制御技術「ナノ積層/NANO-Multilayer」などです。これらの技術は従来になかった特性と特長を有する素材を創出し、社会に付加価値を生み出し続けております。

 当連結会計年度のセグメント別の研究・技術開発の概要は以下のとおりです。

(1) 繊維事業

 アパレル用新製品に向けたポリマー、紡糸の要素技術の深化に加え、環境調和型の新規繊維の創出や、極限技術追求による高機能製品や繊維先端材料の創出・拡大に主眼を置いた研究・技術開発を推進しております。その成果として、NANODESIGN®によって繊維断面を精密に制御した新しい原糸と、特殊な高次加工技術によって、天然素材のようなマルチラフネス構造(特殊な凹凸構造)を実現し、優れた水滴除去性を持つPFASフリー(フッ素を使用しない)の撥水ストレッチテキスタイル「DEWEIGHT™ (デューエイト)」を開発しました。2025年春夏シーズン向けからメンズ・レディス向けにアウターからボトムスまでの展開を予定しております。

(2) 機能化成品事業

 樹脂・ケミカル、フィルム、電子情報材料の新製品開発、及び既存製品の高性能・高機能化を目指した研究・技術開発に取り組んでおります。その成果として、㈱本田技術研究所と、ナイロン6樹脂の部品を亜臨界水で解重合し、原料モノマー(カプロラクタム)に再生する、ケミカルリサイクル技術に関する技術実証を開始しました。亜臨界水は高温・高圧の水で、触媒不使用で添加剤の影響を受けることがなく、数十分でナイロン6を解重合し、高収率で原料モノマーを生成することができます。2027年近傍の実用化を目指します。また、ステンレス鋼に匹敵する高強度を有する超高分子量ポリエチレンフィルムを創出しました。耐寒性や耐薬品性・低誘電性にも優れていることから、超電導・宇宙環境等の極低温環境での使用や、高強度を活かした部材の軽量化・省スペース化に貢献するほか、PFASの一種であるフッ素樹脂の代替材料として半導体製造工程での耐薬品保護用途に使用可能です。さらに、高速通信規格「5G」などを利用する通信機器に搭載する「ミリ波吸収フィルム」を開発し、日本経済新聞社が主催する「日経優秀製品・サービス賞」において「最優秀賞」を受賞しました。5ミリ波モジュールを搭載する5G関連機器の電磁波障害を解消し、機器の軽量化や設計自由度の向上に貢献します。

(3) 炭素繊維複合材料事業

 炭素繊維の高性能化と品質信頼性の追求により世界ナンバーワンを堅持するとともに、地球温暖化問題に貢献する複合材料事業の拡大を目指した研究・技術開発に取り組んでおります。そのような中、当社が開発した世界最高強度を持つトレカ®T1200が、公益社団法人高分子学会の「2023年度高分子学会賞(技術部門)」を受賞しました。従来品の性能を大きく上回る超高強度炭素繊維の創出に成功したことが評価されたものですが、航空機用途をはじめ、様々な用途にも展開していく予定です。また高弾性率を維持しつつ強度をさらに約20%高めたトレカ®M46Xを開発しました。今後、釣竿、自転車、ゴルフシャフトなどのスポーツ用途をはじめ、幅広い用途開拓を進め、2024年度に上市予定です。

(4) 環境・エンジニアリング事業

 水処理膜とエンジニアリングを軸に成長分野での事業拡大を目指し、研究・技術開発に取り組んでおります。その成果として、工場廃水の再利用、下水処理等での厳しい使用条件において、高い除去性を維持したまま、長期間安定して良質な水を製造できる、高耐久性逆浸透(RO)膜を開発しました。運転管理が容易となることに加え、交換頻度の半減やカーボンフットプリントの改善が期待できます。2024年上期より販売を開始します。

(5) ライフサイエンス事業

 ライフイノベーション事業拡大のため医薬品、医療機器、バイオツールの研究・技術開発に取り組んでおります。その成果として、膵がんの診断補助を使用目的とした体外診断用医薬品「東レAPOA2-iTQ (アポエーツーアイティーキュー)」の販売を開始しました。従来の腫瘍マーカーでは検出できなかった膵がん患者を早期に検出できることが期待されます。また、固形がんに対する治療薬として東レが独自に開発を進めている「TRK-950」について、胃がん患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を米国、日本、韓国の3ヵ国で開始しました。

 上記セグメントに属さない基礎研究、基盤技術開発として、カーボンニュートラルの実現に向けて、水素社会の実現に貢献する基幹素材の開発に取り組んでおります。当期は、山梨県並びに技術開発参画企業10社で、サントリー天然水 南アルプス白州工場及びサントリー白州蒸溜所(山梨県北杜市)の脱炭素化を目指し、大規模P2Gシステムの構成機器をトータルシステムとして構築する工事を山梨県で開始しました。2025年の稼働を目指し、我が国最大の固体高分子(PEM)型水電解装置により脱炭素化を前進させ、地域再エネ利用型による水素エネルギー社会を推し進めていきます。また、循環型社会の実現に向けて、バイオマスの食物繊維を糖に分解する酵素を高生産する微生物(東レ呼称「T1281」)を独自に開発し、酵素量産化技術を確立しております。これら「非可食性バイオマスからの糖製造向け新規酵素の技術開発」の取り組みに対し、産経新聞社主催の「第36回 独創性を拓く 先端技術大賞」において「産経新聞社賞」を受賞しました。また、タイ国のCellulosic Biomass Technology Co., Ltd.において、この酵素を活用する「膜利用バイオプロセス」の基本技術を確立しました。2030年近傍を目標に、非可食バイオマスから化学品を製造するトータルサプライチェーンの構築を目指します。

 当連結会計年度の当社グループの研究開発費総額は、705億円(このうち東レ㈱の研究開発費総額は498億円)です。セグメント別には繊維事業に約10%、機能化成品事業に約27%、炭素繊維複合材料事業に約16%、環境・エンジニアリング事業に約7%、ライフサイエンス事業に約3%、本社研究・技術開発に約37%の研究開発費を投入しました。

 当連結会計年度の当社グループの特許出願件数は、国内で1,403件、海外で2,876件、登録された件数は国内で637件、海外で1,562件です。

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