AobaーBBT
【東証スタンダード:2464】「サービス業」
へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「Lifetime Empowerment(一生涯学び続け、一生涯成長し続ける学び舎になる)」をビジョンとし、あらゆる年齢層の学習者に対して継続的な学習機会を提供し、グローバルに通用する人材の育成を事業目的としております。
この方針に基づき、プラットフォームサービス事業においては、国際的な教育認証機関である国際バカロレア機構(IB)及びケンブリッジ大学国際教育機構(CAIE)の認定を受けたカリキュラムに基づく一貫教育(幼児・初等・中等・高等教育)を、英語及び日本語を含む多言語環境で提供しております。
また、リカレント教育事業においては、創業以来当社が蓄積してきたオンライン学習システム「AirCampus®」及び累計19,000時間を超える教育コンテンツを基盤とし、大学・大学院教育、ビジネスパーソン向け専門講座、経営幹部育成、起業家支援に至るまで幅広い教育サービスを提供しております。
これにより、当社グループは、幼児から社会人・経営層に至るまでのあらゆる段階における教育ニーズに対応する「生涯教育プラットフォーム」を構築し、国内外の学習者に対して世界水準の教育機会を提供する体制を確立しております。
当社グループは、かかる経営方針の下、持続的な教育イノベーションを推進し、社会的価値及び株主価値の双方の最大化を図ることを基本方針としております。今後も企業価値の向上に努め、社会的責任を果たす企業グループとして事業を展開してまいります。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
(経営環境)
当連結会計年度における我が国経済は、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻、2023年10月のハマス・イスラエル紛争、UK、USA、イタリア、ドイツ、カナダ、シンガポール、インドネシア等のG7加盟国等における政権交代と極右政党の台頭等、地政学、地経学上の重要なイベントが継続している影響を受けています。また、米国、中国、ロシア等の大国の政権は保護主義的政策を強める傾向にあります。それに伴い、戦争・紛争の回避と軍縮、地球温暖化への対応、世界自由貿易市場の拡大、エネルギー・コモディティ市場の安定確保等、第二次世界大戦来続いてきた安定のメカニズムが薄らいでいる状況です。
2025年1月の米国政権交代を受け、米国の相互関税を含む国内経済を優先する政策が株式・為替・債券・商品市場に予測困難な影響を与えており、日本経済もその影響を受けています。世界、日本国内の物価上昇が個人消費を圧迫するなど、景気回復の足かせとなっております。
一方で、2022年後半から急速に進化した生成AI(ChatGPT-4、Geminiなど)の活用が、多くの産業分野で進んでおり、特に知的業務の効率化や生産性向上に大きな影響を与えています。教育分野においても、AIを活用した個別最適化学習や、新たな教育モデルの模索が進み、従来の学びの形が大きく変化しつつあります。
さらに、新型コロナウイルスの流行を契機として、大学教育のオンライン化が加速した結果、学位取得の在り方に対する価値観が多様化しています。従来の4年間の大学教育にこだわらず、実践的なスキル習得を重視する学習者が増えており、企業の採用基準や人材育成方針にも影響を及ぼしています。
こうした変化を受け、今後の社会において求められる人材の資質や、企業の人材育成の方向性、政府の人材戦略、さらには学校教育の在り方に至るまで、従来の枠組みを超えた再構築が求められています。その結果、以下のような人材ニーズの変化が一層鮮明になっています。
・AIで代替できない「構想力」を有する人材
・AI/DXを担うデジタル人材
・AIで代替できないリーダーシップ・起業家精神・問題解決力を発揮する人材へのリスキリング教育の提供
・高等教育を含む学校におけるデジタル技術の活用、オンラインと集合研修を組合わせたブレンド型教育の導入の重要性
・あらゆる領域における一括教育から個別最適化教育への根本的なシフト
・企業経営における「人的資本経営」の浸透、特に「経営戦略」と「戦略の実行主体としての経営人材、次世代経営人材への投資」
・大学や高等教育市場における従来型の教育モデル、ビジネスモデルの根本的なスクラップ&ビルドに対する社会的要請の高まり
これらの変化は「Lifetime Empowerment(一生涯学び続け、一生涯成長し続ける学び舎になる)」をビジョンに掲げ、子どもから経営者に至る全年齢層を対象に、AIに代替されない本質的な力を身につけた「世界で活躍するリーダーの育成」をミッションとした教育を一貫して提供してきた当社グループにとって、非常に大きな成長機会となります。この成長機会を確実に捉えるため、オンライン教育の事業会社から世界の教育の最前線を走るEdTechカンパニーへ進化すべく、教育プラットフォームとコンテンツの両面において積極的な先行投資を行っております。当該先行投資と、以下のような当社グループが有するノウハウと資産を活かし、企業価値向上に繋げてまいります。
・対話と集合知を重視したオンライン学習プラットフォーム
・経営者が知るべきビジネスやマネジメントの最前線をカバーする19,000時間超のコンテンツ・ライブラリー
・オンライン教育、ブレンド型教育の設計・開発・運営ノウハウ
・グローバル人材育成のための各種カリキュラム体系
・小中高等学校教育における2大世界標準である「国際バカロレア」、「ケンブリッジ国際」の認定を有する日本唯一の国際教育機関
(中長期的な会社の経営戦略)
2025年3月期の売上高は7,700百万円と前期比3.0%増収、計画比7.4%減、また営業利益は440百万円と、前期比15.0%増益、計画比12.1%減となりました。
プラットフォームサービス事業が比較的堅調に推移した一方で、リカレント教育事業のうちUniversity事業系を中心とする個人向け領域において、急激な物価上昇や円安進行などによる個人消費意欲の低下を背景に、厳しい経営環境が継続しました。その結果、増収増益は達成したものの、当初計画を下回る結果となりました。
このような経営環境を勘案し、2026年3月期は「成長分野への選択と集中」「組織体制の最適化」を両輪とし、以下のような取り組みを推進することで、売上高8,250百万円(前期比7.1%増)、営業利益606百万円(同37.7%増)を見込んでおります。
リカレント教育事業については、各事業の中で最も高い成長を見込むのは法人向け人材育成事業系であり、特に当社グループの強みを生かせるのは、顧客ニーズに応じて研修を設計する「カスタマイズ研修」、中でも「次世代経営人材育成」分野では、他社と差別化された優位性を有しております。この戦略を具現化するため、2025年4月より「コンテンツ事業本部」と「法人営業事業本部」を統合し、「法人研修事業本部」を新設、企画と営業が一体となり、顧客の多様なニーズに迅速に対応できる体制を整備しました。また、従来は各事業部で分散していた「問題解決」「リーダーシップ」「グローバル」等の公開講座を、本部内の専任部門に集約することで、運営の効率化と費用対効果の最大化を図ります。さらに、顧客企業の新規事業開発支援を強化すべく、2025年5月より㈱ABSを法人研修事業本部に統合します。こうした体制強化により、ポストコロナ時代におけるリカレント・リスキリング需要の高まりに対応し、法人顧客の高度化する人材開発ニーズに応えるとともに、収益性の向上を目指してまいります。University事業系は、BBT大学、BBT大学院、Bond-BBT MBAの3つの組織を統合的に進め、人件費抑制と事業効率化を図るとともに、ニーズが高まる法人派遣の獲得に注力してまいります。また、既存の教育資産やノウハウを活用した短期講座を大幅に拡充することで、開発コストを抑制しながら収益拡大を図ります。
プラットフォームサービス事業は、引き続き当社グループの売上・利益の主要ドライバーとなります。2013年のアオバジャパン・インターナショナルスクール買収を起点にM&Aと新拠点開設を進めてまいりましたが、2024年3月期以降は新規開設予定がないことから、先行投資は一段落しました。これにより、既存拠点の生徒数の安定的増加と相まって、売上のみならず利益額・利益率の向上が期待される局面に入っております。一方で、アオバジャパン・インターナショナルスクールの主要キャンパスでは、近い将来、定員上限に達することが見込まれており、早期の対策が求められています。その対策として、新校舎の開設検討に加え、オンライン高校事業の拡充を重要戦略として位置づけております。オンライン高校事業では、世界でも前例の少ない「国際バカロレア(IB)ディプロマ・プログラム(DP)」のオンラインパイロット認可を日本で初めて取得し、事業をスタートしました。これは、当社グループが蓄積してきたオンライン教育の知見を活かすことができる領域であり、今後の事業拡大に大きく貢献する可能性を持っております。日本国内のIB教育ニーズの高まりだけでなく、グローバルなIB展開を見据えた、当社グループの国際市場展開に向けた布石となるプロジェクトと位置づけております。
今後も当社グループは、外部環境の変化に迅速かつ柔軟に対応しながら、企業価値の継続的向上と持続的成長の実現に向けた戦略の遂行に努めてまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記で述べた外部環境の変化は、当社グループの成長にとって非常に大きな事業機会が存在すると考えています。かかる事業機会を獲得するために、以下の項目に取り組んでまいります。
① 幼児から高等学校までの全人教育への世界標準の普及
日本にとどまらず、世界の未来を前向きに変革する人材輩出には、高等教育における高い専門知識、実践力の獲得だけではなく、人格を形成する幼少期から高等学校までの全人教育において世界標準を取り入れること(国際教育の充実)が重要です。海外での国際教育市場は近年著しく成長しています。日本においてもこの潮流に呼応し、市場の拡大が進んでいます。当社は、2大世界標準カリキュラムである「国際バカロレア」の認定校、「ケンブリッジ国際」の認定校を幼児から高等学校まで一貫して運営する、国内唯一の教育機関です。
2013年のアオバジャパン・インターナショナルスクールの経営参画以降、東京都心にフォーカスして新校舎を開設し、拠点を拡大してまいりました。幸いなことに、旗艦校のアオバジャパン・インターナショナルスクールを中心に、需要の伸びが供給を常に上回る状況が続いています。今後は、オンライン課程の拡大と新規校舎の拡張が重要課題となります。
国際バカロレア教育の普及においては、自社でIB認定校(アオバ・グループ)を拡大するのみならず、7年前から文部科学省から「文部科学省IB教育推進コンソーシアム事業」の事務局を受託しています。アオバジャパン・インターナショナルスクールは、国際バカロレア協会から、オンラインでのIB教育を許可された世界で5つのみ(アジア太平洋地域では唯一)のパイロット校です。社会人の学び直しであるリカレント教育、リスキリング教育だけでなく、幼少期からの教育の構造的、質的向上についても大いに貢献したいと思っております。
新たな取り組みとして2025年より、Society 5.0 時代にふさわしい人材育成や、将来の社会を牽引するグローバルリーダーの育成を目的とした文部科学省「WWLコンソーシアム構築支援事業」の受託が決定しています。これは日本の高等学校教育に対し、国際的視野と行動力を兼ね備えた人材の育成を支援するものです。これまでの「文部科学省IB教育推進コンソーシアム事業」で培った知見を活かし、事業領域を広げてまいります。
② 法人営業の強化
日本人の生産性と賃金の向上、超高齢化社会において60代~70代でも働き続けるための学び直し(リカレント教育)、AIに代替されないスキルの習得等、今後、個人も企業も人材への教育投資が必須です。
残念ながら、各種統計からも、日本は①個人が学ばない、②企業が従業員の育成に投資しないことが指摘されています。こうした現状を打破するために、当社グループは、企業の組織・人材要件に応じた「次世代経営人材育成」を目的とする教育、研修のバリエーションを大幅に拡充し、顧客企業への価値提供を強化する方針です。
具体的には、大幅な組織改編を実施し次世代経営人材育成にフォーカスした体制を整備します。また、人的資本経営重視への動きをみせる顧客企業の人事教育制度そのものに当社グループが提供するマネジメント教育のプログラムが採用されるよう、コンテンツとオンライン教育システムのバリエーションの拡充と品質の更なる向上を通じて当社グループのオンライン型マネジメント教育事業の一層の普及を図り、収益拡大に努めてまいります。
③ 次世代型オンライン教育プラットフォームの開発
当社グループが、今後オンライン型マネジメント教育事業の業態拡大を目指すためには、オンライン教育プラットフォームとコンテンツの親和性が非常に重要なものとなります。今後は独自で設計開発してきたオンライン教育プラットフォームである“AirCampus®”に、AIやデジタル技術を活用した機能強化を促進し、AI革命後の時代にふさわしい「学び舎(AirCampus)」「図書館(AirSearch)」として進化してまいります。
また、アオバジャパン・インターナショナルスクールは、国際バカロレア機構(IB)が主導するIB-DPのオンラインパイロット事業の事業者に、アジア太平洋地域で初めて選定されました。2025年度は本格展開期であり、これまでの当社のオンライン教育の運営ノウハウを活かし、積極的に国内外において同事業の展開に努めてまいります。
④ 人材の確保と育成
当社グループの事業拡大には、優秀な人材の確保と育成が欠かせません。当社グループでは、目的達成のために主体的かつ積極的に行動できる起業家的な人材の確保、当社グループの企業カルチャーと企業ミッションを共有化できる人材の育成が課題と考えております。
⑤ 社会情勢による事業の運営リスクの対応
日本並びに先進国経済は、コロナ禍の影響が安定化へ向かう一方、ロシア・ウクライナ紛争によるエネルギー、食糧、希少金属、半導体を含む供給不足をトリガーとするインフレが継続的に進みました。また、生成系AIが多くの産業・社会活動領域に影響を与えています。当社グループでは、こうした社会的影響を受けることなく、円滑な運営が継続できる対応策を検討し、実施してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、主として「売上高」及び「営業利益」をグループ全体の成長を示す経営指標と位置づけております。また、今後数年間において大きな飛躍を遂げるため、コロナ禍を経た現在において出現・拡大する事業機会の獲得に必要となる先行投資、支出を行ってまいります。
- 検索
- 業種別業績ランキング