総医研ホールディングス
【東証グロース:2385】「サービス業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループの企業理念は「医科学の研究成果を事業化し、人々の健康で安全な生活の実現に寄与する」であり、当社グループは、医学分野における大学の研究成果を人々の生活の身近なところで開花させることによって、人々の健康で安全な暮らしを実現し、医療費の抑制や生活快適性の向上等に貢献することを目指しております。
当社グループは、大学の研究成果を活かして創出するエビデンス(科学的根拠)に基づき、国民の健康の維持及び増進並びに医療資源の効率的活用等に資するサービスや商品を開発し、提供してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、企業としての成長過程にあることに鑑み、安定的かつ継続的な成長を確保するための事業基盤を強化しつつ、事業規模の拡大を通じて企業価値を高めることを経営上の目標としております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
国民の健康意識の高まりや医療の適正かつ効率的な運用を目指す「EBM」(Evidence Based Medicine=科学的根拠に基づく医療)の概念の普及にともない、医薬、食品、化粧品、ヘルスケア関連サービス等の様々な領域において、エビデンスを求める流れが強まっております。同時に、超高齢化社会を迎え、慢性疾患の増加によって、医療資源の逼迫、医療費の増大は大きな社会課題となっております。こうした課題の解決に重要な役割を果たすものは、WHO(World Health Organization=世界保健機関)が「個人が自らの健康を維持・増進し、軽度の疾病・症状を自己判断で治療するために医薬品等を適切に選択・使用すること」と定義するセルフメディケーションであると考えております。セルフメディケーションは①医療資源の持続性、②医療費抑制、③予防医療の促進による国民のQOL向上という三つの社会的価値を生みます。これらの実現には「正確な健康情報」、「適切な医薬品・機能性食品利用」、「行動変容支援」の三位一体のアプローチが必要であり、医療DXはこれらを①健康情報のアクセス向上、②データに基づく健康管理、③オンライン医療の普及によって加速させる鍵となります。
当社グループは、高度な医学的背景と研究開発力、エビデンスの取得や権威付けのノウハウや経験、医師及び各種の医師組織とのネットワーク、大学発企業としての中立性・公益性等の特長を活かし、セルフメディケーション商品の開発及び販売、予防から治療、健康リテラシーの向上までをサポートする「総合ヘルスケアプラットフォーム」の構築に注力し、国民の健康の維持及び増進並びに医療資源の効率的活用等に資するサービスや商品を開発し、提供してまいります。
具体的な戦略は次のとおりであります。
① エビデンスの取得、構築及び活用に向けた事業の推進
当社グループは、長年にわたり主にトクホの許可取得を目的とした食品の評価試験や市販後調査、疲労プロジェクト等を通じて、エビデンスの取得、構築及び活用に向けた事業を行ってまいりました。当社グループでは、これまでに培ったノウハウや経験、インフラ等を活用し、当社グループの特長を発揮できる事業領域として、今後ともこれらの事業に注力してまいります。
② エビデンスに基づく独自性のある商品の開発及び販売
疲労プロジェクトは、「疲労」を客観的に定性化・定量化するための評価システムを確立し、これまで適正な評価方法が無かったために有効性を評価することが不可能であった抗疲労候補成分等について、その効果を検証することによって抗疲労トクホ及び抗疲労医薬品を世に送り出すことを目指すものであります。疲労プロジェクトの成果につきましては、当社グループの日本予防医薬㈱を含め、既に複数の参加企業が、臨床試験の実施等を経て事業化に成功し、商品の発売に至りました。
また、疲労プロジェクトで創出された製品である「イミダペプチド」は、2015年4月に施行された機能性表示食品の届出が受理され、「日常の生活で生じる身体的な疲労感を軽減する」という機能性を表示することができる我が国で初めての製品となりました。
当社グループでは、今後とも、「イミダペプチド」と同様、当社グループの特長であるバイオマーカー技術やノウハウ等を活かして、食品・製薬企業等と共同で臨床的メリットに富む独自性の高い健康補助食品や化粧品等を開発し、エビデンス構築と権威付けのための医学界や医療機関のネットワークの活用、エビデンスに基づく付加価値の創出や普及活動、販売力のある他社との提携による販売ルートの開拓等を通じてヒット商品に育ててまいります。
③ 総合ヘルスケアプラットフォームの構築
当社グループは、医療DX・健康経営支援を推進し、高齢化や医療従事者不足、海外駐在員の健康不安の深刻化など、医療アクセスを取り巻く課題が多様化する中、オンライン健康相談サービス、オンライン診療サービス、疾病管理サービス、セカンドオピニオンサービス、郵送検査、PHR(Personal Health Record)の活用を組み合わせ、健康補助食品、OTC医薬品、漢方薬、機能性化粧品の販売を統合したセルフメディケーションサービスを展開し、「いつでも、どこでも、自分に合った医療と健康サポートを受けられる総合ヘルスケアプラットフォーム」の構築を進めてまいります。この「総合ヘルスケアプラットフォーム」は、当社グループが保有する専門医のネットワークの活用、ヘルスケアサポート事業における健康保険組合等の健康経営を重視した顧客層、フェムケア機能性素材であるラクトフェリンや疲労感軽減の機能を保有するイミダペプチドなどの素材を含め当社グループのヘルスケア関連ノウハウとオンライン健康相談サービスを提供する株式会社Medifellow、女性特有の健康課題に対応した法人向けヘルスケアアプリWellflowを提供するFlora株式会社など様々な資本又は業務提携先のサービスを連携させ、さらにコンテンツを充実させることで唯一無二のプラットフォームとして事業展開を図ります。
④ 海外展開
当社グループでは、2019年2月に中国の流通企業である杭州高浪控股有限公司(現高浪控股股份有限公司)との間で資本業務提携を実施し、化粧品事業において中国市場での事業展開を行っておりました。化粧品事業は、中国市場から撤退し、国内市場における主力製品であるプラセンタ製品に注力する方針としておりますが、高浪控股股份有限公司のグループ会社であるGlobal Beauty Technology株式会社との間で、中国を中心としたアジア市場に向けたサプリメント等の健康補助食品の製造等及び購買に関する製造等委託購買基本契約を締結し、中国をはじめとするアジア市場において、EC販売等のノウハウ及び販路を保有する高浪控股股份有限公司グループと共同にて、アジア市場のニーズに即した新たな健康補助食品の開発を行い、アジア市場での健康補助食品事業の販路拡大を図ってまいります。
⑤ 戦略的なM&A及び業務提携等の推進
当社グループは、各事業においてこれまで様々な外部の主体との業務提携等を推進してまいりました。
当社グループでは、今後も、既存事業の事業領域の拡大及び総合ヘルスケアプラットフォームの構築に向けて、医療DXを中心としたヘルスケア事業領域における積極的なM&Aでの買収による事業拡大、総合ヘルスケアプラットフォームにおけるコンテンツの充実のための業務提携等、各事業でのシナジー効果が期待できる企業等との間で戦略的なM&A及び業務提携等を行い、業容の拡大及び経営資源の最適配分等を図る方針であります。
(4)優先的に対処すべき事業上の課題
当社グループは、2024年6月期において、化粧品事業の大幅な減収や健康補助食品事業の収益率の低下を主要因として、経常損失を計上し、厳しい経営環境となりました。
この状況に対し、当社グループは、2025年6月期を「構造改革」の連結会計年度として位置づけ、新経営体制のもと、将来の持続的成長に向けた研究開発や新サービス構築などの先行投資を積極的に実施しながら、グループ全体の収益性改善に取り組んでまいりました。根幹たる「エビデンス」を様々な領域で構築、活用することにより、人々の健康で安全な暮らしを実現し、医療費の抑制や生活快適性の向上等に貢献することに立ち返り、これまでの医療界・医学界との幅広いネットワークを活かし、抗疲労事業やフェムテック事業の領域への事業展開に向けて研究開発に注力する方針として、資本業務提携や共同開発などの取組みや新たなバイオマーカーやラクトフェリンの更なる活用に向けた研究開発等を行うとともに、化粧品事業及び健康補助食品事業における販売促進・広告宣伝の費用対効果の向上や当社グループ全体の収益性改善に取り組んでまいりました。
構造改革は着実に進展しており、その成果として複数の事業で営業利益黒字化を達成しました。あわせて、連結業績における営業損失も大幅に縮小しており、収益性の改善は確実に進んでおります。当社グループは今後、「選択と集中」を方針として、構造改革の継続とともに医療DXを中心としたヘルスケア事業領域への経営資源の集中を図ってまいります。
① 研究開発投資
当社グループの原点である「医科学の研究成果を事業化し、人々の健康で安全な生活の実現に寄与する」という経営理念に立ち返り、これまでも取り組んでまいりました疲労プロジェクトを基礎とした抗疲労領域及び機能性素材開発事業におけるフェムテック領域において更なる研究開発投資が重要と考えております。こうした研究開発投資によって、新たな製品の開発を進めてまいります。
これらの研究開発においては、大学の研究成果の導入が不可欠であり、大学との関係性の維持・強化が重要であります。従来からの大学及び大学研究者との良好な関係の継続、大学における研究成果を導入した事業展開を行ってきた実績に基づく精力的な大学への働きかけを継続して実施してまいります。
② 総合ヘルスケアプラットフォームの構築
当社グループは、医療DXを中心とした「いつでも、どこでも、自分に合った医療と健康サポートを受けられる総合ヘルスケアプラットフォーム」の構築を進める方針であります。当該プラットフォームの構築に際しては、データセキュリティとサイバーセキュリティの確保、エビデンスに基づくアルゴリズム設計、プライバシー保護、薬機法等の医療関連法令や規制への適合のみならず、十分な倫理的配慮も必要であり、法令遵守を徹底してまいります。
③ 知的財産権への対応
当社グループでは、研究開発の成果として生ずる成分や製品等について、大学研究者等との共同又は当社グループ単独にて特許権その他の知的財産権を取得することにより、その権利の確保を図っております。また、当社グループの事業に必要な大学研究成果が当社グループ以外で利用されることを防ぐため、当該研究成果について、一定の対価を支払う代わりにその特許を受ける権利の一部を譲り受け、発明者と当社の共同で特許を出願することも行っております。また、国内外ともに、当社グループが有する独自性の高い製品の模倣品による被害を防ぐため、商標登録、意匠登録等を適切に行い、権利保全を図る必要があります。
以上のようなことから、当社グループは、引き続き知的財産権を戦略的に取得又は活用してまいります。
④ 人材戦略及び組織体制の最適化
当社グループは、「選択と集中」を方針として、構造改革の継続とともに医療DXを中心としたヘルスケア事業領域への経営資源の集中を図るために事業ポートフォリオの見直しを実施します。事業ポートフォリオの再構築は、医療DXを中心としたヘルスケア事業領域への集中に加えて、中国市場に大きく依存した化粧品事業を縮小し、また、既存の健康補助食品事業をセルフメディケーション支援通販事業として強化を図るなど大幅な変更となります。事業ポートフォリオの再構築のタイミングにおいて、人的資源の最適化を図り、効率的な事業運営体制を構築するとともに、グループ全体として大きな転換期を迎える中、既存の各社員のライフプランにおける新たなキャリアの支援の一環として希望退職制度を実施し、人的資源の最適化を図り、効率的な事業運営体制を構築してまいります。
⑤ 医療機関ネットワークの拡充及び整備
当社グループでは、特定保健指導の受託等におきまして、医療機関とのネットワークを重要な事業基盤としております。
当社グループでは、医療機関ネットワークのさらなる拡充に加え、構築した医療機関ネットワークを効率的に運用するためのインフラの整備も進めてまいります。
⑥ M&A・業務提携の推進
当社グループは、医療DXを中心としたヘルスケア事業領域における積極的なM&Aでの買収による事業拡大、総合ヘルスケアプラットフォームにおけるコンテンツの充実のための業務提携の推進を方針としており、シナジーを生み出す候補企業又は候補事業のリサーチ、リストアップを迅速に実施する体制を構築し、対象となる企業又は事業に適切なアプローチを行うことで、M&A・業務提携を推進してまいります。
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