高砂熱学工業
【東証プライム:1969】「建設業」
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企業概要
当連結会計年度の研究開発活動は、その活動テーマを「建物の環境を創る」、「地球の環境を守る」、「新たな環境に挑む」、「地域環境に貢献する」の3+αの柱を掲げ、脱炭素社会の実現、地球環境保全、生産性向上・働き方改革、その他多様な顧客ニーズに応える技術と商品の創出に注力してまいりました。
具体的には産業空調向け省エネ技術の開発、再生可能エネルギー・未利用エネルギー利活用技術の開発、資源循環型利用技術の開発、高砂熱学イノベーションセンター導入技術の性能向上・検証に取り組んでおります。
特に脱炭素の推進への寄与が期待される水素エネルギー利用技術を重要開発課題と位置付け、関連する技術開発、事業開発を継続して推進しております。
2020年より運用開始した高砂熱学イノベーションセンターにて、導入した当社独自の空調システムや省・創・蓄エネルギーシステムの継続的な運用改善に取り組みました。その結果、オフィス棟でZEBを継続して達成いたしました。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は、2,971百万円でありました。
セグメントごとの主な成果は、次のとおりであります。
(設備工事事業)
(1)水素エネルギー利用技術
これまで20年以上にわたり建築設備向け水素利用システム開発で培ってきた技術を基に上市しました水素製造用水電解装置は、順調に市場展開しております。当社製水電解装置と太陽光発電、二次電池、燃料電池を融合して構築した北海道石狩市の厚田地区マイクログリッドは、運用事業の開始から3年間順調に需要家に電源供給を行いました。引き続きグリッドのさらなる運用改善に取り組んでまいります。
また、水素社会実現を加速化することのできる大型水電解装置(メガワット級)の開発は、2025年の市場投入にあわせ商品機の設計を完成させました。将来の受注増に対応すべく、装置製造体制の整備等を進めております。
さらには、将来の月面経済圏でのビジネス展開可能性に着目し、月面にあるとされる水を使って燃料となる水素および人が生きていくための酸素を生成するために、「月面環境での稼働を想定した水電解装置」を、宇宙スタートアップ企業の株式会社ispaceが提供する月着陸船に搭載し、月面環境下で世界初となる水素・酸素生成実証実験に挑戦しました。
月着陸船は2025年6月に予定していた月面着陸に至らず、当社は月面での実証実験を行うことはできませんでした。
当社の月面用水電解装置は、打ち上げ後、月着陸船との定期的な通信により、ロケット打ち上げ時の大きな振動や衝撃、急激な圧力低下、宇宙空間の真空・高放射線・無重力といった過酷な環境に約5か月間晒されながら、着陸直前まで健全な状態であることが確認されておりました。当社は月面用水電解装置開発を通じて得た知見を今後の様々な分野の研究開発に活かしてまいります。
(2)高砂熱学イノベーションセンター
茨城県つくばみらい市に新たな研究開発拠点として「高砂熱学イノベーションセンター」を開設し、運用開始から5年が経過しました。「地球環境負荷低減と知的生産性向上を両立したサスティナブル建築」を設計コンセプトとし、再生可能エネルギーの積極的活用による「ZEB」の達成やワークスタイルの変革に対応した多様な執務空間や地域貢献の場の提供を実現しております。
再生可能エネルギー利用として、太陽光発電200kWに加え、北関東圏産の木質チップを燃料としたバイオマスガス化発電80kWを継続して運転している他、大容量蓄電池やグリーン水素による小型燃料電池発電、自社開発のエネルギーマネジメントシステムにより、システムの最適運用を行っております。
研究開発の進捗により使用電力量は増加しておりますが、その受電電力も水力発電由来のグリーン電力とすることによりカーボンフリーを継続して実現しております。また、地下水とバイオマスガス化発電の排熱を利用したデシカント外調機や天井放射空調パネル、パーソナル端末で操作できる個別空調機により、執務者の健康性や快適性を実現しております。
これらの実績が評価され、当連結会計年度には、次の賞を受賞いたしました。
・「コージェネ大賞2024 民生用部門 理事長賞『木質バイオマスCHPと 太陽光発電・蓄電池を組合せた サスティナブルなエネルギー需給システム ~ 高砂熱学イノベーションセンターへの導入事例 ~』」(一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センター)
(3)カーボンニュートラル事業開発部
当連結会計年度において、設置後3年目を迎えたカーボンニュートラル事業開発部による取組みは、当社が保有する環境技術を活用して、カーボンニュートラル実現に向けた取組みを進める自治体・企業や先端技術を持つ学会・スタートアップなどと連携し、水素を軸にクリーンエネルギーを「つくる・ためる・つかう」領域を「ツナグ」ビジネスモデルの構築を目指しております。
新たな事業への取り組みとして、パートナー企業とともにキリンビール北海道千歳工場にて、2026年6月より同社が利用する化石燃料由来の都市ガスをグリーン水素へエネルギー転換する実証事業を開始する予定です。期間は10年間を予定しており、グリーン水素へのエネルギー転換によるGHG排出量削減効果や技術的な課題を検証予定です。
この他に当社は三菱商事株式会社、北海道電力株式会社及びエア・ウォーター北海道株式会社の4社コンソーシアムにより北海道千歳エリアにおけるグリーン水素供給に向け共同検討を行っており、グリーン水素サプライチェーンの実現を目指しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費(設備工事事業関連)は、2,747百万円でありました。
(設備機器の製造・販売事業)
2022年度から開発を継続している新たな空調機で2024年度に取り組んだのは大きく2種類、全6機種のシリーズです。2種類のうち、一つは既存機種のASPACシリーズをベースにした空冷一体型空調機、もう一つはPAFMACシリーズをベースにしたハイブリッド型空調機となります。昨年度リリースした空冷一体型空調機で、換気ができる体育館用空調システム「フレッシュクール」は今年度納品を開始しました。2024年度、新たに着手した製品開発としては、現在販売している二次側空調機へ熱源水を供給するための熱源機開発及び熱源機を含めた空調システム全体をコントロールするための監視制御システムの開発です。建物の空調システム全体をPMACの機器だけで完結できるオールピーマックシステムの完成を目指しております。これらの新規開発製品は2025~27年度中の製品化を目標に開発を継続中です。
また、既存製品については環境性能を向上させるべく、使用している冷媒を地球温暖化係数(GWP値)の低い冷媒へ改良開発を全機種進めており、2025年度は5機種を製品化予定です。
なお、当連結会計年度における研究開発費(設備機器の製造・販売事業関連)は、224百万円でありました。
(その他)
該当事項はありません。
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