長谷工コーポレーション
【東証プライム:1808】「建設業」
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企業概要
我が国の経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに改善しており、先行きについては雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待される一方、インフレ・金利動向のみならず、米国の通商政策、緊迫化する国際情勢、それらに伴う国内経済への影響についても注視していく必要があります。建設業界においては、安定した建設需要に支えられている一方、資材・労務費の高騰、時間外労働の上限規制の適用による働き方改革への対応、建設技能労働者や設備業者等の減少・後継者不足といった構造的な問題、脱炭素への取り組みなど課題は多く、また、上場企業に向けられた社会や投資家からの要請についても真摯に向き合っていく必要があります。
2024年度のマンション市場においては、新規供給戸数は首都圏、近畿圏共に3年連続で前年度を下回り、首都圏では2万2,239戸、近畿圏は1万5,711戸となりました。2025年度の新規供給戸数については、再開発物件や大規模物件の発売が予定されていることから、首都圏は前年度を上回り、近畿圏では前年度並みで推移すると思われます。また、首都圏、近畿圏共にマンション価格の上昇傾向が継続し、2024年度の平均価格は首都圏では8,135万円と過去最高値となり、近畿圏でも5,065万円と1991年度(5,464万円)以来の高水準が続いています。
2024年度の販売状況は、物価やマンション価格の上昇に対し、変動型住宅ローン金利の低位継続、賃上げによる購入マインドの下支えなどにより底堅く進捗しました。2025年度は、不確実性が高まる景気や金融政策の動向について、これまで以上に注視していく必要があります。
中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan(略称:NS計画)」の最終年となる2025年3月期において連結経常利益は834億円となりました。NS計画全体を振り返ると、コロナ禍という急激な環境変化に見舞われ、一時的な落ち込みはあったものの、建設関連事業においては当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等についてお客様や事業主様から評価をいただき、施工中工事高は右肩上がりで増加しました。一方、資材・労務費の高騰等の影響を受け、完成工事総利益率は低下しました。不動産関連事業・サービス関連事業においては各社の業績が好調に推移したことで、着実に利益を積み重ねることができました。物価上昇を上回る賃金アップを念頭にした処遇改善による人件費上昇を吸収しながら、計画数値である2025年3月期の連結子会社経常利益300億円以上、5期合計連結経常利益4,000億円を達成し、また年間配当額の下限を80円(2025年3月期は配当85円)とすることで、株主還元の充実も行ってまいりました。
サステナビリティに関する取り組みとしては、長谷工グループ気候変動対応方針において温室効果ガスの排出量削減目標を設定し、SBT(Science Based Targets)イニシアチブより認定を受けております。2023年5月には当社建設現場の使用電力100%再生可能エネルギー化を実現し、2025年末には、当社グループ全ての建設現場の使用電力も再生可能エネルギー化する予定です。その他にも環境配慮型コンクリートなど環境負荷を低減する施工技術の開発・導入や、自社開発分譲マンション・自社保有賃貸マンションのZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化、マンションの木造化・木質化の推進など、当社グループ全体で企業価値向上を目指しながら、持続可能な社会の実現に貢献しております。また、人権尊重の考え方を明確にするとともに、企業として人権尊重に対する責任を果たしていくため、2022年1月に策定した「長谷工グループ人権方針」に基づき、グループ内での浸透を図るとともに、サプライチェーンも含めた人権デュー・ディリジェンスを継続的に実施しております。さらに、多様な人々の活躍については、2023年4月に当社内にD&I推進室を立ち上げ、これまでの女性活躍の取り組みを継続して進めていくとともに、「個性活躍」をキーワードとして、多くの社員が働きがいをもって生き生きと活躍できる環境づくり・環境整備にも取り組んでおります。社会課題の解決に取り組みつつ、将来の成長に向けた取り組み、成長戦略投資も実施してまいります。
なお、当社の連結子会社である㈱長谷工リフォームが、大規模修繕工事の受注に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、2025年3月、公正取引委員会による立入検査を受けました。当社といたしましては、この事実を厳粛に受け止め、公正取引委員会の調査に全面的に協力しております。
長谷工グループ 企業理念・ありたい姿・中期経営計画における基本方針・行動指針
■企業理念
都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。
■ありたい姿
環境に配慮した、安全で安心な「住まい」と豊かで快適な「暮らし」を国内外に提供し続ける。
■中期経営計画における基本方針
「住まい」と「暮らし」のリーディングカンパニーとして、持続的な成長と企業価値向上を実現する。
■行動指針
あらゆるステークホルダーの期待に応えるため、自信と誇りを持ち、総合力と行動力で進化し続ける。
E・S・Gすべての観点から社会的責任を全うすることで、事業活動そのものを通じて持続可能な社会の実現に貢献する。
中期経営計画概要
・計画名称 長谷工グループ中期経営計画(HASEKO Evolution Plan)
~次なる進化へ向けて~
・計画期間 2026年3月期~2031年3月期
■ありたい姿の実現に向けた事業戦略
①建設関連事業の更なる伸長と深化
・持続的な生産体制の構築
・施工領域の拡大
・修繕・メンテナンス工事業の拡充
②不動産関連事業の拡充と質的向上
・資本効率向上への取り組み
・商品開発力による差別化
・新たな領域への拡大と挑戦
③管理運営事業の成長
・新たな管理手法や居住者サービスの開発
・DX推進による業務改革
・シニア向けサービスの拡充
④海外事業の収益化
・将来の国内マーケット縮小に備え、収益の柱の一つに育てる
・各国の住宅事情に合わせて、建設・不動産・管理運営の各事業から最適な分野の進出を検討
⑤新たな領域への挑戦
・生産機能と商材の拡充
・社会課題解決型ビジネスへの取り組み
・新規事業創出に向けた土壌づくり
■経営基盤強化
①財務戦略
・資本コストを意識しながら、持続的な成長に向けた積極投資を継続
・負債と資本を適切にコントロールし、安定的な株主還元を実施(総還元性向50%程度)
・6か年合計ネット投資額 4,000億円
・国内不動産 1,200億円
・海外不動産 400億円
・建設関連・R&D 1,000億円
・DX関連 400億円
・新規事業、M&A等 1,000億円
・D/Eレシオ1.0倍以下を意識しつつ、有利子負債を活用
②技術開発の強化
・木質化の推進
・ストック分野、リノベーション技術
・災害激甚化への対策
③DXの加速
・設計施工情報のデジタル化とAI活用
・グループデータ共有基盤の構築と活用
・持続的成長に向けた人材育成とチャレンジ領域
④サステナビリティへの取り組みの深化
・気候変動対応
・温室効果ガス(CO2)排出削減計画の策定・実行
・建設作業所やオフィス等における取り組み
・低炭素施工や脱炭素住宅の拡大に向けた取り組み
・人的資本経営の充実
・要員確保、組織力強化
・働き方改革・D&I・健康経営
・処遇・人事制度
・人材育成・キャリア形成
・人権の尊重
・人権デュー・ディリジェンス
・増加する外国人労働者への配慮
・サプライチェーン・マネジメント
・CSR調達ガイドライン
⑤コーポレート機能の強化
・コーポレートガバナンスの更なる強化
・ステークホルダーとのコミュニケーション強化
・管理部門の生産性向上と機能強化
■経営目標・株主還元方針
<経営目標>
2028年3月期 連結経常利益 1,000億円以上
2031年3月期 連結経常利益 1,300億円以上
安定的に1,000億円以上を計上できる収益基盤の確立
ROE 10%を上回る水準を維持し、2031年3月期までに13%程度を目指す
<株主還元方針>
6期合計の総還元性向50%程度
計画期間内における累進配当の実施
必要に応じ、機動的な自己株式の取得
■持続的な企業価値向上に向けて
①市場評価向上への取り組み
・成長戦略投資
・安定的な株主還元の実施
・サステナビリティへの取り組みの深化
・ステークホルダーとのコミュニケーション強化
②ROE向上への取り組み
・収益力の向上
・資本効率の向上
③非財務KPI設定(気候変動対応、人的資本、人権の尊重、サプライチェーン・マネジメント)
※なお、将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
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