INPEX
【東証プライム:1605】「鉱業」
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企業概要
① 経営環境
2022年以降、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の不安定化に伴い、「エネルギーの安定供給」の重要性が再認識されています。また、大幅な円安や物価のインフレーションの傾向に加え、将来の国際通商ルールの変更、自然災害・紛争等のリスクについても考慮しておく必要があります。
気候変動対応の観点からは、世界では、2050年ネットゼロ実現に向けた野心的な目標を堅持しながらも、各国の置かれた固有の状況や技術進展の度合いを踏まえ、経済合理性やエネルギーの安定供給との間でバランスを取る現実路線への転換が進んでいるという認識です。中長期的なエネルギー需要の視点に目を向けると、世界の人口の拡大、新興国を中心とした経済成長等により、エネルギー需要が持続的に増加する基調は変わらないものと想定しています。石油・天然ガスのうち特に天然ガス需要については、中長期的にもアジアを中心に堅調な需要が見込まれています。
日本では、第7次エネルギー基本計画が示され、エネルギー政策の大前提はS+3E(安全性の確保(Safety)、エネルギー安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合性(Environment))であり、これらの最適なバランスを追求していくことがエネルギー政策の基本的視点であることが再確認されました。同計画において、石油・天然ガスの自主開発比率目標は、第6次エネルギー基本計画の目標水準(2030年に50%以上、2040年には60%以上)が維持されており、引き続き自主開発の更なる推進が必要です。
このような状況下、当社としては、事業環境を考えるうえで特に以下の3つの点を考慮に入れて経営に取り組む必要があると考えています。
天然ガス/LNGの重要性が高まること:
ネットゼロへの移行過程において、天然ガス/LNGは他の化石燃料と比較してGHG排出原単位も相対的に小さいため、「現実的な移行期の燃料」として重要性が高まっていくものと考えています。
多様な低炭素対策を並行して進める必要があること:
ネットゼロへの移行には、地域ごとの事情や移行の段階に応じて適切な手段を選択することが重要です。再生可能エネルギーの導入を推進することに加えて、既存の石油・天然ガス生産施設へのCCS導入や、水素/アンモニアを活用していくこと等も、現実的なエネルギー・トランジションのための道筋となると考えています。
ネットゼロを見据えたエネルギー供給システムの強靭化と高度化が必要であること:
発展途上国での電力需要増加に加え、先進国でも半導体製造やAI需要により電力消費の再増加が予測されています。また、再エネの導入拡大に伴う需給調整の課題から、電力供給システムの高度化が必要となっており、そのために必要となる鉱物や希少資源の重要性も高まっています。
② 経営方針
当社は、2025年2月に「INPEX Vision 2035 『責任あるエネルギー・トランジションの実現』」(以下、「INPEX Vision 2035」)を発表しました。「INPEX Vision 2035」では、上述の経営環境認識を踏まえつつ、2035年に向けた当社の長期戦略を示すとともに、2025年から2027年までの3年間の中期経営計画を策定し、当面の具体的な取組みと目標を示しています。
2050年ネットゼロ社会実現に向けて現実的な解決策を探る国内外の様々な動きは、当社にとって、更なる飛躍の機会と捉えています。今後、当社はこの「INPEX Vision 2035」に基づき、我が国及び世界のエネルギー需要に応えるべく取り組んでまいります。
<INPEX Vision 2035>
1.2035年に向けてINPEXが実現していくこと
▶ 既存プロジェクトの一層の強化
安全・安定操業を最優先し、エネルギーの安定供給と同時に、株主還元・成長投資の原資を確保します。
▶ 収益基盤拡大と2050年ネットゼロに向けた前進
「現実的な移行期の燃料」としての天然ガスの供給力強化を軸に、相乗効果/補完効果が期待できる低炭素分野や電力関連の新たな取組みを強化し、収益基盤を拡大すると同時に2050年ネットゼロに向けて前進します。
コアエリアを中心に事業基盤を拡大し、業績の成長にあわせて株主還元を拡大していきます。
2.前Vision/前中期経営計画からの進化
▶ 引き続き2050年にネットゼロを目指します。
▶ 5つのコアエリアに加え、北米で低炭素化ソリューションや電力関連分野の事業機会を追求します。
▶ 前Vision/前中期経営計画期間における成果を踏まえ、2035年時点の事業規模拡大と低炭素化にインパクトのある貢献を見込む分野に注力し、分野間のシナジーを意識した実行方法に進化させます。
3.2035年にありたい姿:60-60を目指して
▶ 事業規模の60%拡大
イクシスの生産開始やアブダビでの事業拡大を通じて過去10年間で大きく成長を遂げました。アバディやイクシス拡張といった仕掛中案件を実現することにより、次の10年も成長を続けます。
▶ GHG排出原単位の60%削減
生産プロセスの見直し等の努力を積み上げることでGHG排出原単位を確実に削減してきました。次の10年は、CCSを通じてインパクトのある削減を実現すると同時に、社会全体の低炭素化へ貢献していきます。
4.2025-2027年の資金配分
▶ 過去3年間で有利子負債の削減が進んだことから、2025~2027年の3年間では、成長投資と株主還元を一層強化してまいります。
▶ 成長投資においては、株主価値拡大に貢献する案件に絞り込んだ上で投資します。
5.2025-2027年の株主還元方針
▶ 1株当たり年間90円を起点とする累進配当を実施します。
▶ 事業環境や財務/経営状況を踏まえつつ、累進配当をベースに機動的な自己株式取得も行うことで、総還元性向 50%以上を目指します。
6.2025-2027年の主要経営指標の目標値
▶ プロジェクトの安全で安定な操業を継続し、確かな収益基盤を維持します。
▶ アバディをはじめとした複数のプロジェクトを中期経営計画期間中にFIDし、2030年代の飛躍のための足場固めを行います。
▶ 持続的に株主還元を強化するとともに、事業の進捗状況をタイムリーかつ積極的に開示します。
7.気候変動対応の基本方針
▶ パリ協定目標¹を支持し、低炭素社会の実現に貢献すべく、以下の目標を定めます。
なお、本項の記載中、将来に関する事項については、別途記載する場合を除いて本書提出日現在での当社グループの判断であり、今後の社会経済情勢等の諸状況により変更されることがあります。
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