nmsホールディングス
【東証スタンダード:2162】「サービス業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、「ニッポンのモノづくり品質を世界へ」をキーワードに、ともに成長をめざすという『経営理念』のもと、HS事業(人材ビジネス事業)・EMS事業・PS事業(カスタム電源事業)の3つの事業セグメントを国内外で事業展開しています。
この多様化した事業構造は、お客様に新たな価値を提供するための源泉となるものであり、当社グループの特長です。これをさらに進化させ、変化に対し柔軟かつ機動的に対応できる基盤を強化し、企業価値・株主価値のより一層の向上を図るため、2017年4月より持株会社体制へ移行しました。
当社(持株会社)の経営方針は以下のとおりです。
① グループ経営と事業執行の分離による意思決定スピードの向上・責任の明確化
② 事業間のシナジーの追求
③ 成長戦略としての迅速なM&A・グループ再編の実行
④ 間接部門の重複業務集約や事務効率改善によるコストの最適化
⑤ グループ各社の事業特性に応じた効率の良い事業運営と、グループ全体で高いパフォーマンスを発揮でき
る基盤づくり、この両輪による持続的成長の実現
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
ウクライナ情勢の長期化や中東情勢による地政学リスクの高まり、世界的なインフレの進行や中国経済の低迷に加え、米国政権交代による保護主義政策強化の動きやこれに伴う生産地域の見直しの動きなど、世界経済の先行きは依然として不透明な状況が続いています。
当社においては、当連結会計年度において小野文明氏による不適切な経費の使用等の不正事案が明るみとなりました。当社は、本不正事案を厳粛に受け止めるとともに、健全な体質へ転換する好機と捉え、当社グループの企業価値向上に向けて再出発を切るべく、2025年5月15日、2025年度から2027年度を対象とする、新たな中期経営計画(以下「本中期経営計画」といいます。)を策定し、その取り組みを進めてまいります。
目標経営数値としては、本中期経営計画最終年度となる2027年度において、営業利益50億円超を計画するとともに、運転資金マネジメントを強化し、フリーキャッシュ・フロー80億円規模の創出、有利子負債50億円削減、自己資本比率20%、ネットD/Eレシオ1.5倍を目標とし、その実現をめざします。
(3) 経営戦略、事業上及び財務上の対処すべき課題
<私たちの約束(中期経営方針)>
◆株主の皆様の利益を追求し、誠実な会社に生まれ変わります ◆さまざまな形で社員還元を行い、当社グループに集う人材が豊かさを実感できる会社に生まれ変わります ◆外部環境の変化に強い体質へ強化し、着実に利益成長することでステークホルダーの皆様の期待に応えます |
本中期経営計画では、上記方針のもと、目標経営数値達成に向けた重点実施事項として、次の4点を掲げ、その取り組みを進めております。
① 事業の成長に加え、商材/市場のポートフォリオ見直しや投資効率改善、不採算拠点の整理等を行い、運転資金マネジメントの実効性を上げ、利益体質を強化する
② 有利子負債の削減で財務体質改善を進めるとともに利払い額を減少させ、最終利益増加を図る
③ 株主還元は、有利子負債削減を進めながら、この中計期間は30%前後の配当性向とし、最終利益の増加で配当額の成長をめざす
④ 成長の源泉である人材の定着に向け、さまざまな形で将来設計ができるしくみをつくり、事業競争力を強化する
● 成長実現に向けた事業戦略
1)HS事業(ヒューマンソリューション事業:人材ビジネス事業)
人材ビジネス事業は、数年にわたり請負・受託比率の増加、営業力の強化、シニアエキスパート人材、海外人材、とさまざまな施策を手掛けてきましたが、業績への貢献は限定的な状況が続いています。また、海外事業においては、2011年以降、優先的に経営資源を投入してきたものの、未だ成果の現れていない拠点(インドネシア、カンボジア)もあり、運転資金が流れつづけている状況であり、現状打破が課題となります。
この現状打破の鍵となるのが、株式会社ワールドホールディングスとの業務提携となります。
常に事業環境が変化する中、マクロ環境の影響を受けやすい人材ビジネスにおいて、株式会社ワールドホールディングスと提携し、株式会社ワールドホールディングスの持つビジネスエリア、採用インフラ、市場分野等、さまざまな経営資源と、当社グループの持つ海外人材の採用や運用といった強みを掛け合わせることで、トップライン成長をめざすとともに、業務効率改善、不採算取引の見直し等により運転資金マネジメントを強化し利益率の向上を図ります。
人材ビジネス事業は、2025年度より「Reborn」を掲げ、始動しました。課題を成長への機会と捉え、新たな成長を実現し、「新生・nms」として強みを磨き、事業価値を上げていきます。
2)EMS事業(エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス事業)
EMS事業は、グローバル生産体制を確立すべく、戦略投資を行ってきたベトナム拠点、米国・メキシコ拠点は、コロナ禍や部材価格高騰などの厳しい環境を経て、ベトナム拠点につづき、米国・メキシコ拠点においても2024年度に営業利益黒字化への転換を実現しました。米国・メキシコ拠点は、米国政権交代による保護主義政策強化に伴う関税影響の見通しが難しい状況ですが、以前から導入している「マキラドーラ制度」(保税委託加工)の活用に加え、米国での生産ライン立ち上げも選択肢とし、事業影響を最小化すべく対応を行ってまいります。また、ベトナム拠点では、新規ビジネス立ち上げにあたり、お客様の現有の設備を活用し、初期投資を抑えつつ、必要な技能習得を行うなど、お客様との機能分担でビジネスエリア・参入市場の拡大を図る仕組みも取り入れています。
当社グループのEMS事業は、ASEAN地域に複数拠点を有しており、お客様のニーズに応じ生産拠点をグループ内で移管可能な環境を有しています。All Asia生産体制「TKRアジア」の枠組みを戦力化するとともに、米国・メキシコ事業で実績を積み上げ、新市場開拓を進めます。得意とするところに経営資源を投入し、あえてハイエンド市場を狙わず、大手製造業が持っていないアナログ技術を駆使し、ミドルレンジ市場で必然性のあるビジネスを追求してまいります。
3)PS事業(パワーサプライ事業:カスタム電源事業)
カスタム電源事業は、市場の成熟化が進む複合機・複写機などドキュメント関連市場向けを主軸としており、市場自体の継続的な成長を見込むことが難しい状況にあります。その一方で、電源製品自体は、技術的な参入障壁が高く、かつ、「脱炭素社会の実現」を背景とした産業機器の電動化のニーズは根強く、ここに商機があるものと見ています。主軸のドキュメント関連市場で確実に収益を上げながら、スマートファクトリーやロボティクス、医療・健康用機器、再生可能エネルギー関連等をターゲット分野として新規開発・新規量産ビジネスを展開することで、収益力の強化を図っていきます。
また、カスタム電源事業では、事業競争力を強化すべく、開発の高度化と生産拠点体制の整備を行っています。営業及び開発拠点として、松阪本社(三重県松阪市)、松阪工場(松阪本社敷地内)に加え、2023年5月からは、神奈川県横浜市に営業拠点を併設したR&Dセンターを開設しました。
生産拠点は、中宝華南電子(佛山)有限公司(中国・広東省)がありますが、2024年より新たに外部EMS企業を活用し、ベトナムでの生産もスタートさせています。
さらに、2025年4月からはグル-プ内EMS企業(株式会社志摩電子工業)を傘下に収め、生産体制の拡充も行っています。志摩電子工業の実装技術とカスタム電源事業が有する生産技術、設計開発機能との相乗効果に加え、志摩電子工業のマレーシア生産拠点も活用し、お客様のニーズに幅広くお応えしていく取り組みを進めています。
日本・中国・ASEANでの機動的な生産体制を着実に整えており、設計開発から試作・量産・販売に至る機動力を上げ、多様化するお客様のニーズにお応えし、事業全体の収益性向上を進めるとともに事業規模拡大に向けM&Aも選択肢とし、「Break Through」をキーワードに2027年度までに次の事業の柱を構築すべく対応を進めてまいります。
4)株式会社ワールドホールディングスとの連携
当社は、2025年3月10日付で株式会社ワールドホールディングスと資本業務提携契約を締結し、「両社の強み・弱みを相互に補完しあうベストパートナー戦略」を基本方針として、共通の事業である人材ビジネス事業を中心に、EMS事業及びカスタム電源事業も視野に入れ、広く協力体制を構築することにより、更なる企業価値の向上を実現することをめざしています。
少子高齢化が進む中、人材の確保が課題となりますが、両社共通の事業である人材ビジネス事業では、人材採用インフラの機能強化による多様な人材の確保及び顧客ニーズに応じた人材マッチングや、ビジネスエリアの補完による在籍人数の増加が見込めるほか、ものづくり系事業(EMS及びカスタム電源事業)においても、ものづくりノウハウの融合によるサービスラインナップの強化や、ものづくり人材の育成、高度専門領域を担うエンジニア人材の採用強化に向けた体制の整備が可能となります。
株式会社ワールドホールディングスとの横断的営業体制や、同社のシームレス戦略に基づく相互連携により、当社グループの顧客基盤の強化・拡大を実現するとともに、株式会社ワールドホールディングスにおいても、当社のものづくり系事業における工場運営や品質保証・品質管理などメーカーとしてのノウハウを取り入れることで、人材ビジネスにおける請負・受託の事業基盤強化が図れるものと考えております。
これらを効率よく進めていくため、両社代表をトップとし、業務執行を担う取締役及び任命されたメンバーによる、ステアリングコミッティーを設置し、さまざまな面における実効を上げていく所存です。特に事業親和性が高い人材ビジネス事業においては、即効性のある取り組み、また、中期戦略として実行していく取り組みそれぞれを、効率よく進めてまいります。
● 財務体質の改善
当社は、小野文明氏の不正事案により、金融機関における信用悪化懸念があり、その解消が喫緊の課題となります。株式会社ワールドホールディングスと資本業務提携を行い、企業価値に向けた施策を推進することが、当社信用の補完及び回復につながっていくものと考えています。
また、当社を取り巻く市場環境は、つねに変化することが想定され、今後継続的な成長投資及び事業拡大を進めていくためには、自己資本比率の改善を含め、財務体質の改善が急務となっています。このような背景のもと、2025年3月26日を効力発生日とし、株式会社ワールドホールディングスを処分先とする第三者割当による自己株式の処分(以下、本第三者割当)を実施しました。これにより調達した資金を2025年3月末に返済期限が到来する借入金の返済及び借換え費用へ充当することにより、財務基盤の改善及び資本増強を行い、2025年3月末の連結自己資本比率は 2024年3月末に対し5.2%増加し、14.5%となりました。
本中期経営計画においても、引き続きキャッシュマネジメントを強化し財務体質の改善を進めます。
具体的な取り組みとして、質が伴った事業収益創出基盤とすべく、運転資本マネジメントを強化し、キャッシュを生み出す仕組みの定着を進めます。これらにより、有利子負債の削減を進め、社外流出キャッシュの抑制を図るとともに、投資の採算性、効率性のモニタリングを強化し、投資回収までの効率を高め、フリーキャッシュ・フロー創出への取り組みを強化します。また、業績の変動要因となる、部材調達及び為替変動リスクについては、以下の取り組みを行ってまいります。
① 部材調達リスク
最先端の部材だけでなく、多岐にわたる部品・部材が調達難となる状況を想定し、部材調達リソースの多様化や顧客の生産変動に即応する当社グループのサプライチェーンマネジメント強化し、グループ全体で機動的かつ柔軟に対応できる体制を高度化させる
② 為替変動リスク
外貨建て資産・負債の増減によりグループ各社の為替持ち高(エクスポージャー)の圧縮を進めるべく、金融取引・商取引の双方からの取り組みを推進
● ガバナンスの強化
小野文明氏の不正事案に関し設置した特別調査委員会より、再発防止に向けた提言を受けており、当社は、2024年12月20日付で当該調査委員会の提言に基づく「再発防止策骨子」を公表しています。本中期経営計画期間においても、当該再発防止策を継続的に実行し、役員の規律を強化するとともに、企業倫理向上への取り組みを継続してまいります。
成長の原動力である人材の育成・定着、また、キャリア形成など、人的資本政策は急務であると考えており、再発防止策の実行を通じ、グループ各社の人材との対話やグループ会社間での社員相互コミュニケーション等も行い、事業戦略の推進力を上げる機会を創出していきます。特に、人材ビジネス事業は、当社グループで働く社員なしには成り立ちません。社員還元施策にも力を入れ、事業トップが各拠点を回り、社員と直接対話を重ね、考え方やめざす方向の共有を丁寧に行うなど、今回の不正事案について説明を行うとともに、社員からさまざまな意見を直接聞く等、働きやすい、安心して働くことのできる会社をめざします。企業風土改革は今後の事業成長に欠かせないものであり、グループ一丸となって、継続的に取り組みを進めてまいります。
特別調査委員会提言を踏まえた、2024年12月20日公表「再発防止策骨子」推進状況
提言 | 対象者の影響力を排除ないし減殺する体制変更、グループ会社からの情報伝達を促進するための体制 社外役員の増員ならびに指名・報酬委員会の設置:グループ経営の高度化 | |
| ・経営体制変更 | 2024年12月20日付 代表者変更 |
| ・社外役員の増員、指名・報酬委員会の設置 | 2025年4月18日 指名諮問委員会・ 報酬諮問委員会設置 |
| ・次世代経営人材を育成、登用機会創出が可能となるしくみづくり | 各社執行役員登用増加 |
| ・グループ合同会議(仮称)の定期的開催 | 2025年夏開催で準備中 |
提言 | 役員に対する倫理研修の実施、役員の接待交際費の事前申請ルールや検証方法の検討: コンプライアンス | |
| ・グループ役員及び幹部人材層に対する、有識者による倫理・人権 研修・コンプライアンス研修の実施(次世代経営人材にも展開) | 2025年3月HDから開始 順次グループ内に展開 |
| ・規程規則、経費使用におけるルール厳格化、運用プロセスの見直し | HD規程から着手中 |
提言 | 内部通報制度の拡充:リスク予防機能 | |
| ・グループ横断及び外部通報窓口の設置 | 2025年4月18日設置 |
| ・定期的な不正調査アンケートの実施 | 2025年5月1日実施 |
提言 | HDの監査対象化:リスク予防機能 | |
| ・内部監査の範囲・手法見直し、品質向上 (2025年4月18日取締役会で計画報告) | 2025年度から実行 |
提言 | 内部統制の担当部門の設置:リスク予防機能 | |
| ・規程規則の抜本的見直し、運用時誤認・独自解釈を起こさせない啓発 | 準備中 |
| ・属人化している業務の見直し・高度化 | 人材ビジネス事業から 着手中 |
| ・全体整備を行うコンプライアンス部門の設置 | 2025年6月設置 |
※ HD:nms ホールディングス株式会社を指します
(4) 経営環境
当連結会計年度においては、年度を通じて、お客様による減産、生産調整等の影響がありましたが、新規受注や量産開始などもあり、全体として需要は堅調に推移いたしました。
当社グループにおいては、慢性的な人材不足による採用難、米国政権交代による保護主義政策強化の動きによるお客様の生産地域の見直し等への対応が求められる状況が継続することが想定され、今後も不透明な事業環境が続く見通しです。
そのような状況のなか、当社グループは各事業において新市場への参入や新規需要の開拓等、次の成長への種まきを進めるとともに、事業基盤の強化を図るべく、人材ビジネス事業における多様な人材の活躍促進、また、EMS事業については、戦略投資拠点における売上、利益の増加、カスタム電源事業においては産業機器分野への参入及び安定収益の確保等、グループ全体で合理化、効率化を徹底的に進め、事業効率のよい体制への転換や抜本的コスト構造改革を行っており、今後もこの取り組みを推進していきます。
また、株式会社ワールドホールディングスとの資本業務提携により、両社の強みを掛け合わせることで、さらなる企業価値の向上をめざすべく、さまざまな施策を実行してまいります。
引き続き、グループ全体で事業基盤の強化を進めるとともに、変化に即応できる機動力を強化し、売上・利益の確保に努めてまいります。
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