WDBホールディングス
【東証プライム:2475】「サービス業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「埋もれた価値を発掘し、新たな価値を創造していく会社でありたい」と考え、事業運営を行ってまいりました。
その結果、理学系(化学・バイオ系)研究職への人材サービス事業という新たな市場を開拓し、現在では、理学系研究職派遣で働く人の3人に1人が、当社グループより就業しています。また、当社グループは、人材サービスおよびCROサービスを、プラットフォームを通じて提供することで、両業界の標準と比較して、より利便性が高いサービスを、より低いコストで提供することを目指しています。当社グループの多様な経営資源を組み合わせることにより、新たな価値を創造し、自身の企業価値も高めていく、そんな企業グループでありたいと考えています。
その実現の為に、四つのビジョンを掲げています。
① 顧客に対するビジョン=「仕事の成果」の保証 「新しい価値」の提供
人材サービス事業においては、「労働力の提供」ではなく「成果の保証」という考え方で事業に取り組みます。「人」を扱うが故に曖昧にされがちなサービス品質に対して、製品を提供することと同様の厳しさをもってサービス品質の維持向上に努めます。
そしてプラットフォーム事業、CRO事業においては、人材サービス事業から一歩進み、私たちの力で「新しい価値」を創造していきたいとも考えています。私たちが作り出す成果物や製品が「新しい価値」を生み出せるよう努力していきます。
② 私たちの会社を通じて働く人たちへのビジョン=「働く喜び」の提供
「働く」ということは人間にとって大切なことだと考えています。人材サービス事業は、直接的に「働く」ことに関与しています。プラットフォーム事業、CRO事業においても「自社のサービスを通じて人が働くこと」がサービスの要素です。その大切な「働く」ことに関わる会社として誠実に取り組んでいきます。
仕事の内容、報酬、ライフスタイルにあった働き方、自己の成長、社会的評価、職場環境、人間関係等、たくさんの要素から、働く一人一人に対してそれぞれの「働く喜び」を提供できる会社を目指します。
③ 私たち自身に対するビジョン=「誇り」をもって働ける会社
どれだけ目立たない仕事であっても、「私はこの仕事を通じて社会に貢献しているのだ」と胸を張って言える会社でありたいと考えています。企業の果たすべき責任を社員一人一人が認識し、その一部を自分が担っているのだという強い意識のもとで自信と誇りを持って業務を遂行できる会社。そしてその自信と誇りを支援するオペレーションシステムを持ち、また自らが作り上げたオペレーションシステムでさえ、環境の変化に伴い破壊し、新たな仕組みを作り上げていくパワーを持った会社を目指しています。
④ ステークホルダーに対するビジョン=「価値」の還元
顧客、派遣社員、グループ従業員、株主、取引先、地域社会など、すべてのステークホルダーに対する経営責任を果たしていきます。企業には利益を追求し、新たな価値を創出することで、その付加価値を社会に対し還元していく責任があります。その責任から逃避することなく、毅然とした態度で立ち向かい、派遣スタッフおよび社員一人一人が利益の最大化を目指す企業経営を行っていきます。
そして、取引先、地域社会から信頼される企業として行動し、会社の所有者である株主に対して配当を通して利益を還元していきます。適正な評価と社会的信頼を得るために、あらゆるステークホルダーに対して公正かつ適時・適切な情報の開示を行います。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、売上高営業利益率、売上高経常利益率および自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)を重要な経営指標と捉えております。今後も収益力の拡大に注力し、株主価値の向上に努めてまいります。なお、過去5年間の実績は以下の通りです。
| 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
売上高営業利益率 | 11.6% | 13.5% | 11.6% | 11.1% | 9.9% |
売上高経常利益率 | 11.9% | 13.6% | 11.8% | 11.2% | 10.0% |
ROE | 16.6% | 17.8% | 13.4% | 12.3% | 9.9% |
ROIC | 17.2% | 18.6% | 14.5% | 13.2% | 11.4% |
営業利益率および経常利益率については10%以上、ROEについては15%以上を目標としております。事業の競争力と生産性を高め、営業利益額、経常利益額、純利益額を増加させることによって、ROEおよびROICを向上させ、WACCとのスプレッドを可能な限り大きくすることで、資本コスト以上の利益を得られる状態を維持します。
(3)会社の優先的に対処すべき課題および中長期的な会社の経営戦略
日本社会全体の労働力人口減少とそれに伴う採用競争の激化を受けて賃金水準は上昇し続け、人材の確保は年々厳しさを増しております。
この影響は人材派遣業界にも及んでいます。求職者の選択肢が増える中、派遣スタッフを確保するためには賃金を上げ続ける必要があることに加え、求人募集費も高まり続けています。その結果、派遣会社の利益率は強く圧迫されており、大手の中でも赤字になる会社が出てきています。将来的な人手不足も相まって、このような現象が加速すれば、日本型の人材派遣モデルは成立しなくなっていくのではないかと考えています。同業他社において、人材紹介や業務受託、求人広告など、派遣以外の事業に活路を見出そうとする動きが見られるのも、その予兆であるととらえています。
CRO業界も、従来のビジネスモデルのままでは安泰とはいえません。受託した業務を人の手で処理する構造である以上、賃金水準の上昇は利益率に対する圧迫要因になります。加えて、生成AI等の技術進化により、定型業務の自動化が進む可能性は高く、アウトソーシングに依存する業務運用が見直されることが予想されます。そのため、業界全体としても、提供価値の再定義と事業構造の変革が求められています。
こうした考えから、当社は以下の戦略に基づいて事業を展開しています。
まず、人材派遣会社としての価値を極限まで高めることを目指します。
当社は理学系技術者・研究者の人材派遣を専門としておりますので、一般的な職種を扱う派遣会社に比べ、比較的高い利益率を維持しております。この強みを活かし、中期的には派遣社員の報酬アップを継続することに加え、「転勤を伴わない正社員型派遣」の取り組みと、営業体制の強化によって求職者のニーズにあった仕事をより多く取り揃えることで、新規の求職者から選ばれる割合を高めるとともに、当社から就業している派遣スタッフの契約が終了した際にも、速やかに次の派遣先を提供できるよう対応力を高め、継続就業につなげます。
また、複数の派遣会社に対して一斉に派遣サービスを発注でき、契約締結後の勤怠や請求等も一元管理できる派遣サービスプラットフォーム「ドコ1」を、2025年5月に公開しました。ドコ1を足がかりに新たなお客様とのお取引を開始し、派遣のご注文を頂ける関係を築くという、顧客獲得の方法にも取り組んでいきます。
長期的には、「求職者と就業先の仲介」と「就業中の支援」という、派遣会社の2つの価値を極限まで高めていきます。当社はすでにこの両方に、他社にはない強みを持っていますが、今後さらにプラットフォームを進化させることで極限まで自動化を進め、仲介コストを削減して派遣スタッフの報酬を高め続けるとともに、就業中の丁寧なフォローをさらに磨いていくことで、市場環境の厳しさがさらに増し、他社が新たな事業に転換せざるを得なくなったとしても、当社は派遣会社として顧客と派遣スタッフから支持されることで事業を継続します。そうなれば、現在のような激しい競合状態は解消され、高利益率を確保できる新たなビジネスモデルの構築も可能であると考えています。
また、プラットフォーム運営会社への転身にも取り組みます。
当社は2016年以降、「プラットフォーム運営会社」を目指して様々な取組みを行い、その成果として、派遣サービスをデジタル化するプラットフォーム「doconico」と「ドコ1」、CROサービスをデジタル化するプラットフォーム「CoCopos」を世に送り出しました。
次に目指すのは、派遣以外の新しいサービスを提供するプラットフォームです。doconicoとドコ1の開発および運営を通じて、当社はプラットフォーム運営会社としてのノウハウを積み重ねてきました。この経験と実績を活かし、数年後のサービス開始を目指して、開発に取り組んでいます。
CRO事業についてですが、中期的には、プラットフォームとAIを活用して業務の効率化を進め、社員の待遇改善を実現しながら、短期的な利益への影響を最低限に押さえつつ、事業の拡大を図ります。また、海外のCRO事業では利益率の低さが課題でしたが、2025年2月に不採算事業を売却する等して収益性の改善に取り組んでいます。
長期的には、生成AIや自動化技術の進展により、人手による定型作業が代替されるという変化に正面から向き合い、プロセスの自動化・標準化に加え、業務の安定性と効率性を両立するセンター運営の強化を着実に推進します。そのうえで、判断・顧客対応・品質担保・マルチタスクへの対応など、人が担うべき実務価値領域に資源を集中させ、AIと共存する新たなCROモデルを確立します。ドキュメント支援やPMS支援、臨床研究支援では、業務の標準化やツールの導入、プロセスのデジタル化を進め、再現性と生産性の向上を図ります。
また今後、国内で需要が見込まれる高度な医療機器分野においては、開発から申請、市販後までをカバーする一貫支援体制を基盤とし、そこにデジタル技術とデータの活用を組み込んでいき、国内外における事業展開を多面的に支援できる体制へと進化させていきます。
加えて、医療・医薬関連領域において、新たな事業の創出に取り組みます。既存サービスが対応しきれていない細分化された実務課題に対し、現場の実態に即した支援モデルをデジタルと融合させて構築し、特定領域で高い専門性と収益性を両立する新しい価値を提供します。
これらの取り組みを行い、長期的に事業を発展させてまいります。
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