UTグループ
【東証プライム:2146】「サービス業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「はたらく意欲を持ったすべての人にスキルアップやキャリア形成の機会が等しく提供され、公正に処遇される社会の実現」を企業目的として、グループミッションである「はたらく力で、イキイキをつくる。」を実現するため、「はたらく人」と「企業」双方を顧客として捉える「ツインカスタマー戦略」を推進し、事業展開しております。
2030年に向けた長期経営ビジョンとして「これからのはたらき方のプラットフォームになる」を掲げております。これを実現するため、2028年3月期を最終年度とする第5次中期経営計画においては、はたらく人との一度限りの関係にとどまらず、生涯を通して関係を構築することを目指しております。人的資本への投資を行い、はたらく人の意欲と帰属意識を高めることによって、はたらく人自らが事業成長を牽引し、長期経営ビジョンが達成される姿を目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、持続的に企業価値を向上させることを経営の目標としております。経営指標としては、「入社数」、「離職率」、「在籍数」及び「1株当たり当期純利益(EPS)」を重視しております。第5次中期経営計画においては、入社数は36,000人、離職率は4.2%、在籍数は56,700人そして1株当たり当期純利益(EPS)は357.39円を数値目標としております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
(第4次中期経営計画の結果)
当社グループは、長期経営ビジョンの前半に当たる第4次中期経営計画を遂行してまいりました。この計画のもと、売上高は増加したものの、計画後半においては事業効率が悪化し、EBITDAは大きく未達となる結果となりました。
2020年3月期と2025年3月期を比較した場合、月間平均採用数は1,487人となり2.7倍に増加いたしました。また、国内技術職社員数も1.7倍の34,289人に達し、市場全体に対するシェアも9.2%と1.7倍に拡大しました。これらの成果が売上高の増加に貢献しております。
その一方で、EBITDAが計画未達となった要因としては、事業環境の変化に対する戦略の対応が追いつかなかったことが挙げられます。非正規労働市場においては、これまでの無期雇用による安定した働き方からフルタイムにこだわらない働き方を選ぶ人が増加しており、働き方のニーズは多様化しています。当計画の中では多様化したニーズへの対応が遅れ、結果として採用効率の悪化による募集費の増加及び離職率の上昇につながったと考えております。
以上のことから、流動性の高い非正規労働市場の拡大に伴う多様なニーズに十分に応えることを踏まえ、コンセプトおよび事業戦略を見直した第5次中期経営計画を策定することとなりました。
(第5次中期経営計画のコンセプトと戦略の骨子)
1.背景と目的
当社グループがこれまでに作り上げた事業の中核となるコンセプトは、派遣でも雇用の安定とキャリア形成を可能とする働き方を実現するというものでしたが、第4次中期経営計画の経過を通じて、必ずしも全ての求職者がそれを求めているわけではないという結論に至りました。
この状況を受け、求職者と派遣先企業のニーズを捉え直した上で、事業戦略を根本的に見直した第5次中期経営計画を策定いたしました。本計画においては、ニーズを4つのタイプに分類し、それぞれに適した事業組織に再編するともにサービス強化やはたらく人への株式付与を通じた人的資本投資により、生涯にわたる長期的なパートナーシップを構築し、持続的な事業成長基盤をつくることを目的としています。
2.第5次中期経営計画の概要
(1) 中期経営目標「人的資本投資を通じた持続的な事業成長基盤の構築」
ライフスタイルに合わせて働き方を選ぶ人が増加したことで、非正規雇用=雇用流動性が高まる一方で、人手不足が顕著になり人材の採用は年々困難になってきております。このような事業環境において、当社グループとしては、はたらく人との「入社から退職までの社員としての一度きりの関係」を根本的に見直すこととし、応募の段階から「貴重な顧客」としてそのニーズに応えるための自由な入退社が可能となる環境整備やサービスの強化を通じて、はたらく人との関係を強化することで「生涯にわたる長期的なパートナーシップ」を構築し、「ワークタイムバリュー※」の向上と持続的な事業成長を実現したいと考えております。
また、はたらく人と入社から退社までの一時的な関わりに留まらず、はたらく人への株式付与を通じた人的資本投資等により長期的な関係を築き、はたらく人自身を会社の成長のドライバーとすることを経営上の重要なテーマに設定し、第5次中期経営計画に取り組んでまいります。
※求職者が断続的に当社を通じて働くことで得られる一人当りの生涯売上高
(2) サービスとしての「はたらき方のプラットフォーム」の構築
① 出入り自由・はたらき方に合わせて選べる職場
「高賃金・社宅付きの職場」「長く働きながらキャリア形成できる職場」「地元で働ける職場」「これまでの経験を生かして活躍できる職場」「UTグループの基盤を支える職場」など、ライフプランやライフスタイルに応じて豊富な選択肢から選べるように、多様な職場・働き方を可能にする職場開発を行います。
② はたらき方を支えるサービスの基盤
当社グループへの応募から即日働けるようにする、退職後の再入社プロセスの簡略化や、働いてから給与が支払われるまでの期間短縮など、働くことに関わるサービスの利便性を向上させる基盤を構築します。また、当社グループで働いた時間が継続的に蓄積されるポイントとなり、ポイントに応じた当社株式の付与や様々な優遇措置を受けられるようにすることで、はたらく人との関係を強化することを目指します。
(3) ニーズに合わせた4つの事業戦略
① モーター・エナジー事業
自動車業界特有の生産変動に対応する短納期での大規模動員という人材ニーズと、高賃金で即日働きたい求職者のニーズをマッチングさせ、自動車業界でのシェアアップを目指します。また、人口減少により日本人が集まらない地域向けに、日系人材の活用も合わせることで、自動車業界のニーズに応えてまいります。
② セミコンダクター事業
全国的に不足している半導体人材の確保・育成を行い、半導体業界横断的な人事制度構築とエンジニア人材育成により、中長期的な人材ニーズに応え、半導体業界でのシェアをさらに高めることを目指します。
③ エージェント事業
業深刻化する人手不足により採用に課題を抱えている企業と、月間1万人を超える当社グループへの応募者の中から地元で働きたい人をマッチングさせる事業です。従来の派遣に職業紹介を加えることで、応募者と企業とのマッチング率向上を目指します。
④ ネクストキャリア事業
大手企業グループに特有の人員構成の硬直化や事業ポートフォリオの見直し、定年者の再雇用などの経営課題の解決に特化した人材戦略の支援や、大手企業からの受け入れ人材がスキルを生かして活躍できる新たな職場を提供し、企業横断で労働力の最適な配分を行うことを目指します。
(第5次中期経営計画の数値目標)
| 2025年3月期 (実績) | 2026年3月期 (業績予想) | 2027年3月期 (本計画) | 2028年3月期 (本計画最終年度) | ||||
実績 | 構成比 | 計画 | 構成比 | 計画 | 構成比 | 計画 | 構成比 | |
売上高[億円] | 1,947 | 100.0% | 1.962 | 100.0% | 2,441 | 100.0% | 2,930 | 100.0% |
営業利益[億円] | 80 | 4.1% | 117 | 6.0% | 166 | 6.8% | 253 | 8.6% |
親会社株主に帰属 する当期純利益[億円] | 89 | 4.6% | 77 | 3.9% | 110 | 4.5% | 169 | 5.8% |
EPS[円]※ | 225.32 | - | 162.72 | - | 232.21 | - | 357.39 | - |
(参考指標) 技術職社員数(国内)[名] | 34,289 | - | 43,000 | - | 49,200 | - | 56,700 | - |
※ EPS予想及び計画は、新株予約権が全て行使されたと仮定して算出しております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)~(3)に記載の長期経営ビジョン及び第5次中期経営計画を実行し、持続的な企業価値の向上を目指す上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、以下のとおりであります。
① 景気変動の影響を受けにくい事業基盤の構築
当社グループの事業は、製造工場の生産現場を中心とした職種への人材派遣や製造請負の占める割合が高いため、景気変動、自然災害及び感染症等の事象に影響される派遣先企業の生産調整によって、人材需要低下等の影響を受けやすい構造にあります。従来はマニュファクチャリング事業において、半導体・電子部品関連分野の割合が高かったことから、シリコンサイクルの影響を低減するため、異なる製品分野への分散を図ってまいりました。分散化により、個別の製品分野に対する生産変動への耐性は高まったものの、経済全体の減速に伴い全ての製品分野において生産量の減少が生じた際には、依然として解約リスクをゼロにすることは難しいと認識しています。
そのため、大幅な景気後退が生じた際の解約リスクを低減するための顧客工場内シェアの拡大や製造業の中でも景気変動の影響を受けにくい製造技術領域等の職種開拓を進めております。併せて、職業紹介事業に参入し求人数も拡充することで地域ごとの多様な人材需要を満たすエージェント事業の強化を進め、シリコンサイクル等の景気変動の影響を受けにくい事業基盤を構築してまいります。
② 恒常的な欠員確保
当社グループの事業は、派遣先企業で働く派遣労働者を当社グループで正社員として無期雇用することで、はたらく人の雇用の安定化と企業へのフレキシビリティの提供を両立させております。この事業モデルを機能させるためには、ある職場で人員が余剰となった際に、異なる職場への配置転換を迅速に行わなければなりません。そのため、全国各地の職場において、欠員(受注残)を恒常的に確保しておくための活動が必要となります。
当社グループでは、人材管理とともに顧客への提案活動を行う管理者を顧客毎に配置して欠員の確保を行っております。また、事業部毎に設置した営業組織により、事業会社を横断したサービス提案や新規顧客開拓等の活動を通じた欠員の確保を行っております。
③ 多様な人材の活躍促進と安定的な採用体制の構築
わが国では、少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドが継続するものと予測されております。当社グループの技術職社員の多くが若年層であり、中長期的にはこの影響を大きく受けることから、人材採用が困難になる可能性があります。
このような環境の中、女性・シニア・外国人など多様な属性の人材が活躍できる職場を増やしていくことが重要課題であると認識しています。このため当社グループでは、新たな顧客企業の開拓を進めるとともに、従業員から寄せられる職場改善に関する意見や求職者のニーズをもとに、顧客企業側により多様な人材を受け入れることができる職場づくりの提案を積極的に行っております。
当社グループは、求人広告をはじめとする様々な採用媒体の活用や当社グループ独自の求人サイトの構築、応募から入社までにかかるプロセスの短縮化等を実施し、安定的に人材を採用するための改善を進めてまいります。
④ 技術職社員の離職率低下とエンゲージメント向上
当社グループが属する製造派遣業界における派遣社員の離職率は、いわゆる正規雇用と呼ばれる正社員と比較すると高水準と言われており、流動性が高いことが特徴となっております。当社グループでは、社員のキャリアアップを目的とした離職は自由に認める一方で、職場や業務内容のミスマッチに起因する離職についてはエンゲージメントの低下によるリスクと捉え、改善策を講じております。
エンゲージメントの向上に向けて、社員が自身の希望する業務や職場で働けることが重要であると考え、求人案件数を拡大することでマッチング精度を高めています。また、退職した社員に対しては、継続的に案件を紹介することで再入社を促進し、入社フローの簡素化を図ることによって再入社を容易にしています。このような施策を通じて、社員が自分に合った職場を見つけやすくし、離職のリスクを減少させることを目指しています。
さらに、就業サポートスタッフを各職場に配置し、勤務後のサポート体制を強化することで、エンゲージメントの低下を防止しています。特に半導体領域においては、エンジニア向けのステップアップ支援制度を整備し、社員のキャリア形成を積極的にサポートしています。
これらの取り組みにより、社員のニーズに応えるとともに、エンゲージメントを高い水準で維持することを目指しています。そして、当社グループで働きたいと思う社員の増加を実現し、望まない離職を減少させ、結果として離職率の低下を図っていきます。
⑤ 派遣単価と技術職社員の賃金の上昇
わが国では、少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続いており、労働市場の売手市場化が進むことで、採用難易度が高まっていくものと予想されます。
そのような採用市場の見通しの中、当社グループは顧客企業からの人材ニーズに応えていくために、より多くの求職者から選ばれ続け、かつ技術職社員の定着を図る必要があります。そのために求職者や技術職社員一人ひとりの経歴、スキル、パフォーマンス等を適正に評価し、派遣単価に反映するとともに技術職社員が適正な賃金を得られる環境の実現に取り組んでまいります。
⑥ 経営管理・事業運営体制の強化
当社グループは、持続的に高い売上高を達成し、利益成長を続けることを目指しております。それに伴い、経営管理や事業運営を行う人員を育成・確保するとともに、事業規模に応じた組織基盤を確立させることが欠かせません。
このため当社グループでは、これらの経営管理や事業運営を支える人員の確保・育成とともに、柔軟な組織運営やそれを支える業務システムの構築等を重要課題として取り組んでおります。
⑦ コーポレート・ガバナンスと内部統制体制の継続的な強化
当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためにはコーポレート・ガバナンス体制の強化が重要であると認識しております。
当社グループは、的確かつ迅速な意思決定及び業務執行体制とそれを適切に監督・監視する体制の構築を図っております。経営の健全性や透明性を確保する観点から、今後も事業規模に応じたコーポレート・ガバナンス体制の強化を継続的に図ってまいります。また、企業規模の拡大やグループ会社の増加、海外での事業展開等、内部統制の重要度が増してきていることから、グループ全体での内部統制につきましても継続的な強化を図ってまいります。
⑧ M&Aによる事業拡大
当社グループの主力事業である製造業向け人材派遣事業は、業界に先駆けた無期雇用派遣と高い人材供給力や高品質な人材育成・管理体制によって、特に大企業において大きなシェアを獲得しております。一方、地域における職場数や技術者領域や事務領域等の製造工程以外での職種等、当社グループが未だ競争力を発揮できていない領域があります。これらの今後開拓すべき事業領域では、M&Aが有効な手段であると考えております。
当社グループは、採用・育成プラットフォームや既存事業とのシナジーを考慮した上で、ターゲット企業に対して事業の評価を行い、企業価値の向上に資するM&A戦略を推進してまいります。また、買収後にはガバナンス強化を行い早期にグループシナジーが実現できる体制を構築してまいります。
⑨ 業務プロセスの効率化とITによるグループ共通業務基盤の構築
当社グループの各拠点における採用・営業・事務等の業務には、帳票類やプロセスの標準化等、システム導入による効率化の余地があると認識しております。
当社グループでは、課題の抽出やITによる効率化の可能性の検討を重ね、段階的にシステム導入を進めております。今後もシステム改善を行い、業務プロセスの効率化を図ってまいります。
⑩ 外国人材の活用促進
わが国では、生産年齢はもとより総人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドは継続するものと予測されております。2019年4月に施行された改正入国管理法では、新たな在留資格が創設される等、外国人材を受入れるための法整備が進んでおります。
当社グループは、2017年より外国人技能実習生を対象とした労務管理代行事業を開始し、企業が外国人材を活用する際に、外国人材の権利保護等のコンプライアンスを遵守する体制を構築してまいりました。
現在わが国では「技能実習制度」の見直しが進められていますが、当社グループは新制度「育成就労制度」においても外国人材が日本国内で継続的に働くための受入れ環境の整備や就労支援に取り組む考えです。
加えて、日系人材を海外から招聘する・国内在住の日系人材を採用するためのネットワークの強化と安心して働くことのできる職場環境づくりを進めてまいります。
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