TBSホールディングス
【東証プライム:9401】「情報・通信業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
2020年春、当社グループは企業理念を定めました。
「TBSグループは、時代を超えて世界の人々に愛されるコンテンツとサービスを創りだし、
多様な価値観が尊重され、希望にあふれる社会の実現に貢献してまいります。」
この理念を実現していくうえで、当社グループの全員が常に心の中にとどめておくべき未来の志、お客様への大切な約束であるブランドプロミスも併せて制定しました。
「最高の“時”で、明日の世界をつくる。」
当社グループが、さまざまなフィールドで心揺さぶる“時間”をお届けし、社会を動かす起点となることを目指す。その未来への決意を表明したものです。
また、企業理念とブランドプロミスを凝縮し、お客様にTBSグループの提供価値をよりわかりやすくお伝えするためにブランドメッセージを制定しました。
「ときめくときを。」
我々は、この企業理念、ブランドプロミス及びブランドメッセージをあらゆる経営活動の指針とし、新しいことにチャレンジしつつ、公正・迅速な報道と愛されるコンテンツの提供に努めるとともに、さらなる企業価値の向上を目指し、株主の皆様のご期待にお応えしてまいりたいと存じます。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、企業価値を生み出す源泉としての指標である「売上高」と、本業の中で効率よく利益を生み出す指標としての「営業利益」、資本効率の向上を図る指標として「ROIC※」を重要な経営指標としております。
当連結会計年度の売上高は4,067億円(前年比3.1%増)、営業利益194億6千5百万円(同28.3%増)、ROICは3.1%でした。2025年度の目標を連結売上高4,250億円、同営業利益215億円、ROICは3.2%としております。
※ROIC: Return On Invested Capital
(3) 経営環境及び対処すべき課題と当社グループの経営戦略など
当社グループの最大の課題は、予測が難しく絶えず変化する経営環境においても、社会に求められる企業として持続的に企業価値を向上していくことであると認識しています。こうした課題に対し、長期的な視点に立ち、将来の目指す姿として、2021年5月に「TBSグループ VISION2030」(以下、VISION2030)を策定しました。そして、2030年度までの10年間を3つのフェイズに分け、それぞれの期間の位置付けを明確にした上で、VISION2030達成に向けて計画を立案しています。
刻々と変わる世界情勢や人口動態、日本の放送広告市場など、TBSグループを取り巻く外部環境に対し、当社グループが持つ強みと、対処すべき経営課題を明確にし、VISION2030で示した姿を目指します。
さらに、放送局には高い信頼性や公共性が求められています。TBSテレビを中核子会社に持つ当社グループとしては、コンプライアンスと人権尊重を徹底し、「マスメディアとしての社会的使命と信頼」をしっかり果たしていきます。
<当社グループを取り巻く環境と経営課題>
<「TBSグループ VISION2030」の概要>
当社グループにとって重要なのは“コンテンツ制作力”です。メディア環境が激変していく中で、今まで以上に人々の“信頼”に応え、心や生活を豊かにする素晴らしいコンテンツを創出します。「心揺さぶるもの」すべてをコンテンツと定義し、その価値を最大化するグループになることを目指します。
具体的には、オリジナルIP(知的財産)開発を推進し、クリエイティブ力を強化していきます。そして、創ったコンテンツを無限に広げる拡張戦略として「EDGE※」を推進します。
※EDGE: Expand Digital Global Experience
配信を強化してデジタルコンテンツを開拓し(Digital)、海外市場へのさらなる飛躍を追求し(Global)、ライブエンタテインメントやライフスタイルを“体験する”事業の拡大(Experience)へ当社リソースを集中していきます。
VISION2030では、拡張戦略「EDGE」によって、放送広告市場の大幅な拡大が見通せない状況下においても、成長事業領域を確実に伸長させることにより、グループ全体の成長を目指します。
とはいえ、放送事業はこの成長の土台であり、放送事業の価値向上を目指すことに変わりはありません。マスメディアとしての社会的使命と信頼をしっかり果たし、パートナーと新たな価値を提案すること、また、データマーケティング推進によるメディアパワーの進化を目指していきます。
そして、公共性や社会的使命をもつグループならではのESG経営として、私たちが暮らす地球に(Environment)、社会や働く仲間に(Social)、責任企業として(Governance)「最高の“時”」を提供するため様々な施策を講じます。私たちはコンテンツを通じて、全てのステークホルダーとともに、多様な価値観が尊重される、幸福で持続可能な社会を共創していきます。
<「TBSグループ 中期経営計画2026」の概要>
2024年5月に策定した「TBSグループ 中期経営計画2026」(以下、中計2026)は、VISION2030の第2フェイズにあたります。第1フェイズ(2021年度~2023年度)では、VISION2030へ向けた成長への種まき期間として、国内有料配信プラットフォームへの出資や知育・教育事業への進出、ライフスタイル事業の強化など、「EDGE」領域の中でも、特にDigital(デジタル)およびExperience(エクスペリエンス)領域を中心に約1,450億円規模の成長投資を行いました。
中計2026では、第1フェイズで拡大した事業ポートフォリオをGlobal(グローバル)領域でも拡大するため、2024年度を「TBSグローバルビジネス元年」と定め、TBSが創出するコンテンツIPを世界に広げる体制整備を進めました。2025年度以降も成長を加速すべく、成長領域への継続的な種まきやコンテンツIPの獲得・増強などを推進し、2026年度において、売上高4,500億円、営業利益240億円を目指します。
<VISION2030における中計2026の位置付け>
<中計2026の定量目標>
<「TBSグループ 中期経営計画2026」達成に向けた施策>
・コンテンツIP創出力の強化とレバレッジ
TBSグループにとって重要なのは「コンテンツ制作力」であり、そこから生み出される「コンテンツIP」です。ドラマ、報道、バラエティ、アニメなど映像音声を中心とした「コアコンテンツ」に加え、第1フェイズの成長投資の過程で「新たなコンテンツ」も獲得しました。
中計2026においては、TBSグループ全体で多様なアイディアを生み出せる環境を整備し、企画を見極める眼を養うとともにマーケティング力を強化することで優れたコンテンツIPを選定します。さらにテクノロジーやデザインの力で磨き上げ、より強力なコンテンツIPを生み出せる体制を構築します。
そして、質・量ともに充実した強いコンテンツIPにレバレッジをかけ、放送だけでなく、「EDGE」領域におけるTBSの成長を加速させることで、皆様の心の中に「時代を超えて残り続ける価値」、すなわち“Timeless Value”を追求・提供するグループを目指します。
また、私たちは、自らの手でコンテンツIPを開発するだけでなく、投資によるIPの獲得も行っていきます。コンテンツIPの強化によって、「EDGE」領域の事業成長はもちろん、テレビ視聴率の全時間帯1位、無料配信再生数1位を目指します。
<TBSグループ一丸となったCreative Engine>
<コンテンツIPへのレバレッジ>
・新規事業創出を通じた事業ポートフォリオの拡充
中計2026では、従来の主たる収益源である地上波広告事業を始めとした放送事業、無料配信事業を「安定収益領域」とし、第1フェイズで積極的に成長投資を行ってきた有料配信事業や知育・教育事業などを「成長注力領域」と設定しました。さらに、2024年度を「TBSグローバルビジネス元年」に位置付けたグローバルビジネス領域や新規IP戦略などを「種まき領域」として設定しています。領域の区分を明確化することによって、事業ポートフォリオの拡充と不断の見直しを行い、最適なコンテンツIPのアロケーションを実現させます。
<2026年度に向けた事業ポートフォリオ>
・資本効率を意識したキャピタル・アロケーションと株主還元
コーポレートガバナンス・コードの遵守及び資本効率を意識した経営推進に向け、政策保有株式の売却を加速させます。売却による資金や営業キャッシュ・フロー等をもとに1,600億円規模の成長投資を実行することで、中長期的な利益拡大、および資本効率の向上を目指します。さらに、配当と機動的な自己株式の取得により、安定的かつ継続的な株主還元を実施します。
<2026年度に向けたキャピタル・アロケーション>
・2024年度の取組み
グローバル領域において、米国法人であるTOKYO BROADCASTING SYSTEM INTERNATIONAL,INC.の機能強化やTOKYO BROADCASTING SYSTEM KOREA,INC.の設立などを行いました。米国ではコンテンツIP販売代理店の子会社化による販売力向上に加え、エンタテインメント企業との協業やIP開発を行っていきます。また、韓国ではドラマや映画、K-POPなどへの投資やIP開発を行います。これらの取組みを通じ、コンテンツを世界規模で制作・販売していきます。海外企業との連携では、米国のブルームバーグ・メディアと戦略的パートナーシップを締結し、TBS CROSS DIG with Bloombergを立ち上げました。また、米国の大手ライブエンタテインメント企業であるJohn Gore Organizationと連携し、ブロードウェイ作品等への直接出資を実施しています。このほか、子会社である㈱スタイリングライフ・ホールディングスでは、英国ブランドであるCath Kidstonの独占輸入販売権とライセンスを取得し、日本再上陸の実店舗を表参道と京都にオープンしました。日本市場のみならず、アジア各国に向けてライフスタイル事業を拡充していきます。
コンテンツIPの強化においては、㈱THE SEVENをグローバル戦略スタジオと位置づけ、「今際の国のアリス シーズン3」「国民クイズ」などの制作を進めています。アニメ事業では「アオのハコ」「地縛少年花子くん2」などの作品に加え、2025年5月公開の「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」をはじめとしたアニメ映画の展開も進めています。グローバル展開が可能なヒット作品を継続的に生み出すべく、体制を構築します。また、TBS GAMESでは「バナナサンド」「SASUKE」などのテレビ番組と連携したアプリゲームをリリースしました。更に、TBSグループキャラクターとして「ワクティ」が誕生しました。世界中のワクワクが集まって誕生したキャラクターとして「ときめくとき」をお届けしていきます。
キャピタル・アロケーションについては、総額396億円の政策保有株式売却を進めました。更に自己株式の取得と配当により、総額169億円の株主還元を実施しました。今後も総還元性向を意識し、自己株式の取得を機動的に行っていきます。
<TBSグループキャラクター「ワクティ」>
<TBSグループマテリアリティ>
「TBSグループマテリアリティ」は2022年5月、当社グループの企業理念・ブランドプロミスをふまえ、VISION2030で掲げた拡張戦略「EDGE」を実現し、ESG経営を推進する上で取組みが不可欠な重要課題として公表したものです。
当社グループはコンテンツグループとしての企業価値の持続的向上と、持続可能な社会の実現に向けた取組みを一層強化・促進するため、2021年10月にサステナビリティ委員会を設置しました(委員長=代表取締役社長・副委員長=CSO(Chief Sustainability Officer)である取締役)。サステナビリティ委員会は傘下に「気候変動対策」「ウエルネス」「人的資本」「知的財産」の4つのワーキンググループを置き、当社グループのサステナビリティ推進体制のチェックや、新たな施策の検討・提案、さらに適正な開示のあり方などを検証しています。2023年11月には人権の諸課題への対応や人権デュー・ディリジェンスを実施する「人権小委員会」、さらにサステナビリティ施策をグループ会社全体で共有・推進するための「グループサステナビリティ連絡会議」を新たに設置しました。
2024年度の取組みの一つとして、2024年4月にコンテンツ制作関連事業者など152社に対して、人権デュー・ディリジェンスに関するアンケートを実施しました。アンケート結果を踏まえて、「コンテンツ制作における人権尊重のための指針」の策定と救済窓口の新設を行い、より健全な制作環境の構築を目指します。
また、当社はTBSテレビとともに「健康経営優良法人2025(大規模法人部門・ホワイト500)」に2年連続で認定されました。民放キー局では唯一の認定局です。公正で心身に安全な労働環境づくりを目指し、健康経営を推進する「ウエルネスワーキンググループ」の取組みにより、従業員の生産性向上指標のプレゼンティーイズムが前年度より8.2ポイント向上しました。今後も安全で働きがいがあり、創造性を発揮できる職場づくりを目指し、様々な施策に取り組んでいきます。
<TBSグループが取り組むべき最重要課題>
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