Schoo
【東証:264A】「サービス業」
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企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
MISSION:世の中から卒業をなくす
人は学ぶことで生きる知恵を身につけ、技術を革新させ、進化してきました。
「学び」には終わりはなく、学び続けることで社会が抱えている課題の解決速度が圧倒的に加速します。一方で、時間や場所、コスト、モチベーションなど、「学び」の障壁となるものもたくさんあります。これらの障壁を取り除くことで、すべての人が学び続けられる世界をつくることがSchooの使命です。
このミッションに伴い、”SCHOOL”の「終わりの”L”をなくす」ことで、Schooという社名は生まれました。
VISION:「あたたかい革命」が起こり続ける社会を残す
私たちが暮らすこの社会は、多くの人々が生んだ発明、努力、願いによってつくられました。ですが、少子高齢化という揺るぎない流れが、今の社会システムに留まることを許さず、たくさんの劇的な変化を私たちに要求しています。「誰かを想い、何かを変えるために頑張ること」。それが私たちの定義する「あたたかい革命」です。学びを通じた新しいつながりを編み、しがらみや壁を取り払って、社会課題を解く様々なイノベーションを生み出す。私たちの子供やその先の世代に「未来はきっと良くなる」と信じ続けられる社会を残すことを目指しています。
(2)経営環境
日本国内においては、少子高齢化等により2000年時点で約8,600万人いた労働生産年齢人口は2020年時点で約7,500万人まで減少し、2040年には約6,200万人まで減少すると予想されております(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)。労働生産年齢人口の減少が加速する一方、日本の労働生産性は停滞していることが社会課題として認識されております。
株式会社矢野経済研究所によると、当社の属する教育産業全体の市場環境(主要15分野計)(注1)は、2020年度には新型コロナウイルスの感染拡大によって生じた各種教室の休校措置や生徒募集活動の自粛など事業活動の大幅な制限により、市場を縮小させました。一方で、2021年度は、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を講じた上で事業運営が概ね継続できたこと、対面授業とオンライン授業の併用などによるサービス提供体制が確立したこと、コロナ禍で需要を高めたサービスが引き続き好調に推移したことなどを受けて全体市場が回復しました。2023年度は少子化の進行や物価上昇による家計の教育投資抑制などの影響を受けて、全体市場としては前年度割れとなりましたが、「資格・検定試験市場」「語学スクール・教室市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」の4分野は前年度の市場規模を上回りました。
2024年度は、政府の賃上げ促進政策などを背景として、教育への投資回復が一定程度進むことが想定され、教育産業主要15分野のうち、8分野(「学習塾・予備校市場」「幼児向け英会話教材市場」「資格取得学校市場」「資格・検定試験市場」「語学スクール・教室市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」「eラーニング市場」)が成長することによって、教育産業全体市場としては前年度比1.0%増の2兆8,619億7,000万円のプラス成長で推移すると予測されております(出典:矢野経済研究所2024年10月2日発表「教育産業市場に関する調査を実施(2024年)」)。
社会人教育市場では、コロナ禍によるDXの加速化やニューノーマル、労働生産性向上やリスキリングへの取り組み、持続的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」への関心の高まりなどを背景に、社会人は働き方の多様化による「学び」直しの加速、企業は「学ぶ」機会の提供による従業員へのエンゲージメントの向上、高等教育機関は学生の確保のため社会人へ「学ぶ」機会を拡大、教育事業者は社会人のニーズにマッチした「学び」の提供など、時代の変化に即した知識・スキルの習得と、社会人が学びやすい環境の整備の必要性を強めております。
このような状況の中で、当社は、「学び」を起点として、人や社会の基盤となるサービスを提供したいと考えております。社会が抱えている課題はそれぞれが複雑に絡み合い変化・増減し続けていますが、学び続ける人が増えることで解決に寄与すると考えております。当社は、単なる学習サービスを提供する会社ではなく、「学び」によって継続的に成長できる社会を実現するために“世の中から卒業をなくす”ことを目指しております。
当社の事業の最大の強みは、「オンライン×みんなで」で生まれるコミュニティの性質を持った学習形態を提供するプロダクトと、10年以上に亘って蓄積してきた「受講生と共に内製で作り上げた約8,500本(注2)」の学習コンテンツであります。また、当社は主にSaaS(注3)と呼ばれるクラウド環境下でサービスを提供しており、主要サービスの収益は、利用料を定額課金するサブスクリプション型のリカーリング・レベニューモデル(注4)となります。このため、サービスの提供が開始された後は契約更新時に解約されない限り継続的に売上高が積み上がる性質を持っており、新規や追加の契約金額が解約金額を下回らない限りは収益が前年度を上回るという安定性を有しつつ、その収益基盤をもって安定的な成長を目指すことが可能となるビジネスモデルであると考えております。こうした当社サービスの強みを活かし、上述のように順調に拡大する市場を着実に獲得してまいります。
(注1)主要15分野計
「矢野経済研究所2023年10月6日発表「教育産業市場に関する調査を実施(2023年)」において、①学習塾・予備校、②家庭教師派遣、通信教育(③幼児向け・④学生向け・⑤社会人向け)、⑥幼児向け英会話教材、⑦資格取得学校、⑧資格・検定試験、⑨語学スクール・教室、⑩幼児受験教育、⑪知育主体型教育、⑫幼児体育指導、⑬企業向け研修サービス、⑭eラーニング、⑮学習参考書・問題集を指します。
(注2)学習コンテンツの本数
2024年11末時点における視聴可能な学習コンテンツ数となります。
(注3)SaaS
Software as a Serviceの省略表記で、パッケージソフトウエアをクラウドサービスとしてネットワーク経由でお客様に提供する形態で販売するサービスです。
(注4)サブスクリプション型のリカーリング・レベニューモデル
サービス利用期間に応じたサービス利用料金をサブスクリプション(定期購入)の形態で受領するビジネスモデルです。一度契約すると、解約しない限り継続的に繰り返し収益が獲得できるという意味から、サブスクリプション型のリカーリング・レベニューモデル(継続収益)と呼びます。なお、このビジネスモデルにおいては、前期までに獲得した契約は当期収益の基礎となり、当期の売上高はこの前期までに獲得した契約と当期新しく獲得した契約で構成されることとなります。
(3)経営戦略
当社は、「世の中から卒業をなくす」ことを実現するため、学びや教育を起点として、人や社会の基盤となるサービスを提供してまいります。そのために、主力サービスである「Schoo for Business」のサービス価値を向上させ、持続的な成長を支える強固な経営基盤を構築するとともに、新規顧客の獲得及び市場のニーズに応えるイノベーティブなサービス・事業の進化に向けた取り組みを進める方針であります。また、事業を拡大していくことにより積み上げる経営資源を活用し、日本国内で「社会人教育の第一想起」を獲得し、社会人教育市場のリーディングカンパニーの地位確立を目指して事業を展開してまいります。
当社では経営戦略をより早期かつ確実に達成するために、主に以下の取り組みを実施しております。
①マーケティングとセールスの強化
当社の持続的な成長のためには、当社が提供するサービスの導入を加速度的に増加させることが重要であると認識しております。
当社は、大企業及び中堅企業(注1)への「Schoo for Business」の導入拡大を成長戦略の柱に据えて、Web広告を通じたオンラインマーケティング施策の強化、組織営業力の強化のほか、大企業向けには、SaaSプロダクトと顧客課題に寄り添うオプションサービスを組み合わせることにより、顧客ニーズへの対応力を高める取り組みを積極的に行っております。
(注1)大企業及び中堅企業
当社は、従業員数2,000名以上を大企業、従業員数600名以上2,000名未満を中堅企業として顧客カテゴリを定義付けしております。
②カスタマーサクセス体制の強化
当社は、毎月の利用料を積み上げて継続的な収益を長期的かつ安定的に確保できる収益構造(サブスクリプション型のリカーリング・レベニューモデル)のSaaSを軸とした事業を展開しております。そのため、収益力を更に高めるには、初期段階の導入課題、運用課題を解決し、導入企業の利用継続を促進及びアップセルを推進することが重要であると認識しております。
当社は、顧客体験価値の向上が顧客による継続利用及び当社の収益向上に重要な役割を担っているとの認識のもと、導入初期段階の課題を解決し、継続的な運用サポートを提供するカスタマーサクセス体制を強化しております。法人向けの「Schoo for Business」については、初回導入時には特定社員向けの一部導入から開始し、その後全社導入に向けたアップセルを推進することで、ARPA(Average Revenue per Account)の向上を追求し、MRR(Monthly Recurring Revenue)を高めていく戦略を進めております。
③新規サービスの展開
当社が属する教育産業においては、コロナ禍によるDXの加速化やニューノーマルなど社会環境の著しい変化がもたらされたことから、急速な進化・拡大を続けており、当社においても顧客のニーズを満たす新サービスの展開を常に検討しております。今後、当社ビジネスの強みであるオンライン学習サービスの販売と連関するサービスの商品化を進めることで、持続可能な新たな価値を創造していく方針であります。
(4)目標とする経営指標等
当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するために、当社のSaaSから生み出されるサブスクリプション型のリカーリング収益(経常的に得られる当社サービスの利用料)を継続的に成長させることを基本方針としております。その達成状況を判断する上で、法人向けサービス「Schoo for Business」の、MRR(注1)、契約社数(注2)、ARPA(注3)及びNet Revenue Churn Rate(注4)を重要な指標としております。MRRは、毎月経常的に得られる当社サービスの月額利用料の合計額であり、経営上の目標の達成状況を把握するものです。MRRは契約社数とARPAにブレイクダウンすることができます。そのため、MRRを高めていくためには、契約社数の拡大、ARPAの向上が重要であると考えております。また、Net Revenue Churn Rateを低く抑えることで安定した収益拡大に繋げます。
(注1)MRR
Monthly Recurring Revenue の省略表記で、月次定期収益のことをいいます。
(注2)契約社数
法人向けビジネスの顧客社数のことをいいます。
(注3)ARPA
Average Revenue Per Account の省略表記で、1顧客当たりの平均売上金額のことをいい、各四半期決算月の法人MRR実績を四半期末時点のサービス提供社数で割って算出した金額を記載しております。サービス提供社数は、サービスの利用契約のあった企業社数で契約ベースのユニーク数となります。
(注4)Net Revenue Churn Rate
解約率は、既存顧客のアップセル/ダウンセルを考慮したNet Revenue Churn Rateを採用しており、四半期決算月ごとに以下の算式により算出しております。
「{今月新規法人MRR(当月獲得)-(今月総法人MRR-前月総法人MRR)}/前月総法人MRR」の12か月平均
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 優秀な人材の確保及び育成
今後の一層の事業拡大及び収益基盤の確立にあたり、優秀な人材の確保及び育成が重要と考えております。当社の「世の中から卒業をなくす」というミッションに共感する優秀な人材を適時採用するとともに、当社の事業領域において市場リーダーシップを構築していくため、各種研修等の人材育成制度を充実させることによって、既存社員の能力及びスキルの向上を図り、企業と人材が共に成長することのできる体制の整備・維持・改善を積極的に推進してまいります。
② 知名度の向上
当社の企業価値向上にとっては、「Schoo for Business」をはじめとした各サービスの知名度の向上を図り、社会人教育市場のリーディングカンパニーの地位を確立していくことが必要と考えております。また、知名度の向上は、大手企業との提携等も含めた事業展開をより有利に進めることや、サービスを支える優秀な人材を採用・確保することにも寄与すると考えており、それぞれに適した広告活動を推進していく方針であります。
③ 利益の定常的な創出及び財務健全性の確保
当社は、当事業年度に創業来初の黒字化を達成しましたが、広告投資を含む将来の事業成長のための投資及び当該事業成長を支える優秀な人材の採用強化を積極的に進めたことにより、前事業年度までの経営成績は営業損失となっております。一方で、先行投資に関しては金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等の資金調達により、今後の資金繰りに支障が無いように対応しております。
当社の収益モデルは、当社サービスが複数年にわたり継続して利用されることで収益が積み上がっていくストック型の構造にありますが、収益を積み上げていくために費用が先行して計上されるという特徴があります。事業拡大に伴い増加傾向にある人件費及び採用費、先行投資として計上される広告宣伝費等の費用については、顧客基盤の拡大に伴い売上高に占める比率を低減させていくことが可能となります。
今後の効率的な新規顧客獲得活動や継続率の確保と人材育成を通じて会社全体の生産性を向上させることにより、収益性の向上に努め、利益を定常的に創出できる体制を構築し、安定した財務健全性を確保していく方針であります。
④ 事業領域の拡大
当社は、主力サービスの「Schoo for Business」を中心に収益基盤を構築しておりますが、今後の更なる成長を実現するためには、積極的な新規事業の開発・育成をしていくことが課題であると認識しております。既存事業を拡大していくことにより積み上げる経営資源を活用し、学び続けられる仕組みを通じて社会課題の解決に貢献する、価値の高いサービスを積極的に展開することで事業領域の拡大を図ってまいります。
⑤ 情報管理体制の強化
当社が運営する事業においては、顧客情報、個人情報を多く取り扱っており、これらの情報管理体制の一層の強化が重要であると考えております。
個人情報保護方針及びインサイダー取引の未然防止を含む社内規程の整備並びに規程の運用の徹底、社内研修の実施を通じて、これらの情報については厳正に管理していますが、引き続き関連社内システムの一層のセキュリティ強化、社内研修の更なる整備等を図り、情報管理のための体制を強化してまいります。
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