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【東証:269A】「情報・通信業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当社が本書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)経営方針
当社は「ひとを科学し、寄り添いをつくる」をミッションとして掲げ、「人の身体性・精神性・行動をデータとロジックに基づき分析/可視化する。また、その技術を簡単に利用できるように、仕組みを開発し続ける。その仕組みによって、人と社会がより最適な状態で触れ合い、人のポテンシャルを解放したり、生活の質を高めたり、と心身豊かになれる世界をつくります。」を実現すべく、様々な事業に取り組んでおります。
また、ミッションの達成のために、短期・中期においては「デスクレスワーカーのエンパワーメント」「ウェルネスデータの分析・可視化による」に取り組んでまいります。
① デスクレスワーカーのエンパワーメント
国内就業者のうち、いわゆるデスクレスワーカーは約60%を占めていますが、現場ではまだまだ紙ベースの作業が多くDX化が進んでいない状況があります。
書類作成やPCへの転記作業などに時間をとられることや、情報共有のタイムラグや記入漏れ・紛失などのリスクがあり、こういった状況下では、当然データ管理も難しく、企業にとって重要な資産であるデータも活用することができません。
業種柄デジタル人材が不足することが多く自社でのシステム構築等も難しいことから、当社では社内のデジタル人材への不足に対してAIを用いた解決策を提示し、業務の効率化やデータの利活用等(アナログからデジタル)によるデスクレスワーカーのエンパワーメントを進めてまいります。
※『2023年度総務省統計局「労働力調査(基本集計)」』 オフィスワーカー(管理的職業/専門的・技術的職業/事務従業者)、
その他デスクレスワーカーを保安職業/農 林漁業/生産工程/建設・採掘/運搬清掃等/分類不能 従業者と定義
② ウェルネスデータの分析・可視化による健康寿命の延伸
「健康寿命の延伸」について、厚生労働省が2019年5月に「健康寿命延伸プラン」という「2040年までに健康寿命を約5歳伸ばす」といった計画を打ち出されているように、医療費の増大の一要因ともなっており社会的な課題となっております。
当社は、AIプロダクトである「シセイカルテ」を通じて100万回以上の姿勢分析を実施し、そのデータを蓄積しております。姿勢は様々な不調と相関関係があると言われており、今後更なるウェルネスデータの取得により様々な課題解決に取組み、健康寿命の延伸への寄与を目指しております。
また、WHOの2019年の調査(Life expectancy and Healthy life expectancy Data by country(World Health Organization))によれば、平均寿命と健康寿命の差の順位において日本は33位であり当該領域の課題は国内に限った話ではないことから、まずはAIプロダクトにおいて海外展開も視野に入れて事業を進めております。
(2)経営戦略
当社のExpert AI事業は、AIソリューション及びAIプロダクトで構成されており、いずれもそれぞれ単体でのサービス提供が可能となっております。競争力の源泉として、共通する開発基盤を持ち、技術やインフラの共通化や、ノウハウやリソースの共有等を行い、売上の最大化と開発コストの低減が行えるといった特徴を有しております。共通する開発基盤においては、コンサルタント、デザイナー、エンジニア/アルゴリズムエンジニア、プロダクトマネージャー/プロジェクトマネージャー、専門家(理学療法士、整体師等)及び外部パートナーといった人的リソースを有しております。
AIソリューション及びAIプロダクトのいずれもフロー型の売上高及びストック型の売上高で構成されております。AIプロダクトはSaaSであるため売上に先行して開発やマーケティングが必要となりコストが先行するビジネスモデルでありますが、AIソリューションは主に準委任契約によりサービスを提供しており、AIプロダクトと比較して早期に収益が確保できるビジネスモデルであります。各サービスの売上高のボリュームやタイミングにより、一定の開発資金を確保しつつ安定したストック売上高を計上できるような体制としております。
当社の事業拡大はAIソリューションから始まり、AIプロダクトの順に進んでおり、今後もその好循環により拡大を見込んでおります。今後も様々なExpert AIを用いたAIソリューション及びAIプロダクトの提供や、そこから生み出されるアセット(技術・データ等)を活用したプラットフォームビジネス等の創出を見込んでおります。同時にAIソリューション及びAIプロダクトにおいてストック売上が積み上がることにより、収益基盤及び財務基盤の安定化に寄与するものと考えております。
収益基盤及び財務基盤の安定化により、新規事業等の投資資金を確保し、非連続な成長が実現できるよう努めてまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社はより高い成長性と、安定的な収益基盤を両立させることを目指しており、売上高成長率、ARR(*)、ストック売上比率及び取引社数を重要な経営指標と捉えております。
売上高成長率については当社として高い成長性のターゲットとしている40%以上を最近3期間において維持し、ストック売上比率については安定的な収益基盤という観点からターゲットとしている50%程度の水準を同期間において概ね維持しております。ストック売上とは、顧客又はプロジェクトから契約等に基づき概ね1年以上の期間において売上が見込めるものと定義しており、例えばAIプロダクトにおける月額利用料、ソリューションサービスにおけるライセンス利用料及び保守運用費用等がこれに当たり、AIプロダクトにおいて多くが計上されます。安定的な収益基盤だけを言えば、よりストック売上比率が高い方が望ましいですが、上記経営戦略における資金繰りの観点や、AIソリューション及びAIプロダクトをともに成長させていく観点から上記の指標をターゲットとしております。また、取引社数については、Expert AI事業全体での拡大の指標として重要視しております。
(*)Annual Recurring Revenueの略称であり、SaaSのストック性のある既存契約から今後12ヶ月で想定される売上高を表す指標をいう。
各指標の推移等については、以下のとおりであります。
※各指標の定義等は、以下のとおり
・「ARR」は、期末月におけるMRR(AIプロダクトとAIソリューションのストック売上高の合計)×12カ月で算出
・「ストック売上比率」は、「ストック売上高=AIプロダクト 月額費用+AIソリューション ライセンス費用・保守運用費用等」と定義し算出
・「AIソリューション 上位10プロジェクト平均受注単価」は、 当該期に新規受注したプロジェクトの受注額の平均値
・「AIソリューション継続率」は、売上高100万円以上の取引先について、前期に売上計上があった取引先のうち当期にも売上計上があった取引先の割合
・「AIプロダクト カルティクラウド アカウント数」は、 カルティ シセイカルテ・カルティ マルチカルテ・カルティ セールスのアカウント数、及びカルティチャットの
取引社数の合計
・「AIプロダクト解約率」は、カルティ シセイカルテ・カルティ マルチカルテ・カルティ セールスにおけるMonthly Gross Revenue Churn Rateの年間平均値(カルティ
チャットは取引件数の重要性が低いことにより除外)
(4)経営環境
当社はAIソリューション及びAIプロダクトを通じて、当社のターゲット顧客であるウェルネス業界のAI技術の浸透やデジタルトランスフォーメーションを支援しております。
デジタルトランスフォーメーションは企業の重要な課題として位置付けが高まっており、企業価値の向上につながる取り組みとして投資が行われています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響から、リモート化や自動化などのオペレーション改善を目的とする投資や、Web・スマートフォンを軸とした顧客接点改革への投資が積極的であります。
変化の迅速かつ柔軟な対応を目的として、システムの内製化(ある業務において外部委託をやめて、自社内でその業務を行うよう変更すること)が本格化しており、2030年度には投資金額が5兆1,957億円となることが予測されており、当社がターゲットにしているウェルネス業界だけを見ても、2020年度 731億円から、2030年度予想では2,115億円に拡大することが見込まれております。(『2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編』(富士キメラ総研))。当社は事業領域拡大により、ウェルネス業界だけではなく、より広い市場にアクセスしてまいります。
しかしながら、自社内でシステムの内製化を完結できない会社においては、当社のような専門技術やノウハウがある会社と共同して進める、あるいは容易にDXが実現できるツール等を利用することになります。当社としてはそこにビジネスチャンスがあると認識しており、自社仕様・個別対応が必要なお客様にはソリューションサービスを、汎用的なツールで解決できるお客様にはSaaS型のAIプロダクトを提供することが可能であることから、当社の活躍の場が広がっているものと認識しております。
例えばAIプロダクトにおいて提供している「シセイカルテ」や「マルチカルテ」の顧客企業は、小規模~中規模の企業が多いことから余剰資金に乏しく、デジタルトランスフォーメーションに対して多額の投資を行えない状況が多く見受けられます。また、実際にデジタルトランスフォーメーションと言っても、何をどのように行えばよいか、といったことからサポートが必要なケースも多く見受けられます。そのため、当社では各企業の初期投資を抑えられ、かつ自社での保守運用が不要なSaaSでのサービス提供を行っております。
世界のデジタルトランスフォーメーションの市場規模は、株式会社グローバルインフォメーションの調査により、2026年に総額1兆2,475億ドルに達すると報告されております(デジタルトランスフォーメーションの市場規模、2026年に1兆2,475億米ドル到達予測(株式会社グローバルインフォメーション))。海外展開についてはAIプロダクトから進める方針であるため、「シセイカルテ」及び「マルチカルテ」の多言語対応を行っており、具体的な販売・提供体制については検討してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 開発体制の強化
当社の持続的な成長のためには、AIソリューション案件の継続的な獲得・開発や、自社AIプロダクト継続的な創出を続けることができる体制の維持及び拡大が必要となります。また、当社が開発したプロダクトを安心してお使いいただけるよう、安定的な保守・運用体制の維持・向上も不可欠となります。そのためには、優秀な人材の確保や、技術的な知見・ノウハウ獲得、これらを社内で活用していく仕組みを構築することにより、より強固な開発・運用体制の構築に努めてまいります。
② 営業体制の強化
AIソリューションについては、顧客ニーズに応じた提案力のみならず、案件の遂行までを担当するため実行力も兼ね備えた人材が必要となります。
AIプロダクトについては、2020年1月の「シセイカルテ」リリース後から、当該プロダクトの営業活動を積極的に行っております。「シセイカルテ」はいわゆるSaaSプロダクトであり、顧客数が多くなればなるほど固定費を吸収して利益率が高まるビジネスモデルであるため、先行的に営業体制の強化・拡大が必要となります。
このように、当社の成長のためには営業体制の強化が必要であるため、優秀な営業人材の積極的な採用を行ってまいりますが、同時に営業管理体制の運用・改善などによる効率化により、より収益が安定的に獲得できるような体制構築に努めてまいります。
③ 内部管理体制の強化
当社は当事業年度において事業規模拡大の途上であり、事業規模拡大を支え、事業上のリスクを低減させるための内部管理体制の強化を重要な課題であると考えております。このため、将来の事業規模拡大を想定したうえで、適切かつ必要な内部管理体制の整備に努めてまいります。
④ 情報管理体制の強化
当社はAIソリューション及びAIプロダクトにおいて、個人情報や顧客の機密情報を取扱っております。また、新たな案件についても同様の情報を取扱う可能性があり、これらの情報管理体制を強化していくことが重要であると考えております。現在は個人情報保護管理規程等に基づき管理を行っておりますが、今後も社内教育・研修の実施やインフラを含めたシステムの整備などを継続して行ってまいります。
⑤ システムの安定性・効率性の確保
当社の提供するAIソリューションの一部やAIプロダクトは、インターネット上でサービス提供を行っており、顧客の維持・獲得のためにはシステムの安定稼働の確保は必要不可欠となっております。また、効率的なシステム設計によりインフラコスト低減も見込まれることから、今後も引き続きシステムの安定性確保及び効率化に取り組んでまいります。
⑥ 黒字化と事業資金の確保
当社は前事業年度及び当事業年度において先行投資的な研究開発、人材投資、マーケティング活動等により当期純損失を計上しており、本書提出時点において通期で安定的に利益を計上できるような収支構造には至っておりません。そのため、事業資金の確保は資金調達コストを勘案して行っており、これまでその資金は借入れ及び第三者割当増資により調達しております。当社のAIプロダクトは研究開発やマーケティング活動が先行的に発生するビジネスモデルであり、現在は先行投資フェーズから回収フェーズに移行する端境期に当たります。当社としては顧客数やアカウント数の増加に伴うストック収益の獲得により、損益分岐点を超えて安定的な黒字化の実現を企図しており、それに向けた営業活動や開発活動を行ってまいります。
⑦ 蓄積したデータの利活用
当社はAIソリューションやAIプロダクトを通じて、利用者等と合意した範囲内で様々なデータを蓄積しております。これらのデータは各サービスの精度向上等には活用されているものの、他のサービスや新たなビジネス等への利活用は進んでおりません。当社の事業拡大のためには、当社の有形・無形の資産を利活用し、Expert AIを強化、また当該AIを用いた更なるビジネス展開を行うことが不可欠であると考えておりますが、同時に個人情報や顧客の機密情報等の慎重な取扱いも不可欠であると考えております。そのため、取扱う情報の内容等に応じて慎重に配慮したうえで、新たな事業・サービス拡大に努めてまいります。
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