SOLIZE
【東証スタンダード:5871】「サービス業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営理念等
当社グループでは、経営理念を示す「理念」及び「使命」を以下のように定めております。
理念: 「進化を感動に」
使命: 「知恵と技術をエンジニアリングし、価値創造を革新する」
「『本質的に美しいものづくり』を実現する」
(2) 経営方針等
当社グループは、設立から30年以上が経過し、社会・産業・技術等の大きな変化への対応として、経営方針として「システムとしての企業体」、「アントレプレナーシップ」を掲げるとともに、全社での変革(Corporate Transformation)を推進しております。またこれらの活動を支える全社スローガンとして「人間の創造性はこれからだ。」を設定しております。
経営方針
・「システムとしての企業体」は、社内外でのつながり、掛け合わせを通じ付加価値の向上やケイパビリティ獲得の早期化を目指すものです。
・「アントレプレナーシップ」は企業体としての継続的な成長に向け、新しく事業を創造する強い情熱を持った新たな事業リーダーを多く生み出すという想いが込められています。
全社変革(Corporate Transformation、以下、「CX」という):長期的な計画を策定し、次の2段階で実行中となります。
・CX第1フェーズ:
目的:企業体としての組織・プロセス・戦略等を再構築することで、次の成長に向けた基盤構築
期間:2020年~2024年
・CX第2フェーズ:
目的:当社グループ使命を実現する企業体への変容
期間:2025年~2033年
全社スローガン「人間の創造性はこれからだ。」は、地球資源を際限なく消費するだけでなく、余剰や無駄がなく資源が循環するものづくりのあり方、人とモノと自然環境が調和する世界の実現等の社会の進化に向け、開かれた人の知恵による人間の創造性の駆動を目指すものです。
(3) 経営戦略等
当社グループは、3D技術等のデジタルテクノロジーを活用しデジタルものづくりを革新する、グローバルな製品開発のエンジニアリングパートナー企業であります。創業以来、製造業の顧客を中心に各種サービスによる価値を提供して参りました。グローバルでより大きな価値を顧客へ提供すべく、海外現地法人の設立、海外でのサービス提供等の海外展開も進めております。
2020年~2024年までのCX第1フェーズにおいては、長期的な全社変革とそれを実行するためのより迅速な経営判断及び効率的な運営体制構築を目的として、2021年1月1日付で当社を吸収合併存続会社、完全子会社であったSOLIZE Engineering株式会社及びSOLIZE Products株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行いました。本合併に伴い、国内における事業部門を再編し各法人間で分かれていた事業・技術・サービスを掛け合わせ、社員の融合及び文化醸成等を行うことで、サービスの提供価値の向上や新規の事業・技術の開発を推進しました。また、国内管理部門も統合し、管理業務・管理プロセスの統合・標準化、社内業務システムの刷新、人事制度の統合等が完了しました。加えて、2024年6月には、積極的な投資をタイムリーに進めることを目的とし、グループ投資戦略部を新設し、当社グループの企業価値向上に資するプロジェクト等の実行及びM&Aや資本提携等の戦略立案・実行を加速させる体制を構築しました。
2025年以降のCX第2フェーズを実行するにあたり、当社の中長期の成長目標を設定いたしました。まず、人間の創造性と企業に求められる公益性を軸にデジタルテクノロジーを通じてさまざまな制約を超え、次世代の「ものづくり」「企業運営」そして「社会」を変革する担い手を目指し、当社グループ使命を実現する企業体への変容を推進します。また、「デジタルものづくり」というコア領域で培った実践と変革を応用することで、提供価値の拡大を推進し、2027年に売上高400億円、2033年に売上高1,000億円の企業規模を目指して参ります。
上記、当社グループ使命を実現する企業体への変容の推進及び、今後のさらなる事業拡大、企業価値の向上を追求するための成長手段として、従来領域と新規領域の掛け合わせによる成長に加え、M&Aを活用することにより成長速度を加速して参ります。
加えて、より一層の経営のスピード化を図り、機動的かつ柔軟な経営判断を可能にするグループ運営体制を構築することが望ましいと判断し、持株会社体制へ移行を推進いたします。持株会社体制への移行により、持株会社は経営戦略の策定、資源の再配分、グループガバナンスの強化、M&A等の戦略投資及び企業経営のスタッフ的機能を中心としたグループ経営に特化し、各中核事業会社はそれぞれの事業領域で、あらゆる経営環境の変化に迅速に対応することで、グループ全体として、柔軟かつ強靭な経営体制へと進化することを目指しております。2025年1月1日付でエンジニアリングサービス領域におけるソフトウエア事業を分社化し、ソフトウエア事業以外の中核事業に関しては、2025年7月1日付での分社化を計画しております。
2024年9月に策定した『中期経営戦略2025-2027』に基づき、中長期の企業価値の向上に主眼を置き、新たな取組にチャレンジし、競争力のさらなる強化と成長に向け新たな技術獲得や事業開発を加速させて参ります。
・顧客への貢献価値の向上
個別のサービス提供に留まらず、エンジニアリングサービス及びマニュファクチュアリングサービスの実践力による総合的なサービス提供を行うことで顧客の開発パートナーとなること、また、顧客の将来への競争力を強化するために変革力の提供を行うことで変革パートナーにもなることにより貢献価値を向上させます。
実践力と変革力とを融合させることで、開発及び変革パートナーとしてより高い価値を提供することが可能となります。例えば、新たなデジタル技術を導入する顧客に対し、エンジニアが導入に対する技術支援をすると同時にコンサルタントが新技術導入後の最適なプロセスへの変革を提供することや、エンジニアが新たな技術導入後の開発実業務をオンサイトで支援しながらコンサルタントが新プロセスにおけるノウハウ構築やさらなる効率化を実行することなどです。また従来は顧客内で実施してきた業務を外部委託が可能な状態にするために、コンサルタントがプロセス・ノウハウ・要求項目等の整備を行い、その上で当社が委託先となることで顧客の開発力の向上に寄与することが可能です。
・デジタルものづくりのケイパビリティの向上
当社が保有するケイパビリティの融合によるサービス提供領域の拡張と新しいケイパビリティの獲得に伴う領域の拡張を継続します。またその実現のために、研究開発部門の設置、事業開発の専門部門の設置を行い、従来事業から得た収益を次の成長に向けた事業・技術開発のための投資に割り当てます。拡張の具体例は以下の図のとおりです。
・海外事業の拡張
既存の米国、中国、インド、欧州に加え、北米市場の拡張に向けて新たにカナダ法人を設立しました。加えて、成長率の高いアジアマーケットへの進出・拡張のため、タイ法人も設立し、海外事業の成長を一層加速いたします。
・M&A・スタートアップ投資
当社の健全な財務状況を背景としたM&A・スタートップ投資の積極活用によりインオーガニック成長を実現するとともに、既存ビジネス成長に貢献する新領域・新技術の獲得との両立を目指し事業成長を加速します。
・人的資本経営の実践
経営戦略と連動した人材戦略を策定し、採用投資、人事制度投資、人材育成・組織開発投資、社員満足度・エンゲージメント投資を行い、当社の成長の原動力であるエンジニア及びコンサルタントの確保と活躍を推進します。特に多くのハイエンド人材を確保するために、2022年以降、採用力の強化を継続しており、2027年までに年間500名を採用できる体制を構築して参ります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として以下の項目を定めております。なお、国内エンジニア数 (含 コンサルタント)については、国内のエンジニア数及びコンサルタント数の合計であり、当社グループの売上高及び営業利益の大半を占めるデザイン事業の業績に大きく影響するため、重視しております。
a. 売上高対前年増加率
b. 営業利益
c. 国内エンジニア数 (含 コンサルタント)
(5) 経営環境
当社グループは、グローバルに製品開発サポートを行うグローバルエンジニアリング企業であり、当社グループの主要顧客は自動車業界を中心とした製造業となります。
自動車業界においては、CASE(Connected、Autonomous/Automated、Shared、Electric)と呼ばれる新しい領域での技術革新や、地球環境問題への対応としてカーボンニュートラルへの取り組みが急速に進んでおります。そのような状況の中、コネクテッドカー、自動運転などの技術の実運用を目指し、自動車メーカー各社の開発需要の増加が期待されております。電気自動車(EV)、自動運転技術の開発などから、自動車開発における電子制御の複雑化とともにサイバー攻撃への対応の重要性が増しており、MBD、ソフトウエア、デジタルリスク領域の需要が高まっております。同時に自動車完成車メーカーにおいては、上述の先端領域へのリソースシフトが進んでおり、それ以外の領域において外部委託化が加速しております。これらの状況から、当社グループとしても、自動車メーカー及び自動車部品メーカー等による開発投資の拡大継続を見込み、先端領域への支援と外部委託化が進む内外装領域の一括受託設計支援の両面において当社グループの幅広いエンジニアリング技術を融合し、顧客の製品開発をサポートすることでエンジニアリングサービスの収益拡大を図って参ります。
自動車完成車メーカーの研究開発費は以下のように安定的に推移しております。
また3Dプリンターを活用したAdditive Manufacturingのものづくりへの適用が拡張しており、従来の試作用途だけでなく、少量量産の最終部品としての用途が本格化しつつあります。本領域における長期にわたる経験を活かし、3Dプリンターの活用のための上流工程からのエンジニアリング支援及び最終部品としての品質を確保した製造の請負が拡大すると見込んでおります。当社はこれまでも3Dプリンター活用を推進し国内における3Dプリンター市場の拡大に貢献して参りましたが、今後もそれを継続しマニュファクチュアリングサービスの収益拡大を図って参ります。
これらのエンジニアリングサービス、マニュファクチュアリングサービスの需要の増加に加え、将来の競争力確保に向け部門横断での開発プロセス変革やDX活動が増加しており、当社グループのコンサルティングサービスの需要も高まっております。変革活動実施のための顧客内でのリソースを確保するために、当社グループのエンジニアリングサービスを先行的に活用し開発キャパシティを保ち、かつ、エンジニアリングサービスを通じて獲得した顧客の製品・開発プロセス・技術等の知識を踏まえたコンサルティングサービスを提供することで収益拡大を図って参ります。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(当社グループ全体の事業上の課題)
①人的資本経営の実現
当社グループは事業拡大と継続的成長のために、顧客企業と共に高い価値を生み出す優秀な人材が重要な資本であり、その採用が重要です。2024年は人事トランスフォーメーション元年とし、人的資本経営の実践を目指した人財戦略に注力して参りました。新卒採用者、経験者採用ともに積極化し、採用数を増加させています。退職者も一定数いますが、入社者数が上回っており、2024年12月期の退職率は8.3%でした。
国内採用者数(人)
| 2020年12月期 (注)1 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
国内新卒 | 95 | 98 | 86 | 84 | 93 |
海外新卒(注)2 | 12 | 25 | 11 | 3 | 4 |
経験者 | 64 | 51 | 110 | 149 | 202 |
合計 | 171 | 174 | 207 | 236 | 299 |
(注)1.2020年12月期は、当社及び旧SOLIZE Engineering株式会社、旧SOLIZE Products株式会社における採用者の合算値であります
2.海外新卒の採用活動については新型コロナウィルスの感染拡大により2020年12月期以降、活動を縮小しておりましたが、2024年12月期よりアジア地区を中心に活動を再開しております
また、当社グループは「お客様の高い期待に応える、プロフェッショナル集団」として、製品開発をリードする人材や新しい手法・道具、進化する企業文化の創造を目指しています。「人財体系図」に基づく新任役職者研修や、経験者合同研修、学習サイトを拡充し、人材の育成システムを維持・強化します。
なお、国内の派遣契約におけるエンジニアの平均時間単価、稼働率は以下のとおり推移しております。
国内における派遣契約の平均時間単価(円)
| 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
平均時間単価(注) | 4,326 | 4,339 | 4,385 | 4,556 | 4,809 |
(注)経験者・新卒含む全派遣契約の平均時間単価(残業代は除く)の平均値であります
国内における派遣ビジネスの稼働率(%)
| 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
稼働率(注) | 85.8 | 87.5 | 94.4 | 94.9 | 95.0 |
(注)派遣技術者数(研修中の従業員を含む)に対する稼働人数の割合を期中平均にて算出しております
②グローバルサポート体制の強化
当社グループは、サービスの海外展開、海外事業の開発に取り組んでおり、海外企業へのサービス提供や、日本企業の海外展開支援を既に行っておりますが、海外市場におけるビジネスチャンスを十分に取り込めているとは言えず、グローバルサポート体制の強化が課題であると認識しております。グループ全体の製品開発における強みを活用した海外事業戦略の実行や、海外市場におけるブランド構築を促進して参ります。
③投資について
当社グループは事業の成長と人材・経営基盤の強化を目的に、研究開発投資や設備投資、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)投資を行っています。これらの投資は事業環境の変化や投資先企業の進捗状況により、事業や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、投資案件の内容・規模により、取締役会、SOLIZE執行役員会、戦略投資会議等において、事業計画に基づく十分な検討を行ったうえで投資に対する意思決定をしており、また、投資実行後も定めたプロセスに則り進捗確認を実施しております。
(デザイン事業の課題)
①製品設計開発に係る総合的なデジタルエンジニアリングサービスの拡大
当社グループの主要顧客の属する自動車産業においては、電動化や自動運転等の新規技術に関する開発意欲が高く、引き続き、設計開発の受託、エンジニア派遣サービス、変革コンサルティングサービス、ソフトウエア開発等の分野への当社サービス拡大を目指して参ります。また、前項①に記載しましたとおり、人財採用及び育成も強化いたします。
②ソフトウエア関連事業の分社化準備
2025年1月付でソフトウエア関連事業を分社化する活動及び関連する人員増強を行って参りました。主に販売管理領域の経験者の積極採用、国内拠点の拡張を進めた結果、2024年は収益に先行し、販売費及び一般管理費が増加いたしました。来期に向け、開発を担うエンジニアの採用及び育成が急務であると認識しております。
(マニュファクチュアリング事業の課題)
①最先端のAM(※)技術を駆使しAM市場をリードする
2024年は、最新型の3Dプリンター設備増強を行ったほか、大和の工場増床を進め、金属3Dプリンター工場を集約し、生産体制見直しによる合理化、生産能力拡大を推進して参りました。既存ビジネスである各種工法による試作・装置販売は、合理化した組織で最大利益を継続的に創出し、その利益をAM市場拡大投資へ有効活用し、欧米に比してものづくりのDX化推進が遅れている国内AM市場をリードして参ります。
※ AM:Additive Manufacturing(積層造形で物体を作り上げる製造プロセス)
②少量量産領域への事業拡大
当社グループは、3Dプリンターによって最終製品の部品(補給部品を含む)を製造し顧客へ納品する事業を開始しており、最終製品を製作するための技術とノウハウを高め、顧客へ少量量産の価値を訴求し、今後一層の規模と価値の拡大を追求して参ります。
(財務上の課題)
当社グループは、グローバルに存在する顧客のあらゆるニーズに応えることを目的として、新規事業や新規技術の開発とそれに必要となる優秀なエンジニアの確保、増強のために採用活動の強化及び入社後の教育・トレーニング等を行っています。一時的な景況の悪化により当社グループの提供するサービスや製品への需要が減少する時期においても、当社グループの成長の源泉である人材を維持するための支出が発生し、財務上の安全性が低下する可能性があります。このような状況に備え、当社グループでは一定程度の資金を確保し安定的な経営に努めて参ります。
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