SBIレオスひふみ
【東証グロース:165A】「証券業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「資本市場を通じて社会に貢献します」という経営理念のもと、変化をチャンスととらえ時代と共に成長する企業や時代の変化に左右されず本質的に成長し続ける優れた企業を発掘し、これらの企業へ「ひふみ」を通じて投資を行っています。そして、日本人の「投資=悪」というイメージを払拭するため、たくさんの方々に「ひふみ」を保有いただき、「投資は素敵な経済活動」であるということをお伝えするとともに、現在の状況や今後のライフプランによって異なる一人一人の資産形成のニーズにお応えして、お客様が夢や希望をもってあゆんでいく力になりたいと考えております。
(2)経営戦略等
当社グループは、経営理念の実現のため、ファイナンシャル・インクルージョン(※)を通じて、金融サービスの恩恵をすべての人々が享受できる世の中を目指しております。より多くの人々を「次のゆたかさの、まんなかへ」という思いを込めて、「お金を学び、ひふみでつみたて、共助で支える」取り組みを推進し、投資文化の普及に注力してまいります。なお、当該取り組みを加速させるために、戦略的M&Aや事業投資を実施してまいります。
(※)あらゆる人々が金融サービスへアクセスすることができ、金融サービスの恩恵を享受できるようにすることを意味し、金融包摂と訳されます。
① お金を学ぶ
日本銀行の資金循環統計(速報)によると、2024年3月末の日本の家計金融資産残高2,185兆円のうち、投資信託の残高は119兆円(5.4%)にとどまっています。一方、現金・預金の残高は1,118兆円で、全体の50.9%を占めており、その比率は過去10年以上ほぼ変わらず推移しています。老後2,000万円問題を端緒として資産形成の重要さは認識され始めたものの、「何から始めたらよいのか分からない」というのが大多数の意見ではないかと考えております。
当社グループでは、創業以来、資産形成にアクティブなお客様にエクイティ商品を主に提供してきましたが、これだけでは日本人の大多数である、資産形成にパッシブな方々の将来不安を解消することは難しく、このままでは、資産形成に対する意識によって金融資産の構成が二極化し、金融格差が広がるのでは、と懸念しております。
これらの金融格差を是正するためにも、投資の魅力やお金についての知識を様々なメディアを通して幅広い方々にお届けするとともに、誰もが簡単に、安心して資産形成を始めることができる仕組みを開発・提供し、これまで以上に幅広い層へ資産形成を浸透~資産形成を大衆化~させ、金融・投資に関するリテラシーの向上に寄与してまいります。この一環として、オンライン上での金融・経済・投資教育事業を展開する子会社であるフィナップ株式会社を2024年11月に設立し、事業の加速を目指しております。
② ひふみでつみたて
当社グループは、資産形成の基本・スタンダードは「つみたて投資」であると考えております。安く買って、高く売る、それを確実に続けるのは、プロであっても困難であり、時間を味方につけて、コツコツとつみたてていくことが相場の変動に左右されず、健全な資産形成につながると考えているからです。
この「つみたて投資」を、「ひふみ」ブランドを冠した当社グループの運用する投資信託で行っていただくため、「ひふみ」を長期の資産形成に資する商品となるよう日々ブラッシュアップするとともに、当社グループの目指す世界を広く発信することで、全国のお客様に金融商品のスタンダードとして「ひふみ」を捉えていただき、日本中に「ひふみ」によるつみたて投資を普及させ、日本一のつみたて口座数~日本のみんながひふみでつみたて~を目指していきたいと考えております。
③ 共助で支える
当社グループは、預貯金として金融資産を保有する方々に投資を促すだけではなく、多額の金融資産は保有していないものの、働く世代として、定期的な収入を得ている方々に、「つみたて投資」による資産形成を始める一歩を後押しして、金融サービスの恩恵を享受していただくことが大切であると考えております。しかし、諸事情で働くことができず、「つみたて投資」が実施できない方々に金融サービスの恩恵を享受いただくことも、ファイナンシャル・インクルージョンの観点から重要です。
「自助」により自立して生きていくこと、公的な支援による「公助」も大切ですが、長期の資産形成により富を築いた方々からの「共助」こそが、真の意味でのファイナンシャル・インクルージョンの達成につながると考えております。
「共助」の文化の浸透を図るため、寄付プラットフォームの運営を手掛ける子会社である株式会社Kiffyを2025年3月に設立し、寄付ポートフォリオサービスを他社から譲り受け、運営しております。資産形成で得た含み益の一部を寄付に回す仕組みを追加する等、「共助」の厚みを増していくためのプラットフォーム強化についてさらに検討を進めてまいります。
(3)経営環境
① 投資信託委託業務
当社グループの事業領域である投資信託委託業務に関して、一般社団法人 投資信託協会が公表している統計データによると、2025年3月末時点の公募証券投信の純資産総額は236兆3,101億円であり、このうち、ETFを除く公募株式投信の純資産総額は135兆6,425億円となっており、2020年3月末から2025年3月末までの直近5年のCAGR(年平均成長率)で約19.2%となっております。
(出所:一般社団法人 投資信託協会「公募投資信託 資産増減状況」を基に当社作成 データは各四半期末時点)
ETFを除く公募株式投信の純資産総額は増加したものの、日本の家計における投資信託の存在感は大きくありません。日本銀行が発表している資金循環統計によれば、日本の家計金融資産における投資信託の比率は、2024年3月末時点で5.4%にとどまり、2024年3月末における米国の12.8%、欧州の10.6%と比べて低い水準にあり、日本の家計金融資産の過半は現金・預金が占めている状況が続いています。
(出所:日本銀行「資金循環の日欧米の比較」を基に当社作成)
このような状況について、金融庁は、2021年8月に公表した「2021事務年度 金融行政方針」の中で「我が国においては、家計の金融資産の過半を現預金が占めている状況が続いており、資産の伸びも低い水準に留まっている。」と問題視しており、家計の安定的な資産形成を税制面で後押しするために、引き続きNISAの普及に取り組んでいくとしています。
2014年1月に導入されたNISA(少額投資非課税制度)とは、一定の投資枠内で投資によって得た利益が非課税になる制度で、2018年1月には、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度としてつみたてNISAがスタートしました。2024年1月には、非課税期間が無期限になる等「NISA」制度が改善され、日本の家計金融資産が貯蓄から投資に大きくシフトしております。金融庁が公表する「NISA口座の利用状況調査」によれば、NISA口座開設数は2025年3月末時点で約2,646万口座と堅調に推移しており、着実に普及が進んでいます。
(出所:金融庁「NISA口座の利用状況調査」を基に当社作成 データは各四半期末時点)
また、老後資金の確保を目的として、家計の資産形成を支援する年金制度として確定拠出年金制度があります。確定拠出年金制度は、企業や加入者が毎月一定額の掛金を拠出し、加入者自身が運用する年金制度であり、特にiDeCo(個人型確定拠出年金)については、2017年1月から加入範囲が拡大され、加入者数が増加傾向にあります。「確定拠出年金統計資料(運営管理機関連絡協議会提供)」によれば2017年3月時点のiDeCoの加入者数は45万人でしたが、2024年3月時点では329万人と増加を続け、企業型と合わせると確定拠出年金制度の加入者は1,150万人を超えています。
(出所:「確定拠出年金統計資料(運営管理機関連絡協議会提供)」を基に当社作成 データは各年度末)
② 投資顧問業務(投資一任契約に係る業務)
当社グループの事業領域である投資顧問業務に関して、一般社団法人 日本投資顧問業協会の投資運用会員の契約金額は、2024年3月末時点で、635兆7,529億円となっており、このうち、投資一任業による契約金額は、532兆631億円となっています。投資一任業による契約金額の成長率は2014年3月末から2024年3月末までの直近10年のCAGRで約12.5%となっています。
また、国内株式特化の投資一任契約の契約金額は、2024年3月末時点で119兆2,604億円となっており、2014年3月末から2024年3月末までの直近10年のCAGRで約13.1%となっております。
(出所:日本投資顧問業協会「統計資料」を基に当社作成 データは各年度末)
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 人的資本経営の強化
当社グループの持続的成長を実現するためには、優秀な人材を確保し、その人材が持つポテンシャルを引き出すことが不可欠です。投資運用業を筆頭に、お客様に価値を提供するためには、専門的知識を有するとともに、知見や経験を継続的に蓄積できる人材を適切に処遇していくことが重要です。そうしたなか、生産年齢人口の減少等を受け、各業界で人材獲得競争が激化しております。
これを受け、十分な経験を積んだ専門性の高い人材を確保すること、未経験であっても有望な若手を採用し、社内において教育を行って育成していくこと、採用した人材が、その持つ価値を発揮できるよう働きやすい環境や制度を整備していくことが重要な課題であると認識しております。
② 特定の事業領域からの収益依存の脱却
現在、当社グループの収益構造は、子会社であるレオス・キャピタルワークス株式会社の投資信託委託業務からの収益、特に国内外の株式に投資する投資信託からの収益が大部分を占めております。当社グループの理念に合致し、投資家の方々にとって魅力的な商品は容易に開発できるものではありませんが、運用する投資信託の特性が偏ってしまうことは、特定のマーケットの変動が当社グループの収益基盤に大きな影響を与えることもあり、事業リスクの面から見て当社グループの課題であると考えています。したがって、投資文化の浸透をより進めるにあたっても、新商品の開発の可能性を常に考えながら事業・業務に取り組んでいきます。
また、投資信託委託業務だけでなく、経営理念の実現のため、既存の各子会社の事業拡大の促進及び他の事業領域への拡大を模索するほか、バランスシートを活用したM&Aの推進も視野に入れ、収益基盤の安定化を図り、特定の事業領域からの収益に過度に依存しない健全な事業ポートフォリオの構築を目指します。
③ 当社グループ子会社の事業拡大の追求
当社グループは複数の子会社を有しており、当社グループの理念であるファイナンシャル・インクルージョンの実現という方向性で一致しつつ、各社が独自性ある事業領域で活動しています。また、当社グループは他社への少額出資やファンド出資も行っており、出資先から情報を得たり、出資先が持つネットワークを活用したりできる状況にあります。こうしたなか、当社グループ全体の成長に向け、子会社間の相互シナジーを一層発揮していくことが課題だと考えております。
今後、グループ子会社間における情報共有のあり方の改善やグループ子会社間での人的交流の更なる強化等を通じ、子会社各社が有する顧客基盤や取引先ネットワーク、出資先に関連した情報等をより活用できるようにすることで、子会社間の相互シナジーの実現をさらに図ってまいります。
④ 当社グループの内部管理体制の強化
当社グループは2024年4月以降、持株会社体制へと移行し、それに伴い子会社や合弁会社の数が増加しております。この組織構造の変化に対応し、グループ全体の管理体制を構築・強化することが重要な課題であると認識しております。一部の子会社には、金融商品取引業者としての法令遵守の徹底、リスク管理のための内部管理体制の強化が特に求められます。
今後は、子会社の事業に応じた適切な内部管理体制のあり方を模索しつつ、必要な人材の確保や社内教育の充実を図り、継続的な成長を支える効率的かつ安定的な経営を行ってまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、主として、投信・投資顧問事業を行っており、営業収益は投資信託の運用から得られる委託者報酬と投資一任契約等による投資顧問報酬の2種類の収入によって構成されています。委託者報酬及び投資顧問報酬は、運用資産の残高に一定率を掛け合わせることで算定されます。投資顧問業務の一部では、運用成績に応じて発生する成功報酬がありますが、成功報酬が発生する運用資産残高は、当社グループの運用資産残高のごく一部です。
したがって、当社グループにとって最も重要な経営指標は、収益の源泉である運用資産残高となります。
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