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企業概要

 当社の研究開発活動における当事業年度の研究開発費は、571,628千円となりました。

 当社は、PPIを制御する低分子化合物の創薬基盤技術を用いた新薬の研究開発を行っております。当事業年度末時点において、研究開発部に従業員29名が在籍し、創薬のための新規化合物の設計、合成、分析、評価等の業務を社外のコンサルタント、研究機関や受託研究機関等も積極的に活用し、効率的、効果的に運営しております。

 当社では基盤技術の根幹となる高度な合成化学を研究、実施するための施設を保有し、汎用的な合成については外部の受託研究機関を用いることで、機密情報を守りつつ固定費を削減しております。

 当事業年度における研究開発活動の詳細は下記のとおりであります。

(1) 自社開発事業
① CBP/β-カテニン相互作用阻害剤(E7386、PRI-724)

Wntシグナル伝達経路は、ガン、線維化などを制御するタンパク質のネットワークであり、創薬標的として広く研究されています。Wntシグナルは、細胞が「ガン化」「線維化」する際のみならず、細胞が「分化」して正常に機能する際にも重要な機能を果たすため、Wntシグナルを止めることは副作用にもつながります。従来の技術で開発されてきたWnt阻害剤は、Wntシグナルを上流から全て止めてしまうため、強い毒性を示して開発が中止されてきました。

E7386及びPRI-724は、そのような毒性を示すことなく、治療薬として必要な安全性を可能とするコンセプトのもとで創出された化合物です。Wntシグナルは、細胞核内でβ-カテニンがCBPという転写因子タンパク質に結合することでスイッチが入りますが、PepMetics化合物は、このCBPに結合し、CBPとβ-カテニンの結合を阻害します。一方で、PepMetics化合物はCBPと似た別なタンパク質であるP300とは結合しないため、β-カテニンとP300によるWntシグナル経路は機能します。その結果、PepMetics化合物はWntシグナル全体の機能を止めることなく、「ガン化」「線維化」を止めることが可能となります。

a E7386

 エーザイと共同開発したCBP/β-カテニン相互作用阻害剤である経口剤の化合物(E7386)は、2017年7月から固形ガン患者を対象として第Ⅰ相臨床試験を英国で進め、日本においても、2019年3月に固形ガンを対象として臨床試験を開始しました。2021年11月には複数の臨床試験結果に基づき、本剤の臨床におけるPOC(Proof of Concept)を達成しました。

2021年10月には、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(以下、「Merck」という。)の抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用療法での臨床第Ⅰb/Ⅱ相臨床試験を開始し、第Ⅱ相パートに入りました。

 当事業年度においては、2024年9月に開催されたESMO(欧州臨床腫瘍学会)年次総会で、子宮体ガンに対するE7386とレンバチニブ(※)の併用試験の中間解析結果(データカットオフ:2024年5月16日)のポスター発表があり、E7386とレンバチニブ併用の管理可能な安全性と、予備的な抗腫瘍効果が確認されました。本試験は、抗PD-(L)1 免疫療法及びプラチナ製剤を含む化学療法後に増悪した進行子宮体ガン患者を対象とした、非盲検臨床第Ⅰb 相試験(NCT04008797)です。ポスター発表では、これまでに投与された16名の患者において、管理可能な安全性プロファイルが示されました。また、部分奏効 (confirmed PR、腫瘍の大きさが30%以上縮小)が44%(7名)、腫瘍安定(SD、腫瘍の大きさが-30%~+20%)が25%(4名)でした。引き続き、残りの患者への投与が進行しています。

※ レンバチニブ: 本剤は、エーザイが創製し、エーザイとMerckが提携契約のもと、共同開発及び共同商業化を行っています。

b PRI-724

 当社が2008年に見出したCBP/β-カテニン相互作用阻害剤である注射剤の化合物(PRI-724)は、2018年5月に大原薬品に導出しました。

 前事業年度には大原薬品が主導してC型及びB型肝炎ウィルス及び非アルコール性脂肪肝炎(Non-Alcoholic SteatoHepatitis; NASH)に起因する肝硬変患者を対象とする第Ⅱ相臨床試験を開始し、導出契約におけるマイルストンを達成して一時金を受領いたしました。当事業年度も引き続き第Ⅱ相臨床試験を継続しています。

② FEP

 従来進めてきたeIF4E/eIF4G阻害剤である4E-BP1模倣化合物のプログラムは、リード化合物の最適化を進めております。eIF4EとeIF4GはCAP依存性翻訳複合体の主要構成因子であり、mRNAの情報からタンパク質を生成(翻訳)する役割がありますが、このCAP依存的な翻訳機構が特定のガン種においては破綻して過剰に働くことにより、ガン細胞の増殖が進行しています。このような細胞内での翻訳が過剰にならないよう、本来は4E-BP1というタンパク質がeIF4Eに結合することで制御されていますが、ガン細胞では上流のPI3K/Akt/mTOR経路が活性化され、4E-BP1の機能が無効化されています。本プログラムにおいては、PepMetics技術を用いて4E-BP1の模倣化合物を作り、過度な翻訳を制御することを試みています。

 治療標的となるガン種としては、たとえばTNBC(トリプルネガティブ乳ガン)では約42%、膀胱ガンでは約43%の患者において本経路が活性化されており、4E-BP1の模倣化合物はこれらガンに対する分子標的薬として期待されております。アメリカ・日本・ヨーロッパ主要国でのこれら活性化されている対象患者数は、TNBCで約13万人、膀胱ガンで約40万人と見積もることができ、更にはこれらガン腫に対する分子標的薬が無いことから、マーケット的に大きなインパクトがあると考えられています。

 本プログラムは過去に見出された候補化合物で複数の評価系での整合性が取れなかったことから、当事業年度は評価系の再構築を進め、2024年7月に整合性が確認できたことから新たな評価系を使って最適化合成を再開しております。今後AIも活用しながら最適化を進め、1~2年後には臨床候補化合物を見出すことを目標にしています。(図16)


※1:開発、販売地域はアライアンス先の開発・販売戦略毎に異なります。上記の情報には、現在入手可能な情報に基づく当社の判断による、将来に関する記述が含まれています。そのため、上記の情報は様々なリスクや不確実性に左右され、実際の開発状況はこれらの見通しとは大きく異なる可能性があります。導出された製品候補については、パートナーが今後の開発・商業化の第一義的な責任を負います。

※2:開発地域は当該臨床試験の実施国が属する地域を記載しております。 情報は、2024年11月9日時点でのjRCT又はClinicalTrials.govに基づくものであり、変更になる可能性があります。

※3:開発プロセスイメージにおける臨床試験期間は、2024年11月9日時点でのjRCT又はClinicalTrials.govに基づくものであり、変更になる可能性があります。また、臨床試験期間は、当該臨床試験の開始日(予定日)・終了日(予定日)を参照しております。開始日について、症例登録開始日(予定日)、被験者登録組入日の開示がある場合は当該時期を開始日として参照しております。    (図16)

③ その他自社開発事業

 前事業年度に開始したプログラムではヒット化合物が同定され、リード化合物に向けての開発を進めておりましたが、期間内に目標の成果に達しなかったため中止いたしました。当事業年度に新たに1つのプログラムを開始し、ヒット化合物探索を進めています。

 また、新たなプログラムを立ち上げるための創薬標的の評価を継続的に進めており、今後は毎年2つのプログラムの立ち上げを見込んでおります。

 自社開発プログラムでは標的探索を定常的に行っており、ヒット化合物探索からプログラム数を管理しています。

FEPを含め、進捗段階毎の実施中のプログラム数の経過は下記のとおりです。

 

2023年度末

増加数

次相への
進展

中止数

2024年度末

ヒット化合物探索

△1

リード化合物探索

△1

リード最適化

(2) 共同開発事業

当社は、PepMeticsの創薬基盤を活用して製薬会社が選定した創薬標的に対してヒット化合物を見出して創薬を進める事業を行っております。

 当事業年度末時点で国内外7社と共同研究契約を締結しており、引き続き他の国内及び海外製薬企業との共同研究契約等の交渉を進めております。

 共同研究を実施している進捗段階毎のプログラム数の経過は下記のとおりです。

 

2023年度末

増加数

次相への
進展

中止数

2024年度末

標的探索

ヒット化合物探索

△1

リード化合物探索

1

リード最適化

より抜粋
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