企業兼大株主INPEX東証プライム:1605】「鉱業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

① 経営環境

 2022年の序盤は、新型コロナウイルス感染症の影響による社会的・経済的停滞から、緩やかな回復基調にあったところ、2月以降のウクライナ危機を契機に、安全保障環境の緊迫化、国際関係における資源・エネルギーの戦略的利用、エネルギーの需給ひっ迫と価格高騰、大幅な円安の進行、物価の高騰等、国際社会経済が不安定化し先行きが一層不透明な状況となりました。さらに、中国におけるゼロコロナ政策の維持、米国その他の主要国におけるインフレ抑制と利上げ等により、世界経済の回復・成長の見通しは足元において見通しが困難な状況です。しかし 、中長期的には世界の人口の拡大、新興国を中心とした経済成長等により、エネルギー需要は持続的に増加する基調は変わらないものと想定しております。このうちエネルギーの過半を占める石油・天然ガス需要については、世界経済の回復・成長に伴い、増加基調となるものと考えられ、中長期的にも、基調としてはアジアを中心とする堅調な需要が見込まれると考えております。また、石油・天然ガスは平時のみならず緊急時の燃料供給に貢献する点で、国民生活・経済活動に不可欠なエネルギー源と認識しております。

 日本では、安定的なエネルギー供給確保のための石油・天然ガスの自主開発比率の向上が継続的な課題となっております。日本政府は、2021年決定した第6次エネルギー基本計画において、石油・天然ガスの開発・生産・輸送はエネルギー安全保障上引き続き非常に重要な位置を占めるとの認識のもと、自主開発比率(2021年度の実績は約40%)目標を、2030年に50%以上、2040年には60%以上に引き上げました。

 他方、2021年、第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)以来、気候変動対応のため、産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑え、さらに1.5℃に抑える努力をする長期目標の実現に向けた取組みの強化が進められています。また、EU、英国、日本等の主要国をはじめ、各国で2050年に向けて温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする、いわゆる「ネットゼロ目標」が表明されています。新型コロナウイルス感染症の影響からの経済回復、エネルギー安全保障、気候変動対応を同時に進める政策や、社会構造の省エネルギー化・クリーン化に向けた政策が展開されつつあります。こうしたネットゼロカーボン社会に向けた議論の進展により、カーボンニュートラルへの対応の緊要性が増すものと考えております。日本政府も「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、温室効果ガス削減目標を掲げている中、水素・アンモニア・CCUS等の石油・天然ガス上流事業のクリーン化及び再生可能エネルギーの導入促進等、カーボンニュートラルを見据えた取組みが大きく加速しているとの認識です。

② 経営方針

 当社は、昨年2月に「長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision @2022)」(以下、「INPEX Vision @2022」)を発表いたしました。「INPEX Vision @2022」におきましては、経営環境の変化を踏まえつつ、2030年及び2050年に向けた当社の長期戦略をお示しするとともに、2022年から2024年までの3年間の中期経営計画を策定し、当面の具体的な取組みと目標をお示ししております。

 ネットゼロカーボン社会に向けた国内外における様々な変化は、当社にとって新たな挑戦であると同時に、更なる飛躍の機会と捉えております。今後、当社はこの「INPEX Vision @2022」に基づき、以下の経営方針のもと、我が国及び世界のエネルギー需要に応えつつ、2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けたエネルギー構

 造の変革に積極的に取り組んでまいります。

1.石油・天然ガス分野

 石油・天然ガス分野を引き続き基盤事業と位置づけ、コアエリアへの選択と集中、天然ガスシフト、事業の強靭化とクリーン化の3点を基本戦略として、それらを一体で進めることで、エネルギーの安定供給と気候変動への責任ある対応という二つの社会的責任を果たしてまいります。当社は、従来、石油・天然ガス分野を対象としてコアエリアを選定していましたが、今回より、各地域に当社が持つアセット、ネットワーク、技術力等を基盤として、石油・天然ガスとネットゼロ5分野全体のコアエリアとして再設定を行い、両者のシナジーを追求していきます。

 第一に、新たに選定した豪州、アブダビ、東南アジア、日本、欧州という5つのコアエリアに対して資金・人材等のリソースを集中させ、事業効率の向上とシナジーの発揮を目指します。コアエリア以外については、バランスの取れたポートフォリオ構築の観点から、収益性や将来性を踏まえて売却も含めて検討します。

 第二に、当社はエネルギートランジションが進展する中にあっても天然ガスの重要性は引き続き高いものと見ており、当社ポートフォリオにおけるガスの比率の向上を目指したいと考えております。そのため、天然ガスへの投資比率を現在の50%程度から将来的に70%程度に引き上げ、アジア、オセアニアを中心に規模の拡大を図ります。また、将来の水素やアンモニアプロジェクトへの事業の転換や拡大についても検討いたします。油田開発については、早期生産、早期コスト回収、低CO2排出を重視し、厳選していきます。

 第三に、強靭化については、需要減少や低油価環境下においても収益を確保できる競争力あるプロジェクトポートフォリオとしていくことを目指し、徹底的なコスト削減を図るとともに、デジタル技術の活用等による生産性向上を推進します。また、クリーン化については、CCS・CCUSの導入、ゼロフレア実現、再エネ電力の活用、森林クレジットの活用などによりプロジェクトの低炭素化を徹底して進めます。

豪州

オペレータープロジェクトであるイクシスプロジェクトにおいて、当初の想定より早いペースで、ほぼ所期の生産量を継続できる状態になりました。現在の年間LNG生産能力890万トンを930万トンに引き上げた上で安定生産を継続できる体制を2024年までに構築できるよう生産プロセスの改善を実施します。また、長期的な生産量維持を確実にするため、周辺鉱区における探鉱及び既発見アセットへの参入を通して追加開発を行い、イクシス既存生産設備へ繋ぎこみを今後加速します。その進捗も踏まえつつ、長期的には2030年頃からのさらなる生産能力拡張も検討しています。

アブダビ

2030年に原油生産能力として、日量500万バレルの達成を目標とする全体の増産計画を踏まえ、当社グループがアブダビで参画する油田群の生産能力増強の早期実現を目指します。新規探鉱事業であるOnshore Block4では、2021年に掘削した試掘第1号井で発見した複数の油ガス層の評価作業を進め、早期の生産開始に取り組みます。また増産計画と併せて、生産コストの更なる削減を目指し、デジタル・トランスフォーメーションの導入等を推進するとともに、GHG排出原単位の削減に向け、CO2EOR能力の強化をADNOCとともに進めてまいります。

東南アジア

アバディプロジェクトについては、事業環境の変化を踏まえて最善の形でプロジェクトを実現すべく、経済性強靭化とクリーン化を主たる修正内容とした開発計画の再改定に向けてインドネシア政府や関係機関と交渉を継続しており、2023年中の承認取得を目指します。これに伴い、2020年代後半のFID、2030年代初頭の生産開始を目標としています。また、アジアにおけるエネルギートランジション促進を目的に更なる天然ガス資源を獲得すべく、ベトナム・マレーシア等において、探鉱・M&Aを推進します。

日本国内

2022年度、南関原における天然ガス探鉱を実施し、その結果を踏まえて早期の天然ガス資源の開発を目指します。ガス供給インフラに関しては、新東京ラインの延伸等を行い、約1,500kmのパイプラインによる供給体制の強靭化を図ります。また、直江津LNG基地においては、ガスシフトの推進による需要増加への対応のほか、水素やアンモニアのプロジェクトの推進に合わせて、設備拡張を検討します。

欧州

新たに取得したスノーレ油田などの生産鉱区を含むノルウェーのアセットをプラットフォームとして、保有鉱区における既発見未開発油ガス田の開発及び周辺探鉱機会の追求により事業を拡大し、さらなる価値向上を目指します。ノルウェーは石油・天然ガス事業における低炭素化の取組みにおいて先進地域であり、スノーレ油田における浮体式洋上風力発電施設の建設を進めるなど、プラントにおいて再生可能エネルギーによる電力を使用することで天然ガスなどの操業に必要な燃料の使用を減らし、操業の低炭素化を推進します。

2.ネットゼロ5分野

 ネットゼロカーボン社会に向け、気候変動対応目標を定めるとともに、5つの事業を強力に推進します。

<気候変動対応目標及びその進捗>

 気候変動に関するパリ協定目標の実現に貢献すべく、2050年自社排出ネットゼロカーボン等を目指す気候変動対応目標を定めます。具体的な目標は、「2050年絶対量ネットゼロ(Scope1+Scope2)」「2030年原単位30%以上低減(Scope1+Scope2、2019年比)」「Scope3の低減」です※1。目標達成に向け、CO2地下貯留・活用(CCUS)や森林保全によるCO2吸収等に取り組み、石油・天然ガス分野全体のCO2低減を強力に推進していきます 。

 「中期経営計画 2022‐2024」においても、排出原単位を更に4.1kg/boe以上低減することを事業目標として立てています。2022年排出原単位は、2019年比で約30%(2022年12月時点の確認可能な暫定値)低減しており、継続して各種低減策の実行に取り組みます。

※1 Scope1~3の定義は以下のとおり。

Scope1:報告企業が所有又は管理する発生源からの直接排出量

Scope2:報告企業が購入し消費する電力、蒸気、熱及び冷却からの間接排出量

Scope3:報告企業のバリューチェーンで発生するその他すべての間接排出量

<5つの事業>

1.水素事業の展開

 2030年頃までに3件以上の事業化の実現、及び年間10万トン以上の生産・供給を目標として設定し、その実現に向けた取組みを進めます。

・国内においては、新潟県柏崎市での水素・アンモニア製造・利用一貫実証を推進し、2024年中の運転開始を目指すとともに、この実証での成果を元に、2030年頃までに、新潟県における商業規模のブルー水素製造を目指します。

・海外においては、アブダビにおけるクリーンアンモニア製造事業を引き続き推進し、大規模なクリーンアンモニア供給を2020年代後半から実現することを目標とします。

・豪州・アブダビ・インドネシア等において、事業性検討や他社との協業による事業拡大を推進し、さらなるクリーン水素プロジェクトの立ち上げ・参画を目指します。

2.石油・天然ガス分野のCO2低減(CCUS推進)

 2030年頃にCO2圧入量年間250万トン以上という目標を設定し、その実現に向けた技術開発・事業化を推進することで、CCUS分野におけるリーディングカンパニーとなることを目指します。

・国内では、南阿賀油田においてCO2-EORの実証試験を2023年までに開始し、開発中のEOR効率改善技術の確立を図り、CCUS技術の拡大と、海外油田でのEOR技術の展開を推進します。

・海外では、豪州イクシスLNGプロジェクトにおいて2020年代後半にCCSを導入し、第一段階として年間200万トン以上のCO2圧入開始を目指すとともに、ダーウィン地域でのCCSハブ事業に主導的役割を果たしていきます。また、アブダビにおいて、ADNOCとともに、アブダビ陸上鉱区の現状年間80万トンのCCUS能力の増強を目指します。

3.再生可能エネルギーの強化と重点化

 洋上風力・地熱発電事業を中心に、1-2GW規模の設備容量確保を目標に、M&A等により取得したアセットをプラットフォームとして事業を加速的に拡大し、主要なプレイヤーとなることを目指します。

・風力事業については、2021年12月にオランダ洋上風力事業のルフタダウネン、ボルセレⅢ/Ⅳの株式を取得することに合意しました。また2021年6月には長崎県五島沖において国内初となる浮体式洋上風力事業の選定事業者に決定されました。これらの事業参入を機会として、風力事業の知見を蓄積し、今後、国内外で浮体式洋上風力のメインプレイヤーとなるべく注力していきます。

・地熱事業については、インドネシアでの開発を進め、2021年12月に参画したムアララボ地熱発電事業の追加開発に関する検討を進めていきます。また国内についても、小安において、建設段階への移行を決定しております。さらに、発電事業だけではなく、次世代型の地熱開発技術の開発など、多様な事業検討を積極的に進めていきます。

4.カーボンリサイクルの推進と新分野事業の開拓

 メタネーション※2の社会実装を推進し、2030年を目途に年間6万トン程度の合成メタンを当社パイプラインで供給することを目指すとともに、更なる発展を追求します。

・メタネーションについては、昨年までに新潟県長岡市の当社長岡鉱場の越路原プラントにおいて小規模メタネーション設備を設置し実証試験を行ってまいりました。今後はさらにスケールアップした実証設備を設置し、2025年までに当社ガスパイプライン経由で需要家への供給を予定しています。さらに、その発展として、2030年頃を目途に豪州において、商業規模のメタネーション設備を建設し、当社LNGバリューチェーンを用いて、合成メタンを国内の需要家に当社のガスパイプライン経由で届ける予定です。

・人工光合成技術※3について、「ARPChem(アープケム:人工光合成化学プロセス技術研究組合)」の一員として、ソーラー水素と呼ばれる太陽光による水の直接分解技術の技術開発を担当しており、豪州ダーウィンの実験サイトにてテストプラントを設置し、2021年に約12か月の実験運転を実施しました。これは、日照量が多いサンベルト地域に設置された世界で初めてのソーラー水素生成プラントであり、今後、より高効率化、長寿命化による実用化を目指します。

・また新分野事業として、メタン直接分解、ドローン技術等に注目して取り組んでおります。

※2 再エネ電力を用いて、水を電気分解し水素を生産する。これと石炭火力発電所等から排出される高濃度CO2や、当社の天然ガス生産時の随伴CO2を、CO2-メタネーションシステム(メタネーション触媒)によってメタンに変換する。

※3 人工光合成パネルの表面に設置された光触媒を用いて、太陽光により水を酸素と水素に分解し、発生した水素を燃料・原料などに利用する。

5.森林保全の推進

 森林保全によるCO2吸収を目的とした事業を支援から事業参画へ強化・拡充していきます。

・2021年より、リンバラヤの事業支援を始めるとともに、顧客向けカーボンニュートラルLNG(生産から消費までのCO2排出を実質ゼロとしたLNG)等の販売を進めています。

・長期的、安定的に森林クレジットを確保することが重要と考えており、リンバラヤと同様に優良なREDD+等の事業を支援してクレジットを確保することに加えて、事業自体にパートナーとして参画していくことを目指します。

 以上の取組みにより、エネルギーの安定供給とネットゼロカーボン社会への対応を推し進め、経済・社会の発展に貢献してまいります。

 なお、本項の記載中、将来に関する事項については、別途記載する場合を除いて本書提出日現在での当社グループの判断であり、今後の社会経済情勢等の諸状況により変更されることがあります。

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