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【東証:219A】「医薬品」
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企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末時点において当社が判断したものであります。
(1)経営環境
日本では、再生医療の承認を後押しする仕組みや法制度が導入されており、国として再生医療の開発を支援している状況にあります。2014年11月には薬機法が改正され、再生医療等製品では、有効性が推定され安全性が確認されれば、条件及び期限付きで特別に早期に承認できる仕組みが導入されました。また、2015年4月には、「画期性」「対象疾患の重篤性」「極めて高い有効性」「世界に先駆けて日本で申請」を満たす臨床開発中の医薬品及び医療機器に対して、審査期間の早期化や当局との事前相談に関する優先的支援などを提供する「先駆け審査指定制度」が試行的に運用開始されました。その後、2019年11月には更に薬機法が改正され、恒常的な活用のために「先駆的医薬品等指定制度」として法制化されています。革新的な医薬品に対する臨床開発上の優遇措置を、日本政府は強化しています。
このような環境のもとで、2014年以降13品目の再生医療等製品が日本において承認されています。そのうち2022年には、角膜上皮幹細胞疲弊症に向けた細胞シートに加え、難治性の多発性骨髄腫向けの製品、合計2品目が承認されています。iPS細胞を活用した再生医療等製品の開発においても、まだ承認事例はないものの、国内では、国立研究開発法人理化学研究所が2014年に世界で初めてiPS細胞を使う臨床研究を実施したほか、2018年には京都大学がパーキンソン病患者さんに対してiPS細胞を使った治療の医師主導治験、2019年には指定国立大学法人大阪大学(以下「大阪大学」という。)がiPS細胞から作製した角膜上皮細胞シートの臨床研究、2020年には重症心不全患者さんに対して大阪大学がiPS細胞から作製した心筋シートの医師主導治験、2021年には慶應義塾大学が脊髄損傷患者に対するiPS細胞由来神経前駆細胞の臨床研究、さらには2022年に京都大学においてiPS細胞由来HLAホモ型血小板の企業治験が実施されるなど、治療法の確立に向けて臨床開発が進んでいます
(2)経営方針・経営戦略
当社は、世界の死因の第一位を占める心臓病に焦点を当て、「再生医療で心臓病治療の扉を開く」ことをミッションとして重症心不全の抜本的治療法の開発を進めております。当社の心筋再生医療は、これまでの細胞治療とは一線を画す、弱まった心臓を再生心筋で置き換える、”Remuscularization(心筋補填療法)”と呼ばれるものです。投与した心筋細胞が患者さんの心臓の中に生着して長期間機能することを期待する治療法であるがゆえに、投与細胞の製造には高い安全性が要求され、サイエンス・技術面での参入障壁が非常に高い領域ともいえます。当社は、本領域の治療法として非臨床試験を完了させ患者投与での検証に入っている世界的にも先駆的な事例となっております。
このような競争環境の中で、まず現在実施中のLAPiS試験を完了させて、HS-001において日本での条件及び期限付き承認を目指して販売収益が上がる体制にすること、同時により低侵襲な手法であるカテーテル投与によるHS-005の開発を当社のグローバルパートナーであるノボノルディスク エー・エスと進め、重症心不全に苦しむ日本の患者さんのみならず、世界の患者さんにも当社の心筋再生医療を届けることを目指しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社は現在、研究段階の企業であり販売承認を取得した製品群を保有しておらず、また、開発段階の進捗によりノボノルディスク エー・エスから取得する開発マイルストン収入が売上高に計上されてはおりますが不確実性が高いため、目標となる経営指標等は定めておりません。そのため、現段階においては、リードパイプラインを中心とした早期の上市を目指し、研究開発及び臨床試験の進捗状況及び研究開発資金と費用のバランス等を注視しながら、事業を推進しております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 臨床応用の加速
<HS-001について>
当社は、虚血性心疾患者さんを対象としたLAPiS試験を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に受理された治験計画に基づき、治験参加施設における患者さんのリクルートメントを継続しております。委託先や治験参加施設との連携を強化し本治験の着実な実行を図ってまいります。
<HS-005について>
2021年6月に発表しましたグローバル大手製薬企業であるノボノルディスク エー・エスとの全世界を対象とする独占的技術提携・ライセンス契約を基に、海外市場向け導出品として主に活用される想定である低侵襲的投与手法の開発などを進めてまいります。
② 中長期的事業基盤構築に向けた取り組み
大量生産を目的とした製造技術開発に加えて、当社が保有するプラットフォーム技術・知財に関する他社との提携などを進めることで、将来収益の極大化に向けた事業基盤を固め、世界市場においても競争力の獲得を図っていく方針であります。
③ 財務基盤の強化
当社は、リードパイプラインであるHS-001での早期収益化を目指す中、2024年10月末時点の現預金残高は5,297,166千円、純資産額は6,623,249千円です。中長期的に事業を拡大していくために資金を外部から調達する必要があることから、今後も一層の事業の促進と並行して株式市場からのみならず、銀行からの融資、補助金等を通して、研究開発に必要な資金調達の多様化を図り、財務基盤の強化を進めてまいります。
④ 組織体制の整備及び人材育成
持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、優秀な人材を確保し定着を図るべく、組織体制を整備し、従業員のモチベーションの維持・向上に努めていくとともに、一人ひとりの従業員の能力開発や働きやすい環境を構築してまいります。
⑤ コーポレート・ガバナンス体制の強化
持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、経営の公正性・透明性を確保するとともに、「内部統制に関する基本方針」に沿って内部統制を整備・運用すること、並びに、コンプライアンス・リスク管理委員会を中心として役職員が倫理・コンプライアンスに関して共通認識を保持し、公正で的確な意思決定を行う風土を醸成する仕組みの構築に加えて、透明性のある内部管理体制を整備・維持することで、内部管理体制の強化及びコーポレート・ガバナンスの充実に努めます。
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