文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社の経営方針は、工作機械メーカーとして「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械、自動化システム、デジタル技術を、最善のサービスとコストでお客様に供給すること」です。コネクテッド・インダストリーズ(IoT、インダストリー4.0)の高まりを背景に、工作機械(マシニングセンタ、ターニングセンタ、複合加工機、5軸加工機及びその他の製品)、ソフトウエア(ユーザーインタフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウエア等)、計測装置、修理復旧サポート、アプリケーション、エンジニアリングを包括したトータルソリューションの提供を行い、全世界のお客様にとってなくてはならない企業を目指しております。
(2) 経営戦略及び経営環境
当社の2022年度の連結受注額は前年度比19%増の5,424億円と、過去最高になりました。工程集約、自動化、DX(デジタルトランスフォーメーション)化、GX(グリーントランスフォーメーション)化が進展し、お客様への価値提案力が向上したことにより、1台当たりの受注平均単価が49.8百万円(前年度:39.4百万円)へ上昇したことが特に寄与いたしました。業種別には、宇宙、民間航空機、医療、EV(電気自動車)、エネルギー関連など、マクロ経済環境にあまり影響を受けない市場向けの需要増が貢献いたしました。地域別には、米州、中国が過去最高になった他、欧州、アジアがほぼ過去のピーク水準に並びました。
2023年度には、前年度比8%減の連結受注5,000億円程度を見込んでおります。2022年度第3四半期(7-9月)から受注は減少に転じましたが、各国、各インダストリーからの引合い件数は比較的高い水準を維持しております。地域別には、中国は米中技術摩擦により輸出管理が厳しくなることから若干の減少を予想しておりますが、日本、米州、欧州、アジアは堅調に推移するものと期待しております。産業別には、医療、宇宙、民間航空機、EV、エネルギー関連など受注の50%弱を占める市場領域は堅調です。また、お客様の規模別では、小規模企業からの受注は低迷しておりますが、中堅、大企業からの受注は健在です。引合いから受注確定までのリードタイムが長期化している点は否めませんが、エネルギー価格、その他部材価格もやや落ち着きを示しており、また、サプライチェーンが正常化に向かいつつあることから、年度半ばから引合いが受注に結び付いて行くものと期待しております。
当社は、2022年12月14日に、2023年度を初年度とする3ヵ年中期経営計画を発表いたしました。当社が目指す、工程集約、自動化、DX化、GX化によるマシニングにおける大変革(MX:マシニング・トランスフォーメーション)は軌道に乗り始めております。5軸加工機、複合加工機、アディティブ・マニュファクチャリング (AM:金属積層造形技術)などにより工程集約を実現し、ロボットなどの周辺装置とともに自動化することを促進いたします。このようなリーンなマシニングプロセスの構築は、CO2排出量の削減への貢献というGX化につながります。そしてその全プロセスをデジタル技術によって情報の収集、分析、可視化を通して改善していくDX化という戦略をさらに進化させ、収益に結び付けて行くことが中期経営計画の目的です。MX実現のためには、工作機械の高精度、高速、高剛性、耐久性など品質面での圧倒的な差別化に加え、自動化のための周辺装置の拡充、ソフトウエアなどの開発の他、直接販売・直接サービス、システムの据え付けなど、社内リソースの充実が欠かせません。当社は、商社・エンジニアリング機能を強化し、他の工作機械製造企業との差別化を図っております。この施策を一層強化することにより、中期経営計画の最終年である2025年度に、売上収益6,000億円、営業利益720億円(営業利益率:12%)、当期利益480億円(当期利益率:8%)の達成を計画しております。
また、当社は、業界のリーディング・カンパニーとして、幅広いステークホルダーの期待に応えるべく、持続可能な社会を目指し、サステナビリティへの取り組みを強化しております。環境面においては、2021年年初からドイツPricewaterhouseCoopers GmbHによる第三者保証のもと、グローバルに生産する工作機械はScope 1からScope 3の上流において、グローバルで認証されたCO2排出権も利用して、カーボンニュートラルとなりました。2021年1月より、出荷する全世界の当社機へカーボンニュートラル製品であることを示す「GREEN MACHINE(グリーンマシーン)」マークを付しております。同年7月にはTCFD提言に準拠したレポートも開示しております。また、同年11月には、SBT(Science Based Targets)イニシアチブにより、2030年までのCO2排出量の削減計画も認定されました。2019年を基準年として、Scope 1及びScope 2においては、2025年までに25.2%の排出削減を、2030年までに46.2%の削減を目標としております。また、Scope 3においては、2025年までに7.4%、2030年までに13.5%の削減を目標としております。
2022年度のCO2の排出量は、全Scopeにおいて、SBT計画に対して約6%下回る水準と順調に推移いたしました。今後も、自社内における工程集約、自動化による生産の効率化、主要工場における大規模太陽光発電システムの導入、各機械へのグリーンテクノロジーの導入を促進し、CO2排出量の削減をSBT計画以上に進めてまいります。
コーポレート・ガバナンスにおいては、取締役の多様性を強化しております。2023年3月28日開催の株主総会での承認により、取締役会の構成は、社外取締役数が5名(構成比:42%)、女性取締役数が3名(同:25%)、外国人取締役数が3名(同:25%)となっております。取締役会において、より多様な意見を反映させ、企業価値向上につながることを期待しております。
以上のように、顧客価値創造と社会との共生を実現し、事業規模、収益性、財務基盤において、継続的な企業価値向上に努めてまいります。
(3) 目標とする経営指標
需要変化の激しい工作機械業界の事業環境や市場動向に迅速に対応し、工作機械業界におけるグローバルワンの地位を維持・継続するためには、利益率の向上、財務体質の強化、資本収益性の向上が最重要課題であると考えております。
中期経営計画(2023年~2025年)の1年目である来期は、連結受注高5,000億円、売上収益5,000億円、営業利益500億円を、それぞれ計画しております。当社グループでは、顧客価値創造並びに企業価値のさらなる向上のために、たゆまぬ努力を継続してまいります。
(4) 優先的に対処すべき課題
①製品開発
2022年は9月にドイツでAMBショー、11月に日本国内においてJIMTOFが開催されるなど、対面による提案機会が増えてきました。物価上昇、人手不足などの課題に対し、当社では、以前より取り組んできた「工程集約」「自動化」「DX化」のための開発を更に推進しております。
工程集約においては、小型複合加工機「NTX 500」と複雑部品の超量産対応が可能な「NZ-Platform」をJIMTOF期間中に発表いたしました。NTX 500では、人口増加・高齢化により需要が継続的に高まっているインプラント、センサなどの小型で複雑な形状の部品、DXにより生産量が増えているセンサ類や半導体製造装置の部品を高効率に加工することができます。NZ-Platformは最大4基の刃物台を搭載でき、すべてにオプションでB軸を追加できます。これにより、複合加工機で対応するような複雑部品を高効率に加工することができ、EV関連の部品加工などで需要が高まっております。
自動化においては、モジュラー型ロボットシステム「MATRIS」や自律走行型ロボット「WH-AMR」による新しい自動化の提案が多くのお客様で稼働するようになりました。これに加えて自動化のレトロフィットを可能とする「MATRIS light」をリリースし好評を博しております。自動化システムではロボット、ローダ、パレット交換などでワークを自動的に交換するだけではなく、長時間の無人運転を実現するため、切りくず、オイルミストを効率よく回収し、クーラント液をクリーンに維持する必要があります。ビルトインで省エネ性能にすぐれたミストコレクタzeroFOG、スラッジを効率よく回収するゼロスラッジクーラントタンク、機内の画像情報から切りくず堆積部分をAIにより認識し、効率よく切りくずを洗い流すAIチップリムーバブルにより、少ないエネルギーでクリーンな機械を維持することが可能です。
DX化においては、テスト加工をデジタルで実現する「デジタルツインテストカット」での経験を増やし、更に加工提案できる体制を整えつつあります。「デジタルツインテストカット」により複雑で長時間を要する部品加工において加工精度、加工負荷、振動、干渉、サイクルタイムを効率よく短時間にシミュレーションし、最適な加工条件を提供します。また、工程集約や自動化が進むと、お客様において更に高効率に生産したいという要求が高まります。それに応えるべく、以前より開発していた機械稼働の遠隔モニタリング「Messenger」、機械の遠隔操作「NETservice」といったアプリケーションの提供だけでなく、JIMTOFにて発表した機械のネットワーク接続をワンストップで支援する「DMG MORI GATEWAY」サービスなど、更なるDXを支援する商品の提供も開始いたしました。
工程集約、自動化、DX化により複数の機械を1台に集約し効率的な生産が可能になり、GX化も進みます。持続可能な社会を実現するため、今後も研究・開発を進めてまいります。
②品質
品質本部では出荷前の製品検査、出荷後の製品の品質分析からPDCAのサイクルを回して改善立案を行い、さらにSDCAのサイクルを回して標準プロセスに落とし込むことで、製品品質、製品安全の向上を実現いたします。
出荷前品質管理では製品検査をTULIP上で展開し、100%デジタルの検査工程に移行いたしました。これにより検査漏れの防止、検査結果の合否自動判定、製品検査効率の改善が実現しています。また工程内検査を見直し、自工程完結を強化することにより、2021年比で最終検査時の不具合指摘件数を半減し、納入後1か月以内の不具合を30%削減いたしました。2023年は納入後1か月以内の不具合を更に削減すべく、納入初期のPPR(Product Problem Report)をすべて分析し、検査方法の見直しを計画しています。
2022年からの継続取り組みとして、主要計測器の水準器、ダイヤルゲージ、梃子式ダイヤルゲージを全面的にデジタル機器に更新いたします。計測器はデジタル検査のシステムと接続され、測定されたデータが検査表に自動反映され確実なデータ処理を高効率で実現いたします。また2023年はデジタル計測器とデジタル検査を用いてレベル測定などの作業を自動化する予定です。
出荷時の精度を継続的に向上させるPDCAの取り組みとして、開発・製造・品質部門が協力し精度検査時の精度出荷限度値の見直しを週次で実施しています。機種別・部位別に精度出荷限度値と実際の精度検査結果から改善案を打合せし実行することで更なる精度向上を目指すものです。
出荷後品質管理ではPPRの運用により世界中に納入した機械の問題を把握しています。国内外の修理復旧責任者と月次で打合せを実施し滞留案件の早期解決を進めております。また発生した不具合が再発しないよう再発防止を1件毎に実施しております。潜在している不具合可視化のため、CS調査も実施しております。小さな意見も取り込むため、QRコードによる入力方式を導入し、時間にとらわれずご意見を頂けるよう運用を開始いたしました。この取り組みは国内だけでなく海外へも展開し、さらなる改善に努めます。
欧州製の主として5軸加工機をご使用いただけるお客様が大きく増えています。欧州製の機械での問題を早期に解決し,品質向上を実現するためにAG機のPPR管理部を日本にも設けております。AG機のPPR管理部ではAG機の修理復旧部門と連携して不具合の原因を特定するとともに,日本で対策品を設計し早期解決する取り組みも行っております。これらの日本で実施した対策については現地工場にフィードバックし標準化を図ることでAG機の品質向上を実現しております。
製品安全の取り組みについては、2021年より、すべての製品安全レビュー、安全回路レビューを品質本部長承認とし厳しく管理することで,新規設計で発生する安全上の問題を2022年にはゼロとすることが出来ました。また世界一安全に厳しいCEマーキングの安全機能を全世界向けに標準化しておりますが、この考えを更に進めて欧州製の機械と安全仕様の統合を進めております。これらの取り組みにより安全に関連する事故ゼロを目指します。
③安全保障貿易管理
近年、世界の安全保障環境の不安定化が益々顕著になり、大量破壊兵器の不拡散や通常兵器の過度の蓄積防止に対する国際的な関心が一段と高まっていたなかで、2022年2月末にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が行われ、各国がロシア向けの輸出・技術提供を禁止するなど、輸出管理を取り巻く環境が激変した一年となりました。当社は、ロシアの軍事進攻直後に、ロシア及びベラルーシ向けの工作機械、関連部品・技術の輸出を停止する判断を行い、当社製品や関連技術が軍事侵攻に使われないよう、今まで以上に厳格な輸出管理に努めております。
更には、2022年5月に「経済安全保障推進法」が国会で可決され、同年12月には、工作機械が「特定重要物資」の一つとして選定され、製品、部品、技術の管理が益々重要な環境に代わってきております。
このような環境の中、当社グループにおいては、輸出関連法規の遵守に関する内部規程(コンプライアンス・プログラム)を見直し、経営環境の変化も考慮したうえで、厳正に適用しております。この一つの取組みとして、当社製品には、不正な輸出を防止する目的で、据付場所からの移設を検知すると稼働できないようにする装置を搭載し、厳格な輸出管理を実践しております。2023年からはDMG MORI AGが製造する工作機械に対しても、段階的ではありますが、搭載を計画しております。
今後、益々、日本のみならず海外の輸出管理規制の変更・強化が見込まれる中で、各国の法令を遵守すべく、引き続き重点課題として今後とも継続して取り組んでまいります。
④法令遵守
経営者自ら全従業員に対し法令及び企業倫理に基づいた企業活動の徹底を指示し、役員・従業員のコンプライアンス意識の向上と浸透を図っております。当社グループでは、グローバルな事業展開に対応したコンプライアンス体制を構築するために、日本を含む各国においてコンプライアンス担当者を選任し、これらを連携させることにより、各国の制度に適応しながら統制の取れた体制の確立に取り組んでおります。また、コンプライアンスに関する問題の予防、早期発見・対策のため、2020年より多言語対応の通報窓口を設置し、海外グループ企業も含めたグローバルでのコンプライアンス体制を強化いたしました。以上のほか、内部監査部を主管部署とした定期的な法令遵守活動のモニタリングも継続しております。
勤務間インターバル制度については、当社では2018年より導入し、2020年度からは在社時間の制限を原則10時間、勤務間インターバルを12時間として従業員の健康維持、ワークライフバランスの適正化に取り組んでおります。
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