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【東証プライム:2982】「不動産業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
2024年2月8日付「第2次中期経営計画」に基づき、業績計画達成のキーとなる「人材生産性」を高めると同時に「財務健全性」の維持にも留意する中で、最終的なアウトプット指標であるEPS(1株当たり当期純利益)を毎期10%以上高め、株主及び投資家の皆様の期待に応えるべく、事業を推進しております。また、中長期的な取組みに「Corporate Agilityの獲得」を掲げ、「耐久性」&「機動性」&「柔軟性」の向上を目指してまいります。そのための指標として、自己資本利益率(30%程度の維持)、ノンアセット事業シェア(中長期的に30%を目指す)、固定費カバー率をモニタリングしております。
(2) 経営環境
当連結会計年度における国内経済は、雇用・所得環境の改善のもとで、緩やかな景気回復が継続しました。2024年7月には日経平均株価が史上最高値を更新し、年末にかけて4万円台を回復するなど、景況感の回復が見られています。
国内の収益不動産売買市場においては、日銀による2024年3月のマイナス金利解除、及び7月の政策金利の追加引上げによる資金調達環境と売買市場への影響が注目されたものの、物価高による不動産価格及び賃料の下支えがあったことを背景に、結果として市況は引き続き活況を呈しました。
1棟収益不動産においては、住宅・オフィスの両セクターにおいて、都心部の賃料は、賃上げや物価高に伴って高水準で推移しています。加えて、建築費の上昇から新築物件の価格高騰が見られています。
不動産小口化商品においては市場規模が年々拡大しております。国土交通省の調査※によると、任意組合型商品への新規出資額は、2014年の64億円から2023年には558億円と約8.6倍に達しています。(※国土交通省「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック(令和6年7月)」)
当社グループの拠点がある米国ロサンゼルスにおいては、政策金利が引き続き高水準で維持されており、資金調達環境の悪化によって収益不動産の売買需要を押し下げている状況にあります。
世界規模では、各国の金融引き締めや経済政策に起因する金融資本市場の変動、物価上昇による原材料価格の高騰、急激な為替変動など、景気を下押しするリスクが依然として存在しております。
(3) 対処すべき課題
① 第2次中期経営計画における課題
当社グループは、2024年2月8日付公表の「第2次中期経営計画」(2024年12月期~2026年12月期)において、収益不動産販売事業への収益依存度が高い現状に対し、以下の課題を認識しております。
- 不動産セクターの環境に、事業基盤が左右される。
- バランスシートリスク(市況リスク)が大きい。
- 期間損益がボラタイルである。
② 資本コストについての考え方
当社グループは2021年5月に開示しました第一次中期経営計画以来、株主資本コストとROE目標を8%と認識していました。一方で、2023年以降の業績成長により、2023年のROEは9.0%、2024年のROEは9.5%と2021年に設定した株主資本コスト・ROE目標8%を超過しているにも関わらず、2024年12月末時点のPBRは0.5倍と1倍未満であり、引き続き課題と認識しております。
以上の当社の状況分析に加え、同一セクター(一棟不動産再生販売セクター・不動産小口化商品セクター)競合会社のPBR・ROE比較検証、金利上昇を含んだ市場環境等を総合的に考察した結果、現在、当社は資産収益性・ROEに課題があると認識しています。
この課題に対して、2025年2月13日付で「企業価値向上に向けた成長戦略」を公表し、2027年までにROEを13~14%以上に改善させ、成長を加速させると共に、株主資本コストを低減させるためのあらゆる施策を講じてまいります。
<企業価値向上にむけた成長戦略>
また、2024年2月8日公表の「第2次中期経営計画(2024年12月期~2026年12月期)」においては、計画初年度にあたる今期2024年12月期の連結業績の結果を踏まえ、2年目の来期2025年12月期の連結業績計画は、売上高55,000百万円、営業利益3,600百万円、税前利益は2,800百万円とし、当初の計画を上回る業績計画といたしました。2026年12月期以降につきましても当初計画以上の業績達成を目指し、2025年2月13日公表の「企業価値向上に向けた成長戦略」を推進してまいります。
<第2次中期経営計画(2024年12月期~2026年12月期)> (百万円)
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| 第2次中期経営計画(2024年12月期~2026年12月期) | ||||
連結 | FY2023 (2023年12月期) | FY2024 (2024年12月期) | FY2025 (2025年12月期) | FY2026 (2026年12月期) | ||
実績 | 当初計画 | 実績 | 当初計画 | 計画 (2/13公表) | 当初計画 | |
売上高 | 41,342 | 47,000 | 49,910 | 52,000 | 55,000 | 58,000 |
営業利益 | 2,441 | 3,000 | 3,216 | 3,300 | 3,600 | 3,700 |
税前利益 | 2,066 | 2,300 | 2,547 | 2,600 | 2,800 | 3,000 |
収益不動産残高 | 44,798 | 45,000 | 45,461 | 46,000 | 47,000 | 50,000 |
株主資本 | 16,353 | 17,500 | 17,511 | 18,500 | 18,727 | 20,000 |
ROE | 9.0% | 9.2% | 9.5% | 9.6% | 9.8% | 10.4% |
ROIC | 4.0% | 4.3% | 4.4% | 4.6% | 5.0% | 4.8% |
人材生産性 | 31百万円/人 | 33百万円/人 | 36百万円/人 | 34百万円/人 | 38百万円/人 | 35百万円/人 |
財務健全性 | 29.1% | 30%程度 | 31.3% | 30%程度 | 30%程度 | 30%程度 |
株主価値 | 29.85円 | 32.95円 | 33.50円 | 36.35円 | 37.02円 | 41.76円 |
(注)1.収益不動産残高:販売または賃料収入を目的として保有する不動産の合計残高
2.ROE:親会社株主に帰属する当期純利益÷平均株主資本(「自己資本当期純利益率」とは数値が異なる可能性があります)
3.ROIC:(親会社株主に帰属する当期純利益+支払利息+借入手数料)÷(平均株主資本残高+平均有利子負債残高)
4.PH総利益:売上総利益 ÷ 平均従業員数(Per Head 売上総利益)
5.EPS:親会社株主に帰属する当期純利益÷期中平均株式数(Earnings Per Share)
なお、<第2次中期経営計画>における(計画)は経営として目指すターゲットであり、いわゆる「業績の予想」または「業績の見通し」とは異なるものであります。
<期初計画達成率> (百万円)
税前(経常)利益 | FY2013 | FY2014 | FY2015 | FY2016 | FY2017 | FY2018 | FY2019 | FY2020 | FY2021 | FY2022 | FY2023 | FY2024 |
計画 | 450 | 500 | 600 | 800 | 900 | 1,000 | 890 | 400 | 600 | 800 | 2,000 | 2,300 |
実績 | 450 | 540 | 650 | (835) | 924 | 1,043 | 933 | 432 | 650 | 910 | 2,066 | 2,547 |
達成率 | 100% | 108% | 108% | (104%) | 103% | 104% | 105% | 108% | 108% | 114% | 103% | 110% |
(注)1.FY2013からFY2016は経常利益、FY2017からFY2024は税前利益です。
2.FY2016は、固定資産に区分された不動産売却益86百万円を特別利益に計上しました。経常利益は748百万円でしたが、税前利益835百万円は実態的に経常利益であると解釈し、経常利益計画800百万円(FY2016は税前利益計画を公表せず)に対する実績として掲載しております。
3.FY2020は、2020年4月1日~2020年12月31日を対象期間とする9か月間の変則決算です。
③ 継続して対処すべき課題
a. 好循環事業サイクルへの転換
当社グループの主力事業である収益不動産販売事業は、一定量の優良な収益不動産残高を保有することにより、不動産の相場と顧客ニーズとの双方を睨みながらコントローラブルに販売を展開し必要な収益を確保すると同時に、保有する収益不動産から得る賃料収入によって収益の安定化を生み出すビジネスモデルです。これに対し現状は、収益の拡大基調にあるため、残高拡充のための仕入れが収益確保のための販売を追従する状態にあります。通常期にも増して積極的な仕入れを展開することにより、好循環の事業サイクルに転換する必要があります。
b. 資金調達手段の多様化
当社グループは、収益不動産販売事業のバリエーションとして、不動産小口化商品事業や開発事業などを国内外において積極的にラインナップし、事業全体の拡大を図っております。いずれも旺盛な資金需要があるため、金融機関からの借入を中心としつつ、資金調達手段をさらに多様化する必要があります。また継続的な資産収益性の改善のためには、最適な財務バランスを検討しつつ資本効率を高める必要があることから、資金調達手段の多様化はますます重要となってまいります。
c. 人的資本投資の強化
複雑化する事業環境や加速する変化の中にあり、当社グループが更なる成長を果たしていくためには、経営戦略に合致した人的資本への投資が必要不可欠です。当社は予てより新卒採用に注力してまいりましたが、こうしたファーストキャリア人材の早期戦力化をはじめ、中堅社員のマネジメント力強化、また幹部候補社員の選抜と育成など、すべての階層において適切な教育プログラムを導入し、成長を促進する必要があります。また多様な人材が最大限の能力を発揮するための組織文化の醸成や職場環境の整備も、継続して実施する必要があります。
d. DX推進の加速
当社グループが持続的に成長を果たしていくためには、事業や経営のスピードと効率を格段に高めること、すなわち生産性の向上が喫緊の課題です。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の活用はそのキーとなるものであり、優先度を高めかつ全社横断的に取り組む必要があります。またDXはスピードや効率化といったオペレーション改革に留まらず、それを活用した新たな事業機会の創出や獲得まで視野に入れるべきであり、「収益に寄与するDX」を掲げ積極的に取り組んでまいります。
e. 新たな事業の柱の構築
当社グループは国内における収益不動産販売事業を主力として成長をしてまいりましたが、今後それに匹敵する第二・第三の事業の柱を構築する必要があります。既存事業の延長においては、不動産小口化商品事業の成長や海外事業の再興に期待し経営資源を相応に充当してまいります。加えて、ノンアセットビジネスを含む新たな事業機会の創出を企図します。
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