鴻池運輸
【東証プライム:9025】「陸運業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループが、革新を続け持続的成長を果たすために、企業理念を「「人」と「絆」を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します」とし、当社グループが長い歴史の中で築いてきた信頼と信用、その根幹をなすすべてのサービスの安全・品質に込める強い想いと誇りを示しております。そして、その使命を果たすことを皆様にお約束するために、ブランドメッセージを「私たちの約束:期待を超えなければ、仕事ではない」とし、その「私たちの約束」を具現化する中長期経営計画を策定すると共に、全従業員の行動指針として「私たちの覚悟」を定めております。
(2)中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題
当社グループの事業においては人が根幹であり、人材不足の問題は中長期的にも大きな課題と捉えております。2024年4月より適用されたトラックドライバーや建設業の時間外労働時間の上限規制に伴ういわゆる「2024年問題」等もあり、中長期的な国内生産年齢人口の減少等と相まって人材不足はさらに深刻化するものと考えております。加えて、AI、IoT、ビッグデータ、ロボット等の革新的な新技術の活用が進展し、将来的には、あらゆる業界において自動化・省人化が進んでいくと考えられます。その結果、人を介したオペレーション業務が縮小する一方で、業務プロセス全体をコントロールする能力や、機械・システムに長けた管理・保守・メンテナンス力など人に求められる技術はより専門化かつ高度化していくと捉えております。
これら予見される課題に対して、当社グループでは脅威ではなく新たな事業機会として捉えることで永続的な企業価値の向上を実現していこうと考えております。具体的には、これまで培ったお客様の現場に精通したノウハウを活かし、新技術を取り入れた業務改善・改革によるお客様への提供価値の向上、並びに、新たな業務プロセスの効率的な運用に貢献していく所存です。
これを実現していくためには、従業員一人ひとりが能力を磨き、持てる真価を遺憾なく発揮できる環境を整えると同時に、業務改善・改革の過程で成長を実感する好循環を作りだしていくことが重要と考えております。
このような社会・経済環境の変化及び課題認識を含めて、今般、当社グループが目指す社会基盤の革新に向けて重要課題(マテリアリティ)を整理した上で、これを支える経営基盤の構築を含めた「中期経営計画2027」の策定、及び「2030年ビジョン」の見直しを行いました。
■2030年ビジョン
(3)中期経営計画2027
①テーマ
『成長投資と人・技術・ICTへの基盤投資で、従業員の幸せと企業価値の最大化を実現する。』
②事業戦略
a) 海外事業拡大
・インド、北中米を注力地域と位置づけ成長を加速
海外においては、今後大きな経済成長が期待されるインド、及び、既存の大規模市場である北中米において前中期経営計画に続いて成長投資を継続し、事業展開を加速させてまいります。
インドでは製造業の拡大やインフラ整備の進展を背景に、物流や請負サービスへの需要が高まっており、当社グループの国内で培われたノウハウを生かすことで事業機会の拡大を図ります。また、北中米は冷蔵冷凍事業の拡大に加え、フォワーディングを起点としたデザインパッケージング事業とエンジニアリング事業による高付加価値化、新たな顧客開拓を推進してまいります。これらの地域での事業強化は、中期経営計画2027の重要な施策と考えております。
b) 国内事業の成長加速
・サービス分野(メディカル・空港)の強化
・複合ソリューションを含む物流事業を一般・定温・戦略アカウント物流の3領域に分けた戦略展開
複合ソリューション分野では当該業界で確固たる地位を築き、安定した需要が見込まれるサービス分野(メディカル・空港分野)が成長のけん引役となるよう競争力強化と成長加速を進めてまいります。また、国内物流事業を一般・定温・戦略アカウント物流の3領域に分け、それぞれの特性に基づいた事業戦略と領域間の連携強化を実現することにより経営資源の最適化を図ると同時に、お客様の物流課題を解決する価値創造パートナーとして、より付加価値の高い事業を構築してまいります。
c) 事業構造の改革
・既存事業分野での保全/メンテナンス領域の拡大
・KOMBO※活動による生産性向上と事業モデル変革
※KOMBO: KONOIKE advanced proposal by COMBINING solution Know-how and
new technology(現場のノウハウと新技術の組み合わせによる新たな提案)
・事業継続性評価による収益構造の変革
既存事業分野においてはオペレーション領域の事業基盤を活用して、設備関係の保全/メンテナンス業務や、空調設備の改装等のエンジニアリング領域の拡大と高付加価値化を実現することで、請負事業の質的転換と安定的な収益基盤の確保につなげてまいります。
また、当社グループ独自の活動(KOMBO活動)として、得意とするお客様の現場での生産性向上のノウハウをベースに、技術・ICTを活用した効率化・省人化の具現化、並びに顧客への仕組み改善・改革提案によって収益性向上及び事業領域開発に取り組んでまいります。
こうした領域拡大と同時に、収益力向上を目指した経営資源の最適化のために、透明性のある新たな事業性評価のしくみ(「事業継続性評価制度」)をスタートさせます。具体的には、国内外のグループ会社を含めた全ての拠点の収益性をROIC・EBITDA・利益規模の観点から評価し、事業継続性審議会にて事業継続/再建・撤退の判断を行ってまいります。
③財務・資本政策
当社グループは、中期経営計画2027策定の前提として、株主資本コストは現状8~9%程度と認識し、持続的に企業価値向上を図るべく、人的投資・成長投資・維持強化投資などへのバランスの取れた資金配分を進めるとともに、財務安定性を維持しながら株主還元の充実を進めてまいります。
a) 財務・資本政策のありかた
| 前中期経営計画 | 中期経営計画2027 |
現預金回転期間 | - | 1.2か月程度 |
DEレシオ | 0.8以下 | 0.8以下 |
自己資本比率※ | 現行基準40%以上 | リース含む:40~45% (現行基準:45~50%) |
格付け(JCR) | A-以上 | A以上 |
※2027年度からの新リース会計基準適用に伴い550億円のリース資産(使用権資産)及びリース負債が計上されると仮定し算出。2025年5月現在の基準における水準はカッコ内の通りです。
b) 還元方針について
株主還元については、成長投資と株主還元のバランスを取り、継続的かつ安定的な配当の実現を基本とし、現行の配当性向30%以上から40%以上への引き上げを実施します。加えて、株式の流動性向上を優先しつつ、事業環境や財務状況に応じて自己株式取得も柔軟に検討してまいります。
c) キャッシュアロケーション
中期的な成長に向けては、「従業員の幸せと企業価値の最大化を実現する」経営方針の下、従業員の処遇改善等の人的投資を3年間で200億円以上実施したうえで、営業キャッシュフロー約730億円を主な財源とし、これに加えて手元資金及び有利子負債約180億円の活用を想定し、計画的な投資を推進してまいります。具体的には、成長投資として480億円(M&A枠200億円を含む)を配分し、成長が期待できる空港・メディカル・エンジニアリング事業、地域としてはインド・北中米に重点的に投資、あわせて今後革新的なレベル向上が期待できるDXやAI等の先進技術導入による生産性向上、技術・ICT投資などに取り組んでまいります。また、維持強化投資には240億円を計画しており、既存事業の競争力維持・強化を図ります。
④経営基盤強化
a) 内部統制の強化
当社グループの持続的な成長を実現していくためには、コーポレートガバナンス体制を更に強化し、健全な経営基盤を構築していくことが不可欠と認識しております。
今般、経営における透明性の向上と経営監視機能の充実を図るため、これまでのサステナビリティ委員会傘下の内部統制部会と経営品質協議会等の機能を取締役会の諮問機関である内部統制委員会に一元化し、内部統制機能の一層の強化を図ってまいります。
b) 戦略委員会による基盤強化
当社グループが持続的成長を実現していく上で、「人」「技術」にかかわる中長期的な課題に迅速に対応していくために、新たな戦略委員会を設置して対処していくことといたしました。
具体的には、深刻化する人材不足への対応、事業戦略に連動した人材育成、新たな人材マネジメントの構築を目的として人材戦略委員会を設置し、あわせて働きやすい職場環境づくりの強化を図ってまいります。加えて、AI、IoT、ビッグデータ、ロボット等の革新的な技術への対応として技術戦略委員会を設置し、技術革新本部、ICT推進本部が連携して技術全般の中長期ロードマップの策定と課題解決に向けた取り組みを推進してまいります。
⑤目標とする経営指標
a) 財務目標
「2030年ビジョン」において、当初の目標としていた営業利益250億円を、更なる高みを目指すべく300億円に引き上げることといたします。具体的な財務目標は以下の通りです。
| 2025年3月期 (実績) | 2028年3月期 (中期経営計画2027) | 2031年3月期 (2030年ビジョン) |
売上高 | 3,449億円 | 4,100億円 | 4,600億円※1 |
営業利益 | 213億円 | 260億円 | 300億円 |
営業利益率 | 6.2% | 6.3% | 6.5%以上 |
ROE | 10.0% | 10%以上 | 10%以上 |
海外営業利益 ※2 | 18億円 | 33億円 | 60億円 |
※1:2031年3月期売上高はガイドラインとする
※2:海外営業利益額=海外拠点営業利益―本社費用賦課分
b) 非財務目標
| 2028年3月期 (中期経営計画2027) | 2031年3月期 (2030年ビジョン) |
環境※ | CO2排出量28%削減(2019年3月期比) | CO2排出量35%削減(2019年3月期比) |
人 | 経営戦略に基づく人材の確保・育成の推進 従業員のウェルビーイング向上 | |
技術 | 技術革新・DXによる自動化・省力化 労働環境改善による「安全」の絶えざる追求 |
※対象範囲は単体及び国内連結会社のエネルギー起源Scope1,2
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