電通総研
【東証プライム:4812】「情報・通信業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループの経営の基本方針は、「誠実を旨とし、テクノロジーの可能性を切り拓く挑戦者として、顧客、生活者、社会の進化と共存に寄与する。」と定義した企業理念(ミッション)の実現に向け、事業活動を推進することです。企業理念はさらに、ビジョンとして当社グループが向かうべき方向を、行動指針として当社グループが大切にすべき価値観をそれぞれ定めており、従業員の日々の行動が企業理念全体の実現に繋がるよう、目標と戦略を経営計画に落とし込むとともに、従業員への浸透活動を積極的に実施しております。
(2)長期経営戦略
当社グループは2030年に向けた長期経営ビジョン「Vision 2030」を掲げております。長期経営ビジョン「Vision 2030」の概要については以下のとおりであります。
① Vision 2030ステートメント
電通総研グループは、社会と企業の変革を実現する存在“X Innovator”を目指し、自己変革していく |
② 2030年のありたき姿
当社グループの2030年のありたき姿は、企業理念を体現する高付加価値企業として、社会、企業、生活者からの期待に応える存在になることです。そのためには、1985年に自ら標榜した“システムインテグレータ”の枠を超え、人とテクノロジーの多様性を備えた、社会や企業の変革を立案・実現する存在へと自己変革していく必要があると認識しています。このありたき姿を当社グループは、「“X Innovator” ~X Innovationの実践を通して社会と企業の変革を実現する存在~」と定義します。“システムインテグレータ”から“X Innovator”への自己変革により成長性を高め、2030年には、社会や企業の変革を実現するに相応しい多様な人材、多彩なテクノロジー、多種のソリューションを持つ集団として、売上高3,000億円、営業利益率20%の企業グループになることを目指します。
③ 2030年に向けた活動方針
ありたき姿の実現に向けて、4つの自己変革を推進します。
事業領域の拡張 | 事業領域を、企業の個別業務課題を解決するビジネスから、企業全体の課題解決や社会の変革を支援するビジネスへと、拡張を図ります。 |
新しい能力の獲得 | テクノロジー実装の強みをさらに高めるとともに、社会や企業変革を導くために必要となる様々なケーパビリティを新たな強みとして獲得します。 |
収益モデルの革新 | ソリューションの拡充・強化に加え、新たなデリバリーモデルの構築等を通して、収益モデルの多様化と収益性の向上を図ります。 |
経営基盤の刷新 | 自己変革のスピードを加速させるため、また、将来の環境変化に柔軟に適応する能力を獲得するため、経営の基盤を刷新します。 |
④ 2030年までのステップ
2022年から2030年までの9年間を、3か年ごと3回にわけて中期経営計画を立案し、推進します。各期間の基本的な位置づけは以下のとおりとなります。
2022~2024年 | 成長を加速させつつ、将来に向けた布石として、当社グループの新しい基盤を構築していく期間とします。 |
2025~2027年 | 2025年に当社グループは創立50周年を迎えます。新しい当社グループとして、オーガニック・インオーガニック両面で従来以上の積極的なチャレンジを行い、さらに高い成長を目指す期間とします。 |
2028~2030年 | ありたき姿の実現に向けて、積極的なチャレンジを継続するとともに、2030年以降を見据えた新しい長期経営ビジョンを検討する期間とします。 |
(3)当中期経営計画(2022〜2024年)の振り返り
長期経営ビジョン「Vision 2030」のもと第1回目の位置づけとして、2022年にスタートした中期経営計画「X Innovation 2024」は、当連結会計年度で終了しました。
成長を加速させつつ、新しい事業基盤を構築していくことを基本方針に掲げ、10個の重点施策を推進した結果、定量目標を設定した「売上高」「営業利益」「営業利益率」「ROE」について、2023年に上方修正した目標値には届かなかったものの、当初に設定した目標値をすべて上回ることができました。
項目 | 当初目標 | 2024年12月期 | 差異 | 年平均成長率※1 |
売上高 | 1,500億円 | 1,526億円 | +26億円 | 10.8% |
営業利益 | 180億円※2 | 210億円 | +30億円 | 15.3% |
営業利益率 | 12.0%※2 | 13.8% | +1.8p | ― |
ROE | 15.0%※2 | 17.4% | +2.4p | ― |
※1 2021年12月期実績を起点とした年平均成長率(CAGR)
※2 2023年7月31日に目標値を以下のとおり上方修正
営業利益:225億円、営業利益率:15.0%、ROE:18.0%
報告セグメント別では、ビジネスソリューションと製造ソリューションの競争力がさらに高まり、それぞれ年平均成長率16.0%、13.9%と高い伸び率で全体の成長を牽引しました。金融ソリューションおよびコミュニケーションITにおいても、一部の事業拡大は想定を下回ったものの、戦略的に取り組んだ金融機関向け会計ソリューション事業、SAPソリューション事業、顧客接点改革事業等を中心に着実に成長しております。
報告セグメント | 2021年12月期 売上高 | 2024年12月期 売上高 | 年平均成長率※ |
金融ソリューション | 251億円 | 319億円 | 8.2% |
ビジネスソリューション | 149億円 | 233億円 | 16.0% |
製造ソリューション | 320億円 | 473億円 | 13.9% |
コミュニケーションIT | 399億円 | 500億円 | 7.8% |
※ 2021年12月期実績を起点とした年平均成長率(CAGR)
事業基盤については、「株式会社電通総研」への商号変更、コンサルティング専業子会社2社の当社への統合、電通グループ内のシンクタンク機能の当社への移管の大型施策を一気に実施し、ケイパビリティとブランドの強化を図りました。成長の源泉である人的資本に関しても、採用体制の強化、基本給の引き上げ、各種人事制度の改訂を実施し、大幅な増員を実現しました。さらには当社グループとして約25年ぶりとなる大型M&Aを実施し、強化領域としていたデザイン力の補強に加え、外部成長の取り込みにも道筋をつけました。新中期経営計画に向けては、ソリューションのさらなる強化と、人材の育成が注力ポイントになると認識しております。
(4)新中期経営計画(2025〜2027年)について
① 事業環境認識
急速に進展するデジタル社会形成に向けた動き、ESG経営や人的資本経営など新たな経営アジェンダ出現に伴う企業の社会的責任の変化、国内の労働人口減少と人材獲得競争の激化、生成AIをはじめとするテクノロジーのさらなる進化の4点は、今後も大きく変わることのないメガトレンドであり、社会と企業の変革ニーズに対するテクノロジー実装力に強みを持つ企業に大きな成長機会が到来するものと考えております。
前中期経営計画の総括と上記の事業環境認識を踏まえ、2025年より、長期経営ビジョン「Vision 2030」のもと第2回目の位置づけとなる3か年の中期経営計画「社会進化実装 2027」を推進します。タイトルに掲げた「社会進化実装」は、当社グループが2024年に制定した事業コンセプトの名称で、シンクタンクとコンサルティングの機能を備えた当社グループが、コアであるシステムインテグレーション機能との連携により、課題の提言からテクノロジーによる解決までの循環を生み出すという、事業の新しい形をまとめたものです。前中期経営計画で拡充した事業基盤を生かし、これまで以上に積極的なチャレンジを通して、さらなる成長を目指してまいります。
② スローガン
強みとなるケイパビリティを強化・活用して企業などの活動を支援し、社会の進化を実装する |
③ 重点施策
イ. 企業変革・社会変革起点での価値提供
・営業機能の統合
新設する営業統括本部に営業機能を統合し、複雑かつ広範囲におよぶお客様の期待に対して、全社として一貫した対応が可能な体制を確立します。アカウント営業、ソリューション営業、パートナーセールスの機能をさらに強化し、案件獲得と価値提供を加速します。
・技術機能の統合
新設する技術統括本部に技術機能を統合し、事業の枠を超えたスキルとノウハウの共有や、柔軟な人材アサインが可能な体制とします。高度デジタルプロジェクトリード人材の育成、プロジェクト品質の向上、事業環境変化にあわせた迅速かつ柔軟な人員配置を実現し、事業成長を加速させます。
ロ. ソリューションの強化
・先端テクノロジーの活用
生成AIなどの先端テクノロジーを活用し、ソリューションの競争力と収益性を強化します。
・外部連携の推進
電通グループをはじめ、企業、教育機関などとの提携とM&Aを通じて、ケイパビリティや事業領域を拡張します。
・独自ソリューション強化
当社グループが独自に生み出したソリューションについて、競争優位性をさらに強固なものとするため、研究開発投資と製品投資を強化します。また、新規事業の企画・開発・実行を担当する専任組織を新設し、2030年に向けて新しい事業領域を複数開拓します。
ハ. 経営基盤の強化
・経営基盤改革
中長期の生産性と収益性向上ならびに企業価値の向上に向け、事業部門とコーポレート部門全体を横断するDXやサステナビリティ活動、経営管理高度化などを推進します。
・人的資本強化
前中期経営計画で築いた採用力を生かし、優秀な人材の採用を継続するとともに、個々の能力とパフォーマンスを最大化するため、さまざまな育成施策と流動性向上施策を実施します。
④ 目標とする経営指標
当社グループは、顧客に提供する付加価値の最大化および企業価値の向上を重視しております。新中期経営計画においては、定量目標として「売上高」「営業利益」「営業利益率」「ROE」「就業人員数」の5項目に対して2027年12月期の目標値を設定するとともに、それを実現するための成長投資枠を設定します。数値は以下のとおりであります。
<定量目標>
項目 | 2024年12月期 | 2027年12月期 目標 | 年平均成長率※ |
売上高 | 1,526億円 | 2,100億円 | 11.2% |
営業利益 | 210億円 | 315億円 | 14.4% |
営業利益率 | 13.8% | 15.0% | ― |
ROE | 17.4% | 18.0%以上 | ― |
就業人員数 | 4,413名 | 6,000名 | 10.8% |
※ 2024年12月期実績を起点とした年平均成長率(CAGR)
<成長投資枠>
3か年累計投資枠 | 対象 |
750億円 | 研究開発活動、社内の生産性向上活動、M&A等 |
(5)財務ポリシー
当社グループの財務ポリシーは、長期的かつ持続的な企業価値を向上させるため、成長分野への投資や株主への安定的な利益還元を行いつつ、健全な財務基盤を確立することです。このポリシーのもと、新中期経営計画では、手元資金は売上高の約2か月分とし、足下の現預金と今後の3か年で予想されるフリーキャッシュフローから750億円の成長投資枠を設定します。
なお、投資およびM&Aの推進に際しては、資本コストを踏まえた厳格な基準で投資判断を行いますが、非連続な成長を実現するため、必要な場合には自己資本比率50%以上の維持を目安に借り入れによる資金調達も視野に入れてまいります。
(6)株主還元
当社グループの配当の基本方針は、持続的な成長を実現するための内部留保を確保しつつ、適正かつ安定的な配当を継続することです。この基本方針のもと、業績成長と配当性向の向上を通して株主還元を強化してまいります。連結配当性向については、これまで40%以上を目安としておりましたが、水準を一段上げ、2024年12月期の実績46.5%を起点に、2027年12月期に50%を目指してまいります。
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