電源開発
【東証プライム:9513】「電気・ガス業」
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企業概要
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」というミッション達成のため、2050年に向けて発電事業のカーボンニュートラル実現に挑んでいくこと、そのマイルストーンとする2030年までのCO2排出削減目標の達成に一定の見通しを得て、2030年以降の世界も見据えたカーボンニュートラル化の加速に向けて、資本効率も意識しつつ国内外においてカーボンニュートラルアセット中心となる事業ポートフォリオへの変換を目指します。また、電力安定供給やレジリエンス(強靭性)強化の要請に応えつつカーボンニュートラル実現に取り組んでいくために、それを支える強固な事業基盤の構築を図っていきます。
当社グループは、サステナブルな成長を実現し、その成果を全てのステークホルダーと共に分かち合い、持続可能な社会の発展に貢献していきます。
(2) 当社グループを取り巻く経営環境と対処すべき課題
世界情勢が不安定・不透明となる中、世界の電力需要は引き続き増加が見込まれ、エネルギー安全保障の重要性が一層強く認識される状況にあります。その一方、カーボンニュートラルに向けた現実的な解も求められています。
わが国では、2025年2月に第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました。S+3E(安全性を前提に、安定供給、経済効率性の向上、環境への適合を図る)という基本的視点のもと、DXやGXの進展による電力需要増加への対応とエネルギー安全保障の観点から、脱炭素電源を最大限活用しつつ、特定の電源や燃料源に過度に依存しないバランスの取れた電源構成を目指すとされました。各分野における課題と対応の方向性が示され、今後、エネルギー産業を中心に社会全体でこれらの課題に取り組んでいくことになります。
当社グループは、カーボンニュートラル実現による企業価値向上を目指す2050年に向けた長期ビジョンとしてJ-POWER“BLUE MISSION 2050”を策定しています。中期経営計画(2024-2026)では、2030年以降のカーボンニュートラルの加速に対応するため、5つの重点項目を示しています。この取組みに注力することで、事業ポートフォリオとビジネスモデルの変換を進め、上述のように変化する環境の中で、電力安定供給と気候変動対応の両立を図り、企業価値の向上を目指します。
※1 電源開発送変電ネットワーク㈱(J-POWER送変電)の取組み
① 持続可能な収益源の確立と成長
a.国内再生可能エネルギー事業
当社グループではカーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの開発を加速してきましたが、競争が増す中、規模拡大だけでなく収益性を向上させる必要性もますます高まっています。このため、新規開発に加え、既存の発電所をより効率的な発電所に更新する取組みや稼働率の向上など既存資産を最大限に活用する取組みにより再生可能エネルギーの発電電力量を増大しつつ、コーポレートPPA※2など新たな販売方法の導入により環境価値の実現を目指します。
2024年度には、長山発電所(水力)、上ノ国第二風力発電所、姫路市大塩太陽光発電所などの新設・更新による設備出力の拡大に加えて、稼働率向上などに取組みました。また、風力(新南大隅、上ノ国第三)及び太陽光(姫路市大塩)においてコーポレートPPAを締結したほか、従来太陽光を対象に実施してきた再エネアグリゲーションサービス※3の対象範囲を陸上風力にも拡大しました。今後も発電電力量増大と環境価値実現に向けた取組みを進めてまいります。
※2 企業や自治体などの需要家が、発電事業者から再生可能エネルギーの電力・環境価値を長期に亘って購入する契約。
※3 他社の再生可能エネルギー発電所に対し、発電予測・計画値同時同量管理業務・電力取引業務を提供するサービス。
b.海外事業
世界では今後も多くの事業機会が見込まれるため、それを取り込むことにより当社グループの成長につなげてまいります。発電事業のみならず、再生可能エネルギーなどの開発者利益の獲得を軸に、資本効率を改善しながら事業セグメントと事業エリアを拡大し、多様な時間軸で利益創出できるビジネスモデルへのトランジションを目指します。
2024年度には、アセットポートフォリオ組替えの一環として、米国ガス火力の持分売却を行う一方、豪州の再生可能エネルギー発電等事業会社の子会社化、インドネシア国の水力発電事業会社への出資参画を行いました。2025年4月には国際事業本部をアジア・米州オセアニア・欧州中東のエリア別の3部体制に再編しており、新体制のもと、増加する新規開発案件や多様化する事業を機動的・効率的に推進してまいります。
② 2030年代事業ポートフォリオへの布石
当社グループは2030年以降のカーボンニュートラル化の加速に向けて国内火力のトランジションを進め、資本効率も意識しながら、2030年代に国内外でカーボンニュートラルアセットが事業ポートフォリオの中心となるよう、変換を目指します。
a.CO2フリー水素・アンモニア戦略
当社グループは将来的なCO2フリー水素発電を実現するための石炭ガス化発電(IGCC)技術※4を商用化するGENESIS松島計画※5を推進しています。既設松島火力発電所は2024年度末をもって稼働停止し、1号機は廃止、2号機はGENESIS松島計画に向けて休止しております。
また、水素やアンモニア、CCS※6などサプライチェーンの上流から下流にわたる多様な可能性を追求する観点で、2024年度はオマーン国での水素/アンモニア製造・供給事業を実施する権利を落札し、事業化検討に着手しました。また、西日本におけるCCS事業の事業化検討を引き続き実施するとともに、豪州沖・マレー半島沖でのCCS事業の検討・調査に参画・着手、2025年4月にはCCSに関する組織・機能を集約した新組織を設置しました。このような取組みにより、脱炭素技術の確保を図り、確実な火力トランジションを目指します。
※4 ガス化炉で石炭から水素や一酸化炭素などのガスを生成し、発電に利用する技術。
※5 経年化した松島火力発電所に新技術の石炭ガス化設備を付加。
※6 Carbon dioxide Capture and Storage、CO2の分離・回収・貯留。
b.電力ネットワーク増強への貢献※7
これからの再生可能エネルギーの大量導入に向けて、再生可能エネルギーの適地(北海道、東北、九州など)で発電された電気を消費地まで届けるための電力ネットワークの増強が要請されています。
当社グループは、保有する佐久間周波数変換所の保守を通じて東西日本を結ぶ電力運用に貢献していますが、佐久間周波数変換所増強計画を推進することで、電力系統の広域的運用に貢献します。また、これまでの実績を基に電力ネットワーク増強に貢献する事業機会を追求し、収益への貢献を図ります。
※7 電源開発送変電ネットワーク㈱(J-POWER送変電)の取組み
c.安全を大前提とした大間原子力発電所計画の推進
当社グループは、青森県下北郡大間町にて、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する大間原子力発電所の建設を進めています。同発電所は、エネルギー安定供給を支えるベースロード電源であり、気候変動問題対応の社会的要請に応えるCO2フリー電源としての役割に加えて、日本政府がプルトニウムの保有量減少を求める中でフルMOX運転により多くのプルトニウム消費が可能となる原子燃料サイクルの中核を担う発電所として重要性が高まっています。
現在実施中の原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査は、2024年11月に基準津波、2025年5月に基準地震動について概ね妥当と評価されるなど、着実に進展しております。引き続き必要な安全対策などを着実に実施することで早期の建設工事本格化を目指し、長期脱炭素電源オークション制度※8の活用も念頭に置きながら大間原子力発電所計画を着実に推進します。
※8 カーボンニュートラル実現に資する新規電源投資を促すため、原則20年間にわたり落札価格が交付される入札制度。
d.新たな事業領域の創造
カーボンニュートラルへの移行やデジタル技術をはじめとするイノベーションの進展により、社会・経済構造の大きな変革が想定されています。当社グループはスタートアップなどへの投資と連携を通じ、当社グループが有する技術・ノウハウとの融合による価値創造を目指します。
2024年度には、イノベーションの実装を加速するための新組織のもと、環境価値に時間的価値を付与する環境価値プラットフォーム※9の開発や、環境配慮型高機能リサイクル繊維の事業化の検討などに着手しました。引き続き、幅広い領域でのさらなる価値の探索と事業開発に向けた取組みを進めてまいります。
※9 非化石電源が発電した時間を正確に記録し需要データを紐づけて、時間帯ごとの環境価値を顕在化させる仕組みを提供するサービス。現行の時間帯証明がない非化石証書を活用した取引では困難な、同時性のある再生可能エネルギー調達の証明に寄与し、企業の実効的なGXの推進に貢献する。
③ 収益力・投資効率の向上
当社グループはROIC(投下資本利益率)を資本効率を図る指標とし、セグメント別ROICを算定、公表しています。設備運用見直しや環境価値実現などによる利益の拡大、高収益・成長分野への資本重点投下、アセットの入れ替えを通じた資金回収の早期化など、事業特性を踏まえた資本効率向上策の検討・実践を各事業部門に促し、全社ROICの向上を目指します。
④ グループ競争力の強化
個人を尊重し、多様な業務経験機会を確保し、従業員のチャレンジを支援する人財制度を整備・充実し、知恵と技術のさきがけとなる多彩な人財を育成し続けることで、日本と世界が直面する様々な社会課題の解決に貢献しつつ、企業価値の向上を目指します。また、当社グループのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進ビジョン“DX 3S+D”※10の実現に向けた具体的施策の推進により人財の「よりょく」(余力(ゆとりの力)、与力(創意工夫の力)、予力(予測・予見の力)を表す造語)を創出し、グループ競争力の強化を目指します。
※10 「Strength 稼ぐ力」「Smartness 効率性」「Safety 安心・安全」+「D データドリブン」
⑤ ESG経営の深化
当社グループはESG経営推進体制を整備し、また5つのマテリアリティを特定してESG経営を推進してきました。今後もPDCAサイクルを回しながらESG経営の深化を図ります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、新中期経営計画において、2030年代に実現を目指す財務目標として「ROE8%以上」を設定しています。当財務目標の実現に向けては、ROIC(投下資本利益率)の導入を通じて、資本効率を高めることを意識しつつ、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標として2026年度「連結経常利益900億円」を採用しています。
2024年度の連結経常利益は1,400億円となりました。引き続き経営目標達成に向けて取り組んでまいります。
項目 | 経営目標 |
連結経常利益 | 2026年度 900億円 |
項目 | 経営目標達成時の主な経営指標水準 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 2026年度 620億円 |
ROE | 2026年度 5.0%程度 |
稼働資産ROIC※11 | 2026年度 3.5%程度 |
(注)上記財務目標は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において予測できる事情等を基礎とした当社グループの合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
項目 | 非財務の目標 |
国内発電事業CO2排出量(2013年度実績比) | 2025年度 △920万t 2030年 △2,250万t(△46%) |
国内再生可能エネルギー発電電力量(2022年度比) | 2030年度までに年間+40億kWh |
※11 (NOPAT+持分法投資損益)/(有利子負債+株主資本−非稼働資産)、NOPAT(税引後営業利益)には事業部門に直課可能な営業外損益・特別損益を含む
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