雪印メグミルク
【東証プライム:2270】「食品業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが合理的と判断する一定の前提に基づいたものであり、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
(1)企業理念の再構築
① 当社グループの原動力/重要課題/コアの価値
当社グループは2025年に北海道での創業から100周年を迎えました。創業100周年を機に、次の100年も社会から必要とされ続ける企業であるために、「我々は事業活動を通じてどのような社会を実現したいのか」という我々の根幹にあたる企業理念を再構築することといたしました。
当社グループは「日本国内における安定的で豊かな食生活の充実」という、創業当時の社会課題解決に向けた創業者たちの想いから始まり、その想いを創業者たちは「健土健民」という言葉に込めました。
企業理念に相当する存在意義・志の検討にあたり、創業の精神である「健土健民」の考えに立ち戻りつつも、これからの時代において我々を動かす原動力、取り組むべき重要課題、そして我々のコアの価値が何かを明らかにしました。
当社グループの原動力は、健土健民の再解釈である「社会課題を解決する精神」であり、重要課題は、現代の社会課題である「食の持続性の実現」である、と整理しました。
そして、当社グループのコアの価値は創業からこれまでの間に培われた「価値をめぐらせる力」です。当社グループは創業以来、生産者からいただいた乳の価値を向上させ、取引先や消費者へ提供し、需要を創造していくことで、地域社会や生産者や投資家にも価値をめぐらせてきました。その「価値をめぐらせる力」こそが当社グループのコアの価値であると考えました。
<当社グループのコアの価値>
② 存在意義・志
再構築した企業理念では、我々の原動力である”社会課題を解決する精神”とコアの価値である”価値をめぐらせる力”のどちらも示すものとして、「健土健民」を存在意義・志に掲げました。また、存在意義・志のステートメントを「私たちは社会課題に挑む精神で、人と自然が健やかにめぐる食の未来を育んでいきます。」と定めました。このステートメントには、パイオニア精神を持ちながら、その時代の社会課題解決に挑む「健土健民の再解釈」、ステークホルダーとともに価値を創造し豊かな循環を生み出す「価値提供の考え方」、食の持続性の実現も含め食の可能性を切り拓く「取り組む社会課題」が示されています。
そして、存在意義・志とそのステートメントに込めた思いを端的に表現するコーポレートスローガンを「Love Earth.Love Life.」としました。このコーポレートスローガンには、人と自然が健やかにめぐるように、地球と大地を愛し、生命と人生を愛するという意味が込められています。
(2) 未来ビジョン2050・Next Design 2030の策定
当社グループは、2023年4月1日「未来ビジョンプロジェクト」を発足しました。未来ビジョンプロジェクトでは、創業100周年を迎えるにあたり、当社グループが実現したい未来、「雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050」を策定しました。
また、「Next Design 2030」は、当社グループを取り巻く中長期的な環境認識のもと「未来ビジョン2050」から遡り、実現したい未来までの道筋を描いています。
① 未来ビジョン2050
当社グループは、「雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050」を、「EGAO-MEGUMITOWN」という「まち」に表現しました。ビジョンの中には「酪農・農業」「健康」「フードテック」「宇宙」の4つのエリアがあり、それぞれのエリアが目指すべき方針や内容を示しています。
創業者のひとり、黒澤酉蔵は自然の循環を活かし持続可能な農業を実現することを目指した「循環農法」を唱えました。この考え方は、環境に優しく資源を効率的に活用する持続可能な農業を推進するものであり、現在の「サステナビリティ」に通じる理念であると同時に、近年様々な分野で注目を集めている「リジェネラティブ」=「持続的」で「好循環」な社会の形成にも通じるものです。
当社グループは新たな100年に向けて、「EGAO-MEGUMITOWN」をビジョンとして掲げ、「リジェネラティブな社会」の実現を目指します。
※雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050 https://www.meg-snow.com/mirai-vision2050/
② Next Design 2030
ア.経営環境認識と「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」の振り返り
A.当社グループを取り巻く中長期的な環境認識
わが国で深刻化している少子高齢化の問題は、今後世界中に広がると予想されています。また、食料生産システムの限界や、タンパク源不足の問題によって、今後の食料供給不安定化が懸念されます。食に関する社会課題は2050年に向けて世界全体の課題になると考えられます。
一方で、世界的人口増加はタンパク源不足リスクでありながら、当社グループが乳で培った知見を活かせる機会にもなり得ます。
B.雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025の振り返り
当社グループは、2023年5月に、「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」(以下、中計2025)を策定しました。中計2025では「強靭性の獲得」をテーマに掲げ、3つの柱である事業戦略と基盤戦略、およびそれらを支える財務戦略で構築しております。
2025年3月までに、一部の施策については着実に進捗し成果を残しています。各種コストの増加に対しては価格改定を行うことで対応し、安定した収益性を維持することができました。販売物量においても、競合他社に対し優位性を発揮し、市場でのプレゼンス向上に取り組みました。DX推進や人的資本への取り組みについても、計画通りに進捗を見せており、組織全体の効率化と人材の活用を今後もさらに加速させていきます。
一方、PBRは若干の改善を見せているものの、依然として1倍割れの状態が続いており、当初中計2025の中で早期に目指すとしていた、1倍超の水準には到達していません。工場の老朽化が進むに伴い、生産体制の変革が不可欠となっていますが、具体的かつ有効な改善の方針や対策を示すことができていない状況です。
以上のことから、当社グループが中計2025の積み残し課題を解決することに加え、従来の延長ではない意欲的な施策に打って出る必要があると考えています。
<中計2025:連結経営指標>
イ.「Next Design 2030」の概要
A.「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」から「Next Design 2030」へ
当社グループは2025年5月に新たな経営計画「Next Design 2030」を発表しました。2025年度は中計2025の最終年度となりますが、「Next Design 2030」へと発展的に移行し、飛躍的な成長を目指します。
当社グループは存在意義・志である「健土健民」のもと、社会課題に挑む精神で人と自然が健やかにめぐる食の未来を育んでいきます。そして、事業活動を通じてこれからの社会課題であり、現代を生きる我々が取り組むべき重要課題でもある「食の持続性」に取り組み、長期的に企業価値を向上し、企業としての存在価値を確立していきます。
B.Next Design 2030コンセプト
「Next Design 2030」では、当社グループの新たな100年に向けた、第2の創業ともいうべきアセットの変革を断行します。新たな発想での生産体制の進化と、無形資産投資による競争力の強化により、乳の価値を上げ、乳の価値と需給構造の大転換を図ります。
国内生乳需給上の、乳脂肪分(Fat)・無脂乳固形分(SNF)のアンバランス課題解消に向けて、チーズ市場における事業の拡大を図ります。また、白物飲料の収益性向上に注力し、市場でのプレゼンスを高め、需要を創出し、製品の価値評価を上げることを目指します。さらに、当社グループがこれまで乳で培った知見や技術を応用して、社会への価値提供を拡大し、適正な利潤を追求していきます。既存事業での競争力を維持しつつ、代替食品事業や海外展開といった新たな領域へ進出し、新市場で確固たる地位を築いていきます。
そして、これらの取り組みを力強く推し進めることによって「社会的価値」と「経済的価値」を同期させ、「食の持続性の実現」による企業価値の最大化を実現します。
C.事業ポートフォリオ変革
当社グループのポートフォリオの考え方は「食の持続性貢献度」による評価を縦軸とし、「市場成長性」と「当社収益性」を掛け合わせた指標を横軸としています。
「食の持続性貢献度」とは「食の持続性」を高めるための売上規模や国内酪農基盤への貢献度などを勘案した、当社グループ独自の指標です。本業を通じて、市場成長性×当社収益性で示す「経済的価値」をしっかりと高め、同時に、国内酪農基盤への貢献を目指すことで「社会的価値」を同期させ「食の持続性」を実現します。
「雪印メグミルクアセットの大変革」により、事業ポートフォリオを変革させ、食の持続性貢献分野の資本効率の改善を進め、高付加価値化を図っていきます。具体的には、重点領域に保有資源を集中し、レバレッジをかけ、強化していきます。また、成長促進領域は、当社グループの成長をドライブするカテゴリーであり、一定のリスクを取りながら、ハイリターンを目指します。一方で、酪農基盤領域は事業資産の圧縮や他社との協業など、アセットライトを志向すると同時に、収益性改善のため、市場の変革にも挑戦していきます。
D.戦略の“4つの柱”、重要な“7つの戦略課題”
「Next Design 2030」は、事業戦略を「4つの柱」と「7つの戦略課題」で構成しています。
1つ目の柱、「成長の果実の育成と収穫」では、中計2025で取り組んできた「海外展開強化」、「機能付加商品の育成」、「プラントベースフードへの参入」、といった「新たな成長のタネづくり」を着実に進め、成長性とリターンを可視化します。具体的には、海外展開における輸出力強化や、代替食品拡充による収益源としての定着化などを戦略課題としています。
2つ目の柱、「乳の産業価値を高める構造の変革」では、「チーズの徹底拡大」と「白物飲料でのプレゼンス拡大」を戦略課題としています。2025年5月に発表した「チーズの生産体制整備」では、北海道でナチュラルチーズを生産する「なかしべつ工場」と、茨城県でプロセスチーズを生産する「阿見工場」で合わせて約475億円の設備投資を行い、2028年上期に両工場で新たな生産体制が稼働する予定です。この投資により、新たな需要を創造する商品の生産が可能となり、当社の強みであるチーズカテゴリーでの成長を加速すると同時に、酪農乳業界の課題である無脂乳固形分(SNF)需要の拡大に対して、これまでとは一線を画すアプローチで解決に臨みます。
3つ目の柱、「リジェネラティブな酪農の実現」では、「守る」「維持する」国内酪農基盤の強化・支援から、「再生」に向けて動き出します。酪農乳業界の発展に寄与する研究・ビジネスへの参入により、自給飼料需要拡大に取り組みます。
4つ目の柱、「社会とのつながりの進化」では、当社グループが乳で培った知見や機能を社会へ還元し、他業界への応用ビジネスの展開を目指します。
E.戦略課題KPIおよび経営指標
2030年度の営業利益目標は350億円です。2024年度の実績対比では約160億円増加する計画です。このうち、海外事業では全体の利益に対して20%の構成を占めることをKPIとし、金額として70億円を目標としています。機能性素材販売の拡大や、東南アジアを拠点としたチーズの拡大の他、2026年度にはAGRO SNOW PTE.LTD.(アグロスノー)によるプラントベースフード(エンドウ)原料製造工場が稼働し、収益源としてプラントベースフードの早期定着化を図ります。
国内の成長領域では、2030年度に150億円の営業利益を計画しています。対象としている4つの事業領域は、今後の市場の成長が期待できるカテゴリーです。これらの領域で高い成長率を実現するために、今後実施する生産体制進化のための投資では、付加価値生産性の向上と、他社との協業等による効率性の向上を同時に実現するイノベーティブな取り組みを推進していきます。
また、経営上のコミットメントは、2030年までに資産売却を除く調整後ROE9.0%以上、ROIC6.0%以上としています。
F.キャッシュアロケーションおよび投資方針
当社グループは、これまでの安定的な営業キャッシュフローの創出により、有利子負債の割合は一貫して減少し、直近では過去最低レベルまで減少しています。このことは、当社グループが自己資本を積極的に積み上げるステージから、その自己資本を有効活用し、企業価値の向上を図るステージへ移行していることを示しています。今後は、資産売却や有利子負債の効果的な活用により、ROE9.0%以上の達成に向けて、戦略的なキャッシュアロケーションおよび投資基準を策定します。
投資方針は、投資の目的に応じた「基盤投資」、「フロンティア投資」、「戦略投資」の三つのカテゴリーに区分し、投資配分を設定して、個々の案件を決定していきます。投資総額は2030年までの6年間で約3,200億円を計画しています。それぞれの投資区分詳細は次の通りです。
a.基盤投資 | ・ミルクバリューチェーンの持続的成長に向けた大型更新投資 ・企業価値向上に向けた無形資産投資等 |
b.フロンティア投資 | ・事業戦略・機能戦略の土台を作るための投資 ・将来に向けたタネまきの投資 |
c.戦略投資 | ・調整後ROE9.0%以上の達成に必要となる期待リターンを設定 ・機動的な自己株式の取得(2025年度は200億円の取得枠設定) |
また、企業としての成長を加速し、調整後ROE9.0%の早期達成に向けた有効手段として、当社グループとのシナジーや事業領域拡大が見込まれる分野等に対し、積極的にM&Aを活用します。
G.株主還元及び資本効率改善について
財務の基本方針として、財務の健全性を維持したうえで、営業キャッシュフロー・BSマネジメント・有利子負債活用によって基盤・成長投資を実施し、安定配当と機動的な自己株式の取得を行い株主還元も強化します。資本政策では、株価や資本構成の状況や成長投資資金需要を考慮しながら、資本効率向上に向けて機動的な自己株式の取得を実施し、取得した株式は全額消却する予定です。また、配当方針として、配当下限を100円に設定し、資産売却益を除く配当性向は40%以上としています。資本構成は、ネットDEレシオ0.5を目安とし、投資の状況に合わせ段階的に最適化していきます。
資産効率向上の施策としては、政策保有株式が2025年度純資産比率10%未満となるよう売却を進める他、工場再編や本社移転等により遊休となった資産の売却も検討します。
(3) 次期の経営環境及び優先的に対処すべき課題
今後のわが国経済の見通しにつきましては、米国の通商政策による世界経済の不確実性の高まりや、金融資本市場の変動等が国内に及ぼす影響に十分注意する必要があります。
食品業界においては、外食需要におけるインバウンド効果や、健康志向の高まりによる高付加価値商品の開発等で堅調な市場拡大が期待される一方で、原材料価格や輸送コスト等の上昇といった厳しい経営環境が継続することが想定されます。
酪農乳業界においては、生乳生産量の減少が見込まれ、夏季の需要期においては飲用牛乳の安定供給に向けた計画的な対応がますます重要となります。脱脂粉乳・バターの需要アンバランスの改善に取り組み、脱脂粉乳の在庫量は減少基調で推移していますが、対策を講じない場合は再び在庫が積み増すことが見込まれています。
当社グループは「Next Design 2030」のスタートの年にあたる2025年度の経営方針を「Brand-NEW」とし、以下の重要な施策に対し積極的な取り組みを進めてまいります。
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