野村ホールディングス
【東証プライム:8604】「証券業」
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企業概要
以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(1)経営の基本方針
① 経営の基本方針
当社は、「経営の基本方針」を取締役会で策定し、以下のとおり定めております。
[経営目標] 野村グループは、社会からの信頼および株主・顧客をはじめとしたステークホルダーの満足度の向上を通じて企業価値を高めることを経営目標とする。 『グローバル金融サービス・グループ』として国内外の顧客に付加価値の高いソリューションを提供するとともに、当グループに課せられた社会的使命を踏まえて経済の成長や社会の発展に貢献していく。 企業価値の向上にあたっては、経営指標として自己資本利益率(ROE)を用い、ビジネスの持続的な変革を図るものとする。
[グループ経営の基本観] (1)新たな事業領域におけるビジネスの拡大をいち早く実現することにより、自ら新しい成長モデルを構築する。また、的確なコスト・コントロールおよびリスク・マネジメントにより、市場環境に左右されにくい収益構造を実現する。 (2)顧客やマーケットの声に真摯に耳を傾け、ビジネスの可能性を広く捉えながら、金融・資本市場を通じた付加価値の高い問題解決策を顧客に提供し、あらゆる投資に関して最高のサービスを提供する会社を目指す。 (3)法令・諸規則の遵守と適正な企業行動を重視し、日々の業務執行においてコンプライアンスおよびコンダクト・リスク管理を実践する。野村グループ各社は、顧客の利益を尊重し、業務に関する諸規制を遵守する。 (4)経営に対する実効性の高い監督機能の確保および経営の透明性の向上に努める。 (5)事業活動を通じて証券市場の拡大に貢献するとともに、企業市民として、経済・証券に関する教育機会の提供を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組む。 |
(注) 当社および当社の連結子会社は「野村」として表示しておりますが、「経営の基本方針」については原文に沿って「野村グループ」として表示しております。
② パーパス
2024年4月、当社は、2025年12月に創立100周年を迎えるにあたり、創業の精神や企業理念を受け継ぎつつ、次の100年につながるグループ経営の基礎となる野村のパーパスを策定しました。
パーパス 金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する |
野村は創立以来、金融資本市場の発展に寄与すべく、挑戦を続けてきました。急激に変化し複雑化する環境において、今後も当社の持つ知識やノウハウといった付加価値を提供し、金融資本市場を通じた多様な豊かさを実現していくために、さらなる取組みを進めていきます。「世界と共に挑戦し」には、さまざまなステークホルダーのより良い未来に向けた想いを実現するために、皆様と一緒に歩んでいくこと、当社においてはグループ全体で理想の姿を追求し、挑戦を続けていくことへの決意を込めました。「実現する」という言葉は、「豊かな社会の実現」に向けた野村のより強いコミットメントを示しています。
③ 経営ビジョン
2024年5月、当社は、パーパスに沿った経営戦略を推進することを目的として、2030年度に向けた新経営ビジョン「Reaching for Sustainable Growth」を定めました。
野村は、幅広い金融サービスの提供を通じ、リスクマネーを循環させ、金融資本市場の発展、お客様への最適なソリューションの提供に取り組んでまいります。
(2)経営環境
当期においては、世界的なインフレの鎮静化が続く一方、景況感については地域ごとのばらつきが見られ、市場の変動要因となりました。米国においては、夏場に景気失速への一時的な警戒感が高まり、世界的な株価急落を引き起こしました。2024年11月の米大統領選挙では共和党のトランプ氏が勝利し、当初は将来の減税政策や規制緩和を先取りする形で株高要因とみなされた一方、2025年1月の大統領就任以降は関税率の引き上げについての発言および実際の発動が株安を誘発する局面が断続的に発生しました。中国では、不動産市場の停滞が続いているなかで、財政出動による景気テコ入れ策への期待感から、秋口以降は株価が底堅く推移しました。欧州では相対的な株価の弱さが続いていましたが、年明け以降、ウクライナ戦争の終結に向けた期待感によって株価上昇が目立ちました。
この間、金融政策については、米FRB(連邦準備制度理事会)が2024年9月から利下げ局面に入りました。ただし、米国景気の堅調さを背景に、先行きの追加利下げ余地については限定的との見方が広まり、長期金利はむしろ秋口から年明けにかけて上昇しました。ECB(欧州中央銀行)は、2024年6月から利下げ局面に入っています。
日本では、インフレ率が夏場にかけては低下したものの、その後は粘着性を増しました。春闘賃上げ率は、2024年に5.3%に達しましたが、2025年も5%超という強い基調になることが見込まれています。日本銀行は、賃金・物価の好循環が強まっているとの認識のもと、政策金利を2024年7月に0.25%へ、2025年1月に0.50%へと引き上げました。ドル円レートは主に日米の市場金利の格差を反映しながら変動しましたが、おおむね横ばい圏内での推移となりました。株価は、企業の利益率の改善を背景に、2024年度中は長期的な上昇局面を維持しました。
(3)対処すべき課題
野村を取り巻く経営環境は大きな変化の只中にあります。引き続き、適正な財務基盤の維持と、資本効率の改善等を通じた経営資源の有効活用を図りながら、機動的に対応してまいります。また、既存ビジネスの拡大とお客様へのさらなる付加価値の提供を目指し、常に新たな取組みも実践します。
① 中長期の優先課題
野村では、グループ全体の持続的成長の実現を追求しており、収益の安定化・多様化、資本効率性を意識した事業ポートフォリオの構築に取り組んでいます。
「野村を今立っている場所とは違うところ、次のステージに進める」という考えのもと、その実現に向けた戦略のひとつとして「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」を打ち出しました。この戦略に基づき、コアビジネステーマとして、資産管理ビジネスの推進、インベストメント・マネジメント部門の強化、ホールセールビジネスにおける成長と安定化に取り組むとともに、デジタルアセットビジネスを含むデジタル金融サービスやサステナブル・ファイナンスを含むサステナビリティ分野等の新領域を開拓・強化してまいりました。また、構造改革を通じた全社的なコスト・コントロールを推進しています。加えて、これらの事業の基盤となるコーポレート機能の高度化・効率化、ガバナンス体制やリスク・マネジメントの強化、人材マネジメント戦略の進化、行動規範・コンプライアンスのより一層の浸透、デジタルを活用した業務効率化やサイバーセキュリティに関する取組みも推進しています。なお、ビジネスの各部門の取組みについては、「②部門別の課題」もご参照ください。
当社は、2024年5月に公表したとおり、2030年度に向けた経営の方向性を示すものとして、経営ビジョン「Reaching for Sustainable Growth」および経営定量目標としてROE8~10%+、5,000億円超の税引前当期純利益の達成を掲げております。達成に向けた注力テーマとして、(ⅰ)日本のフランチャイズを活かしたグローバル戦略の深化、(ⅱ)安定収益の飛躍的な成長、(ⅲ)“プラットフォーム”提供戦略の更なる推進に取り組んでまいります。
なお、当社ではPBR(株価純資産倍率)を下図のように分解して整理しております。ROE絶対水準の最大化は、その主要な要素のひとつです。中長期の優先課題の解決を通じて、企業価値の向上を目指します。
② 部門別の課題
各部門の課題、取組みは以下のとおりです。
[ウェルス・マネジメント部門]
ウェルス・マネジメント部門は、資産管理によるストック型ビジネスへと転換を図ってきた結果、収益構造が大きく変化するなど一定の成果が出てきています。日本の家計の金融資産全体に占める有価証券比率の向上に向けて、多様化する資産管理のニーズに応えていくことが課題だと考えておりますが、全国の野村證券株式会社の本支店・営業所やデジタル等の接点を通じて、包括的な資産管理サービスを提供することで、お客様一人ひとりが目指すゴールを共に実現することを目指しております。今後とも、ウェルス・マネジメントビジネスの進化に向けて、パートナー(営業担当者)のスキルアップを継続して図るとともに、野村グループの総合力を最大限に活用し、幅広い商品・サービスの充実に努めてまいります。
[インベストメント・マネジメント部門]
インベストメント・マネジメント部門は、伝統的資産からオルタナティブ資産までのさまざまなアセットクラスからなる商品・サービスを通じて、幅広い投資家の多様な投資ニーズに対するソリューションを提供しています。お客様の多様な運用ニーズに応える高品質な投資商品を提供することを通じて、社会課題の解決につながる投資の好循環を実現することを目指しています。日本の豊富な個人金融資産と日本政府の資産運用立国実現プランによる政策のあと押し、プライベート資産への投資の伸びしろ、サステナビリティ関連投資に対する高水準の資金需要と投資家意識の高まりを成長機会として捉えています。運用報酬率に下方圧力が継続する中、運用力向上、パブリック市場ビジネスにおける運用資産残高拡大と商品やサービスの高付加価値化、オルタナティブ資産など報酬率の高い成長分野における運用基盤の拡充、効率化とコスト・コントロールを戦略課題として取り組んでいます。
なお、2025年4月に公表したとおり、当社は、オーストラリアの金融サービスグループであるMacquarie Group Limitedとの間で、同社の米国におけるパブリック・アセットマネジメント事業を展開する資産運用会社を有するMacquarie Management Holdings, Inc.の全株式の買収、および欧州におけるパブリック・アセットマネジメント事業にかかる株式100%を取得することに合意しました(取得価額:約18億米ドル(注))。本件取得は、各国金融当局等からの承認などを前提に、2025年12月末までに完了する予定です。
(注)クロージング時点の対象事業の運用資産残高や運転資本、負債等の状況により、取得価額は調整される可能性があります。
[ホールセール部門]
ホールセール部門においては、お客様のニーズのさらなる高度化やテクノロジーの発展に加えて、不透明なマーケットおよびマクロ環境などが当社のビジネスに影響を及ぼす可能性があります。引き続きお客様へ高度なサービスと付加価値を提供し続けるために、各ビジネスライン、国内外および他部門との連携を強化していくほか、ビジネスの領域を広げて収益の安定を図ります。また、成長の見込まれる分野において、効率的に財務リソースを活用し、生産性を意識した選択的成長を実現するとともに、コストの最適化に注力します。
グローバル・マーケッツでは、徹底したリスク管理のもとでお客様に流動性の提供を継続してまいります。また、日本の強固な事業基盤とグローバル・プロダクトの競争力を活かし、ビジネス・ポートフォリオの多角化、グローバル連携の強化とクロスセルの拡大、ストラクチャード・ファイナンスやソリューション・ビジネス、インターナショナル・ウェルス・マネジメント(海外富裕層ビジネス)およびエクイティ・ビジネスなどの成長分野における収益機会の追求、そして、マクロ・プロダクトにおけるフロー・ビジネスの強化をさらに推し進めてまいります。
一方、インベストメント・バンキングでは、事業環境の変化にともないお客様のビジネス活動やニーズが変化する中、国内外で業界再編・事業再編に関するアドバイザリーや資金調達に加え、金利・為替ビジネスなどのソリューション・ビジネスをシームレスに提供することを加速させてまいります。日本における強みも活かしてグローバルにアドバイザリー・ビジネスの拡大に注力するとともに、市場ならびにお客様にとって重要なテーマであるサステナビリティ関連のビジネスを引き続き強化しております。またグループワイドな連携を強化し、幅広いサービスやプロダクト、アドバイスをお客様へご提供できるように注力してまいります。
[バンキング部門]
2025年4月1日付けでバンキング部門を新設いたしました。
各国におけるインフレの進行、金利環境の変化、資産運用立国の実現に向けた動きの加速といった大きな潮流の中、野村グループの銀行・信託機能を活用することでより多様かつ質の高いサービスを提供する取組みを強化することが重要であると考えております。バンキング部門は、傘下のエンティティである野村信託銀行とNomura Bank (Luxembourg) S.A.のそれぞれの強みである「プライベート」「オーダーメイド」といった特長を活かし、お客様の資産形成や円滑な資産承継等のさまざまなニーズに応えてまいります。
[リスク・マネジメント、コンプライアンスなど]
野村では、経営戦略の目的と事業計画を達成するために許容するリスクの種類と水準をリスク・アペタイトとして定め、それをリスク・アペタイト・ステートメントとして文書化しています。そのうえで、事業戦略に合致し、適切な経営判断に資するリスク管理体制を継続的に強化していくことにより、財務の健全性の確保および企業価値の向上に努めています。
野村では、リスク・アペタイト・ステートメントにおいて、3つの防衛線による管理体制のもと、すべての役職員が自らの役割を認識し、能動的にリスク管理に取り組むことを明記しています。またグループ会社を含む役職員への継続的な研修の実施等を通じ、金融のプロフェッショナルとしてリスクに関する知識を深め、リスクを正しく認識・評価し、適切に管理する企業文化、すなわちリスク・カルチャーの醸成に努めています。
コンプライアンスの観点からは、野村がビジネスを展開している各国の法令諸規則を遵守するための管理体制の整備に引き続き取り組むとともに、すべての役職員がより高い倫理観を持って自律的に業務に取り組めるよう社内の制度やルールの見直しを継続的に実施しております。
また、野村では、法令諸規則の遵守にとどまらず、すべての役職員が高い倫理観を持ち、自信と誇りをもって働くことができ、社会から真に信頼される会社を目指し、野村の一員として取るべき行動の指針である野村グループ行動規範を策定し、研修その他の施策を通して、行動規範に基づく適正な行為(以下「コンダクト」)を推進する取組みを日々進めております。毎年8月実施の「野村創業理念と企業倫理の日」においては、全社で過去の不祥事からの教訓を再認識し、再発防止と社会およびお客様からの信頼の維持・獲得に向けて決意を新たにする取組みとして、過去の不祥事を振り返ったうえでのコンダクトの在り方に関するディスカッション、行動規範を遵守することへの宣誓を行っております。行動規範は、野村を取り巻く社会・経済情勢の変化やステークホルダーの期待によりよく応えることができるよう、定期的に見直すこととしています。なお、創立100周年に向けた取組みのひとつとして、2024年に野村のパーパス「金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する」を策定しました。パーパスの策定および浸透に向けて、Nomuraパーパス・ジャーニープロジェクトを立ち上げ、役職員一人ひとりが自身のパーパスについて考え、部下や上司、仲間と徹底的に議論することを重視しており、このことは、行動規範の重要な要素である、各役職員がいかに判断して具体的にどう行動すべきか、を改めて考え直す良い機会となり、各人の行動規範への意識をさらに高める契機となっております。
以上の課題に対処し、解決することを通じて、金融資本市場の安定とさらなる発展とともに、野村の持続的な成長に尽力してまいります。
(野村證券株式会社に対する金融庁による課徴金納付命令について)
2024年9月、当社の連結子会社である野村證券株式会社において、2021年3月の国債先物取引に関して法令違反に該当する事実が認められたとして、証券取引等監視委員会から金融庁に対して課徴金納付命令の勧告が行われ、2024年10月、金融庁から野村證券株式会社に対して課徴金納付命令が発出されました。これに関し、野村證券株式会社は、法令遵守体制および内部管理体制のより一層の強化・充実を図り、信頼回復を目指すべく、フロントにおける再発防止策(第1の防衛線)、コンプライアンスにおける再発防止策(第2の防衛線)および内部監査部署による検証(第3の防衛線)等から構成される再発防止策を策定のうえ、実行に移しております。また、本件を受けて、役員報酬の自主返上の申し出があり、報酬委員会は報酬の減額を決議しております。
(野村證券株式会社の元社員の起訴・逮捕について)
2024年10月、野村證券株式会社の元社員が広島県警察により逮捕され、11月に広島地方検察庁により起訴された件に関し、野村は、お客様の大切なご資産をお預かりする金融機関として、このようなことは二度とあってはならないと重く受け止めております。野村證券株式会社では、お客様に安心してサービスをご利用いただくために、予兆検知や行動管理の観点でこれまで講じてきた対策をさらに強化することとし、厳格かつ実効性を高めた対応策を定め、実行に移しております。本対応策は、業務改革推進委員会の設置、「お客様のご自宅への訪問」に関する監督強化、社員の業務活動におけるモニタリング強化および不正検知のために社員が職場から一定期間離れる制度のウェルス・マネジメント部門への拡大等から構成されております。これら対応策の十分性に関して外部専門家による評価を受け、再発防止に向けた土台の整備が進捗していることを確認し、識別された課題について助言を受ける等、実効性ある再発防止に努めております。また、本件を受けて、役員報酬の自主返上の申し出があり、報酬委員会は報酬の減額を決議しております。
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